The Restart Of Evangelion 第26話 「大人の仕事」 『カツカツカツカツ・・・・・・・』 薄暗い通路を足音が響く。 足音の主はターミナルドグマの最深部、リリスの磔てある部屋に向かっていた。 「・・・私の予定ではここで『計画』を実行するのだったな。」 足音の主・碇ゲンドウは色眼鏡を指で押し上げる。 その手をポケットへ入れると、何かを取り出した。 「計画通り、私がこれを取り入れて、私が死ねば処分できるのだろうか?」 『それは認めないわよ。』 「誰だ!!」 『ジャキッ!』 ゲンドウは懐から拳銃を取りだし、構えながら振り返る。 そこには愛する妻・ユイが立っていた。 「物騒ね、しまってくれるかしら?」 「ス、スマン・・・。」 慌てて懐にしまうと、ユイから口を開いた。 「貴方が死ぬ事は許さないわ、私達に家族サービスしてもらわないとね♪」 「・・・私がか?」 「当たり前でしょ。私の夫で、シンジとレイの父親なんだから。」 「そうだったな・・・。」 ゲンドウの表情が柔らかいものへと変わる。 「それに、貴方が死ななくてもそれ、処分できるわよ。」 「本当か?ユイ!!」 ユイの方へ歩み寄り、肩を掴む。 どんな理由にしろ、人は誰しも死にたいとは思わない。 「エヴァと一緒に処分するわ、あれもこの戦いが終われば要らなくなるもの。」 「それはそうだが、どうやって処分するのだ?」 「太陽に射出するわ、それで完全に消滅させられる。」 「・・・そうか、じゃあこれを持っていてくれ。」 ゲンドウは『アダム』をユイに手渡す。 受け取ったユイは白衣のポケットにそれをしまった。 「そろそろ行くわ、ゼーレの本拠地探しもあるから。」 「ああ、頼んだぞ。」 ユイがそこから去って行くが、ゲンドウはそこから動かずにリリスを見上げる。 (もし、自分の『計画』を実行したとしても、ユイは会ってくれなかった気がするな・・・。) 葛城邸では、リビングで向かい合う加持とミサトがいた。 「・・・・・と、俺は3足の草履を履いていたと言うわけさ。」 「日本政府、ネルフ、ゼーレ・・・よく生きてたわね、アンタ。」 「お互いがお互いを信じてないからな、情報収集するヤツが必要だったのさ。」 「・・・・・・・。」 煙草に火をつけ、煙を吹かす。 ミサトから視線を逸らし、遠くを見つめていた。 「もうスパイは廃業したんだ、これからはずっとお前と一緒にいられる。」 「・・・嘘じゃないでしょうね?」 「嘘じゃないさ、終わったら一緒になろう。」 「加持君・・・。」 加持はミサトに近づくと、ゆっくりと抱きしめた。 (ユイさんに言わなくちゃな、仲人したいって言ってたし。) そのころ、三賢者の一人・赤木リツコは大忙しであった。 (ユイさんらしいと言えば、らしいのかしら?) 『重要なスタッフ以外の職員にはここから脱出させなさい、その際にここの事は忘れさせるようにね。』 ユイのこの発言により、リツコは職員を集めて『健康診断』の名の元に催眠術を施していた。 『明日の朝、起きた時にネルフに関する事をすべて忘れる』 と、終わったらこのまま家に帰させているのだ。 「センパイ!もう少しですから、頑張ってくださいね♪」 「終わったらマッサージ、頼むわね。マヤ。」 「は、はい・・・。」 (センパイは良いかもしれないけど、私は疲れちゃうんですよ。) 一体どんなマッサージなのか、答えたマヤの顔は真っ赤であった。 そして、発令所にも人影があった。 『カタカタカタカタカタ・・・・・・・』 キーボードを叩く音が響く中、女性の声がした。 「日向君、そっちはどう?」 「ダメですね・・・うんともすんとも言いませんよ。シゲルは?」 「俺の方もダメっすよ、そう簡単には見つけさせてくれないっすね。」 三賢者の1人、惣流・キョウコ・ツェッペッリンにオペレーターの日向マコト・青葉シゲルの3人がゼーレの本拠地探しに勤しんでいた。 (ドイツのはずなのよ、絶対に・・・。) 『ゼーレ』がドイツ語で『魂』を意味する以上、組織の本拠地とはいかなくても関係組織、関係者がいるはずだと踏んだのだ。 「3人で集中するのもいいですが、他の近隣諸国を調べてみるのもいいんじゃないですか?」 マコトの言う通りである。 キョウコ達が調べ始めて数時間が経っている、それで何も出てこないのだ。 「マコトはそうすればいい、俺はキョウコさんを信じてドイツを探すっすよ。」 