Nerv 赤木リツコ研究室


普段はリツコとマヤの2人しかいないこの部屋に、4つの人影があった。
内2つはリツコとマヤ、残りの2つはアスカとレイだ。


「貴方達、受け持ちは終わったの?」

キーボードを叩きながら、リツコは2人に話しかけた。

「アタシは反応待ち、明日まで待たないとダメなのよ。」

「・・・私は終わってるわ。所長が帰ってきたら報告するだけ、その後は指示待ち。」

「手が空いてるなら手伝ってもらえると、センパイも私も嬉しいんだけど・・・。」

リツコ同様、何やら打ちこんでいるマヤが2人に助けを求めた。

「やーよ、せっかくゆっくり出来るんだもの。」

「そう、自分の仕事は自分でやらなくてはダメ。」

「だったら、出てって貰えるかしら?」

少し厳しい声で2人言うリツコ、あまり余裕は無いようだ。

「怒らないでよ、マヤと2人きりになれないからってさぁ〜。」

「八つ当たりはいけないわ・・・。」

そう言って居座るのかと思いきや、2人はそのまま研究室から出て行く。
これにはリツコとマヤが驚いた。

「あっさり出ていきましたね・・・。」

「ええ、アスカは難癖つけて居座るかと思ったけど・・・。」

首を傾げながら、手だけは動いている2人。

「まあ、いいわ。」

「そうですね。」

そう言って、2人はタイプする速度を上げていくのであった。





Nerv 休憩所


出てった2人はここでコーヒーを飲んでいた。

「邪魔だからって、あんな声出さなくてもいいのに。」

「・・・愛する人との時間は大事だから。」

頬を染めながら、アスカの愚痴にレイが答える。
もちろん、レイの視線はアスカに向いている。

「へぇ、結構言うじゃない。アンタもアイツとの時間は大事なの?」

「ええ、アスカにはわからないでしょうけど。」

「どういう意味よ。」

ムッとしながら口を開く、聞かなくても意味はわかっているのだろう。

「アスカみたいに『24年間交際経験無し』、『処女』、『高望み主義』にはわからないわ・・・。」

「な、な、なんですってぇ〜!!」

いきなり立ちあがると、レイの襟を掴み立ちあがらせる。
睨みつけてくるアスカの視線を、無表情に受けている。

「でも、安心して・・・。」

掴んでいる手を解き、笑顔を浮かべると、アスカを抱きしめた。

「ちょ、ちょっと!」

「アスカには私がいるわ、貴方の為ならあの人も捨てられるから・・・。」

「レイ・・・。」

優しいレイの声に、目に涙を浮かべながら背中に手を廻すアスカ。
2人はそのまま抱き合い、研究所内で妖しい噂を立てられるのだった。






































                           〜愛のある生活〜
                        
                          第五章「春、到来?!」






































数日後、アスカとレイの手によって、2人の妖しい噂は立ち消えた。

「まったく、友情の確認をあんな風に言うなんて!」

「・・・最低ね、あれくらいじゃまだ甘かったかもしれないわ。」

噂を広めたとされる『眼鏡をかけたそばかすの青年』は、研究所内にある巨大冷凍庫の中に『裸』で入れられている。
・・・ちなみに、現在も罰は実行中。

「アスカ、何をしてるの?」

アスカが何かをしているのを気付いた。

「ん?携帯よ、出会い系とかやってんのよ、最近。」

「外出が多いのはそう言う事・・・。」

レイの言う通り、アスカはここの所外出が多かった。
夕飯も一緒に食べる事が少なくなっており、仕事が終わると姿を消し、帰ってくるのは夜中なのだ。

「いい男に出会えたら儲けものでしょ、研究所にはいないんだからさ。」

「・・・そう。」

対して興味が無いのか、レイは素っ気無く返事をするのだった。



碇家・リビング

「じゃあ、この間見たのはアスカだったんだ。」

夕食後にくつろいでいる中、シンジが言った。

「・・・どう言う事?」

「うん。
 この間の休みにマナとデートしてたんだけどさ、街でアスカを見たんだよ。
 知らない男の人と腕を組んで歩いてたんだ、ねぇ、マナ。」

「そうそう、楽しそうだったけどね。
 そっかぁ〜、出会い系で知り合った人だったのね、あれ。」

(そんな所の男はH目的なのをわかってないのね・・・アスカのバカ。)

