プルル!・・・プルル!・・・プルル!・・・ガチャ。

「あなた?私ですけど。」

『こんなに朝早く、何の用だ・・・?』

「何、その口の聞き方?一生許してあげないわよ。」

『スイマセン、私が悪かったです。何の用でしょうか?』

「何か気持ち悪いわねぇ・・・まあ、いいわ。『アレ』は取りに行ってもらえたのかしら?」

『(我慢だ、我慢だぞ・・・。)はい、すでにドグマにあります。』

「そう、わかったわ。じゃあ、もう少し寝てたら?」

『(ぐあああ!!)そうですね、それでは・・・。』

「ツーツーツー。」

『(何故こんな扱いを受けねばならんのだぁ・・・しかし、しかしぃ!!)』

「(『アレ』はあるのね・・・後は彼女次第、か。)」






                  The Restart Of Evangelion

                        第20話 「ロンギヌスの槍」







翌日の朝

シンジはいつものように早く目を覚ますと、アスカを起こさないよう静かに体を起こした。
幸いにも寝ている間に抱き合っていた手が離れていたおかげで、シンジはスムーズに起きれた。

「・・・ちょっと早いけど、カヲル君の所に行こうかな。」

こうして、シンジは音を立てぬよう忍び足で病室から出ると、カヲルのいる病室へと向かった。

「シンジ〜・・・・・むにゃむにゃ・・・。」

アスカはまだ、夢の国の住人であった。





「・・・朝か。」

シンジが病室を出た頃、ちょうどカヲルも目を覚ましていた。
その表情はいつもと違い、重く、苦しそうな表情であった。

(結局、アダムの狙いは何だろう・・・。まあ、深く考える前に寝てしまったけどね。)

自分の不甲斐なさを笑う、そんな時にドアをノックする音が聞こえた。

『コンコン!』

「誰です?」

「朝早くにゴメンね、碇だけど・・・。」

(シンジ君!!)

シンジの声が聞こえた途端、いつもの微笑みが顔に出てくる。

「鍵は開いてるよ、どうぞ。」

シンジがドアを開けて入ってきた。

「おはよう、カヲル君。調子はどう?」

「心配してくれたのかい、うれしいな。」

「当たり前じゃないか、僕の所為でもあるんだし・・・。」

(ちょっと、まずかったかな。)

一気に場の空気が重くなった。
シンジは自分の発言に反省する、すかさずカヲルがフォローをいれた。

「君の所為じゃないさ、君は君で大事な仕事をしたんじゃないのかい?」

「アスカの事?」

「そう、それは母親のキョウコさんでもダメなんだ、君じゃないとね。」

「・・・ありがとう、カヲル君。」

シンジはカヲルが自分を慰めてくれた上での発言だと思っていた。
当然、カヲルにとっては本心であるから、そういうつもりは無いのだが、さすがにシンジにはわからなかった。

「僕も、一晩寝てたらすっかりよくなったよ。」

「よかった〜、もう今日で帰れるのかなぁ?」

「うん、前回と同じだから問題無いんじゃないかな。」

「それじゃ、いっしょに帰ろうよ。」

いつもだったら、カヲルはその好意に飛びついていただろう。
しかし、今日のカヲルは違った。

「・・・アスカさんに怒られてしまうから、1人で帰るよ。」

「アスカだって怒らないさ、カヲル君も退院するんだから。」

「ゴメンね、シンジ君。・・・少し、考え事をしたいから1人で帰るよ。」

「・・・ちゃんと帰ってくるよね?」

カヲルがいつもと違う、シンジはそう思った。
『もう会えないかもしれない。』、直感でそう思った。
だから、シンジはカヲルに尋ねた、『ちゃんと帰ってくるよね?』っと。

「当然だよ、シンジ君の作るご飯は僕の楽しみの一つでもあるんだから。」

「うん、じゃあ今日は頑張って腕を振るうよ!!」

「ありがとう、シンジ君。」

「じゃあ、アスカの所に戻るよ。夕飯期待しててね!」

カヲルは首を縦に振ると、病室から出ていくシンジを見送った。

「シンジ君、アダムが何を考えようとも僕が阻止するからね・・・。」

シンジが出ていったドアを見ながら、カヲルはそう呟いた。




シンジが静かにドアを開けると、アスカは未だに寝ていた。

(よく寝るなぁ・・・それにしても、アスカの寝顔って可愛いな。)

