「・・・初号機、ケージに到着。」

絞り出すような声でのマヤの報告。
モニターにはエントリープラグがイジェクトされ、シンジが出てくる所が映っていた。







                  The Restart Of Evangelion

                          第25話 「告白」
                     







それから15分ほどして、着替えたシンジが発令所へとやってきた。
そこには、リツコと冬月に見られているアスカ、今にも何かしそうな雰囲気のミサト、居心地の悪さを感じている職員達がいた。

「シンジ・・・。」

少しバツの悪そうな顔をしながら、アスカはシンジに寄り添った。
少し離れた所から、レイ・ユイ・キョウコの3人が不安な表情を浮かべていた。

「どこから、話したらいいですか?」

「じゃ、私からいいかしら?」

「どうぞ。」

リツコは視線を送ると、無言で冬月は頷いた。

「まず最初にお疲れ様、シンジ君。
 何故、アスカは彼の事をアダムと言ったのかしら?
 その後の発言から、貴方もその事を知っていたみたいだけど?」

「それに、君はどこまで知っているのかね?
 知ってる事はそれだけでは無さそうだが。」

リツコに続いて、冬月も言葉を付け足す。
アスカを片手で抱きしめると、シンジは答え始めた。

「まず、母さん達が言った「誘拐された」と言う事は嘘です。
 そんな事は無かったし、カヲル君は元々はチルドレンでもありません。」

「「!!」」

発言の内容に場がどよめいた。
気にする事も無く、シンジは続ける。

「さっきまで戦っていたのが『渚カヲル』であり、『第17使徒・タブリス』
 今まで僕達といたのも『渚カヲル』であり、『第1使徒・アダム』です。」

「・・・それって、どうなってるの?」

機嫌の悪い声でミサトが聞いた。
今すぐ知りたい内容の話ではないが、気になったのであろう。

「言っても信じてもらえないでしょうが、僕・レイ・カヲル君・アスカは未来から還ってきたんです。」

「!! そんなまさか・・・。」

信じられないのだろうが、リツコの表情は驚愕していた。

「僕達がいた時代ではサードインパクトが発生しました。
 生き残った人間は僕とアスカの2人だけ。当時のカヲル君はアダムとなり、レイはリリスと融合したんだ。」

「・・・そこで、アダムとリリスの力を借りて戻ってきたと言うのか?」

「そうだよ。ちなみに、父さんは母さんには会えなかった。」

「・・そうか、失敗に終わる計画だったか。」

ゲンドウはそれだけが気になったのか、答えを聞くと黙ってしまった。
シンジは話を続けようとすると、発令所のドアが開いた。

「ユイさん、終わったんで来ましたけど。」

「カヲル君!!」

そこに現れたのは『渚カヲル』
体調は完全ではないのであろう、足元がふらついていた。

「何だか重苦しい雰囲気だけど?」

「実は・・・。」

周りを見渡すと、全員がカヲルを凝視している。
シンジは事の顛末をカヲルに話した。

「なるほど、続きは僕が話したほうがよさそうだね。」

「それじゃあ、お願いするね。」

カヲルは深呼吸をしてから、話を始めた。

「先日、僕は病室でもう一人の僕、タブリスに襲われました。
 その時にアダムは僕から出ていき、タブリスに取り付いたんです。」

「証拠が無いわ、貴方がアダムだと言う事は聞いてるのよ。」

未来から来たと言う事に加え、今の自分はアダムで無いと言う。
リツコには到底信じられない事である。

「赤木博士の言う通りです、そこで確かめてみたらどうですか?」

カヲルはユイとキョウコを見る。
2人は顔を見合わせた後、ユイが口を開いた。

「・・・そうね、それがいいわね。」

「ユイさん!」

リツコの抗議の声を一蹴する。

「リッちゃん、彼が何者なのか調べてから意見しなさい、いいわね?」