「どうかしたの、姉さん?」

俯いていたレイにシンジが声をかけた。

「・・・出かけてくるわ。」

そう言うと、レイは夜の街へと出かけていった。


「心配なのね、アスカが。」

「大事な人だからね、姉さんにとっては・・・。」

「どう言う事なの?」

「色々あったんだよ、昔にね。」

遠くを見つめるシンジを見て、マナは気になったが聞けなかった。



繁華街・メインストリート

(何処にいるの?アスカ・・・。)

走ってきたのだろう、息を切らせながら辺りを見つめる。

(早く探さないと・・・。)

また走り出すレイ。
アスカは今回が始めてではないのだが、レイの頭にはそんな事は微塵も残っていなかった。



「中々美味しかったですね、あそこの料理。」

「そうね、可もなく不可もなくね。」

レストランから出てきたアスカ。
隣にいるのは今日会った男なのだろう、今時の若者といった格好をしている。

「それで・・・。」

「そうなの、そうそう・・・。」

「マジで?!・・・。」

「でさあ・・・。」

雑談しながら歩く2人。
アスカが周りを見てみると、そこはホテル街。
周りにはカップルばかり、次々と建物の中へと入っていく。

(こ、ここは!!)

「どうかしたんですか?」

「えっ?ううん、何でもないわよ!」

「それじゃ、俺達も行きましょうか?」

「ど、どこに?」

「周りを見ればわかるでしょう、ホテルですよ。」

「そ、そういうのはちょっと・・・。」

嫌がるアスカを見ると、男は顔を歪めながら強引に腕を引っ張り始めた。

「出会い系なんてやってんだから、餓えてんだろ!相手してやるから行こうぜ!!」

「ちょ、ちょっと止めてよ!そう言うつもりじゃないって言ってんのよ!!」

「ザケンなよ!ここまで来たらいいだろ、犯らせろよ!!」

(酔ってる所為もあるし、力が入らない・・・誰か助けて!)

周りにいるカップルは我関せずを決めこんで、助けようとはしない。
アスカはあきらめかけたその時!

