とある日の深夜。 そこには、愛する夫の帰りを待つ妻がいた。 いつもと同じ光景、玄関ドアの開く音がして、部屋のドアが開く。 そして・・・・・・・。 「お帰りなさい、シンジ♪」 「・・・ただいま。」 いつもと違う夫、表情も疲れだけでなく、面倒くさげな感じもする。 「どうかしたの?」 「・・・別に、お風呂入ってくる。」 「あっ・・・。」 冷たく短く答えると、着替えを持ってバスルームへと向う。 (仕事場で何か嫌な事でもあったのかしら?) 夫の仕事は客商売、今日は機嫌が悪かっただけだと思う。 結局その日、夫は妻が話しかけてきても面倒くさそうにするだけで、夫婦は対した会話も無く床についた。 しかし、その日だけでは無かった。 翌日、その翌日も相手にしてくれない夫、妻は悲しくなった。 (私に魅力を感じない?もう飽きちゃった?それでも、話がしたいよぉ・・・シンジ。) だが、次の日は打って変わって優しかった。 正確に言えば、前の優しい夫に戻ったと言った方が良いだろう。 疲れて帰ってきても、話をしてくれるし、聞いてくれる。 (聞けば・・・教えてくれるかしら?) 「ねぇ、シンジ。」 「ん?何だい、マナ。」 「昨日まで冷たかったでしょう。・・・何か、あったの?」 「!!」 一瞬、ほんの一瞬だけ目を見開いたシンジ。 しかし、すぐに優しい表情に戻る。 「何でも無いよ、お店でちょっとね。」 「お客さんに絡まれたとか?」 「うん、ガラの悪いお客さんが来たもんだから・・・ゴメンね。」 『ちゅっ♪』 そう言って、頬に軽くキスをする。 (いつものシンジだ・・・。) 「ううん、シンジは大変だったんだもんね。」 とびっきりの笑顔で返すマナ。 今までのもやもやが吹き飛んだのか、晴れ晴れした顔になっていた。 「それじゃ、もう寝ようか?」 「うん。」 2人は揃ってベッドに入ると、部屋の電気を消した。 「おやすみ、マナ。」 「おやすみ、シンジ。」 『ちゅっ♪』 今度はおやすみのキス。 疲れていたのだろう、シンジはすぐに眠ってしまったが、マナの目は開いていた。 (いつもだったら、ここでHする雰囲気だったのに・・・やっぱり、変。) 横で寝息を立てているシンジの顔を見ながら、浮かない表情を浮かべるマナであった。 〜愛のある生活〜 第四章「愛する旦那様のおかしい原因を探れ!」 平日の午後。 家事が一段楽したマナは、リビングで今日が休みだと言うアスカに、その事を相談していた。 「それって、不倫してんじゃないの?」 「そうかなぁ・・・、時間はいつも通りなんだよ。」 「仕事行く前とかさ?」 「それもいつもと一緒。」 「それじゃあ、客とのトラブルじゃないの?」 『不倫』と言い出したのはアスカだったが、そうでは無いと思うと違う原因を考える。 流石は科学者(?)、頭の切り替えが早い。 「そうしょっちゅうあるのかなぁ、トラブル・・・。」 「まあ、お酒扱ってるんだし、酔っ払うと迷惑かける輩はいるでしょうに。」 「そうだけどぉ・・・。」 「そもそも、自分で聞いたら、シンジがそう言ったんでしょ? だったら信じてあげたら、疑う方がアイツに悪いんじゃないの?」 「・・・うん、そうだね!ありがとう、アスカ。」 マナはアスカの言葉に納得した。 そして、何があっても彼の事を信じようと思った。 「夕飯がハンバーグだと嬉しいなぁ♪」 「はいはい。」 (今日はありがたかったし、大きなのを焼いてあげようっと。他にはどうしようかな・・・・・。) 頼れると思うと子供っぽい所を見せる友人に苦笑しながら、夕飯の献立を考えるマナであった。 『♪〜♪〜♪』 夕方、碇家の電話が鳴った。 夕飯の仕度をしていたマナが受話器を取ると、相手はシンジだった。 「もしもし?」 『マナ?シンジだけど、今日は帰れなくなりそうだから。』 「えっ?どうして?」 『外せない用事が入ったんだ、ゴメンね。』 「ねぇ、その用事って・・・何?」 『ゴメン、時間が無いんだ、もうすぐ開店だから・・・じゃあ。』 「ちょ、ちょっと、シンジ・・・・・。」 受話器を戻すと、頭の中に『?』マークを浮べていた。 今まで勤めていた時にはこんな事は無かった、付き合いと言っても朝起きる頃には隣で眠っていた。 それが『帰れない』と、どこかに外泊すると言う事だ。 マナは言い知れない不安を感じていた。 (シンジ・・・どうしたの?) 