「ありがとう、青葉君。 日向君は他の国も探してみてくれる?怪しい所があったら報告して。」 「わかりました。」 『カタカタカタカタカタ・・・・・・・』 激しくキーボードを叩く音が聞こえ始める。 探すと言っても、怪しい所をチェックいるだけで、そこが関連する所かわからない。 それに、調べた結果が『当り』だとしても油断は出来ない。 相手はデータを偽装するなんて事は朝飯前の連中である、まさに根気の勝負となっていた。 「何としても探し出さなければならないわ、それでなくてはこの戦いは終わらないもの。」 「「了解です!!」」 (ここで役に立たなくちゃ、あの子達に面目が立たない!!) (俺達は大人なんだ、これは俺達にしか出来ない、俺達の戦いっすからね!!) ずっと繰り返される単調な作業にめげる事も無く、男2人の返事は明るいものだった。 一方、ゲンドウが指令執務室に戻ると、冬月が立っていた。 「碇、キョウコ君が本拠地探しを始めたよ、日向・青葉両名も協力している。」 「・・・そうか。」 ゲンドウは椅子に座り、いつものポーズを取る。 横に立っている冬月に目もくれない、いつもの事だ。 「お前は知っているのだろう?何故、彼らに話さなかったのだ?」 「・・・それは先生も同じでしょう、話して来たらどうです?」 ここでゲンドウは視線を冬月に向けた。 気付いているのだが、冬月は正面を向いたままだった。 「・・・お前が知らないものを私が知るわけ無かろう。」 「彼らは見つけますよ・・・。」 (言う通り、本拠地はドイツなんだからな。) 視線を正面に戻し、眼鏡を指で押し上げる。 それを横で無表情で見つめる冬月だった。 (意地悪でもなんでも無さそうだが、コイツの考える事は理解できんな・・・。) 彼もまた、場所を知っているのにキョウコ達に話に行く事はしなかった。 大人達が真剣に仕事をしている中、子供達は家にいた。 『マナの部屋』 こう書かれたプレートがかかる部屋の前に、勉強道具を持ったアスナが部屋に入ろうとしていた。。 「お姉様〜、お勉強しましょ♪」 「わかったわよ。けどいい?『学校』の勉強だからね!」 こういう風に言うのは、前に色々あったのだろう。 「はぁ〜い!『そっち』の勉強はその後ですね♪」 「違うわよ!!」 (もう、お姉様ったら〜。恥ずかしがり屋さんなんだから♪) (この子には何を言ってもダメね、諦めたけど。) すぐその後に『艶かしい声』が聞こえたとか、聞こえなかったとか・・・・・。 『ダイニング』 ここではシンジが椅子に座り、アスカが冷凍庫を覗き込んでいた。 「シンジ〜。」 「何、アスカ?」 「アイスさ〜、バニラとチョコ、どっちがいい?」 「(チョコがいいんだけど。)アスカが先に好きな方選んでいいよ。」 「(シンジはチョコが好きなのよね。)アタシはバニラにするわ。」 アスカはシンジの好みがわかっているのだろう、そう言うとアイスのカップを持ってきた。 「はい、シンジのチョコ。」 「ありがとう、アスカ。」 2人並んで座り、アイスを食べ始める。 「やっぱ暑い日はこれよ、これ!」 「・・・そうだね、アイスを食べるシンジ君も素敵だよ。」 「カヲル君!」 何時の間にか現れたのだろう、カヲルはシンジの後ろに立っていた。 「ちょっと!邪魔すんじゃないわよ!!」 「アスカ、いいじゃないか。 カヲル君の分もあるよ、ここで一緒に食べようよ。」 窘められたアスカはそっぽ向いて続きを食べ始める、カヲルはゆっくり微笑むと自分の分を取りに行く。 「やっぱり、シンジ君は優しいね。」 「そんな事無いよ、ってアスカ?」 「・・・怒ってるのよ、お兄ちゃん。」 「うわあ!!」 またもいきなり現れたレイに奇声を上げながら仰け反った。 レイは無表情のまま、自分の分を取りに行く。 「・・・酷いわ、お兄ちゃん。」 「ご、ごめん。」 (何でレイまでここに来るのよ、せっかく2人きりだったのに・・・。) 結局、4人がアイスを食べ終わるまで、アスカは無言でそっぽ向いたままだった。 (シンジのバカ・・・。) ゲンドウから『アダム』預かったユイは、発令所へと向かっていた。 (キョウコ達は見つけられたかしら?) 『カタカタカタカタカタ・・・・・・・』 中に入ると、3人が必死にキーボードを叩いていた。 「どう?見つかった?」 「それらしい所はあるんだけど、『当り』かどうかはわからないわ。」 「近隣諸国には無さそうなんですが・・・。」 