『マナの部屋』

夜もふけ、家中が寝静まった頃。
部屋の主であるマナは眠っていなかった、と言うより眠れなかった。

(鍵かけたのに入ってくるなんて・・・真剣なのね。)

横には自分に抱きつきながら眠るのはアスナ。
その寝顔は可愛く、幸せ一杯の表情。

いい夢を見ているのだろう、口元には涎が出ていた。

(どんな夢見てるのかしら?)

マナはティッシュを取ると、アスナの口元を拭った。
するとアスナの顔は紅潮し、体がむずむずと動き始めるではないか。

「ヒッ!!」
(何のなのよ、夢の中で何してるのよ、この子は〜!!)

絡めているマナの腕や足に、「これでもか」と体をこすり付けてくる。

(!! まさか、この子の見てる夢って・・・。)



<マナの想像するアスナの夢>

私とお姉様は今みたいにベッドにいるの。
2人共裸で寄り添ってて、お互いの体温を感じられる距離にいるわ・・・。

『お姉様〜私、私、我慢できないんです。』

『ダ・メ・よ、私達にそういうのはまだ早いわ。』

私が我慢できなくなってても、お姉様は『おあずけ』ばっかり。
でも、『おあずけ』させる時の顔がとっても色っぽくて、余計に私は我慢できなくなっちゃうの・・・。

『でも、でも、もうダメなんです!
 お姉様のことを考えるだけで身体が熱くなって・・・。』

『うふふ。私と一つになりたいのね、アスナ。』

こうやって、お姉様が私の方を見て囁く。
とても甘い声で、それだけで私・・・・。

『そうなんです!お姉様と一つになりたいんです、お姉様〜!!』

でも、我慢できない。
これだけ焦らされて、声だけじゃ我慢できない!!

『わかったわ。私と気持ちよくなりましょ・・・アスナ。』

『お姉様、愛してます!!』

『私もよ、アスナ。』

こうして、私達は一つになるために気持ちいい事をするの。
私がお姉様を、お姉様が私を、お互いに一つになれるように愛し合う・・・。

『お姉様。私、私、もうダメです〜。』

『私も・・・。いっしょに、ね?』

私は黙って頷くと、お姉様と一気に駆け上がるの。

『『ああぁぁぁ〜!!』』

この瞬間、一つになった瞬間、現実でも味わってみたい。

『愛してます・・・お姉様。』



頭の中を駆け巡る想像。
マナの意識は一瞬途絶えたかと思うと、心の内で助けを求めるのであった。

(お願い、誰か助けて〜!!渚君、レイちゃん、アスカ、シンジ〜!!)
「・・・フッ。」

そして、口から息を吐いたと同時に意識を失った。



一方のシンジ達はと言えば、ぐっすりと3人で眠っていた。

               



『カヲルの病室』

カヲルは病院で朝を迎えた。

「今日来るよ、シンジ君。」

もちろん、病室にはシンジはいない。
それにユイとキョウコによって『目・耳』はすべて取り外されているので、何を言っても問題無かった。

「前回はレイさんの自爆、今回はどうするんだろうね。
 戦闘に参加できないのが心苦しいよ・・・。」

(心苦しい・・・か。)

自分の内側から声が聞こえてきた。
こんな真似ができるのは『アレ』しかいない。

「アダム・・・。」

(戦闘に参加して、気をやってしまったら困るからね〜、君は。)

「確かにね。それでみんなに迷惑を掛けるのは目に見えてる、情けないと思うよ。」

(・・・すっかり、人間の真似事が上手くなったね。心が傷ついたフリなんかしてさ。)

「何だって・・・。」

口調は平坦で声に勢いが無い、必死で怒りを押さえている様だった。
感情の爆発にも危惧してしまっているのだ。

(今度は感情かい?人間としてもやっていけるのに、因果なもんだね。
 同じような存在であった『綾波レイ』には『碇ユイ』と言う遺伝子提供者がいたからねぇ。
 なんだったら、『碇ゲンドウ』にでも頼んでみるかい、愛しのシンジ君と兄弟になれるよ?)

