戦車の走行音・・・・・
 

      ヘリのローター音・・・・・


             兵士達の奏でる軍靴の音・・・・・。



子供達が休日を過ごしてから1週間が経ったこの日、第3新東京市には様々な音が鳴り響いていた。



『戦略自衛隊』

通称『戦自』と呼ばれる組織に所属する者達、彼らは今ある所へと進軍している。
様々な音の主達は物々しい装備に物々しい雰囲気、だが彼らは笑顔であった。

「これからドンパチだぜ!本物のよ〜!!」

兵の一人が歯を見せながら笑っていた、楽しみで仕方が無いようだ。

「こ、恐くないんですか?殺されるかもしれないんですよ・・・。」

彼の横に歩く兵は緊張した面持ちだ。
そう、彼らはこれから人を殺しに行くのだ・・・。

「軍人だからな、そう言う覚悟はしてるさ!
 けどよ、俺はあんなヤツらにゃ殺されはしないぜ!!」

「その自信が羨ましいです、僕は今朝から緊張しっぱなしなんですよ。」

「訓練したんだろ?
 大丈夫だよ、『殺られる前に殺れ!』って言うだろ!!」

『バンバン!』

テンションの高い兵が低い兵の背中を叩く、彼なりの励まし方なのだろう。

「・・・頑張ってみます!」

励ましが通じたのだろう。
彼の返事は大きく、ハッキリしたものになっていた。





部隊指揮車

『・・・・・・・・・・・・。』

「そうか、わかった。」

通信機から耳を離し、「ふぅ」と息を吐いた。
他の兵士達とは違う軍服、見る限りではこの人物が司令官の様だ。

「偵察部隊は何と?」

「動きは無いようだ。
 これだけの軍勢が近づいているのに・・・妙だと思わんか?」

「指令は、ヤツらが何か策を講じているとでも?」

司令官の横にいるのは副指令なのだろうか?
上官の表情が浮かない事を気にしているようだ。

「可能性はある。
 向こうには『Magi』と呼ばれるスーパーコンピューターがあるのだ、動きが無い方が不安だ。」

「我々はすでに発見されている、と。
 彼らは施設内で我々を迎え撃つ気なのではないでしょうか?」

「ふむ・・・・・。」

司令官は『上』からある程度の事は聞いていた。
今日の作戦の目的、相手組織の名前、所有する兵器、重要人物。
軍では上からの命令は絶対だ、情報が間違ってるかも?などとは思わない。
聞くだけでも優秀な人物、施設があるからこそ、この静かさが妙に気になっているのだ。

「それに、あの施設自体に対人兵器は無いと聞きましたが?」

副司令官も情報を得ているのだろう、何かを考えている司令官に言葉をかける。

「それは聞いている・・・。
 上からは今回の事は向こうに通じてないとの事だから、準備をすることも出来ないだろう。」

「そうです、大丈夫ですよ!
 向こうの職員の大半は戦闘の素人です、例の『決戦兵器』を出す前に占領下に置けばいいのですから。」

前向きな司令官の言葉に併せるように、副指令は前向きな発言をする。
その言葉を聞くと、司令官は首を縦に1つ頷く。

「よし、作戦通りにするとしよう。
 ヘリ部隊は施設上空、戦車部隊は施設周辺を取り囲み、歩兵部隊は中へと侵入、施設を接収する!」

司令官の命令が部隊の隅々へと行き渡る中、あの2人の耳にも入ってきた。

「いよいよ始まるぜ!」

「が、頑張ります!!」

彼ら2人は中へと入っていく、2度と出てこれない事を知らずに・・・・・・・・・・・。







                 The Restart Of Evangelion

                      第29話 「最終決戦 〜前編〜」







ネルフ本部・発令所

ここには大人しかいない、子供達はすでにエヴァに搭乗していた。

「招かれざる客が来たな。」

「・・・ああ、ユイに聞いた話によれば、目的は『初号機』と『Magi』だったな。」

子供達が休日を過ごしてる間に、大人達は色々な準備をしていた。
その間に、ユイとキョウコから相手の目的とその理由を聞いていたのだ。

「・・・老人達がやろうとしている事は無意味だ。」

「その事実も知らないのだろう、我々は何も話していないのだからな。」

ゲンドウと冬月は目の前にあるモニターを見ていた。
他の皆もモニターに視線を送っている。

「敵は西側から陽動をかけるわ!そこ以外の入り口を閉鎖とベークライトの注入、急いで!
 リッちゃんとキョウコはMagiへのハッキングの対処にプロテクトの展開をお願いね!!」