前回でも寝顔を見たことはあるが、それは涙を流している悲しい寝顔だった。
しかし、今のアスカの寝顔は幸せいっぱいで、いい夢でも見ている、そんな表情を浮かべていた。

『ぷに』

おもむろに、シンジはアスカの頬を突ついてみた。

(起きないか・・・じゃあ。)

『ぷに、ぷに、ぷに』

(柔らかいなぁ、って起きないし。)

『ぷに、ぷに、ぷに、ぷに、ぷに・・・』

「さっきから何してんのよ、アンタはー!!!」

「ひいっ!」

シンジは咄嗟に身構えたが、アスカお得意のビンタは飛んでこなかった。

「あれ?」

体を起こし、ベッドに座ってシンジを見据えるアスカ。

「・・・アタシの寝顔、見てたでしょ?」

「えっ、ああ、うん。昨日から見てたよ。」

『アスカがおかしい』、シンジはそう思っていた。
そんな事を考えてるシンジなど知らずに、アスカは言葉を続ける。

「アタシのほっぺ、柔らかかった?」

「うん、突ついてて気持ちよかった。」

アスカはくるりと後ろを向くと、黙りこんでしまった。

「・・・・・・・。」

「どうしたの、アスカ?」

流石に心配になってしまったシンジは、たまらず声をかけた。

「・・・うんん、何でもない。いいわ!今日は許してあげるわ!!」

「ああ、うん、ありがとう・・・。」

(やっぱ変だな・・・体調悪いのかな?)

これは声に出さない、余計なことを言うと鉄拳制裁なのはアスカの癖だ。
それを体現しているシンジは口を閉じながら、首を傾げていた。

「そ・れ・で、アタシはもう帰っていいの?」

「もう、体は大丈夫なの?」

「当然よ!はあぁ、早く帰ってお風呂に入りた〜い。」

(気のせいみたいだな、これはいつものアスカだし・・・。)

「今から聞いてくるよ、待ってて!」

シンジは先ほどまでのことを『自分の考えすぎ』、ということで決着をつけると、病室を飛び出していった。

「いってらっしゃ〜い。」

手を振ってシンジを見送る。
扉が閉まると、息を一つ吐いた。

「ふう、シンジったら、寝てる乙女に悪戯するなんて〜!
 それはいいんだけどね、寝顔を見られるのって恥ずかしいんだから〜!!。」

アスカは一人顔を真っ赤になって、シンジの帰りを待つのであった。





「さて、と・・・誰にっていうか、どこに行けばいいのかな?」

病室を勢いよく飛び出したものの、朝の早い時間、どこに誰がいるのか、見当もつかなかった。

(う〜ん、困ったな。)

周りを見渡してみる、当然人っ子1人いない。
どうしようかと思案に明け暮れていると、足音が近づいてきた。

「あら?シンジ君じゃない。」

「キョウコさん!」

天の助け。キョウコの姿を見るや否や、駆け寄っていった。

「どうしたの、アスカちゃんは?」

「そのアスカの事なんですけど、退院してもいいんでしょうか?」

「そうね・・・。」

(問題無いでしょうけど・・・軽く診察はしないとまずいかしらね。)

「あの・・・。」

「今からアスカちゃんの病室へ行こうと思ってたの。
 そこで軽く診察して、問題無ければ退院してもOKよ♪」

「そうなんですか、アスカに知らせてきます!」

そう言って、廊下を走り出そうとするシンジをキョウコは止めた。

「ダメよ、廊下を走っちゃ。私と一緒に行きましょ?」

「す、すいません・・・。」

こうして、シンジはキョウコといっしょに病室へと向かうのであった。



「さて、シンジ君はここで待っててね。」

「わかりました。」

コンコン!