夜、店の片づけを終え、外に出ると1台の車が止まっていた。 「待ってたわ・・・。」 「待たせて済まない。」 「構わないわ。それじゃあ、行きましょうか?」 「・・・ああ。」 2人は車に乗りこむと、何処かへと走っていった。 しばらく走った後、車は停止した。 2人の目の前にあるのは、一軒家の建物。 「・・・ここは?」 「『別荘』って言うのかしらね、一般では?私は『隠れ家』って呼んでるけど。」 「そう。」 「それじゃ、入りましょ。」 2人は建物の中へと消えた。 明かりの無い部屋で、2つの影が重なっていた。 窓から入ってくる月の光が、汗にまみれた2人の体を照らす。 2人の体が激しく動き、そのまま崩れた。 聞こえてくるのは、2人の激しい息使いだけ。 「はあ、はあ、はあ・・・上手ね、貴方。」 「ああ・・・はあ、はあ、はあ、貴方もよかった。」 その後、シャワーを浴びた2人はベッドで横たわっていた。 「・・・奥さんにばれたら大変ね。」 「簡単さ・・・。」 「んっ!」 相手の唇を激しく奪う、口内では互いの舌が絡んでいた。 しばらくして、2人の口が離れる。 「こうすれば、許してくれる・・・。」 「悪い人ね、見かけは好青年なくせに。」 「店の好青年と、今の俺と、どっちが好み?」 「意地悪な事聞かないの。」 『ちゅっ♪』 軽く触れるようなキス、微笑みながら彼女は答えた。 「両方よ♪」 翌朝、電話のあった通り、シンジの姿は家に無かった。 電話の事は皆が知っていたのだが、マナの悲しげな表情に何も言えなかった。 (シンジ・・・・・。) 深夜になって、シンジが帰って来た。 (信じてる、私は信じてる。) 「お帰りなさい。」 「・・・・・・・。」 ぐったりと疲れた表情を浮かべているシンジ、黙ってバスルームへと向おうとする。 だが、今日のマナは呼び止めた。 「ねぇ、シンジ。昨日はどこに行ってたの?」 「・・・・・・・。」 振りかえり、マナを一瞥しただけで、シンジはバスルームへと行ってしまった。 閉じられたドアを見ながら、マナの瞳には涙が浮んでくる。 (どうして冷たいの、シンジ・・・。 何も話してくれないんじゃ、私は、私は・・・・・。) シンジがバスルームから戻ってくると、マナは1人で寝てしまっていた。 (最低だな・・・僕は。 ゴメンね、君が悪いわけじゃない、僕が悪いんだから。) 瞳に浮んでいた涙を指で拭ってあげると、シンジも眠りについた。 その翌日、夕飯の仕度をしていたマナは考えていた。 (昨日はダメだったけど、今日こそは聞かなくっちゃ!) 『♪〜♪〜♪』 そこに鳴る電話。 (まさか・・・ね。) 不安を覚えながら、受話器を取る。 「もしもし?」 『僕だけど、今日も帰れないんだ。』 「そんなぁ、用事って何なの?」 『ゴメン、準備があるから・・・じゃあね。』 「もしもし!もしもし!」 切られてしまった電話、受話器を戻すマナの表情は暗い。 (・・・浮気、してるのかなぁ。) 最悪の状況が思い浮かぶ。 ここ最近、夫婦の会話が少ない事が一層不安を掻き立てる。 (離婚なんて、嫌だよう。) 「ううっ、ぐす、ぐす・・・。」 そのまま座りこむと、泣き出してしまった。 洗濯物の片づけを終えたユイがその姿を見つけ、慌てて駆け寄った。 「どうしたの!」 「お、お義母様〜!!」 涙を流しながら、マナは今までの事をユイに話した。 聞いていく内に、ユイの顔はみるみるこわばっていく。 「わかりました、帰って来た時に話をしましょう。 ・・・いい?マナちゃんはここに居て良いんだからね、出て行くのは馬鹿息子の方なんだから。」 「で、でも、私はシンジの事を信じてますから。」 「本当に良い子ね、貴方は・・・。」 (そんな事実があったら、どうなるか覚えてなさいよ!) 怒りにうち震えるユイ。 その時、開店準備をしていたシンジは寒気を感じていた。 「!!」 「どうしたんだい?シンジ君。」 「い、いや、寒気がしたから・・・。」 「お店を閉めて、僕が一晩中暖めてあげようか?」 「い、いいよ!」 怪しい笑みを浮かべるカヲルに、激しく首を横に振って遠慮するシンジがいた。 〜中略〜 店の裏口が見える少し離れた場所、そこに2つの人影があった。 「何でアタシがこんな事・・・。」 「・・・お母さんに頼まれたから。」 アスカとレイである。 夕食後、ユイに頼まれてシンジを見張っているのだ。 