コツ、コツ、コツ、コツ、コツ・・・・・。

長い廊下に響く足音、その足音の主・碇ユイは目的地に真っ直ぐ向かっていた。

「ここね・・・。」

『303 惣流=アスカ=ラングレー』
部屋のプレートにはそう書いてあった。
ユイは、その部屋のドアの前にて立ち止まった。

キィー・・・・・。

ゆっくりとドアを開ける。
中の様子をモニター出来なかったため、「中でアスカが寝ているかもしれない。」と思ったからだ。

「あらあら・・・。」

中の様子をうかがった第一声がこれであった。
顔にはうっすらと笑みも浮かび、ベッドで眠る2人の子供を見ていた。
1人はプレートにあったアスカ、もう1人は彼女の息子シンジ。

(気持ちよさそうに寝ちゃって・・・起こすのが忍びないわ。)

そう思いながらも、シンジの体を揺する。

「起きなさい、シンジ。」

「ん・・・母さん?」

シンジは眠りが浅かったのか、すぐに目を覚ました。

「悪いんだけど、ちょっと部屋の外に来てちょうだい。」

「うん。」

シンジは抱き着いてるアスカの手をほどくと、ユイと共に病室から出ていった。

「それで母さん、何かあったの?」

「ええ。渚君が倒れたの、松代のときと同じだと思うわ。」

「そう・・・。」

(カヲル君は大丈夫だよね・・・きっと。)

思ったよりシンジのショックが少なかったので、ユイは話を続ける。

「それに関してはキョウコに任せてあるわ。
 ところで、アスカちゃんの様子はどうなの?シンジ。」

「怒らないの?母さん・・・。」

シンジは怒られるとばかり思っていた。
しかし、怒られずにアスカの様子について聞いてくるユイ。
シンジは気になりながらも答え続ける。

「アスカは目を覚ましたよ、けど・・・。」

「けど、何なの?」

「恐がってしまっているんだ。
 あんな目にあったからだとは思うんだけど、それにしても以上な恐がり方だったんだ。
 あんなアスカを見たのは始めてで・・・。」

「・・・それで、一緒に寝ていたわけね。」

ユイの顔は真剣そのものであった。
何か引っかかるのだろうか、「考え事をしている。」そんな表情だった。

「う、うん・・・一緒にいてほしいって言うから。だから、戦闘に参加しなかったんだ。」

「アスカちゃんが目を覚ましたのなら、戦闘に参加しなかったことは気にしなくていいわ。
 けど・・・彼女はもう、EVAに乗れないかもしれないわ。」

「ど、どうしてさ!?」

自分では考えつかなかったユイの考え、シンジは声を上げた。

「心、精神的なダメージは肉体のダメージと違ってすぐには回復しないのよ・・・。」

「じゃ、じゃあ、アスカがEVAに乗れなくなったらどうするのさ?」

ユイは一頻り考えるようなしぐさをすると、シンジを真っ直ぐ見据える。

「・・・それは、アスカちゃんが決めることよ。」

「・・・・・・・。」

「そうそう、渚君の病室教えるから見舞いに行きなさいね。
 母さんはこれから見舞いに行くから。」

「うん・・・。」

シンジに病室を教えると、ユイはそこから去っていった。

(・・・何かごちゃごちゃするよ。もう少し、アスカと一緒に寝てよう。)

シンジは病室へと戻ると、アスカの眠るベッドへと入り、また眠り始めた。






                    

                    The Restart Of Evangelion

                      第19話「2人の今後」 〜シンジ×アスカ編〜







シンジはベッドに入ると、アスカの背中に手を回し、抱きしめるように眠った。

(お風呂入ってないんだよね・・・でも、アスカの匂いって言うのかなぁ、いい匂いがする。)

抱きしめた時に、自然と相手の匂いが鼻へと入る。
シンジはアスカの匂いを鼻に感じ、そんなことを考えながら眠りについた・・・・・。





それから何時間か過ぎた頃、アスカが目を覚ました。

(よく寝たわね、と言うより寝過ぎって感じかしら・・・あら?)

体を起こそうにも起こせない、目の前は真っ暗。
シンジが抱きしめているから当然であるが、寝起きのアスカにはわからない。

「ど、どうして起きれないのよ〜!」

パニックに陥ったアスカは所構わず大声で叫んだ。
体は動かない、目の前は真っ暗、だんだん恐怖を感じてくる。

「助けて・・・シンジ、助けて〜!!」

胸元とはいえ、こんな大きな声で叫ばれてはシンジも目を覚ます。

「あっ、起きたんだね、アスカ。」

シンジの声が頭の上から聞こえてくる。
アスカは上を向くと、シンジが優しい表情で自分を見ていた。

「えっと、どうなってるの?」

「ゴメン、今手を離すね。」

そう言うと抱きしめていた手を離し、アスカの体を自由にする。
自由になるとアスカは体を離して視覚を確保する。

(手を離したってことは・・・ずっと抱きしめられてたってこと〜!!
 あれ?でも確か、始めはアタシが抱きついてたはずなのに。)