『どうぞ〜。』

「おはよ〜、アスカちゃん。」

ドアをノックし、中から返事が返って来る。
キョウコは明るい声で朝の挨拶をしながら、中へと進む。

「おはよ〜、ママ。シンジは?」

「あっら〜、ママよりもシンジ君なのね。
 彼なら部屋の外で待ってるわよ。」

「どうして外にいるの?」

「(私の冷やかしをサラリと流すとは・・・やるわね。)
 だって、これから診察するんだもの、シンジ君に見られてもいいなら中に入れるけど?」

『診察』で意味がわかったのか、アスカの顔は真っ赤に茹で上がる。

「わ、わかったわよ〜。それで、診察で問題無ければ退院していいの?」

「ええ、愛しのシンジ君と一緒に帰りなさいな。」

「ううぅ・・・。」

アスカが何も言えずに唸っている中、手馴れた感じに診察していくキョウコ。

「顔色は・・・OKね。
 はい、口開けて〜。・・・問題無し。
 最後ね、どうしようかしら?」

最後に聴診器を胸に当てるのだが、ワンピース状の服を着ているので捲り上げるのも大変なのだ。
そこでキョウコは悩み・・・閃いた。

「アスカちゃん、ここには監視カメラも無いし、私とアスカちゃんしかいないわ。」

「うん。」

「服脱いで。」

「うん・・・って、ええ!!」

確かに監視カメラは死んでるし、キョウコしかいない。
それでも、相手が肉親でも年頃の娘、服を脱ぐのは恥ずかしい。

「早く、シンジ君待ってるわよ。それとも、シンジ君に脱がしてもらう?」

「で、でも・・・。」

「(もう、面倒くさいわね・・・。)退院、したくないの?」

「わかった、脱ぐから・・・早くしてね。」

「はいはい。」

アスカはワンピース状の病院着を脱いだ。
恥ずかしさで体中が真っ赤になる、肌が白いので尚更だ。

「ふむ・・・ふむ・・・はい、OK。」

手馴れた感じで聴診器を当てていくキョウコ、異常が無いことをアスカに伝えた。

「じゃあ、退院してもいいのね?」

「ええ。着替えの服はベッドの下にあるから、それに着替えて帰りなさいね。」

「ありがと、ママ!」

お礼を言うと同時にキョウコの持ってきた服に着替える。

着替え終わった所でキョウコが話しかけてきた。

「アスカちゃん、次の使徒・・・覚えてる?」

「忘れるわけ無いじゃない!チャンスがあるなら、アタシが殲滅してやるわ!!」

「それで・・・『槍』はあるのかしら?」

その言葉にアスカは当時のことを思い出す。
あの時は、綾波がゲンドウの命令で『ロンギヌスの槍』を使って殲滅したのだ。
しかし、今回はその槍があるのかどうかわからない。
アスカの表情は沈み、顔色が真っ青になる。

「大丈夫よ。仮に槍が無くても、私とユイとリッちゃんで何とかして、アスカちゃんを勝たせてあげるから。」

「うん・・・わかった。」

「だから、笑顔でシンジ君の所まで行きなさい。そんな顔じゃ余計に心配かけるわよ!」

「うん!!ありがとう、ママ。」

アスカにとって、この時ほど母親の存在がありがたいと思った。
元気よく返事をして、明るい笑顔を浮かべると病室から出ていった。

(励ましたのはいいけど・・・どうしようかしら?)

そして、軽はずみな発言を後悔するキョウコがそこに1人残されたのだった。



アスカが病室から出ると、シンジが廊下で待っていた。

「お待たせ〜。シンジ、帰りましょ?」

「うん。体は大丈夫だって?」

「当然!だから、帰れるんじゃない。」

「そうだね。」

アスカとシンジは楽しそうにおしゃべりをしながら、家へと帰っていった。



「シンジ君達は帰ったようだね、僕も帰ろうかな。」

『コンコン!』

カヲルは身支度を整えていると、不意にドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ、開いてますよ。」

「お邪魔するわね。」

入ってきたのはユイであった。
顔は真剣そのもの、退院を祝うような表情ではない。

「どうしたんです、そんな顔をして。」

「あっ!ごめんなさい、退院おめでとう。」

「ありがとうございます。さて、用件は?」

カヲルも話を聞く体勢をとる、ユイは話を始めた。

「監視は気にしないでいいわ。次の使徒なんだけど・・・。」

「アラエル、アスカさんの心を覗いたヤツですね。」

「そう。前回は『槍』を使ったのよね?」

「ええ、そうみたいです。
 でも、これならシンジ君やレイさんに聞けばいいんじゃないですか?」

カヲルの言う事はもっともだった。
アスカがああなってしまった事、レイがゲンドウの命令で『槍』を使って使徒を殲滅したことは、両者共に『識って』いる。

「それだけならね。そう、アスカちゃんはどこまで前のことを知ってるの?
 シンジやレイの様に全てを『識って』るの?」

「彼女は自分の経験したことしか知りませんよ。
 もし、『槍』があそこにあるんでしたら、『レイさんに取りに行ってもらって、アスカさんに渡す。そして、殲滅。』
 これがいいと思いますよ。
 『ドグマ』という名前を知ってるとしても、場所はわからないんですからね。
 それに・・・無理に知る必要も無いでしょう。」

(どういうことかしら?『知る必要は無い』って・・・。)