「・・・その手を離して。」

「何だよ、関係無い奴は・・・・・。」

振りかえった男は驚いた。
後ろにいたレイは、連れこもうとしているアスカに負けず劣らずの美女だからだ。

「何だ、お姉さんも相手して欲しいのかよ?」

「・・・もう1度だけ言うわ、その手を離して。」

「い・や・だ・ね!」

「レ、レイ〜。」

泣きそうな表情で情けない声を出すアスカ、レイはゆっくりと微笑んだ。

「大丈夫、すぐに終わるわ。」

『ジャキッ!』

レイは男に近づくと、上着のポケットから何かを取り出し、それを男の額にあてがった。

「・・・これで最後よ、死にたくなければ離しなさい。」

「わ、わかったよ、勘弁してくれ〜!!」

男はアスカから手を離すと、一目散に逃げ出した。

「・・・・・・・。」

「大丈夫?アスカ。」

「レ、レイーーー!!!」

アスカはレイに抱きつくと、そのまま大声で泣き出してしまった。
よほど恐かったのだろう、レイは黙ってアスカの背中を撫でていたのだった。



碇家・アスカの部屋

繁華街から手を繋いだまま帰ってきた2人。
お風呂に入ってさっぱりした所であるが、表情は暗い。

「・・・もう、出会い系は止めるのね。」

「うん・・・止める。」

「やっぱり、休憩所で言った言葉を気にしたの?」

だとしたら、原因は自分にある。レイは心が閉めつけられる感じがした。

「それもあるけど・・・・・憧れの人が今度来るから、付き合い馴れしておこうと思って。」

「憧れの人?」

「うん、メール交換してるの。
 素敵な詩のHPの管理人さんなんだけど、今度会うことになったのよ。」

「そう、どう言う人なの?」

純粋な好奇心、アスカが頬を染める相手のことが知りたかった。

「顔はわからないんだけど・・・・・。」

PCの電源を入れると、そのHPを開く。
詩のコーナーに入って、お気に入りの詩をレイに見せた。

「素敵な詩でしょ?」

「・・・・・・・・・・・。」

画面を見るレイ、心を打つような詩が沢山載っていた。
見入ってしまって言葉が出てこない。

「レイ?」

「・・・ごめんなさい、惹き込まれてしまったわ。」

「でしょ!この街に住んでるらしくって、今は外国に行ってるんだって。
 それで、週末に帰ってくるから、その時に会おうって事になったのよ!」

得意げに話すアスカに、レイは喜びと悲しみを感じていた。
喜びは、アスカがいつもの調子に戻った事。
悲しみは、自分以外の人を相手に、ここまではしゃいでいる事。

「上手く行くといいわね・・・。」

「ええ、どんな人か楽しみだな〜。」







そして、週末。

(ちょっと早く来ちゃったかな。)

約束の場所で、アスカはその男を探していた。
お互い顔を知らないので、目印を決めてある。

アスカ・頭に『変わった赤い髪飾り』をつけている。(インターフェース・ヘッドセットの事です)
男・『黒くないサングラス』をかけている。


約束の時間の30分前、アスカは辺りを見ながら待つ事にした。

(どう言う人なのかしら?
 あんなに繊細な詩を書くんですもの、スマートで、優しくて、美形で・・・・・。)

「うふふふ。」

顔を赤くしながら含み笑うアスカ、周りを通る人達が怪しい物を見る様に見ている。
しかし、相手の事を想像しているアスカは気付くことは無かった。

(早く来ないかしら。)


数分後、目印のサングラスらしい物をかけた男が現れた。
辺りをきょろきょろと見まわしている男に、アスカは近づき声を掛けた。

「あの、『言葉の魔術師(ワード・マジシャン)』さんですか?」

「ん?・・・ああ。」

もちろん、読んだ名前はHN(ハンドルネーム)だ。
お互い正面を向き合うと固まった。

「しょ、所長〜!!」

「ア、アスカ君?!」

そう、サングラスの男=碇ゲンドウだったのだ。
しかも、自分の勤めている研究所の所長でもあり、世話になっている家の家主だ。
アスカは思いっきり驚いていた。

ゲンドウもまた、驚いていた。
研究所で暇を見つけては詩を書いており、見てもらいたくてHPを開設した。
いろんな人から感想を貰っており、特に熱心な読者がアスカだったのだ。
アドレスもフリーメールだった所為もあり、まったくわからなかった。

(そ、そんな・・・憧れの人が所長だったなんて〜!!)

(ま、まずい、女性に会うのもまずいと言うのに、顔見知りとはな・・・。)

アスカにしてみれば、ユイと取り合うつもりはまったく無い。
ゲンドウも、ユイと別れるつもりはまったく無い。

((知り合いに見つかったら・・・危ない(わ)!!))

「「(コクリ)」」

お互い、アイコンタクトを交わすとその場から立ち去った。

『全ては無かった事に・・・。』

そう思いながら去って行く2人。
しかし、それを見つめる者がいた。


「まさか・・・お父さんだったなんて。」

顔面は蒼白、大きなショックを受けているレイだ。

(あの顔であんな素敵な詩を書くなんて・・・詐欺。)

2人の姿が見えなくなってから、おぼつかない足取りで家へと帰るのであった。





碇家・アスカの部屋

その日はアスカは部屋に閉じこもり、例のHPで詩を読んでいた。

(・・・凄く素敵なのに、はぁ〜。)

『コンコン!』

ため息をついていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「誰?」

「・・・私、入っていい?」

「レイなの、いいわよ。」

「・・・失礼するわ。」

「!!」

入ってきたレイの顔色が悪い事に気付き、アスカはたまらず近寄った。

「どうしたの?!」

「・・・ちょっと。」

「いいから話しなさいよ、原因がわからなきゃ対処できないでしょ!」

「・・・アスカはお父さんが好きなの?」

「へっ?!」

一瞬、間の抜けた顔。
そして次の瞬間、それは赤くなり必死に言い訳を始める。

「ち、ち、違うわよ、会うまで知らなかったのよ!!」

「・・・隠す事は無いわ、お母さんは譲ってくれるかも。」

「まさか!話したんじゃないでしょうね?!」

「・・・これから。」

「何も言わなくていいわよ!ユイさんから取るつもりも無いわ!!」

「・・・よかった、アスカが普通で。」

レイはそれだけ言うと、顔色が悪いまま出ていった。
1人残されたアスカはふと思った。

(どうして、レイが所長と会ってた事を知ってるのかしら・・・・・って!!)

