「覚悟しなさい、アスカ!!」

「引導渡しやるわよ、マナ!!」

庭で激しいバトルを繰り広げる2人。
止められる者もいないが、止める者もいない。

「ホントによくやるよなぁ・・・、ん?」

後ろに人の気配を感じたシンジは振りかえる、そこにはレイが少し顔を赤くして立っていた。

「やあ、レイ。ご飯は食べるよね?」

「うん、食べる。」

「そうだ!悪いんだけど、お風呂の準備頼めるかな?」

「任せて・・・。」

レイはキッチンから出て行くと、バスルームへと向かった。

(よかった、元気が出たみたいで・・・。)

シンジはレイが部屋から出てきてくれたことが嬉しかった。

「さて、あの2人もお腹を減らすだろうし・・・がんばって作るぞ!!」

気合を入れたシンジは精一杯腕を振るうのであった。







                  The Restart Of Evangelion

                          第21話 「決着!?」







『プルルル・・・プルルル・・・プルルル・・・。』

(電話が鳴ってるわ、取らなくちゃ。)

「もしもし、碇です・・・。」

お風呂の準備を終えたレイが電話を取った。

『レイ?お母さんだけど、今日はキョウコと一緒で帰れないわ。
 ネルフにいるから、何かあったら電話して頂戴ね。』

「わかったわ、お兄ちゃんにそう言っとく。」

『それじゃあ、お願いね。』

「うん、お母さんも頑張ってね。」

『ありがとう、レイ。』

(お兄ちゃんに言わなくちゃ・・・。)

レイは受話器を置くと、キッチンへと向かった。



「お兄ちゃん。」

「今の電話、誰だったの?」

シンジは声で相手を判断して、振りかえることなく用件を聞いた。

「お母さん、キョウコさんも帰れないって。」

「じゃあ、6人分でいいんだね?」

「うん。あと、お風呂の準備できたわ。」

「ありがとう、2人の様子見てきてくれるかな?」

「わかったわ・・・。」

レイは庭へと向かった、玄関ではアスナが気絶したままだった。

「・・・・・・・。」

レイは無言でアスナをリビングまで運ぶ、そして庭へと出た。

(マナさんもあきらめたらいいのに・・・。)



「こんのー!!」 『バッキーーーン!!!』

「や、やったわね〜!!」 『バッチーーーン!!』

2人共、凄い事になっていた。
体中は汚れて、顔は張り合いで真っ赤になり、目は殺気を帯びていた。

(止めなくちゃ・・・。)

レイは2人が張り合いをする中に割って入っていった。

「止めて・・・。」

「「えっ!?」」

レイは両手を左右に伸ばすと、アスカとマナの顔を掴む。
(アイアンクローをしてると思ってください。)

「2人共、お風呂の準備が出来たわ・・・入って。」

「ちょ、ちょっとレイ、離しなさいよ!!」

「そうよ、邪魔しないで!!」

いきなりの乱入者に怒号を浴びせる2人。
しかし、レイは手を離さない。

「お風呂に入って、お兄ちゃんに迷惑をかけたらいけないわ。」

((ビクッ!!))

シンジが出てくると話は別だ、2人はおとなしくなった。

「わかったわ、離して・・・レイ。」

「入るから離して、レイちゃん。」

「わかったわ。」

レイはアスカだけ離す、アスカは家の中へと入っていった。

「あの〜、私は?」

「マナさん、あきらめた方がいいわ。」

「へっ?」

「お兄ちゃんの、碇君の気持ちはアスカにしか向いてないんだから。」

そう言って、レイはマナの顔から手を離した。
マナはそのまま地面に座りこみ、泣いた。

「わ、わかってたわよ・・・。こんな事したって無駄だって事くらいわかってたわ。
 でも、でも、しょうがないじゃない、好きなんだもの・・・シンジが好きなんだもの!!」

「私もそう、告白もしたけどダメだったわ。
 でも、貴方にも現れるわ・・・貴方のことを1番に好きになってくれる人が。」

レイも座りこみ、マナの手を取りながら言った。

「現われるかしら、私にも。」

「ええ、私と一緒に探しましょう。」

マナは黙って頷くと、レイと一緒に家へと戻った。



家の中に入ると、アスカがバスルームから出てきた。

「アスカ・・・。」

「何よ?」

マナは無言でアスカに近づく、アスカは身構えた。

「私の、負けよ。」

「へっ?」

「シンジは貴方しか見てないって、レイちゃんが言ってたわ。
 私ももうあきらめるわ、私は私を1番に好きになってくれる人を見つけるから。」

(どういう心境の変化かしら、嘘をついてるようにも見えないし・・・。)