「兄弟、か。
 それは魅力的だけど、あの中年の遺伝子はいただけないよ。」

(そうかい?
 さて・・・時が来るまで、もう一眠りさせてもらうよ。)

「くっ!!」

カヲルの顔には悔しさがありありと出ていた。
アダムの声はもうしない、感情を爆発させることもできない、彼はそのもどかしさに苦しんだ。

「遺伝子、綾波レイのように遺伝子さえあれば!!・・・綾波レイ!?」

カヲルはそこで気付いた。

(ここはネルフ。歴史の通りなら、ここにはレイさんの『予備』の身体がある・・・それを使えば!)

手元にあったナースコールを鳴らす。
看護婦が状態を聞く前に、カヲルは静かに喋る。

「碇ユイさんを呼んでください・・・お願いします。」





『シンジの部屋』

朝を迎えたこの部屋では、最初に主のシンジが目を覚ました。

(はぁ、狭いよね・・・3人だと。)

目を覚ましたものの、声を立てることもできないし、体を起こす事もできない。
彼と一緒に寝たお姫様達は未だに夢の中なのだ。

(寝顔は可愛いね。起きてる時もまあ、可愛いんだけどさ・・・。)

『AM 6:02』

首だけ動かして時計を見る。
起きて朝食の用意をしたいのだが、起こすのは忍びない。

(どうしたもんかな、起きてもらうにも2人にはまだ早い時間だし・・・。)

レイはいつも6時半、アスカは7時過ぎに起きている。
レイには多少早い程度なのだが、アスカにとっては早過ぎる。

(両方いっしょに起こさないと機嫌悪くなるだろうしな〜、昨日のアスカの事を考えると尚更だよ。)

一瞬、シンジの頭には『レイを起こして、退いてもらってから朝食の用意をする。』という案が思いついた。
しかし、昨日のことを考えるとできない。
実行してしまったら、アスカに何をされるかわかったものではないからだ。

(もう一眠りしようかな、マナに朝食任せてもいいし・・・寝ちゃおう。)

こうして、シンジは眠りにつくのだった。
頼みのマナは気絶してる事も知らずに・・・・・。





『マナの部屋』

あれから数時間が経過し、マナは再起動に成功した。
ゆっくり目を開けると、アスナが顔を覗き込んでいるのが見えた。

「おはようございます、お姉様。」

「お、おはよう、アスナ。」

「どうしたんですか? 顔を真っ赤にして。」

(あんな事考えちゃったから、アスナの顔が見れないよ〜。)

(こんな顔されると、夢の中での事を思い出しちゃいます・・・。)

マナがあんな夢を見た所為で顔を真っ赤にしていると、その顔を見たアスナの方まで真っ赤になった。
・・・アスナが見た夢は『マナと立場が逆』であるだけで、内容はほとんど一緒だった。

「そ、そうだ!朝ご飯の用意しなくちゃ!!」

「手伝います、お姉様。」

「い、いいわ、シャワーでも入ってきたら?」

マナはそう言い残して、逃げるように部屋から出ていった。

(どうかしたのかしら? お姉様・・・。)

「じゃあ、シャワー入ろうかな〜。」

アスナは自分の部屋へ戻り、着替えを取ってくるとバスルームへと向かうのだった。



『キッチン』

マナはキッチンにおいてある自分のエプロンをつけると、朝食を作り始めた。
シンジがいない事が気になったが、今の状態では誰にも会いたくなかった。

(シンジはまだ寝てるのかしら? アスカとレイちゃんの喧嘩に巻き込まれてないといいけど・・・。)

打算的な事を考えないで、純粋にシンジの事を心配しているマナ。
誰にも会いたくなくても、諦めてしまった相手でも、気になる事は気になるのだ。

「お姉様!」

「!! ア、アスナ?」

準備の手を止め、ダイニングの方に目をやる。
シャワーを浴び終えたアスナがそこにいた。

「どうかしたんですか、今日は様子が変ですよ?」

「だ、大丈夫よ。慣れない事をして、疲れたんだと思うわ。」

「そうですか・・・。」
(私と一緒に寝ると疲れるのね、お姉様は。)