「「了解!!」」

「敵部隊、西側入口から侵入を確認!」

「施設周辺は戦車・ヘリによって囲まれています!」

ユイの指示が飛び、そこに日向・青葉の両名が状況を知らせる。
その場にいる者達の視線はモニターへと向いていた。

「マヤちゃん、1番のスイッチオン!」

「わかりました。」

『カチッ!』

キョウコの指示でマヤが『何かのスイッチ』を押した。
ちなみに、押された横には他のスイッチが並んでいる。

モニターに映し出されているのは西側入口から続いている通路、その壁が一瞬光ったような気がした・・・瞬間!

『バリバリバリバリバリバリバリ!!!!!!!』

『『〜〜〜〜〜!!!!!』』

激しい音と共に激しい悲鳴が聞こえた。

かなりの高電圧の放電の仕掛け。

放電が終わると、そこには人であったものが消し炭となって黒くなっていた。

「・・・仕掛け有効範囲内の敵、全滅です。」

自衛の為に設置した仕掛けの威力と、消し炭になった兵士を見た日向の声は重い。
彼だけではない、そこにいるもの全員が何とも言えない表情を浮かべていた。

「子供達にこの映像は?」

「と、届いていません。通信は可能ですが、映像は遮断しています。」

それを聞いたキョウコは、青葉の返事に安堵の息を漏らす。
子供達には出来るだけ『人の死』に触れてほしくない、そう思うのは彼女が親だから・・・。

「・・・ミサトは上手くやってるでしょうか?」

「大丈夫よ、リッちゃん。
 未来の旦那様と一緒ですもの、心配する事は無いわ。」

ミサトと加持はドイツに行っていた。
ドイツ支部への協力要請とゼーレの老人達の始末、それが今回の彼らの仕事なのだ。





戦自襲撃3日前・発令所

「・・・君達にはドイツへ行ってもらいたい。」

「いきなりですね、指令。」

「・・・・・。」

司令室に呼び出され、中に入った途端これであった。
おちゃらけて答える加持だが目は真剣だ、横にいるミサトは口を開かない。

「ユイ君とキョウコ君からの話は聞いただろう。」

横に立つ冬月の言葉に、2人は黙って頷いた。

「・・・この手紙をドイツ支部に持っていって協力を要請してほしい。
 そして、ゼーレの老人達の始末を頼みたい。」

「始末ですか?俺とミサトの2人で?」

ゲンドウから加持は手紙を受け取りながら、確認する様に2人に尋ねてみた。

「君達にしか頼めない事なのだ。
 ドイツ支部が協力してくれるのならば、2人だけでは無いとしか言えん。」

「「・・・・・・・。」」

申し訳なさそうな冬月の姿に、2人は何も言えなくなってしまった。

そんな沈黙を破ったのはミサトだった。

「わかりました、明日にでもドイツに向かいたいと思います。」

「・・・本当にすまん、君達に頼む。」

「「!!」」

(碇指令が頭を下げた!?)
(演技、だとは思いたくないな・・・。)

加持とミサトは言葉を失った。
あのゲンドウが、自分達の上司が頭を下げたのだ。
そして、それに驚いたのは冬月もであった。

(碇、お前は・・・・・。)