「寒いわね・・・。」 「こうすれば問題無いわ。」 アスカの後ろに立ち、レイは背中から抱きしめた。 「・・・暖かいけど、勘弁して。」 「残念・・・・・。」 「レイ、出てきたわよ。」 2人の表情が変わった。 裏口のドアが開き、何かを話しながら出てきたシンジとカヲル。 会話の内容を聞こうと、耳を澄ませる。 「今日もするの・・・?」 「もちろんだよ、君だって楽しみだから泊まっていくんじゃないのかい?」 「それは・・・。」 「ふふふ。さあ、行こうか。」 並んで歩き出す2人。 それを見ていたアスカ達、顔を見合わせ、黙って頷きあう、尾行開始だ。 「・・・・・・・。」 「・・・・・・・。」 「よく聞こえないわねぇ。」 「・・・仕方ないわ。」 ばれない様に離れて歩いている為、向こうの会話が聞こえない。 しばらく歩いていると、メインストリートに出た。 「「!!」」 (急に振りかえんじゃないわよ、驚くでしょうが!) (・・・ばれたかも。) ここで急にカヲルが後ろを振り向いた。 アスカ達は咄嗟に物陰に隠れて、様子を伺う。 「どうしたの?カヲル君。」 「どうやら、後をつけられてるみたいだね・・・走ろう、シンジ君。」 「う、うん。」 「それじゃあ、行くよ。」 2人は同じに走り出す、慌ててアスカとレイも後を追う。 「・・・逃げられたわね。」 (アンタ、何やってんのよ・・・シンジ。) 追跡不可能となった為、家に帰りユイに報告した。 その結果、ユイの怒りが一層パワーアップしたのは言うまでも無い。 薄暗い地下室、2つの人影がある。 1つは目隠しをされ、猿轡を噛まされ、椅子に縛られている。 もう1つは、様子を伺うように周りを歩いていた。 「・・・・・・・。」 「・・・どうしても、僕のものにはなってもらえないんだね?」 「(コクン)」 問いかけた男は表情を変える事無く、縛られている者の正面へと立つ。 「一言、君が認めてくれれば全て上手く行くんだよ・・・これも全て外せる。」 「・・・・・。」 目隠しを、猿轡をなぞるが、相手は無反応だ。 「それに、だ、君の奥さんに会わせてあげてもいいんだよ・・・見るだけで、僕の立会いの元だけど。」 「!!」 「反応をしたね、奥さんは大切だものね。」 「!!」 「認めてもらえないかな? 僕は・・・人殺しをしたくないんだけどね。」 「!!!」 途端に縛られた男が暴れ出す。 問いかけた男は愉快そうに笑みを浮かべながら、男の顎を掴み、顔を上げる。 「どうする?」 「・・・・・・・(コクン)」 「理解を得られて嬉しいよ。」 男は本当に嬉しそうに微笑むと、目隠しを外し、猿轡を外した。 「・・・僕眠いんだけど、カヲル君。」 「ダメだよ、今日はオールナイトで僕に付き合ってくれると言ったじゃないか。」 『魂友』の地下、カヲルの自宅に当たる場所で2人は映画を見ていた。 ホームシアターと言えばいいのだろうか、大きなスクリーンにソファ、立体音響システムなど物凄い設備。 店が閉店してから2時間ほど経過している、いつもならばシンジは夢の中だ。 「片づけしながら、駄々をこねるからじゃないかぁ。」 「僕と映画を見るのは、そんなに嫌なのかい?」 「そうじゃないけど、休みの日じゃダメなの?」 「ダメだよ、君は奥さんまで連れてくるからね。」 始め、カヲルの誘いに『マナと一緒なら』と言う条件を出していた。 しかし、カヲルは『シンジと見たい』のであって、その条件は飲めないと言った。 それならば、『休日は一緒に居たいから』と断ったのだが、その日の夜から駄々をこね始めたのだ。 その日からシンジの機嫌が悪くなった日。 いつもの調子に戻った日は駄々をこねなかった日で、店の事務仕事で忙しかったからだ。 結局、マナの不安げな顔を見て『このままでは良くない』と思い、今回の事をOKしたのであった。 「明日は定休日、次の作品を見ようか!」 「ねーむーいーよー。」 結局、シンジは昼過ぎになってようやく開放された。 一睡も出来なかったので、しきりに目を擦りながら歩いている。 (眠い・・・家に帰ってぐっすり寝よう。) 見えてくる自宅に、早くベッドに横になりたいと思うのだった。 「ただいま・・・。」 「ようやくのお帰りね、何処に行ってたのかしら?」 玄関で出迎えたのはアスカだった、何処か不機嫌な顔をしているがシンジは気付かない。 「何処でもいいじゃないか、眠いんだよ・・・。」 