マナの言葉に一瞬だけ表情が沈む。
しかし、すぐ笑顔に戻すと、また話し始めた。

「今日はシンジさん遅いですね?」

「うん、アスカとレイちゃんの喧嘩に巻きこまれてるのかしらね。」

「そうかもしれませんね。あの、何か手伝いましょうか?」

そう言いながらアスナは入ってきたものの、すでに朝食は出来上がっていた。

「もう出来たから、運んでもらえる?」

「は〜い!」

「ありがと、私は皆を起こしてくるわ。」

「わかりました!」

マナはエプロンを外すと、ゆっくりとシンジの部屋へと向かう。

「シンジさんって、そんなに格好いいかな?」

アスナの何気ない一言に、誰も答える者はいなかった。



『シンジの部屋』

マナがシンジの部屋の前に着くと、中から言い争う声が聞こえてきた。

『一緒に寝ていいって言ったけど、抱きついていいとまでは言わなかったわよ!!』

『これは不可抗力よ・・・。』

『朝から喧嘩は止めてよ、2人共〜。』

(予想通りとはね。
 行動パターンが分かりすぎるわ、とくにアスカなんて単純だもの。)

実際に本人の目の前で言ったら一騒動起きるのは必至、マナはそれもわかっている。

『コンコン!』

「みんな、朝ご飯出来たから降りてきて〜。」

(ここで、レイちゃんはわからないけど。
 シンジはこれで2人の喧嘩を止めて、3人で部屋出ていく。私を見かけたら「助かったよ。」とか言うわね。
 アスカは「何、シンジの部屋の前に立ってんのよ!!」とか言うわ、気が立ってるから。)

『ほら、朝ご飯出来たって。行こうよ、2人共。』

『・・・しょうがないわね、行くわよ!!』

マナの予想通りの展開。
部屋の外で待ってると、ドアが開いて3人が出てきた。

「おはよう、マナ。 助かったよ、ありがとう。」

「マナ? アンタ何、シンジの部屋の前に立ってんのよ!さっさと下に降りてなさいよ!!」

(予想通り〜!!)

3人はすでに下に降りていたので分からなかったであろう、マナは声を殺して笑っていた。



『ダイニング』

そんなこんなで始まった朝食の時間も過ぎ、子供達はダイニングでコーヒーを飲みながら雑談していた。

「アスナ〜、愛しのお姉様との一夜はどうだったのよ?」

「とっても・・・よかったです。」

夢を思い出したのだろう、アスナもマナも顔が真っ赤であった。

「マナさん、顔が赤いわ。」

「そ、そんな事無いよ!!」

否定してもしょうがないくらいに顔が茹で上がってしまっている。
これでは何を言っても仕方が無い。

「あらあら、何かいやらしい事でもしたんじゃないの〜?」

「そ、そういうアスカはどうだったのよ。」

「アタシ?アタシは心が満たされたわ、好きな人と一緒だったからね〜。」

満足そうな顔で言ったところを見ると、聞いて欲しかった様である。

「レイさんはどうだったんですか?」

「・・・お兄ちゃんの匂いがした、それにとても暖かかったわ。」

こちらもご満悦の表情。

(何言ってるんだよ・・・皆はさ。)