アスカは驚きを隠せなかった。
今までに無いパターンだ、どう対処しようか悩んだ。

「あ。」

「あ?」

「アスナは止めなさいよ。」

「そんな事考えないわよ・・・バカ。」

それだけ言うと、マナは自室へと戻っていった。
アスカが振りかえると、レイが怒っていた。

「・・・なぜ、そういうことを言うの?」

「アタシだって驚いてんのよ、悪気があったわけじゃないわ。」

「そう・・・お兄ちゃんの事、お願いね。」

レイも自室へと戻っていった。

「言われなくたって・・・。
 アタシから離れるなんて事無いし、アタシから逃げさせもしないわよ。」

こうして、『アスカvsマナ・シンジ争奪戦』は決着をつけた。

○惣流=アスカ=ラングレー(第21話 レイの説得によりマナが納得)●霧島マナ



碇邸でアスカとシンジが公認の仲になった頃、カヲルは公園にいた。

(『何か』が起こるまではどうしようもないのかな・・・。)

答えの出ないまま、ここで何時間過ごしたのだろうか。
すでに周りは暗くなり、人影が無かった。

(そろそろ帰ろうかな、シンジ君に心配かけちゃいけないからね。)

カヲルはゆっくり歩きながら、家へと向かった。



(もうすぐ出来あがるのに・・・遅いな、カヲル君。)

盛り付けに入った夕食の準備。
女の子4人はお風呂に入り終え、夕食の時間を待っていた。

「お姉ちゃんもお姉様も酷いです〜。」

「ごめんね、アスナ。」

「アンタがシンジに手を上げるからでしょうが。」

「ううぅ〜・・・。」

マナとは違い、キツイ一言を浴びせるアスカ。
アスナは唸るしかなかった。

「お兄ちゃん、後はやっておくからお風呂に入って・・・。」

「じゃあ、頼もうかな。後は・・・と・・・を・・・してくれればいいから。」

レイが首をあてに振るのを見ると、シンジはバスルームへと向かった。



「ただいま。」

カヲルはいつもと変わらぬ表情で帰宅を知らせる挨拶をする。

「おかえり、渚君。」

唯一、気付いたのはマナで挨拶を返す。
カヲルは目線だけ送ると、周りを見渡した。

「シンジ?お風呂に入ってるよ。」

「ありがとう、マナさん。」

マナはカヲルが探している人物の事を教えた。
カヲルは礼を言うと、着替えを取りに自室へ戻った。

(今なら彼と話が出来る、2人っきりで・・・。
 告白するにはいいシチュエーションだけど、そういう告白じゃないのが残念だよ・・・。)

「さてと、お風呂に入ろうかな。」

着替えを持って、シンジのいるバスルームへと向かった。



(次の使徒に対しては武器だけか・・・ロンギヌスの槍はあるのかな?
 アスカは大丈夫みたいだし、それだけなんだよな。)

シンジは湯船に浸かりながら、今後の事を考えていた。
1人で落ち着いて、考え事の出来る空間はこのお風呂と自室である。

(カヲル君の様子もおかしかったんだよな、大丈夫かな?
 話してくれそうも無いし、こういう事は前に無いから対処しようが無いし・・・。)

『バシャッ!!』

顔を洗い、一息つく。

(アラエルの次はアルサミエル、レイにはもう自爆させるような事はさせない・・・。
 けど、次は?前はカヲル君だったけど・・・。)

『ガラッ!!』

「やあ、シンジ君。」

「あっ、カ、カヲル君!?」

「君と一緒に入りたくってね、いいかい?」

「う、うん・・・いいよ。」

カヲルは中へと入ってきた。

『あっ!』っと言う間に体を洗い終えたカヲルは浴槽へと入ってきた。

「シンジ君。」

「うん、何?」

「その・・・僕の事なんだけど、ね。」

カヲルの言葉は歯切れが悪かった。
いつもと違う様子に、シンジの顔も緊張の色が出てくる。

「僕は何かしてしまうかもしれない・・・。」

「何かって?」

「わからないんだ。だから・・・注意してほしいんだ、僕に。」

「そんな!!」

まったく意味がわからない事だった。
シンジはカヲルにそういうことはしたくないのだ。
誰よりもカヲルを『人』として、『親友』として思っているシンジにそんな事は出来ない。
それをしてしまったら、カヲルを『敵』として認識する事になるからだ。

「・・・ゴメン、忘れてくれるかい。」

「あっ、うん・・・。」

「「・・・・・・・。」」

(これでシンジ君に警戒させることは出来たはずだ、こうするしかないんだ、こうするしか・・・。)