「は、はい・・・。」

こうして、ユイ達は診療室へ向かった。



『マヤちゃん、ちゃんと映ってるかしら?』

「はい、問題ありません。」

監視カメラに向かって確認する。
その後ろでは、リツコがカヲルを調べる準備をしていた。

『じゃ、リッちゃん。』

『はい、始めます。』

リツコはカヲルの体を精密検査していく。

『・・・そんな!!』

「赤木博士、報告をしたまえ。」

ゲンドウの声が聞こえたのか、リツコは唾を飲みこみ、報告を始めた。

『は、はい。アダムの疑いがある渚カヲルの検査が終わりました。
 ・・・彼は『人』であり、コアはもちろんの事、アダムの因子がありませんでした。』

「レイと同じ、と言うことか?」

『はい・・・。』

レイにも同様の事があり、彼女の場合はリリスの因子であった。

「しかし、アダムであったのだろう?
 何故、その彼が人間になっているのかね?」

『私がお答えしますわ、冬月先生。』

ユイがモニターに映った。
リツコとキョウコは後片付けを始めていた。

『彼は確かに使徒でした。
 アダムが出ていったとしてもコアは残ってるのですが、レイの体を使いました。』

『「「!!」」』

ゲンドウ、冬月、リツコの3人、それと職員達も驚いていた。
一気に視線が集まったレイは俯いてしまう。

「・・・私は造られた存在だから、リリスとなるために。」

「レイ・・・。」

アスカはシンジから離れると、レイをぎゅっと抱きしめた。

『レイも渚君も経緯はどうであれ、人間の遺伝子を持ってます。
 その点だけで充分でしょう、彼らは私達と同じ『人』なのです。』

「しかしだな、ユイ君・・・。」

『いいかげんにしてください!!』

何か言おうとする冬月の言葉を遮って、ユイが叫んだ。
これには冬月以外の職員達が驚いた。

『レイを造った時点で、貴方達に何か言われるのは心外です!
 今のレイは認めたんでしょう?彼も同じなんです!』

「・・・冬月、何も言うな。ユイの言う通りだ。」

「しかし・・・。」

何か言いたげな冬月をゲンドウは睨んだ。

「・・・わかった。ユイ君、すまなかった。」

『こちらこそ、つい感情的になってしまって・・・。』

お互い、モニター越しに頭を下げた。
片づけが終わったキョウコが話を続ける。

『レイちゃんの体はもう処分させていただきました、もういらないでしょう。』
 
「・・・・・・・。」

事情を知らない職員達はレイの方を見ようとはしない。
『造られた』と言うのが引っかかってしまったのである。

『彼女も被害者なのよ、狂った大人達のね。
 だから、変な目で見ないで上げて頂戴・・・。』

「レイちゃんは私の友達だよ!」

マナがレイの腕を取って、大きな声で言った。

「マナさん・・・。」

「だって、レイちゃんはレイちゃんだもん。」

「そうですよ!」

そう言ったのはアスナ、絡めているのはマナの腕だが。

「戦ってきたんです、皆の為に。
 サポートだろうが、後方支援だろうが、戦ってきたんです。
 それを、安全な所に居たくせに好き勝手なこと言う権利は貴方達に無いんです!」

「アスナさん・・・。」

職員達は視線を更に逸らしてしまう。
仮にEVAに誰でも乗れるとしても、自分達は絶対に乗らないだろう。

『パンパン!!』

手を叩いたのはミサトであった。

「子供達の言う通りよ、私達には彼らに何も言えない。
 それに2人共人間なんでしょ?
 使徒みたいにATフィールドが張れるとか、そんな事出来ないんでしょ?」

「「(コクン)」」

カヲルとレイは黙って頷いた。

「だったらいいじゃない、何か言ってる人達は言わせておけば。
 わかってほしい人達はわかってるんだから。」

『ミッちゃん・・・。』

「・・・この話はここで終了する。
 彼らの事で何か言う者がいたら、相応の処分を与える。」

(あなた・・・。)

(父さん、ありがとう・・・。)