一人後片付けをしているシンジは、話を苦笑しながら聞いていた。
何気ない日常を過ごしている中で電話が鳴った。

『ガチャッ』

「はい、碇ですけど?」

『シンジ?使徒よ、強羅絶対防衛線にて確認したわ。迎えをやったから準備していて頂戴!』

「わかったよ。後、あのさ、カヲル君の容態は?」

『昨日の最後の診察では問題無しよ、じゃあね!!』

「みんな、使徒が現われたって!迎えが来るそうだから準備して!!」

シンジは受話器を置くと、使徒接近中である事を伝えた。
各々が度とに出る格好に着替えて迎えを待つ。

電話から5分後。
迎えが来たため、子供達は本部へと向かった。





『発令所』

プラグスーツに着替えた子供達は、ミサトから現段階での状況を確認していた。

「いい、みんな?使徒は現在、強羅絶対防衛線を突破して大湧谷上空で滞空しているわ。
 攻撃方法とかは不明よ、何もしてこないの。」

「その為、作戦と言える物は無いわ。
 みんなにはエヴァで出撃してもらって、現場の判断に任せます。」

ミサトの話を子供達が真剣に聞いている中で、一言も話さないでいるユイがシンジには気になった。
リツコが何も言わないのはいつもと変わらない事だが、キョウコは姿すらなかった。

(どうして何も言わないんだ、母さんは・・・。)

ユイは何か思い悩んだ表情でいた。

「シンジ君、聞いてるの!?」

「す、すみません!!」
(母さんの事は後回しにしよう・・・。)

シンジはミサトに怒られ、使徒殲滅に集中することにした。

「使徒に対して作戦が無いので、現場の判断に任せます。
 現場で判断できない場合、パイロットの生命に関わる場合、判断に困る場合はこちらで指示を出します。
 戦闘の指揮はシンジ君、貴方に任せるわ、いいわね?」

「は、はい、わかりました!!」

「・・・って話をしていたの。ちゃんとして頂戴。」

「すいません・・・。」

「それではみんな、出撃準備よ!!」

「「「「「はい!!」」」」」

子供達は発令所を出て、ケイジへと向かった。




「各機、パイロットの搭乗を確認!出撃準備、完了です!!」

「使徒の状況は?」

「未だに大湧谷上空に滞空しています。」

「シンクロ率の方は?」

「はい。シンジ君が100%、レイちゃんは74.1%、マナちゃんは63.9%、惣流姉妹は85.2%です。」

メインオペレータへの状況確認・その報告が終わり、ミサトは大きく息を吸った。

「エヴァンゲリオン、発進!!!」



地上へと打ち出されたエヴァ各機に、シンジが早速指示を出す。

「何をしてくるか分からないから、各機警戒しながら接近するよ?」

「「「「了解!」」」」

(レイは自爆するしかなかった。
 けど、今回はそんな事しないで殲滅してやる、絶対に!!)

こうして、第16使徒戦が始まった。









                     The Restart Of Evangelion

                        第23話 「第16使徒・アルサミエル」







『大湧谷』

シンジ達が近づいても使徒に動きは無かった、輪っかの状態で滞空していた。
特に隠れているわけではないが、使徒にとっての射程距離外なのであろう。

「僕が初めに斬り込むよ。
 アスカはそれに続いて。レイとマナは援護してくれる?」

「わかったわ。」

「任せて、お兄ちゃん。」

「やってみるわ。」

シンジは3人の返事を聞くと、声を上げながら使徒へと斬り込んだ。

「うおおおおおおお!!!!!!!」

手には『マゴロク』を持ちながら突進する。

『シュバッ!!・・・・・チャキン!』

抜刀してで使徒に攻撃を食らわせ、そのまま通りすぎ、刀を納める。

(手応えあり!!)

シンジには斬った感触があった。
これで終わったと思っていたシンジに、アスカの叫ぶ声が聞こえた。

「シンジ、後ろ!まだ終わってないわ!!」

「えっ!?」

振り向いた瞬間、棒状に変化して初号機に攻撃を仕掛けてきた。
咄嗟に刀を放って、手でガードする。

「お兄ちゃん、ダメ!!」

(あっ、しまった・・・。)