(カヲル君は僕達のことを思ってるから、何かを言いたかったんだと思う。
 僕は君を護るよ。アスカを救う様に、僕は君も救いたいんだ・・・。)

2人は無言になった。
しかし、声に出さないだけ。
こういうことは言うべきではない、そんな雰囲気がバスルームを包んでいた。

「さて、出ようか。」

「そうだね。」

カヲルが声をかけ、2人はお風呂から上がるとダイニングへと向かった。

「おっそいわよ、もう!!」

「ゴメン、ゴメン。準備は・・・。」

すでにテーブルの上には準備がしてあった。

「・・・出来てるみたいね。」

「当然でしょ、早く食べるわよ!!」

「何言ってんのよ、アスカは何にもしてないじゃない。」

「うっさいわね、アンタ!!」

『プルルル・・・プルルル・・・プルルル・・・。』

アスカとマナが喧嘩が始まろうとする中、電話が鳴った。

「はい、碇ですけど?」

『シンジ、使徒が現れたわ。迎えをよこしたから、準備して頂戴。』

「わかったよ。みんな、使徒だって!」

シンジは電話を切ると、夕飯にラップを掛けながら言った。
みんなが自室へ戻り着替えるとリビングに集まった。

『ピンポーーーン♪』

「迎えが来たみたいだ、行くよ、みんな!!」

(アタシは負けない、絶対に勝つわ!!)

アスカは拳を握りながら、迎えの車へと乗り込んだ。



「来たわね、みんな。
 レイは零号機に乗って、アスカちゃん・アスナちゃんは弐号機に乗って頂戴。
 後のメンバーはここで待機よ。」

ユイが到着した子供達に指示を出す。
レイ・アスカ・アスナは更衣室へと向かった。


「パイロット3名、EVAへの乗りこみ完了しました。」

「ちょっといいかしら。」

ユイはマイクを取ると、レイに小声で何かを言う。
レイは首を縦に振ると、零号機を起動させて目的地へと向かった。

(レイはどうしたのかしら?)

『2人共、準備はいい?』

「「問題ありません。」」

アスカは思考を中断すると、EVAに集中した。
この戦いは絶対に負けられないのだ、みるみるシンクロ率が上がっていく。

『弐号機、シンクロ率92.4%!!』

『発進、いいわね?』

「「はい!!」」

『発進!!』

いつの間に現れたのか、ミサトが発進の号令をかけていた。

(久々に仕事したって感じね〜。)



地上に出ると、使徒がはっきり見えた。

(前より高度が低いのかしら?はっきり見えるけど・・・。)

そんな事を考えてると、使徒から光が発せられた。

(来た!もう、恐れないわ・・・アタシにはシンジがいるんだから!!)

前回は脆くなっていたプライドに止めを刺したこの攻撃。
しかし、今は効果が無い。
彼女には絶対的に信じている男の子がいる、それはとても心強いものだった。

「はん!そんな下品な光でライトアップされても、うれしかないのよ!!」

「弐号機、謎の光による変化はありません!!」

マヤの報告に、ユイは満足そうな笑みを浮かべる。
そして・・・。

「零号機、地表に到着しました!」

「レイ、それをアスカちゃんに渡して!!」

「了解!」

レイはアスカの方へと近づくと、手に持った赤い二股の棒を渡した。

「待ってたわよ、レイ〜。」

「頑張って、アスカ。」

「ま〜かせて♪」

アスカはレイから『棒』を受け取ると、使徒の方へ向く。

「さ〜て、覚悟しなさいよ!!」

『ブオンッ!!』

物凄い音を立てながら、使徒へと一直線に飛んでいく。
使徒を貫くと、そのまま飛んで行ってしまった。

「使徒、殲滅しました!!」

発令所内が活気付く。
その中で浮かない顔をする者が一人。

「ねぇ、シンジ?」

「ん、何?マナ。」

「あの棒の事知ってる?」

「あれ?あれはね、『ロンギヌスの槍』って言うんだって。」

「どうして知ってるの?」

「それは母さんから聞いたんだよ。」

「ふうん。」

そんな中、3人が帰ってきた。

「シンジ〜!!」(がばっ!)

