『第3新東京市国際空港』 そこに2つの人影があった。 1つは綺麗な金髪の女性。もう1つは赤毛で、頭に赤い飾りがある女の子だ。 「あれから半年、早いわね・・・。」 赤毛の女の子は物憂げな表情で呟いた。 金髪の女性は時計に目をやる、ちょうど迎えらしき車が現れた。 「それじゃあ、私はネルフに行かなきゃならないから。 終わったら連絡するわね。」 「は〜い。じゃあ、アタシはこの辺ぶらぶらしてるわ。」 「はいはい、充分気をつけるのよ。」 それだけ言うと、金髪の女性は迎えに来ていた車に乗りこんで行った。 「子供扱いしなくてもいいのに・・・もう。」 車が走っていった方向に悪態をつく。 当然、相手には聞こえない。 「さあて・・・と。」 赤毛の少女はポケットから1つの鍵を取り出した。 (あんな別れ方をしてなんだけど、今から会いに行くわよ!) 一頻り鍵を見つめた後、ポケットにしまう。 そして、近くに止まっていたタクシーに乗りこんだ。 The Restart Of Evangelion 番外編11「突然の来訪者」〜LMS〜 『碇邸』 ここではシンジとマナがリビングでソファーに座って話をしていた。 「ねぇ、シンジ?」 「何、マナ?」 「結婚式は神前と教会、どっちがいい?」 「そうだね・・・、教会かな。」 「どうして?」 「だって、ウエディングドレス着てるマナを見たいんだ。」 「もう、そんな事だったら・・・。ドレスを買って、毎日着てあげるね♪」 ここでシンジの顔から笑顔が消えた。 「さ、さすがに毎日ってのはどうかな〜?」 「だって、見たいって言ったじゃない。まさか、嘘なの?」 マナの顔からも笑顔が消え、今にも泣きそうな表情に変わった。 「ち、違うよ!そうじゃなくて、毎日着てたらさ、ありがたみが無くなるじゃないか・・・。」 「・・・それもそうね。ごめんね、シンジ。」 「いいんだよ、わかってくれれば。」 そのままシンジはマナの肩に手を回し、マナはシンジの肩に頭を預けた。 そんな甘い時間を過ごす中、家から100mほど離れた所にタクシーが止まった。 そこから出てきたのは赤毛の女の子、周りを警戒しながら碇邸のドアへと近づく。 (鍵を変えるような人達じゃないわね・・・。) ポケットから先ほどの鍵を取り出すと、ドアの鍵穴に指しこみ、回した。 『カチャ・・・。』 (やっぱりね〜。) 赤毛の女の子は静かにドアを開けると、中へと侵入していった。 (アイツは自分の部屋で勉強でもしてるんじゃないかしら?) そう思いながら、玄関からすぐの場所にあるリビングを覗く。 そこでは・・・。 (な、何してんのよ!!) そこではシンジとマナがソファーに座りながら、抱き合い、キスしてる真っ最中だった。 「もう、シンジっていつもいきなりなんだから・・・。」 「だって、マナが可愛いからつい・・・。」 『いきなり』と言いながらもマナの顔は嫌がってない、むしろ喜んでいた。 もちろん、相手がシンジでの話であるが。 (・・・・・・・。) 赤毛の女の子は呆然としていた。 今の出来事に対して、どう反応をしていいかわからなかった。 「シンジ、もう1回・・・して。」 『チュッ・・・・・』 「ん・・・・・。」 2人の距離が縮まる、そして今度は口内で舌を絡ます『大人のキス』 「な、何してんのよ、アンタ達!!」 「「えっ!?」」 咄嗟に離れるシンジとマナ。 そして、声の主の方へと向いた。 「「アスカ!?」」 赤毛の女の子の名は『惣流=アスカ=ラングレー』 半年前にシンジに別れを告げ、ドイツの大学院に進んだ、元・エヴァンゲリオン弐号機パイロットの1人。 そのアスカは顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えていた。 「何やってんのよ、こんな女と、そ、そんないやらしい事して・・・最低!!」 「こ、こんな女ですって〜・・・。」 「そうよ、この泥棒猫!!」 アスカは処理しきれない出来事に苛立ち、怒りのままに叫んでいた。 マナは『こんな女』・『泥棒猫』呼ばわりされて飛びかかろうとしたが、シンジがそれを遮った。 「アスカ。」 「なによ、この変態!!」 シンジは気にもしないといった表情で、アスカを真っ直ぐ見つめた。 「・・・・・・・。」 「言いたい事があるなら言いなさいよ・・・。」 アスカは負けじと睨み返す。 「・・・半年前、僕を置いてここから出てったはアスカじゃないか。」 「そ、そうよ!だからって、あんな事・・・。」 「関係無いだろ。」 