レイの声が聞こえた時には遅かった。
アルサミエルはガードした手に取り付き、融合を始めたのだ。

前回はこの時にレイが自爆した。

「くっ・・・あっ・・・あああっ!!」


『初号機、使徒により侵食されています!このままでは危険です!!』

発令所ではミサトが苦い顔をしながら、マヤの報告を耳に入れていた。

『アスカ!初号機と使徒のくっついてる部分を切って!!』

「わかったわ!」

アスカは『スマッシュホーク』を構えると一気に駆け出した。

「シンジから離れなさいよ、このー!!」

使徒の手前で飛びあがり、落下する勢いを加えて斧を振り下ろす。

『ブオンッ!!・・・・・ズバァッ!!』

『ナイス!アスカ〜。』

「まっ、ざっとこんなもんよ。」

使徒と初号機を切り離す事に成功したアスカは、体勢をすぐに立て直した。
シンジの二の舞を防ぐためである。

『シンジ君、大丈夫?』

「なんとか。・・・融合した使徒の部分は溶けてしまったみたいです。」

『はい、初号機に使徒の反応はありません。』

マヤの報告を聞いて、ミサトは指示を出す。

『接近戦は避けて、こちらでも何か考えてみるから。』

「わかりました。」

ミサトの指示通り、シンジとアスカはその場を離れる。
使徒はそのまま動かず、輪っか状態に変わると滞空していた。



(こんな時にあの3人はどこにいるのよ!!)

ミサトは『何か考える』と言ったものの、頼りになる三賢者は姿を消していた。

「ユイさん達は戦闘開始直後、どこか行ってしまいましたよ。」

「場所はわかる?」

「探してみます・・・。」

青葉はMagiを使って、三賢者を探してみるが見つからなかった。

「・・・わかりませんね。」

(Magiでも探せない所って・・・。)

ミサトは考えてそれらしい所を頭に思い浮かべるが、結局わからなかった。



『セントラルドグマ』

ユイとリツコはここにいた。
ユイはここに来るのは本日2回目である。
巨大な水槽に浮かぶレイの体を見ながら、先ほど来た時の事を思い出していた。





『カヲルの病室』

『コンコン』

「入るわよ、渚君。」

『どうぞ。』

呼ばれたユイは中へと入ると、ベッドの上で半身起こしたカヲルが迎えた。

「呼び出してしまってすいません。」

「構わないけど、どうかしたの?」

「こちらに座ってください、立ち話でする内容でもないので。」

すでに用意されていた椅子にユイは座り、カヲルの方へ向いた。

「で、話って言うのは?」

「はい、結論から言います。
 セントラルドグマにあるレイさんの体を使って、僕の体を造って欲しいのです。」

「なっ!!」

ユイの目が大きく見開かれる、流石の彼女も驚いた。

「・・・それって、どういう事なの?」

「今日、16番目の使徒が現われます。
 次は17番目、前回では僕ですね。
 ネルフにチルドレンとして潜入し、サードインパクトを起こすつもりでしたが・・・。」

「・・・地下にあったのはリリス、貴方はシンジによって殲滅されてるわね。」

「そうです。
 それからいろんな事があって、サードインパクトが発生。
 僕はアダム、レイさんはリリスとなった。」

「・・・依代となったシンジ、シンジが願ったためにアスカちゃんの2人が生き残って、貴方達がこの時代に戻した。」

「ええ、彼らの願いでしたから。
 シンジ君はリリスとなった綾波レイが、アスカさんとレイさんは僕が戻したんです。
 アスカさんを戻した時に、失敗したためアスナさんが生まれたんです。」

「それはいいとして、今の話と貴方の体はどういう関係なの?」

ユイは使徒が来ることを言われた為、一刻も早く理由が聞きたかった。

「この時代に戻ってくる時、シンジ君は『知識』と『力』を得ました。
 貴方も知っての通り、その『力』が無くなりレイさんは『人』に、貴方はシンジくんから『力』を受け取り、使って復活した。」