「ア、アスカ?」

「アタシ、頑張ったよ。頑張ったよね?」

LCLで濡れたまま抱きつかれたのだが、シンジは気にすることなく抱きしめる。

「頑張ったね、アスカ・・・。」

「シンジ・・・。」

「あのね〜2人共、いちゃつくなら他でやってくれないかしら?」

ミサトのツッコミに「パッ」と離れる2人。

「まったく、それにしても頑張ったわね。
 後の事は私達に任せて、今日は帰っていいわよ。」

ミサトの許可も出たため、子供達は家へと帰った。

「さて、夕飯の続きを食べなきゃね。」

「シンジ、デザートある?」

アスカがシンジと腕を組みながら聞いてくる。

「アイスがあるから、一緒に食べようね。」

「うん!!」



「アスカ、変わったわ・・・。」

「そうだね、あれが本当の彼女なんだよ。」

レイとカヲルが並びながら歩いていた。
その後ろを歩く2人は・・・。

「お姉様〜、今日は私が一晩慰めてあげますね。」

「はい?」

「シンジさんに振られてしまったんですもんね。」

そう言って、マナと腕を組むアスナ。

「ちょっと、離してくれる?」

「首、痛かったな〜。」

さすがに悪いと思っていたマナはしぶしぶ了承する事にした。

「・・・もう、家に着くまでだからね。」

「はい!!」

「あれは?」

その様子を聞いていたレイはカヲルに尋ねた。

「ノーコメント・・・で、いきたいんだけど。」

「・・・そうね、マナさんの行く末が間違わない様に祈るわ。」

こうして、家へと帰っていく。



(あと1体、その次の使徒は・・・。)

使徒への勝利も、カヲルには重くのしかかるものでしかなかった。



夕食後。
シンジの部屋でアスカはアイスを食べていた。

「ねぇ、シンジ。次の使徒はどんなヤツなの?」

アスカは知らない、その時は失踪&入院中であったから。

「変なヤツだよ。大丈夫、僕が倒すから。」

「ダメよ、シンジはすぐそうなるんだから。」

アスカはアイスを机に置くと、シンジを抱きしめた。
シンジもアスカに手を回す。

「1人で抱え込まないでよ、アタシだっているんだから、ね?」

「ありがとう、アスカ。」

「シンジ、今日一緒に寝てもいい?」

2人の体が離れると、アスカが俯きながらボソッと言った。

「そ、それは・・・。」

「ダメ?」

上目遣いのアスカの表情の可愛さに、シンジは黙って首を縦に振るしか出来なかった。



「それじゃ、電気消すよ。」

アスカのいるベッドに入っていくシンジ。

「それじゃ、おやすみ・・・アスカ。」

「うん・・・おやすみ、シンジ。」

アスカは満足げな表情で眠りについたのだが・・・。

(眠れないよ、起きてる状態から一緒に寝た事無いんだから〜。)

シンジはその日、寝不足を覚悟したのであった。







<後書き>
ども、ウエッキーです。
さて、終わりが近くなってきました。
早速次のアルサミエルはどうしようか悩んでます、登場はもう少し先の予定ですけどね。
今回は少しゴチャゴチャしてるんで、次回からはもう少しスマートに行きたいと思います、はい。<無理かも(−−;

アスカはこれが本当の『アスカ』だと思います。
アスナはカヲルがちょっと性格に手を加えちゃってる『アスカ』でした。
強気で勝気で生意気、だけど好きな人には、べったり甘えて、素直でみたいな。
かなり妄想入ってますが、環境が特殊だったために形成された『プライドが高く、打たれ弱い』性格。
もし、母親の愛を一心に受けた上でEVAのパイロットになったのなら、『プライドは高いが優しく、好きな人には甘え上手』
こんな性格になっていたのかもしれませんね。
・・・まあ、私の想像でしかありませんけど。(^^;



<次回予告>
使徒の数は減っていくものの、カヲルの表情は重くなるばかり。
彼の悩みを聞こうと、シンジは色々画策するものの功を奏さない。
そんな中、またカヲルが倒れてしまう。

次回、The Restart Of Evangelion

       第22話「悩み事の重さ」

を、お送りしまーす。


アスカ:うわははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!!!!(^○^V

マナ:い、いきなり何よっ。(@@)

アスカ:宿敵を倒したわよぉぉぉぉっ!!! シンジはアタシのものよぉぉぉぉっ!!!(^○^V

マナ:嬉しいのね。(TT)

アスカ:でかしたぁぁぁっ! ウエッキーっ!!!!! アンタは偉いわっ!!!!!

マナ:前回と言ってることが、180度ね。(TT)

アスカ:全てはアタシの想いのままよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!(^○^V

マナ:ふんっ。こなったら、危ない世界に走ってやるんだからぁぁぁっ!

アスカ:あっそ。外伝でも、そうするのねっ。

マナ:あ、あれは別ぅ。(*^^*)
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ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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