「そう言えば、メンバーは全員そこにいるんすかね?」 3人の答えを聞き、ユイは黙って考え始める。 (世界を牛耳ってる組織のメンバーが全員1ヶ所にいる事は考えられない。けど、頭さえ潰せば・・・。) 「ユイ?」 「ごめんなさい、私も探すわ。」 『カタカタカタカタカタ・・・・・・・』 4人が必死にキーボードを叩き始める、その様子をモニターで見ている者がいた。 ゲンドウと冬月だ。 「ユイ君まで加わったか・・・。」 (ユイは知ってるはずだが、そこまで切羽詰っているのか?) ゲンドウの言う通り、ユイは『知っている』のだ。 ユイはゼーレに所属していた事もあるのだから。 おもむろに、ゲンドウは椅子から立ちあがった。 「どうした、碇?」 「・・・彼女達に教えてきます。」 そう言って部屋から出ていく、残った冬月は笑みを浮かべていた。 「素直じゃないヤツだ、ユイ君が来てから教えに行くとはな。」 教えるだけなら電話でも出来る、直接発令所に向かうのはユイの顔を見たいからなのだろう。 会えなかった分を取り返すかのように・・・。 『カタカタカタカタカタ・・・・・・・』 「見つからないわね・・・。」 「ええ。日向君、青葉君、今日はもう帰っていいわよ。」 時刻は午後7時を少し過ぎた所であった。 いつもなら交代の時間なのだが、ほとんどの職員は帰ってしまった。 と言っても、翌日からは出勤もしないが。 「しかし、まだ見つかってませんよ。」 「そうっすよ!キョウコさん達はまだ探すのに、俺らだけ先に帰れないっすよ。」 「けど、明日からはもっと大変なのよ。」 ユイはリツコに頼んだ事を2人に説明した。 「・・・と言うわけで、交代要員がいないのよ。 だから、2人にはこれから頑張ってもらわないといけないのよ。」 「だったら、余計に帰れませんね。」 「日向君!?」 「そうっす、ユイさんとキョウコさんだってこれから頑張らなければならないっすよ。 それに子供達だっているんすから、お2人こそ今日は帰ってくださいよ。」 「青葉君・・・。」 「・・・その必要は無い、4人共帰るといい。」 声のした方に4人が視線を送ると、そこにはゲンドウがこちらに歩み寄っていた。 「ユイ、君は知っているはずだぞ。」 「えっ!?」 「!!」 先に気付いたのキョウコだった、ユイに近づくと耳打ちする。 「(貴方、ゼーレにいた事があるんでしょ?言われて思い出したわ。)」 「ああ〜〜〜!!」 『カタカタカタカタカタ・・・・・・・ピピッ!!』 キーボードを叩くと、ある場所が拡大表示された。 「このお城がゼーレの本拠地なんですか?」 「どう見ても観光地にしか見えないっすよ。」 「正確にはこの地下にあるのよ、思い出したわ。」 5人がモニターを見る、その目には闘志が宿っている。 「・・・近い内に戦自が攻めてくるだろう、それを迎え撃ち勝利した後、ドイツに攻めこむ。 彼らを捕まえて罪を償わさせねばならん。」 (私もだがな・・・。) 「皆、ご苦労様。今日の所は帰って、明日への英気を養いましょう。」 「「はい!失礼します!!」」 ユイの言葉に青葉・日向両名は発令所から出ていった。 「ドイツ支部は向こうかしらね?」 「ゼーレの息がかかってると思った方がいいわ。」 「・・・我々は負けるわけにはいかん。」 3人はまたモニターに視線を移す。 自分達が決着をつけなければいけない相手の本拠地を鋭い視線で見据えていた。 <後書き> ども、ウエッキーです。 だいぶ期間が開いてしまった本編です、短いですね。(−−; これから頑張りたいと思いますので、応援してくれる皆様・・・見捨てないで下さいね。m(_ _)m 次からは戦自の侵攻が始まるかなぁ、予定は未定です。 もうワンクッション置いてからにしようかとも思ってます、ゼーレ×戦自&日本政府の絡みを書いてからとか。 それだけで1話丸々は無理なんで、今回みたいに子供達が家でほのぼの(?)している所も書いて、みたいな。 どうなるかは現段階では何も言えません、最近は閃きが無いもので・・・。 けど、番外編も書きたいなぁ。 お悩み相談室は評判がよかったし、何か閃かないかなぁ。 でわ!! <次回予告> 後書きにもあるように、どうなるかはわからないので予告できません。m(_ _)m
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