ユイはカヲルが最後に言った言葉が気になったが、気付かない振りをした。

「・・・そうね。
 貴方の言った通り、『槍』はあるわ、あの場所に。
 それと、『レイに取りに行かせて、アスカちゃんに渡す』って案、使わせていただくわね。」

「どうぞ。
 そうそう、僕はこれから家に帰りますね。」 

「誰かに送らせましょうか?」

「皆さん、忙しいでしょうからいいですよ。
 考え事もしたいんで・・・失礼します。」

カヲルはそれだけ言うと、病室から出ていった。
そして、そこにはユイが一人残された。

(彼、どうしたのかしら・・・何か変だわ。)

カヲルがどこか変だと思ったユイ、首を傾げながら、病室を後にした。



カヲルは1人、繁華街を歩いていた。
平日ということもあり、それほど賑わってはいない。

(成長しない体・・・人とは違う体・・・僕は自分でコアを破壊すれば死ねるのだろうか・・・。)

『まあ、いいさ。
 最後に笑うのは僕だからね、君はせいぜい人間の味方をするといいよ。』

アダムのこの一言が、ずっとカヲルを悩ませていた。
何かをすることは間違い無い。
そして、カヲルはそれが何かをいくつかの予想がついていた。

(僕が考えていることだとしたら、僕が死ぬことで解決するかもしれない・・・。
 実行するには自分一人じゃないといけないね、シンジ君には頼みたくないからね。)

カヲルは自分がまた何かした時にはシンジに謝って、『殲滅』してもらおうとしていた。
『アスカとの交際で、幸せなシンジを不幸にしたくない。』
今の彼はそう思っていた、彼もまたシンジが好きだから・・・。

(そういえば・・・前回は僕だったけど、17番目の使徒はどうなるんだろう?
 僕と同じ『モノ』がゼーレから送られてくるんだろうか?)