思えば、大胆なことをしたものだと思う。
自分が抱きつき、抱かれていたことを思いだし、顔を真っ赤にするアスカだった。

「どうしたの?顔が真っ赤だよ。」

考えていることがわかっているのだろう。
シンジはアスカの様子を見ながらクスクス笑っている。

「何笑ってんのよ、バカー!!」

アスカは怒鳴ると、毛布を頭から被ってしまった。
流石に悪いと思ったシンジは笑いをこらえて謝り始める。

「ゴ、ゴメン。僕が悪かったから、顔を見せてよ、アスカ。」

「う〜・・・。」

顔は真っ赤なままだが、アスカは顔を出した。
シンジはそこから真剣な表情になる。

「アスカ、聞きたい事があるんだ。」

「な、何よ。」

(恐いけど聞かなきゃ・・・アスカの気持ちを聞かなきゃ。)

シンジは息を一つ吸うと、アスカに聞いた。

「アスカはさ、これからもEVAに乗るの?」

「そ、それは・・・・・。」

アスカは一瞬驚いた表情を浮かべると、下を向いてしまった。
いつものシンジならここであきらめてしまうだろう。
しかし、今日は違っていた。

「逃げないで。アスカの気持ちを聞かせて欲しいんだ。」

「・・・・・・・。」

(EVAから降りたら、シンジと一緒にいれなくなるかもしれない・・・。
 けど、もうアレに乗るのは恐いの、もう乗りたくないの。)

アスカは答えない。
心で言葉を発しても、シンジには聞こえない。

(時間・・・かかるかな。)

シンジも持久戦を覚悟し、アスカを真っ直ぐ見つめていた。





どれほどの時間が経ったのだろうか。
5分?10分?それとも、1時間?2時間?・・・わからない。

2人のとても長い時間の中で、アスカがついに口を開いた。

「アタシ・・・恐いの。
 あの時に一方的にやられた時、もうダメだと思った。
 中で気絶する前にシンジの声が聞こえたわ、『大事な人を傷つけた』って。」

「・・・・・・・。」

「ここに運ばれたときからずっと夢を見ていたわ。」
 
「夢?」

「そう。シンジがね、優しい笑みを浮かべながらこう言うの。
 『アスカはもう乗らなくていいんだよ、怖かったでしょ?僕が守ってあげるから。』って。
 アタシはね『EVAには乗るわ、シンジと一緒に戦いたいの。』って言うんだけど。」

「うん・・・。」

「体が動かないの。
 目の前に弐号機がいて、エントリープラグはイジェクトされてて、アタシが乗るだけになってるの。
 アタシはプラグスーツを着てて、乗るだけなの。
 でも、でもね・・・体が動かないの。」

「アスカ・・・・・。」

「どうすればいいの!
 アタシはEVAに乗って戦いたいの!!
 けど、体が心が恐いって言って動かないの・・・どうしたらいいの、シンジ!!!」

「アスカ、落ち着いて・・・。」

シンジはアスカの方へと体を寄せると、ゆっくり抱きしめた。
(2人はずっとベッドの上で横になった状態です。自由になる手だけを背中に回してる姿だと思ってください。)

「アタシ、シンジと離れたくないよ・・・。」

「僕だってそうだよ。
 でも、アスカが決めたことに反対しない。
 乗らないって言ってドイツに帰るのなら見送るし、全てが終わったら会いに行く。
 乗るんだったらアスカを守りながら戦うよ、もう危険な目にあわせないよう努力する。」

「・・・ありがとう、シンジ。」

アスカはそう言うと、シンジの背中に手を回した。

「アタシ、EVAに乗るわ。」

「うん、わかった。」

シンジが微笑みながら答えると、アスカの顔は途端に赤くなる。

「あの・・・シンジ。」

「何、アスカ。」

「あのさ・・・このまま、眠ってもいい?」

「いいよ、僕も寝るから。」

2人はこれ以上無いほどに近づく。

「「おやすみ。」」

このまま、2人は眠りについた。
お互い、好きな相手のぬくもりを感じながら・・・・・・・。







<後書き>
ども、ウエッキーです。
う〜ん、短いですね。(^^;
元々、第19話を一つのファイル上でやろうと思ってたのを、
『見にくいと嫌だな。』と思って2つに割ったからなんですけどね。
シンジ×アスカ編と言うだけあって、登場人物が少ないです。
シンジとアスカを除けばユイだけですしね。(カヲルは名前だけ。)

タイトル通り、『2人の今後』が決まったんでよかったです。(チルドレン続行)
ここでアスカが『帰ってしまう』選択をすると、番外編ZのLMSになっていくわけです。
(病室で帰る選択をして、退院後にシンジともう一度話し合う、結果が『進学』みたいな。)



<次回予告>
アスカはチルドレンを続行すること決める。
しかし、次に来る使徒は嫌な思い出が残る使徒・アラエル。
今度はシンジを憎むどころか、愛し合ってるから問題無し?

次回、The Restart Of Evangelion

        第20話「ロンギヌスの槍」

を、お送りしまーす♪


マナ:帰っちゃえばいいのに。

アスカ:こんなとこで、アタシは負けられないのよっ!

マナ:どうしたのよ。急に気合入れて。

アスカ:本編迄、アンタを主役にさせてたまるもんですかっ!

マナ:無理無理。もう時代はマナちゃんなのよ。

アスカ:見てみなさいよっ! シンジとアタシのこのラブラブストーリーをっ! アンタに入り込む余地なんかないわっ!

マナ:よーーしっ! わたしもがんばんなくちゃっ!

アスカ:がんばんなくていいっ!!

マナ:時代はマナちゃんよっ!
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