「な、何ですって!!」 アスカが本気で怒り始めた。 その場の空気が固まり、彼女の長い髪が怒気で逆立たんとするような感じがあたりを包む。 「そもそも、何だよ急に。 いきなり入ってきて、僕達の邪魔をして、邪魔をした上に1人で怒って喧嘩吹っかけて、何がしたいんだよ。」 「・・・・・。」 「僕を捨てて、ドイツに帰ったくせに・・・いきなり来て、偉そうにしないでよ!迷惑なんだよ!!」 シンジも押さえが利かなくなったのか、最後は大声で叫んでいた。 目には涙も浮かんでいる。 「アンタは〜!!」 アスカの右手が振りあがった。 シンジは俯いているため、それに気付かない。 『バッチーーーン!!!』 「くっ・・・。」 「邪魔しないでよ、アンタ!!」 頬を打たれたのはマナだった。 シンジの前に立ちはだかると、そのまま叩かれたのだ。 「マナ!!」 シンジが倒れこんだマナの元へと向かう、叩かれた頬は真っ赤になっていた。 「・・・アスカ、貴方がいなくなった後のシンジは大変だったのよ。 人と会ったら逃げ出してしまい、部屋の中に閉じこもる様になったわ。 そんな彼に私は『アスカの代わりでもいいから。』って言ったの。」 「・・・・・・・。」 「それからいつも通りの生活が送れるようになって、彼は告白してくれたのよ。 『僕はマナ、君自身が好きなんだ!!』って。」 「・・・・・・・。」 「もう、シンジの中に貴方はいないのよ。」 「・・・・・・・。」 「気が済んだでしょ?もう帰ってよ、私達の邪魔をしないで!!」 「くっ!!」 『ガチャ!!』 アスカは手に持っていた鍵を床に叩きつけると走り去っていった。 涙を流しながら走っていったが、シンジは気にも止めずにマナについていた。 「シンジ、今なら間に合うよ?」 マナはシンジの視線を避けるとそう言った。 身を引く覚悟は出来てるという事、シンジにとってアスカとの復縁のラストチャンスという意味だろう。 「いいんだよ。僕はマナが好きなんだ、もうマナしか見えないから・・・。」 シンジはそう言ってマナを抱きしめた、マナもそれに答えて背中に手を回す。 アスカ襲来によって、2人の絆はより強いものになった。 『公園』 (アタシが悪いのはわかってるけどさ・・・。) 碇邸を飛び出したアスカはベンチに座っていた。 「・・・それにしても、君はよく買ったね。」 「それくらい普通だと思うわ。」 「そ、そうなのかい?」 「そうよ・・・あら?」 (・・・この声は?) アスカは聞いたことのある声が耳に入ってきた。 不意に顔を上げると、相手もこちらを見ていた。 「アスカ?」 「レイ・・・に、渚?」 「アスカ!」 レイはアスカの座るベンチに駆け寄り、隣に座った。 カヲルはレイの買ったものであろう荷物を両手一杯に持ちながら、ゆっくりと歩いてきた。 「久しぶりね、レイ。」 「そうね。どうしたの、今日は?」 「うん、ママがね・・・。」 アスカは事の顛末を話した。 「・・・ってとこよ。」 「そりゃあ、アスカさんが悪いね。」 手に持った荷物が重そうながらも、苦笑して話に入るカヲルだった。 「わかってるけどさ・・・、あんな態度とらなくてもいいじゃない。」 「貴方は今でもお兄ちゃんが好きなのよ。」 「・・・そうね、嫌いで出ていったわけじゃないもの。」 アスカはいきなり声をかけるレイに驚きながらも答えを返す。 「けど、もう遅かった。」 「そう、マナとくっついてたわ。」 「貴方の居場所はここには無いのよ。」 「えっ!?」 アスカの目が大きく見開く『信じられない。』、そんな表情だった。 「そうだね。君は彼の事を忘れて、新しい恋を探すのがいいと思うよ。」 「ええ。貴方の居場所はドイツなの、ここにはいない方がいいわ・・・。」 「言われなくても、今日帰るわ。最後に聞きたいんだけど・・・。」 アスカは俯きながら、レイに聞いた。 「何?」 「アンタ達って、付き合ってるの?」 「「ええ。」」 アスカは息を一つ吐いて、そこから立ち去ることにした。 「そう、お幸せに。あの2人にもそう言っといて。」 「さよなら。」 「お元気で、アスナさんにもよろしく。」 2人はアスカの姿が見えなくなるまでそこにいた。 『碇邸』 「「ただいま。」」 「「おかえり。」」 レイとカヲルがリビングの前を通りかかると、中から返事が返ってきた。 シンジとマナは寄り添う様に座り、1冊の本を見ていた。 「何、見てるの?」 「パンフだよ、結婚式場の。」 「「結婚!?」」 『ドサドサ・・・。』 