「き、今日のところは準備の為に帰ります、失礼します!」

そう言うや否や、ミサトは部屋から出て行ってしまった。

「ところで、ドイツまでの交通手段は?」

「・・・松代で用意させる、翌日は直接向こうへ行ってくれればいい。」

「ちなみに希望はあるかね?」

「速い物がいいでしょう、事が事ですから。」

「・・・わかった、任せておきたまえ。」

(どういう事だ?)
「それでは、失礼します。」

頭に『?』マークを浮べながら、準備の為に加持も帰宅した。
ゲンドウが机の上の受話器を上げると、松代へとかける。

「私だ・・・・頼んだぞ・・・・・大丈夫だろう・・・失礼する。」

「どうなった?」

「・・・問題無い。」


こうして、翌日に彼らは戦闘機に乗ってドイツへと向ったのだった。

(運転できるとは言え、よくこんなの用意できたよな?)

(結構乗りごごちいいのねぇ、これ。)





さて、時間を戻そう。
先ほどの仕掛けは1回しか使えない様で、残りの敵部隊の侵入を許していた。

「1回だけなのよねぇ〜。」

「まあ、他のを作ってた所為もあるからね。
 リッちゃん達がここにずっといてくれたら、ねぇ?」<第28話〜マナ・アスナ編〜参照

「「す、すいません・・・。」」

侵入していく部隊を見ながら、ユイとキョウコは呑気に2人を責めていた。

「あの〜、そろそろヤバくないですか?」

「そうね、マヤちゃん2番!」

「は、はい!」

『カチッ!』

1番の横のスイッチをオンにする。
モニターに映し出されている先で、『ガゴッ!』と大きな音がする。
壁から無数の穴が出てくると『ピー!』と言う甲高い音が鳴った・・・そして!

『『!!!!!!!』』

穴から発射されたのはレーザー。
無数のレーザーがそこにいる敵を貫く、ここでは悲鳴を上げる間も無かった様だ。
倒れこんだ兵士達にもレーザーの照射は続き、そのまま焼かれてしまった。