「ええ、その通りよ。」

「僕も『人』になりたかった。
 同様の方法を使って、キョウコさんを復活させましたが・・・。」

「・・・失敗した。
 それが原因なのか、貴方はよく倒れるようになってしまった。」

復活させなければ倒れるようにならなかったのかは不明である。
これは結果論であって、復活させなくても倒れる様になってたのかもしれないのだ。

「そして、僕の中にいる『アダム』が目を覚ましました。」

「!!」

これにはユイも驚く。
この時代に『アダム』が2体いることになり、カヲルがサードインパクトを起こせると言う事なのだ。

「僕は『力』を使いきれなかったんです。
 この体は検知されない程度の微弱なATフィールドで形を保っています。
 レイさんのように『人間の遺伝子』があれば、上手くいったのかもしれませんが・・・。」

「だから、レイの体を使って、貴方の体を造って欲しいわけね。」

「ええ、この方法で上手く行くとも限りません。
 それに・・・レイさんの体は処分しなければならないでしょう?」

「それはわかってるわ。
 ・・・早速やってみる事にするわね。」

「お願いします。」

ユイは椅子から立ち上がり、病室から出ていった。

(『アダム』が何かを企んでいるんです、早くお願いします・・・。)

カヲルは俯き、悲しげな表情を浮かべていた。



その後、キョウコを呼び出して事の顛末を話してセントラルドグマに行き、レイの体を1つ運び出したのだった。



『セントラルドグマ』

水槽の前。
ユイの隣に立つリツコの手にはリモコンが握られている。

「リッちゃん、もうこれは要らないわよね。」

「ええ、遅かれ早かれ処分するつもりでした・・・。」

『ピッ!』

短い機械音が鳴ると、水槽内のレイの体が崩れ、溶けていった。

「これでいいのよ、もう必要の無い物だもの・・・。」

「本当にすいませんでした。」

ユイの方を向いて、リツコは深深と頭を下げた。

「いいのよ、頭を上げて頂戴。
 悪いのはあの人だもの、貴方は言われたからやってただけなんだから。」

リツコは頭を上げ、ユイを見る。
そこにはやさしい顔をしたユイが自分を見つめていた。

「さっ、リッちゃんは戻っててくれる。
 私は少しやらなければ行けないことがあるから。」

「お手伝いますよ。」

「いいのよ、ミッちゃんが困ってると思うから行ってあげて。」

「・・・わかりました。」

リツコはユイに頭をもう1度下げてから、発令所へと戻っていった。

(キョウコが怒ってるわね、きっと。)

現在、キョウコはユイの研究室にてカヲルの体造りをしている。
運び込んでからずっと一人でやらせているのだ、機嫌が悪くなっていてもおかしくない。

(どうやってご機嫌取ろうかしら・・・。)

ユイはそんな事を考えながら、セントラルドグマを後にした。




『大湧谷』

一方、こちらでは睨み合いが続いていた。
レイとマナによる射撃が行われたが効果は無し。
撃ち抜いたとしても、すぐに再生してしまうのだ。

(コアの位置がわかれば何とかなるのに・・・。)

シンジはイライラしていた。
使徒を倒したいのだが、効果的な方法が思いつかないのだ。
それは発令所にいる、ミサトも同様だった。

(どうすればいいのよ、三賢者の方々がいれば何とかなるかもしれないのに・・・。)