第17使徒にアダム。その日、渚カヲルの悩みは解決することはなかった。

「シンジ君・・・僕はどうすればいいんだろうね。」



アスカとシンジは家に到着し、中へと入ろうとしていた。
しかし、玄関前でシンジの足が止まった。

「どうしたの、シンジ?」

「あ、うん・・・。(アスナは怒ってるんだろうな〜、アスカが無事に帰ってきたとは言っても・・・・・。)」

「早く入るわよ。」

「あ〜、そうだけど・・・うん。(嫌だな〜、どうすればいいのかな・・・。)」

「何嫌がってんのよ、アンタは?」

入ろうとしないシンジをアスカが急かす。
声のボリュームが自然と大きくなるアスカに、中にいたアスナが気付いて、玄関のドアを開けた。

「お、お姉ちゃん!!」

「アスナ、ただいま〜。」

『がばっ!!』

アスカの声を聞くと、たまらずアスナは抱きついた。
姉が元気で戻って来てくれたのが嬉しかったのだろう、感極まって泣いていた。

「よかった、よかったよ、無事に帰ってきてくれて・・・。」

「当然じゃない!でも、ゴメンね、心配かけて。」

「いいの、戻って来てくれたから。」

アスナは首を横に振ってから、アスカに答えた。
次に、視線をシンジに向ける。

「(お願い・・・殺さないで〜。)や、やあ。」

シンジは思いっきりガチガチに固まりながら、アスナに声をかける。

「お帰りなさい、シンジさん。」

軽く微笑みながらそう答えると、アスカと一緒に家の中へと入っていった。

「よかったけど・・・なんで?」

シンジは安心しきったのだろう、玄関に座りこんでしまった。

「お帰り、シンジ。」

「アスナが笑ってたんだ・・・マナ。」

声で相手を判断すると、自分が疑問に思ったことを話した。
しかし、返事はこない。
シンジが顔を上げると、そこにはマナがいたが顔は怒っていた。

「『お帰り』って言われたら、『ただいま』でしょ?」

「ゴメン。・・・ただいま、マナ。」

「よろしい!アスナの件なんだけど・・・。」

マナも玄関に座るとシンジの方を向く、シンジもマナを見つめていた。

「アスナはどうしたの?」

「私が・・・・・。」

「私が?」

マナの体から緊張感が伝わってきた。
シンジはたまらず唾を飲みこみ、次の言葉を待った。

「体を売って、アスナを説得したからよ。」

『ガンッ!!』

シンジはその答えを聞くと、思いっきり下駄箱に頭をぶつけた。

「う、嘘でしょ?」

「ええ、嘘よ。」

「・・・・・・・。(こ、コイツは〜。)」

この瞬間、シンジはマナにちょっとだけ殺意を抱いた。

「説得したの。アスカが無事に帰ってきたら、シンジを許してあげてほしいって。」

「そうだったんだ・・・ありがとう、マナ。」

殺意から転じて、マナに感謝の気持ちでいっぱいになるシンジがそこにいた。
お礼の言葉を聞いたマナは、顔を横に向け、頬を指差していた。

「お礼は、『ほっぺにチュ〜♪』でいいよ。」

「ええ!?そ、そんな・・・。」

そう言いながら、アスナを説得してくれた感謝の気持ちから、シンジの顔がマナの頬へと近づいていく。

(あの姉妹はきっと、アスカの部屋でおしゃべりしてるに違いないわ・・・チャンスよ、マナ!)

(これはお礼なんだ、そうお礼なんだよ。)

2人の距離が無くなろうとしていたその時、2つの紅い疾風が駆け抜けた。

「「何やってんのよ(ですか)!、アンタ(あなた)達〜!!」」 『バッチーーーン!!!』

駆け抜けた後、女の子は女の子に抱きしめられ、男の子は女の子に張り飛ばされていた。

「それにしても・・・侮れないわね、アンタ!」

「いいじゃない、私だってシンジが好きなんだもん!!」

マナのその一言に、抱きついていたアスナが立ち上がり、倒れてるシンジに近づいていく。

「ふふふ・・・貴方がいなければいいのよ。
 お姉ちゃんも入院しなかったし、お姉様は私のものだったし、全てが丸く収まるのよ〜!!!」

乾いた笑いを浮かべながら、アスナはシンジに襲い掛かった。

「うわー!!」

「「シンジ!!」」

言うが早いか、アスカとマナはシンジの前に立ちはだかると、アスナに『ダブルラリアート』をかました。
1対1の対決だとライバルだが、共通の敵相手にはものすごい連携プレイを見せる2人だった。

「「シンジに手を出すなんて、冗談じゃないわよ!!」」

「・・・・・・・。」

(こ、恐いよ、2人とも。)

シンジはすっかり腰が抜けていた。
目の前には、気絶しているアスナが横たわっている。

「「行くわよ、シンジ。」」

アスカとマナは左右からシンジを担ぎ上げると、家の奥へと入っていった。



(帰ってきたのね・・・お兄ちゃん、アスカ。)

部屋の中で閉じこもっているレイは、家の中にある気配の数からそう判断した。
しかし、だからと言って部屋から出ることは無かった。

(こんな気持ちじゃ出ていけない、私はどうしたらいいの?)

答えを自分で出せるわけでも無く、アドバイスしてくれる人はいない。
レイは悩みながら、眠ってしまった。



アスカとマナはシンジを引っ張ったまま、2階へと上がっていた。

「さあ、シンジ、お話しましょ。」

「ちょ、ちょっと、アスカ・・・。」

すでにマナが手を離していたため、シンジはアスカに引きずられていく。

「シンジ、レイちゃんの所に行ってあげて。
 昨日から、部屋に閉じこもってるから・・・。」

「えっ?」 「レイが?」

マナの一言にアスカ・シンジ共に足が止まる。

「私が声をかけてもダメなの、シンジだったら・・・・・。」

「わかった、レイの部屋に行ってみるよ。」

シンジはアスカの手を振り解くと、レイの部屋へと向かった。

「ちょっと、シンジ!?」

「はいはい、あなたの相手は私がしてあげるから。」

「い、嫌よ!アンタと一緒だと何されるかわからないじゃない!!」

「な、な、何〜!表に出なさいよ、今日と言う今日は許さないわ!!」

マナはアスカの一言でヒートアップする。
こうなったら『売り言葉に買い言葉』、アスカも黙っているわけが無い。

「いいわ!今日で決着をつけてあげるわ!!
 チルドレンとしても、生身の喧嘩でも、シンジの彼女としてもね!!!」

こうして、2人は庭に出ていった。



(まあ、好きにやらせとけばいいか。)

『コンコン。』

シンジは2人を見た後、レイの部屋のドアを叩いた。

「誰?」

「僕だよ、話がしたいんだけど・・・。」

「・・・・・・・。」

レイは無言で立ちあがり、部屋の鍵を開けた。

(そういえば、鍵ってついてたんだよな。)