「そうはいかないわ!ユイさんが呼んでるわよ。」 「・・・母さんが?」 何の用なのだろうと思いながら、アスカと共にリビングへと向った。 そこにはユイ・マナ・レイの3人が座っていた。 「つれてきました。」 「ありがとう。そこに座りなさい、シンジ。」 「・・・いいけど。」 限界を迎えようとしているシンジは素っ気無く答えると、座ってユイを見る。 そこで始めて気付いた、ユイの顔が物凄く恐い表情をしているのに。 (な、何で、母さんは怒ってるのかな?) 「昨日は外泊して何をしていたのかしら?」 「・・・別に何でもいいじゃないか。迷惑はかけてないはずだよ、連絡もしたし。」 「その前にも外泊してたし、ここの所、態度がおかしいみたいね。」 「・・・眠いんだよ、勘弁してよ。」 立ちあがり、自室へと向おうとするが、入口にはアスカが立ち塞ぐように立っている。 「・・・どいてくれる?」 「悪いわね、そうも行かないのよ。」 「話しなさい、内容しだいによっては只じゃおかないわよ。」 ユイの声がだんだん硬くなっていく。 「わかったよ・・・。」 座りなおし、シンジは今までの事を話した。 そして・・・・・。 「「「「映画を見ていた!?」」」」 「そう、1日中カヲル君の家で見てたんだ・・・。」 「・・・じゃあ、昨日逃げたのは?」 「レンタルビデオ屋に行ってたんだ、カヲル君のお勧めを借りるって言うから。」 「それじゃあ、帰ってきて不機嫌だったのは?」 「カヲル君の映画鑑賞に、僕はマナと一緒なら付き合うよって言ったんだ。 それなのに、2人きりで見たいって言うから言い争いになって・・・。」 「めずらっしいわねぇ、アンタ達が喧嘩するなんて。」 「始めからそう言えばよかったじゃないのよ。」 「だって、眠いんだから・・・仕方ないじゃないか。」 結局、浮気と言う事実は無く、シンジの件はマナに一任される事になった。 その夜、自室にて。 「寂しかったんだよ・・・。」 「うん、ゴメンね。」 風呂上りの2人、シンジはマナを後ろから抱きしめて座っている。 「明日は休んでくれるよね?」 「えっ・・・。」 「私、行きたい所があるんだけどな〜。」 「分かった、付き合うよ。」 「そ・れ・と。」 「まだあるの?」 「うん、私以外の人と外泊しない事。」 「約束するよ。今度は2人で何処かに泊りがけで行こうか。」 「うん♪」 後日、発端となった行動をしたカヲルにはアスカ・レイ・ユイ・マナの4人によってお仕置きされた。 「え、映画を見ただけなのに・・・ひ、酷い。」 <後書き> ども、ウエッキーです。 夫婦なお話だし、こんなのもありかなと。 流石に、アスカと不倫なんてのは・・・ねぇ。(^^; それと、作中にあったいかがわしい(?)場面は映画の部分ですよ。 後半のシーンはシンジとカヲルがそんな事をしていたわけで無いです。<当然か。 次回はどんな話にしようかなぁ・・・でわ! ウエッキー 「ユイさん、ゲンドウ氏に協力要請が出てますが。」 ユイ 「あの人も馬鹿じゃないから大丈夫でしょう、裏切ったら離婚するだけよ。」 ゲンドウ 「問題無い、私はユイ一筋だからな。」 ウエッキー 「何時の間に・・・。」 ユイ 「はいはい、わかったからさっさと仕事してきなさい。」 ゲンドウ 「あ、ああ・・・。」(ゲンドウ、退場。) ウエッキー 「冷たいっすね、どうでもいい事ですが。」 ユイ 「昔は可愛いと思ったけど、今ではちょっとね。」 ウエッキー 「はあ。」 ユイ 「家にはマナちゃん、アスカちゃん、レイにキョウコがいるのよ、女同士の方が楽しいわ。」 ウエッキー 「・・・何か、いやらしい感じがしますね。」 ユイ 「そんな事ばっかり考えてるからよ。」 ウエッキー 「ひ、酷い!」 ユイ 「あっと、夕飯の仕度があるからまたね!」 ウエッキー 「はい、それでは皆さん、また次回お会いしましょう。」 <次回予告> ついにアスカにも春到来の予感。 家には新婚カップルが、親友には恋人が、寂しいと思っていた彼女にもついに! そして、レイの彼氏も明らかに!! 次回、愛のある生活 〜第五章〜 『春、到来?!』 を、お送りしまーす。 *内容・題名は変更するかもしれません、あくまで予告です。
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