後片付けを終えたレイは自室へと戻ってきた。

「つまらないわ・・・。」

アスカ・シンジはこの後デート、アスナ・マナも同じである。
自分の他にはダイニングで気絶しているカヲルがいるものの、相手にしたくはない。

本棚を見て見るものの、読んでない本は無かった。
これではダイニングで呟いた読書すら出来ない。

「・・・図書館に行くわ。」

一人呟いた後、レイは着替えを始めるのだった。







                 The Restart Of Evangelion

                   第28話 「優雅なる1日 〜レイ・カヲル編〜」







図書館

無人であるものの、鍵は開いていたので難なく入る事が出来た。
冷房もつけっぱなしだったので、館内は程よい環境になっていた。

「涼しい・・・。」

興味を引いた本を数冊持ってきて椅子に座った。
テーブルには次に読む本と、隣接する喫茶店から『借りて』きた紅茶の入ったポットとカップが置いてある。

「・・・紅茶はストレート。」

やはり寂しいのだろうか、事ある事に独り言を呟くのでありました。



〜1冊目読書中〜



半分ほど読み終えたところでレイはしおりを挟んだ、時計を見ると午前10時を指している。

「おやつね・・・。」

椅子から立ちあがると、隣の喫茶店へと入る。
ケーキが置いてあったが、作られてから何日か経っている筈なので手をつけない。
狙いはクッキーなどの『生物で無い甘い物』だ。


「・・・ここ品揃えがよくないわ。」

30分が経過して、見つかった甘い物はアイスクリームだけ。
メニューには『オリジナルクッキー』と言うのがあったのだが、営業している間に全て出てしまったらしい。

「クッキー、食べたかったのに・・・。」

心底残念そうにしながら、仕方なくアイスを器に盛るレイ。

(味はチョコなの・・・お兄ちゃんと同じ。)

そんな事を考えていたので、顔は真っ赤だった。





碇邸・ダイニング

レイが図書館で過ごす中、ここダイニングではカヲルが復活した。

「誰もいないのかい・・・?」

家の中は静まりかえっている、現に『シンジ&アスカ』と『マナ&アスナ』は出かけている。

「ふむ、どうしようかな。」

近くにある椅子に座り、この後どうするか考える。

(シンジ君に会いたいけど、邪魔したら殺されるね・・・確実に。
 もうATフィールドは張れないからね、仕方ないけど却下だね。)

あれだけ派手に殴られているのに怪我無く、失神だけですんでるのも奇跡的なのだが・・・。

(もう一組もごめんだね、アスナはアスカさんより攻撃力がありそうだからね。
 マナさんと一緒なのを邪魔するのも気が引けるし、って言うよりも興味無いしね。)

『ふうっ』と手を開いて首を横に振る、本当に興味が無いらしい。

(仕方ない、彼女の所に出向くとしようか・・・。)

どこにいるのか見当がついているらしい、カヲルは椅子から立ち上がると部屋へと戻る。

数分後、着替えた彼は外へと出かけるのだった。





図書館

アイスを食べ終え、彼女が読んでいる本は2冊目。

(これは・・・中々面白いわ。)

今読んでいる本は少女向けの小説。
ジャンルは純愛物で、主人公は『中学2年生の女の子』で同じ歳の男の子との恋愛模様が書かれている。

(お兄ちゃんみたいな男の子、私にも現れるかしら・・・・・。)

そんなことを考えながらページをめくっていく。


(予想通りだね・・・、何を真剣に読んでいるんだろう?)