職員達は黙ってそれに頷いた。
ユイとシンジは声に出さずに礼を言った。





「じゃあ、シンジ君。セカンドインパクトの話をお願いできるかしら?」

「わかりました。」

ミサトに声をかけられ、シンジはゲンドウに視線を送る。
ゲンドウは何の反応もしなかった。

「ここにいる人達なら知ってますよね?
 隕石が落ちたと言う説は真っ赤な嘘です、これはアダムの言った『組織』の連中が流したものです。」

「そうだったの!?」

反応したのはマナだけである。

「シンジが説明するから黙ってなさいよ。」

「ご、ごめんなさい。」

アスカは声を潜めて注意をした、マナは素直に謝ると口を閉じた。

「南極で発見されたアダムに、人間が不用意に接触したために起こった事なんです。
 その背後にいる組織・・・その名がゼーレ。」

「ゼーレ・・・。」

「ここからは、私が話そう。」

「父さん!?」

シンジが驚いた声を上げるが、ゲンドウは気にせず話し始めた。

「・・・ゼーレは国際的秘密組織だ。
 あの日、私は葛城博士の研究成果を奪うために南極に行き、アダムの言う通り、事が起こる前に帰国したのだ。」

「知ってたんですよね?それが起きる日を。」

ゲンドウは黙って頷いた。

『ジャキ!』

ミサトは拳銃を構えると、ゲンドウに照準を合わせる。

「ゼーレと言う組織の連中はどこにいるんです?」

「・・・私にもわからん、彼らとはホログラフでしか会ったことが無い。」

「調べられますか?」

「Magiとユイ達がいるから可能かもしれん。」

銃口を向けたまま、ミサトはユイの映るモニターへ視線を移す。

『全力でやるわ、ありそうな国には心当たりがあるから。』

「どこです、その国は?」

『・・・ドイツよ。』

答えたのはキョウコ、言葉を続ける。

『ゼーレって、ドイツ語で『魂』って意味なの。
 組織自体がそこには無いかもしれないけど、メンバーの1人くらいはいるでしょうね。』

「調べて、いただけるんですか?」

『ええ。』

再度の確認、キョウコは短く答えた。
ミサトはゲンドウに視線を移すと、引き金を引いた。

『カチッ!!』

しかし、ゲンドウは死ななかった。
隣に立っていた冬月も目を丸くして驚いている。

「だ、大丈夫なのか、碇?」

「・・・空砲、何故撃たなかった?」

ミサトの銃口は、まだゲンドウに向けられていた。

「ここには、貴方を撃つ事で傷つく人がいます。
 貴方も父親です、私と同じ思いをさせる事は無いでしょう。」

「・・・・・・・。」

「しかし!許したわけではありません。
 今後シンジ君やユイさん、レイを不幸にしたら実弾で撃ちます!」

ミサトの顔は真剣だった。
ここで否定的な答えを言った瞬間に引き金を引きそうである。

「わかった、約束しよう。」

「って事だから、何かしたら私に言ってきてね、ユイさん・シンジ君・レイ。」

そう言ったミサトは笑顔であった。

『じゃあ、早速だけど罰でも与えてもらおうかしら?』

「そうだね、母さん。父さんは色々やってたみたいだし。」

「・・・ええ、私とも関係を持とうとしたもの。」

いきなりの3人の言葉に、ゲンドウは真っ青になり、ミサトは銃を構える。
その場にいる職員は誰も庇おうとはしない。

「前科とは言え、浮気はいけませんよ、指令。」

「そ、その銃には弾が入ってないのだろう?」

汗を掻きながら、確認する様にミサトに尋ねた。
そして・・・。

『バアンッ!!』

銃口から弾が発射された。
上に向けていた事もあり、誰にも当たる事は無かったが。

「・・・先生、後は頼みます。」

「おい!逃げるな、碇!!」

「逃がしゃしないわよ!!」

逃げ出したゲンドウを追い掛けるミサト、2人は発令所から出て行ってしまった。

「殺す事は無いと思うけど、お仕置きされた方がいいんじゃない?」

「そうね、レイちゃんにまで手を出そうとするなんて・・・最低。」

「女の敵ですよ、本当に。」

アスカ・マナ・アスナに言われ放題のゲンドウ。
それを聞きながら、シンジとユイは苦笑いを浮かべるしかなかった。


「あ〜、今日は皆、ご苦労であった。
 子供達はもう帰ってくれて構わん、ユイ君達は話があるので指令執務室まで来てくれまえ。」

冬月の言葉によって、シンジ達は家へと帰るのだった。



指令執務室。
この広い部屋に冬月・ユイ・キョウコ・リツコ、追いかけっこをしていたゲンドウとミサトもいた。

「話というのはなんですか、冬月先生。」

「うむ。先ほど、ゼーレから緊急の召集があってな。
 『ネルフを敵対組織の一つとする。』、そう言われたのだ。」

「そこで、彼らの送ってきたのが、この時代の『渚カヲル・タブリス』ですね。」

「うむ、これで終わりではないだろう。
 ゼーレと言う後ろ盾が無くなった今、日本政府・戦自が見逃すはずも無い。」

ユイの言葉に冬月は頷き、言葉を続けた。

「じゃあ、ゼーレが『ネルフに攻め込め』みたいに言うのかしら?」

「・・・ゼーレの存在はどの国のトップなら知っている事だ。
 我々が好き勝手な事をしても、抗議程度ですんだのはゼーレの通達があったからこそだ。」

『・・・・・・・。』

ミサトの疑問にゲンドウが答える。
その場にいた全員は、ゼーレの力を知って黙ってしまった。

「・・・EVAはヤツらにとって『計画』を実行するのに必要なものだ。