「し、仕掛け有効範囲内の敵、及び侵入部隊・・・全滅です。」

またも消し炭が姿を見せる。
手にかけている相手が自分達と同じ『人間』だという事で、日向の顔色は真っ青になっていた。



『スドオオオオオォォォォォ!!!!!』



突如、物凄い音が鳴り響いた。
発令所内が大きく揺れる、立っている者達は咄嗟に近くの物を掴み、ふんばる。

「きゃぁぁぁ!」

「うわあああ!!」

「な、なんだぁ、一体!?」

「慌てるな!物理的な衝撃波だ、対した問題では無い!!」

驚き、ふためくオペレーター達に冬月が檄を飛ばす。

「N2兵器まで使用するとは・・・前回と同じね。」

「ええ、なりふり構ってらんないんでしょ。」

モニターから視線を外していないものの、今の爆発で観測所が全てダメになってしまったのだろう。
すでに何も映してはいなかった。



『ズドォン!ドッコォォン!!チュドォォォン!!!』

落ち着く暇も無く、先程よりは小さな振動が発令所を襲う。
取り囲む様に配置された戦車隊の砲撃が始まったのであろう。

「このくらいの攻撃はどうと言う事は無いわ、本番はこれからよ!」

「ユイさん、上空から飛来するものがあります!」

ユイが口を開くと同時に、マヤが何かの接近を知らせた。

「・・・来たわ、エヴァシリーズよ!
 エヴァ各機を射出して頂戴、その後に通信を繋いで!!」

「了解です!」





ゼーレの会議場

ここには12個のモノリスが暗闇に浮んでいた。

「戦自は失敗した様だな。」

「Magiには『666プロテクト』が展開された、これを破るのは容易ではない。」

「どこまでも私達の邪魔をするようだな、あの男は。」

「本部施設を力ずくで接収するしかあるまい。」

「いや、向こうに送った『アレ』で初号機とそのパイロットを手に入れればよい。」

「左様、『アレ』には我らの願いを遂行されるように出来ている。」

「向こうには5機のエヴァがあるそうだが、こちらは9機・・・数では問題あるまい。」

「しかし、参号機と四号機のパイロットの実力は未知数だ。」

「対した事は無いであろう、驚異なのは初号機パイロットだけだ。」

「しかし、碇ユイがサルベージされたとなると・・・計画に狂いは生じないのか?」

「その点は問題無かろう、現にシンクロしているのだ。」

02と書かれたモノリスから始まって、12番目までが一言ずつ言葉を発した。
そして、何も言わなかった01と書かれたモノリスの姿が消える。

「碇、我々の計画の邪魔をする事は無意味だという事を思い知るがいい・・・・・。」

言葉を発すると同時に現れた老人、名はキール・ローレンツ。
このキールこそがゼーレのトップであり、『人類補完委員会』の委員長でもある。

彼が姿を表した後、全てのモノリスが消えた。
そして、モノリスのあった場所に老人達が現れる、ゼーレのメンバー達である。

誰も言葉を発する事は無く、彼らは静かにその時を待ち始めるのであった。







発令所

オペレーター達は手馴れた作業を淡々と始め、「あっ!」と言う間に射出が完了した。

「通信開きます!」

青葉の報告に促され、ユイはマイクを握る。

「皆、上空からエヴァシリーズがやってくるわ、そこで戦闘配置を発表します。
 シンジ・アスカちゃん&アスナちゃん・渚君はエヴァシリーズを、マナちゃんとレイは周りにいる戦自を片付けて頂戴!」

「「「「「「了解!」」」」」」

上空にいるエヴァシリーズを見据える3機のエヴァと、周りの戦車隊に構える2機のエヴァ。

こうして、巨人達の戦いが始まる・・・・・。










<後書き>

ども、ウエッキーです。

前編はこんな感じです、短いですね・・・最後なのに。(−−;
ここでは戦自を三賢者達で片付けたのと、中編への前振りですね。
細かい所でツッコミをいれたいとは思いますが、勘弁してください。m(_ _)m

タイトル前の戦自の兵士の会話、あれはビデオのパッケージにあったのを思い出して入れてみました。
劇場版のビデオのパッケージだったと思いますが、表だか裏に兵士達が書いてあるんですよね。
そこで、「こんな会話があってもいいんじゃないかな。」と思ったわけです。



<次回予告?>

アスカ「やっと、出番が来たわね・・・前回の借りは返させてもらうわよ!」

シンジ「気持ちはわかるけど、無茶だけはしないでね。」

アスカ「何言ってんのよ!アタシがあんな奴らに二度も負けるわけないでしょ!!」

シンジ「今度は僕も始めからエヴァに乗ってる・・・・・誰も傷つけさせないし、絶対に負けない!」

カヲル「真剣な表情のシンジ君はカッコイイよ。
    さて、次回は・・・・・
   
    The Restart Of Evangelion 

         第29話 「最終決戦 〜中編〜」

    を、お送りするよ。」


レイ「カヲル・・・。」

カヲル「おっと、大事な女(ひと)が呼んでるから、失礼するよ。」


これって、難しいですね。(^^;


マナ:とうとう来たのね。

アスカ:エヴァシリーズなんか、このアタシが殲滅してあげるわっ!

マナ:今回はユイさん達もいるし、きっと大丈夫よっ!

アスカ:あったりまえじゃん。加持さんとミサトもドイツで頑張ってるしっ。

マナ:よーし、頑張りましょっ!

アスカ:ただ、問題が1つあるのよねぇ。

マナ:問題? 何があるの?

アスカ:前世の時みたいに、アタシが1人で活躍するシーンがなくなったのよ。

マナ:そ、そこまでして目立ちたいわけ・・・?(ーー)

アスカ:「ママっ! わかったわっ! ATフィールドの意味っ!」なんて素敵なセリフでしょ?

マナ:そのまま、「殺してやる、殺してやる・・・」まで言いたいわけ?(ーー)

アスカ:・・・。(^^; でもせめて、「ママっ! わかったわっ! LASの意味っ!」くらい言いたいわね。

マナ:そんなセリフあってたまるかっ!(ーー)
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