図書館に到着したカヲルはすぐにレイを見つけることが出来た。
気づかれない様に後ろへ回りこみ、本の内容を盗み見る・・・・・。

(いわゆる『コ○ルト文庫』と呼ばれる本だね、こう言うのに興味があったとは驚きだよ。)

カヲルは『ニヤッ』と笑うと、読んでいるページのセリフを読み始めた。

「『ぼ、僕と明日、映画に行きませんか?』」

「きゃあ!!」

レイらしからぬ声を上げると、本を閉じて後ろを振り返った。

「あ、貴方?!」

「驚いた様だね、君のそう言う反応は始めて見たよ。」

満足げな表情を浮かべていたカヲルだが、次の瞬間、恐怖の表情を浮かべる。

「・・・言いたい事は、それだけ?」

「お、怒っているのかい?」

表情はわからない、レイは俯いているからだ。
しかし、その声は相手を凍りつかせることが出来るくらいに冷たく、鋭かった。
恥ずかしい所を見られた事もあるから、殺気も含んでいたに違いない。

「・・・・・さよなら、永遠に。」

『シュッ!』

たったこれだけ、立ち上がると同時に凄まじい速度で拳を繰り出した。

『ドッゴォォォ!!!』

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

物凄い音、物凄い絶叫が聞こえたと思うと、カヲルの姿は無くなっていた。

「・・・お腹空いた。」

本をテーブルに置くと、喫茶店で食事をしようとするレイ。

(スパゲティーの麺とソースに使えそうな物もあったわ、確か・・・。)

こうして、レイはそこにあるだけの材料で、お昼ご飯をいただいたのでありました。

(・・・食後のデザートはコーヒーとバニラアイス。)

『太る』、そんな事は気にしないのがレイらしい。



〜調理中&食事中〜



「ごちそうさまでした。」

食べ終わったレイはポットに紅茶を新しく入れると、再び図書館へと向かった。



図書館

「やあ、遅かったね。」

戻ったレイが見たもの、それは自分の座ってた席の隣で本を読むカヲルであった。

「・・・どうしてここにいるの?」

「いい拳を持ってるね、世界も夢じゃないよ。」

「・・・・・・・。」

レイは冗談にツッコミもせず、じっと睨みつけている。
カヲルは「やれやれ」と言った表情で口を開いた。

「僕も本を読みに来たのさ、さっきのような邪魔はしないよ。」

「・・・ならいいわ。」

そう言って、その場を後にしてしまう。

(僕とはそんなに一緒にいたくないのかな?)

カヲルはその後ろ姿を見た後、視線を本へと移した。



しばらくすると、レイがカップを持って戻ってきた。
そのまま椅子に座ると紅茶を注ぐ。

「・・・砂糖は?」

「僕に入れてくれたのかい?」

流石のカヲルもこれには驚きを隠せなかった。
「信じられない」、そんな表情をありありと浮かべている。

「このままで、いいの?」

「いや、砂糖を一つ頼むよ。」

用意されていたのは角砂糖だった。
レイは言われた通りに、砂糖を一つカップに入れてかき混ぜた。

「・・・はい。」

「ありがとう、いただくよ。」

カヲルは早速一口飲む、程よい甘さが口の中に広がる。

「美味しいよ。」

「そう、よかったわね。」

そこで会話が切れてしまい、お互いに本を読み始めるのであった。



〜読書中〜



どのくらいの時間が経ったのだろう、ふいにレイは視線を感じた。

「何故、私を見てるの?」

「君が素敵だから、じゃダメかい?」

「・・・冗談は止めて、ホモ。」

『素敵』と言われてつい反応してしまったレイ。

「誤解は困るね、僕はシンジ君と一緒にいたいだけさ。」

「・・・嘘。」

「嘘じゃないさ、思わせぶりなセリフは全部冗談だよ。
 皆といる今がとても楽しいのさ、殴られるのは痛いけど、前だったら味わえないからね。」

(嘘はついてない・・・この人、寂しかったのね。)

どこか遠くを見つめるカヲルの表情に、レイは見とれてしまっていた。
ちょうどその時、視線を戻したカヲルと見詰め合ってしまう。

「おや、僕に見とれてたのかい?」

「ち、違うわ・・・。」(真っ赤)