シンジは自分の部屋についてる鍵をかけたことが無い。
レイが鍵を開けることで、その存在を思い出した。

「・・・どうぞ。」

「ありがとう。」 『ガチャ!』

レイはシンジを中へと入れると、部屋の鍵を閉めた。

「まずは、ただいま、レイ。」

「お帰り、お兄ちゃん。アスカは?」

「元気だよ、今もマナと遊んでるくらいだから。」

「そう、よかった・・・。」

シンジは乾いた笑いを浮かべていたが、レイはその意味がわからなかった。

「それより、どうしたの?」

「えっ?」

「マナが言ってたよ、レイが部屋から出てこないって。」

「・・・・・。」 (言えない。でも、言ってしまうなら今しか、無い。)

レイは下を向きながら話し始めた。

「・・・私、お兄ちゃんが好きなの。」

「・・・・・。」

「あの時、お兄ちゃんを叩いてしまった後、自分の気持ちに気付いたの。」

「・・・・・。」

「でも、お兄ちゃんにはアスカがいる。私は妹だけど、血の繋がりが無いから・・・。」

「・・・気持ちが押さえられなくなってしまったんだね?」

シンジの言葉にレイは頷いた。
『血の繋がり』、有るか無いかなど言い訳に過ぎない。
有っても兄妹で恋仲になる場合もある、無いけど恋仲にならない場合だってある。
レイは『無い』事が救いであった、恋仲になったとしてもタブーではないからだ。
世間の目はきついものになるだろうが、『血の繋がり』と言う負い目を感じなく済むと思ったからだ。

「レイ・・・。」

「あっ・・・。」

シンジは黙って、レイを抱きしめた。
レイは驚いたものの、自分から背中に手を回す。

(お兄ちゃん、暖かい。)

少しの間、抱き合っていた2人だったが、シンジが手を離したことにより、レイも手を離した。

「ゴメン、僕はレイの気持ちに答えることはできない。」

「うん・・・わかってる。」

シンジはレイの部屋から出ていこうと、ドアを開けようとして、手を止めた。

「あと少しで終わるから。
 終わったらきっと、レイのことを1番に好きになってくれる人が見つかるよ。」

「うん。私も、お兄ちゃんより好きになれそうな人を探してみる。」

レイの言葉にシンジは満足な笑みを浮かべると、レイの部屋を出ていった。

「さて・・・と、ご飯の仕度をしようかな。」



碇邸で様々な事が起こる中、ターミナル・ドグマには2つの人影があった。

「本当に使うのか?」

「貴方もわかってるはずよ、次の使徒の事。」

「ああ・・・、アレに対抗できる武器はこれしかないからな。」

「そういう事よ、ここへはレイに取りに来てもらうから安心して。」

「・・・わかった。」

「それにしても・・・いつ取りに行って来たの?」

「・・・作者が私のことを忘れている頃、だ。」

「わかったわ、もう何も言わないで。」

2つの人影はそれだけ言うと、エレベーターに向かって歩いていった。

次の使徒襲来の日は・・・・・近い。







<後書き>
ども、ウエッキーです。
はうぅ、見にくい上にわけわからなくなってる気がしませう・・・。
どうも、本編1話書くより、LMA1話書くほうがかなり楽です。(^^;
LMAの方も3話目で終わる予定でしたが、(現在2話公開してもらってます。)
もう少し続きそうです、リクエストが入ったので。<マナちゃん、喜ぶかな?
東方の三賢者シリーズ(?)もリクエストが来てるので、書こうと思ってます。
う〜ん、LRSも書きたいなぁ・・・。(ぼそっ)



<次回予告>
ついにアスカ、因縁の対決開始!!
今度は楽勝ペースだけど、本当の敵はそんなヤツじゃない!!
その敵と次話で決着がつく!?

次回、The Restart Of Evangelion

         第21話「決着!?」

を、お送りしまーす!!


マナ:一瞬冷や汗が出たわ。(ーー;;;

アスカ:冷や汗が出たのはこっちよっ!(ーー#

マナ:アスナに体を売っちゃった・・・びっくりしたわねぇ。もう。

アスカ:やかましっ! シンジを誘惑したくせにっ!

マナ:あらぁ、シンジも嫌そうじゃなかったわよ?(*^^*)

アスカ:アンタが強引に迫ったんでしょうがっ!(ーー#

マナ:あーぁ、折角のチャンスだったのになぁ。

アスカ:やかましっ!(ーー#

マナ:まぁいいわ。諦めましょ。

アスカ:そうよ。素直にそう言ってりゃいいのよっ。

マナ:(と、油断させといて・・・。次回のチャンスを狙うわよっ!)
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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