「ミサトっ!状況は?」

「リツコ〜!!」

この状況下でのリツコの登場はミサトにとってありがたかった。
嬉しさのあまり、力一杯抱きしめてしまっていた。

『ちょ、ちょっと、ミサト・・・。』

『助かったわよ〜、使徒に対して効果的な作戦が思いつかなかったのよ〜。』

『わかった、わかったから離れて頂戴。』

『あっ、ごめんなさい。』

リツコはマヤに近づき、状況を確認する。

『嫉妬した?』

『・・・・・・・。』

『そんな顔しないの、帰ったらたっぷり可愛がってあげるわ。』

『・・・はい♪』

『それじゃ、状況を教えて頂戴。』

『・・・(状況報告中)・・・』

状況を報告している間、マヤの顔が笑顔だったのは言うまでもない。



『・・・なるほどね。シンジ君、聞こえるかしら?』

「なんでしょう、リツコさん。」

『攻撃を仕掛けないで、使徒に接近して頂戴。」

『リツコ!!』

これにはミサトが納得いかなかった。
いきなり危険な目に会わせようとしているのだ、非難するような声を上げる。

『考え通りなら、問題無いわ。シンジ君、お願いね』

「・・・わかりました。」

「「シンジ!!」」

「お兄ちゃん・・・。」

「大丈夫だよ。アスカ、さっきみたいになったら助けてね。」

「わかったわ。でも、気をつけなさいよ。」

シンジは笑顔でアスカに答えると、アルサミエルに向かってゆっくり近づいていった。

接近して、射程距離内に入った。
何とリツコの予想通り、輪っかの状態のまま滞空しているではないか。

『アスカ。シンジ君同様、ゆっくり近づいて頂戴。』

「・・・わかったわ。」

『スマッシュホーク』を地面に静かに置くと、ゆっくりと接近していく。

『次はレイ、そしてマナよ。いいわね?』

「「はい。」」

武器を地面に静かにおいて、静かに接近する。
接近し終わると、アルサミエルを円形に囲んでいる状態になった。

『各機、手を繋いで、ATフィールドを展開して。』

「「「「はい!」」」」

リツコの指示通り、手を繋いでATフィールドを展開する。

『そのまま輪を狭くしていって、押しつぶすようにして。』

「「「「はい!」」」」

1歩、1歩、使徒の方へと歩き、形成している輪の大きさを狭くしていく。
ギリギリの距離になって、アルサミエルはもがき始めるがすでに遅かった。

『ぷちっ!』

そんな音がしたと思うと、アルサミエルは溶けて消えてしまった。

『パターン青、消失!使徒の殲滅を確認しました!!』

青葉の報告を聞き、発令所内は作戦成功を喜ぶ声で沸き立った。



(私、生きてる、生きてるのね・・・。)

零号機の中で静かに涙を流すレイ。
それは通信機能を全てオフにしているので、誰もわからなかった。







<後書き>
ども、ウエッキーです。

いや〜、中々書けないもんです。
これを書くのにも時間がかかってしまいましたが、読みにくくなってしまいました。
場面があちこち飛びますが、それは今回ばかりは仕方が無いと、ご理解の程をお願いします。m(_ _)m

カヲルが何やら動きを始めましたね。
物語も後半戦の半ばにさしかかって来ました、シリアスな場面が増えていくんじゃないかと思ってます。
でも、甘い所も楽しい所も書いていきたいな〜、と思った今日この頃です。



<次回予告>
カヲルの体造りをする、ユイとキョウコ。
自分が何かをしてしまうんじゃないか、と不安なカヲル。

そんなシリアスな面々と打って変わって、いちゃいちゃしているシンジとアスカ。
アスナとマナもより親密関係になったり?と、どうなる事やら。
そんでもって、レイは?

次回、The Restart Of Evangelion

       第24話 「2人目のシ者 前編」

を、お送りしまーす。


マナ:わ、わ、わ、わたしのイメージがぁぁっ!(TOT)

アスカ:夢には願望が出るって言うわよぉ?

マナ:ちがうもんっ! そんな願望ないもんっ!(TOT)

アスカ:そのわりに、顔真っ赤にしちゃってさ。(^^v

マナ:いやぁぁぁぁっ! ちがーうっ! わたしはそんなんじゃなーいっ!

アスカ:アスナをあげるから、かわりに帰りパフェおごってよ。

マナ:なんでおごんなくちゃいけないのよっ!

アスカ:マナがどんな夢見てたか、アスナに言っちゃおっかなぁ〜?

マナ:やめてぇぇぇぇぇぇぇっ!!!(TOT)

アスカ:フルーツいっぱいのチョコレートパフェがいいなぁ。

マナ:うぅぅぅぅぅ・・・。わ、わかったわよ。

アスカ:明日から、帰り道が楽しみねぇ。(^O^/

マナ:しくしくしくしくしく。(TOT)
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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