慌てて本に視線を戻すレイを、カヲルは笑みをたたえながら見つめるのであった。





また、しばらく時間が経った。

「君はこの後の戦い、恐くないかい?」

「えっ?」

お互いのカップが空になっていたので、カヲルが紅茶を注ぎながら尋ねた。

「はい、紅茶。砂糖は自分でやってくれるかな。」

「・・・ありがとう。」

レイは砂糖を入れずにカップに口をつけた。

「君はストレートで飲むんだね。」

「ええ・・・紅茶には砂糖を入れないの。」

「そうなんだ、始めて知ったよ。」

カヲルは先ほど同様、角砂糖を一つ入れてかき混ぜる。

「私は、恐くないわ。」

「えっ?」

「さっきの話、この後の戦いは恐くないわ。」

「僕は恐いよ、人になれたけど何故か恐いんだ、消えてしまうんじゃないか、ってね。」

「例え貴方が消えるとても、私も一緒・・・一人じゃないわ。」

レイはそう言うと、カヲルの手を取り優しく握る。
その行動にカヲルは顔を真っ赤にした。

「あ、あ、あの・・・。」

「レイ、でいいわ。」

「ぼ、僕もカヲルでいいよ・・・・・レ、レイ。」

お互い、顔を真っ赤にしながら手を握り合う。

(僕にとって、君こそが大事な人だったんだね。)

(私、この人の事が好き・・・。)

見詰め合う2人に言葉などいらない、正面に向き合うと2人の距離が近くなっていく。

「レイ・・・・・。」

「カヲル・・・・・。」

『チュッ』

触れるだけのキス、気持ちを形にするには充分なものだった。



「そろそろ帰ろうか?」

「ええ・・・。」

借りてきたポットとカップ、持ってきた本を片付けると、図書館を後にした。





「お約束みたいにくっついちゃったね。」

「それでも・・・いい。」

「うん、そうだね。」

手を繋ぎながら歩く2人。

「決戦後どうなるかわからないけど、精一杯頑張ろう!」

「ええ、カヲルを一人にしないわ。」

「僕も、レイと一緒じゃなきゃ嫌だよ。」

共に寄り添い、歩く二人に幸多きあらん事を・・・・・・・。







<後書き>
ども、ウエッキーです。

お約束ですねぇ、レイ×カヲル・・・やっちゃいました。(^^;
カップルにする必要は無かったんですけどね、何となく「しちゃえ!」って感じで。

この話が1番始めに出来ましたね、短いですけど。(−−;
他は中々上手く行かないです、マナ×アスナはノリがいいと「ささっ!」と書けるんですけどね。

次回からは最終決戦です。
予定としては前・中・後編で行こうかと思ってます。
今回の様に同じ投稿ではないので、幾分か早く投稿できればいいな、と思います。

でわ!



<次回予告>
ついに始まる最終決戦。
職員不足によりEVAの準備が遅れてしまったネルフ、そこに戦自が本部施設に潜入したとの知らせが!
本部はどうなってしまうのか?EVAの準備は間に合うのか?

次回、The Restart Of Evangelion

       第29話 「最終決戦 〜前編〜」

を、お送りしまーす。


マナ:綾波さんって、恋愛小説も読むのね。

アスカ:ファーストがあんなに少女趣味だったなんて知らなかったわ。

マナ:そりゃ、綾波さんだって女の子だもん。

アスカ:あの娘さ。なーんか、ちょっとズれてんのよねぇ。アンタ程じゃないけど。(ーー)

マナ:だからわたしはっ!

アスカ:2人でなーんかいい雰囲気みたいね。これで、ファーストも成長するかしら。アンタは変な方に成長したけど。

マナ:それ以上言ったら”ぐぅ”で殴るわよっ!(ーー#

アスカ:ファーストも守るものができたし、最後の戦い・・・是が非でも頑張らなくちゃ。

マナ:やっぱり、守るものがあると強くなれるわよね。

アスカ:アンタは、アスナね。

マナ:それ以上言ったら”ぐぅ”で殴るって言ったはずよっ! $(ーー#

アスカ:いやぁぁぁぁっ! ツルペタスケコマシが、凶暴になったぁぁっ!(TOT)

マナ:地の果てまで飛んで行きなさいっ!(どかーーーーーーん!)○=(▼▼#
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

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