サラリと答えたシンジに、レイは目を大きく開き、カヲルは荷物を落としてしまった。 「あの、今すぐじゃなくて、どういうのがあるのか見てただけで・・・。」 「そうそう、年齢的にもまだできないけど、興味があったからなのよ。」 確かに、14歳の子供が『結婚式場のパンフ』を見てるといったら驚く。 それを2人のリアクションで思い出した、シンジとマナは慌てて言い訳をする。 「そ、そうだよね。ぼ、僕は荷物を置いてくるから、ごゆっくりどうぞ。」 「ま、待って、私も行くわ。」 『逃走』 なんとも言えない空気が漂う、レイとカヲルは逃走することでこの場をやり過ごした。 シンジとマナは顔を見合わせた後、再びパンフに目を戻した。 「ウエディングドレスだよね、うん・・・。」 「着物もいいって言うけど・・・。」 「かつらが重いらしいよ、あれって・・・。」 「そうなんだ・・・じゃあ、嫌かな。」 興味があると言うわりには結構真剣である。 「ゴンドラは乗ってみたいかな〜?」 「ええ?僕は嫌だよ・・・恥ずかしいし。」 「・・・早く結婚したいな。」 「なんで?」 シンジはパンフから目を離し、マナの方へ視線を向けた。 「みんなと一緒に生活するのもいいけど、2人っきりって言うのも憧れるの。」 「それはあるかもね。」 「私が朝ご飯作って、シンジを起こすの。もちろん、おはようのキスは忘れないわ。」 「うんうん。」 「2人で朝ご飯食べて、シンジを仕事に送り出すの。ここではいってらっしゃいのキス。」 「・・・うん。」 「シンジは私の愛妻弁当を仕事場で食べる。家へ帰ってくると、私が笑顔でお出迎え。」 「それで、おかえりのキス・・・と。」 「そうそう!一緒にお風呂に入って、夕飯を2人で食べて・・・夜は1つのベッドに2人で寝るの!」 「・・・・・・・。」 「休日はデートしたり、2人で夕飯作ったりとかしたりして〜、きゃあ〜!!」 (新婚の間だけだよ、年取ってからはかなり厳しいよね、それって。) シンジは顔を真っ赤にしながら結婚後の生活を考えるマナに、嬉しく思いながらも少し呆れていた。 「どうしたの、シンジ?」 「ううん。あと4年後かな、早くても・・・。」 「そうね・・・。」 寄り添ったまま2人はソファーに寄りかかる。 (きっと、マナとなら・・・)(きっと、シンジとなら・・・。) ((幸せになれるわ・・・きっとじゃなくて、絶対に。)) 「さてと、夕飯を作ろうかな。」 「私も手伝うわ。」 シンジとマナは立ちあがりキッチンへと向かった。 2人で夕飯を作るその姿は、この先未来でも変わらない姿。 この2人の中を裂ける者は・・・もう、いない。 『第3新東京市国際空港』 母・キョウコからの連絡を受けたアスカはロビーにいた。 キョウコはこっちに向かっている途中。 「あっ、来た来た。」 「ゴメンね、待ったでしょ?」 「ううん、そんな事無いよ。」 いつもの笑顔と違う、キョウコにはわかった。 「・・・何かあったの?」 「何にも無いわ、ただ・・・。」 「ただ?」 「・・・もう、この街には来たくないわ。」 実はこの日、呼ばれたのはキョウコだけであった。 しかし、アスカが『シンジに会いに行きたい。』と強引について来たのだ。 「そう・・・。それじゃ、行きましょうか?」 「・・・何も聞かないの?」 「話してくれないでしょ、聞いても。」 「うん・・・。」 「じゃあ、聞かない。」 アスカは母の心遣いに涙が出そうになった。 しかし、それをこらえて、受付カウンターに向かって歩き始めた。 「ママ、早く早く〜。」 「はいはい。」 (さようなら・・・シンジ、2度と会うことは無いわ。) こうして、アスカとキョウコを乗せた飛行機はドイツへと飛び立った。 しかし、数年後。 彼女はまたこの地を訪れる事になるのだが、それはまた別の話。 <後書き> ども、ウエッキーです。 最近書いた作品は全て短いです、本編も番外編もです。 番外編はそれでもいいんですけど、本編はまずいかなと思ってます。 LMSで久しぶりにアスカが出てきました。 本編でアスカに軍配が上がったように、ここではマナに軍配が上がりました。 それにしても・・・ここでのアスカの扱いは悪い気がします。(−−; 自分で書きながらそうは思うものの、そういう世界なんでいいかなと自分を納得させてます。 さて、次回はあるのかな? 「LRSもやりたいな〜。」と、思ってるウエッキーでした。
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