 そして、ここにあるMagiのオリジナルも手に入れようとするだろう。」

ゲンドウの言葉に、リツコはビクっと反応するが言葉が出ない。

「こうなったら、戦うしかないわね。
 ゼーレの本拠地を潰し、セカンドインパクトの全貌と彼らの悪事、全て告白しないと終わらないわ。」

「でもそんな事したら、貴方の旦那さんが捕まるかもよ。」

ユイにキョウコが意見する。
確かに、ゼーレの下位組織・ネルフの指令、事が終わったら責任の追及もある。

「・・・私は構わん。
 それだけの事はしたのだ、罪を償う気持ちはある。」

「私も同罪だ、こやつに協力しようと思った時から覚悟は出来ているよ。
 当時はこうなるとは思って無かっただろうがね。」

「だったら、戦いましょう。
 後の事はどうであれ、振りかかる火の粉は払わないとね。」

キョウコの言葉に、その場にいた全員は黙って頷くのであった。



碇邸では子供達が食事をしていた。

「やっぱり、シンジ君の料理は好意に値するね。
 僕のお嫁さんになって・・・」

カヲルはシンジの料理を口に運びながら、そんな事を言っていると。

『ドカッ!バキィィィ!!グシャァァァ!!!』

「「いいかげんにしなさい!!」」

「・・・ホモは嫌い。」

こうして、シンジを守護する様に連続攻撃を食らわせる。
仕掛けている者の名はあえて言うまい。

「渚さんも成長しませんね。
 口じゃなくて、態度で示さないといけないですよ。」

その道での先輩(?)のアスナがマイペースで食事をしていた。
シンジはその光景を見て、いつもの様に苦笑いを浮かべるだけであった。



夕食後、シンジとアスカはリビングでお茶を飲んでいた。

「ねぇ、シンジ。」

「ん、何?」

「シンジはさ、皆に話した事・・・後悔してる?」

話すきっかけを作ってしまったのはアスカである。
アダムが含みのある言い方をしていた所為もあるのだが、最後の決め手はアスカだ。

「ううん。終わってから話すつもりはあったし、早いか遅いかだけだよ。」

「よかった・・・。食事中に元気が無いから、気になってたのよ。」

食事中、いつもの様にシンジは皆と会話をしているつもりだったが、アスカだけはいつもと違うと感じていたのだ。

「ゴメン、心配かけたみたいで。」

「いいのよ、アタシの所為なんだから。」

「ありがとう・・・優しいね、アスカは。」

そう言って、シンジはアスカの肩を抱いた。
アスカもシンジの肩に頭を乗せる。


「シンジ、次は量産型が来るのかしら?」

「戦自が本部の占拠にも来ると思う、ここは前と変わらないと思う。」

「でも、大丈夫よね?」

アスカの脳裏にあの時の光景が浮かぶ。
思い出したくも無い、量産型に陵辱されたあの光景が。

「大丈夫だよ。僕は始めから出撃するし、レイ・マナ・カヲル君だっているんだし。」

「そうよね。」

「そ、それに、アスカの事は、僕が守るから。」

そう言って、肩を抱く腕に力を込める。
アスカは少し痛みを感じていたが、その手に自分の手を合わせる。

「アタシも負けないわ、皆がいるから。」

「うん。もう少しだから、頑張ろう。」

アスカは手を離し、シンジの手をどけると部屋の電気を消した。
誰かに見られるのは嫌なのだろう。
そして、シンジと向き合う。

「シンジ・・・。」

「アスカ・・・。」

2人の距離が無くなり、唇が合わさる。
アスカの体は震えていた、やはり恐いのだろう。

(大丈夫、僕が守るよ・・・アスカ。)

震えるアスカの体をしっかり抱きしめると、シンジの背中に手が回ってきた。
2人の影が1つに重なる、その様子を窓から入る月明かりが照らしていた・・・・・。







<後書き>
ども、ウエッキーです。

物語も最終局面に入ってきました。
アスカとシンジも良い雰囲気だし、LASっぽくていい感じです。(^^;
ここからは映画版のストーリー展開になります。
戦自&ゼーレとの戦いですね、上手く書ければいいなぁと考えております。

短いですが、それでわでわでわ〜。



<次回予告>
前の時と照らし合わせると、戦自が武力による本部施設の占拠に来るのはまだ先の事であった。
それまでにゼーレの本拠地を探そうと、Magiを使って『三賢者』が動き始める。
加持もまた、ミサトに自分の行ってきた事全てを語る。
そして、ゲンドウはこの時代の『アダム』を処分しようとするのだが・・・。

次回、The Restart Of Evangelion

         第26話 「大人の仕事」

を、お送りしまーす。


マナ:いよいよ全ての秘密が明らかになって、最終決戦ね。

アスカ:最後の戦いは、みんなの心を1つにしなくちゃ! よっ!

マナ:渚くんも元気んなったし。

アスカ:マナはアスナと仲よさそうだし。

マナ:ちっ、ちっがーーーうっ!

アスカ:違わないわよ。

マナ:とにかく、心を1つに重ねて頑張りましょっ!

アスカ:アスナと?

マナ:ちっがーーーうっ!!!

アスカ:違わないわよ。
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ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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