「後をつけてきたのね〜、アイツ!!」

怒りで顔を真っ赤にして悔しがるアスカ、その間に話が広がっている事には気付いていない。



夕食時、周りの目がおかしい事にアスカは気付いた。

「な、何よ・・・。」

「アスカちゃんが髭を貰ってくれるみたいで、私は嬉しいわ。」

「あれが義理の息子になるなんて・・・親不孝にも程があるわよ、アスカちゃん。」

笑顔のユイと辛そうな表情のキョウコ。
アスカは咄嗟にレイを睨みつけるが、素知らぬ顔でご飯を食べているレイ。

「アスカっておじさんが趣味だったんだぁ、彼氏が出来ないわけよねぇ。」

「なっ!そんなわけないでしょ!!」

面白そうに笑うマナには突っかかる。
ユイ・キョウコ・レイは相手が悪い、勝てない喧嘩はしないのだ。

「まあまあ、ここに住んでくれて構わないからね。」

「叔母様、誤解なんですよ〜。」

夕飯もそこそこに必死で誤解を解くアスカ、その様子を口元だけ緩めたレイが見ていた。

(アスカが悪いの、私より他の人に興味を持つから・・・復讐。)





「式には呼んでね、アスカ♪」

「違うって言ってんでしょうが!!」



翌日、同様のネタで研究所のメンバーにもからかわれ、多くの怪我人を出す騒ぎになったのだが・・・それは別のお話。















<後書き>

ども、ウエッキーです。

監禁されておりまして(詳しくは『2001'アスカバースデーお祝いの言葉にて』)、大変でした。
本当は違う感じだったのですが、監禁→脅しときたのでね、ささやかなお返しです♪

しばらく(これが完結するまで)はLASは無いので、ご容赦下さいね。>コメント係のアスカさん

結局、レイの彼氏は秘密のままですね。(^^;
しかも、シンジとマナがほとんど出番無いし・・・たまにはいいか。<おいおい



ウエッキー「いや〜、酷い目にあったなぁ。」

ユイ   「無事だった様ね。」

ウエッキー「おかげさまで、助かりましたよ。」

ユイ   「まったく、感謝しておきなさいよ、私とキョウコに。」

ウエッキー「いやまったくです、これからもよろしくお願いしますね。」

キョウコ 「謝辞は言いから、出番を増やしてね。」

ユイ   「そうそう、次回は主役のカップルと私達の話を書きなさい。」

ウエッキー「命令形ですね・・・。」

ユイ   「死にたいんだったら・・・」

キョウコ 「別にいいんだけどね。」

ウエッキー「わかりました、善処いたします。」

キョウコ 「よろしい。」

ユイ   「そういえば、レイの彼氏は一体誰なの?」

ウエッキー「お耳を拝借(ぼそぼそ・・・)ですよ。」

お母様’s「「ええーーー!!」」

ウエッキー「ではこの辺で、さようなら〜。」





<次回予告>

間に合えばクリスマスを・・・ダメならお正月をテーマにしたものを書くつもりです。
最近忙しいもので、予告がおざなりですいませんです。m(_ _)m


アスカ:うぉーーりゃーーーっ! ウエッキーっ! 殺してやるっ!(▼▼#

マナ:きゃーーーっ! 落ち着いてっ!

アスカ:落ち着けるかーーーっ!!!(▼▼#

マナ:今回はアスカが主役だったじゃない。ね。

アスカ:こんな主役っ! 納得できるわけないでしょうがぁぁっ! 弐号機発進っ!!!(▼▼#

マナ:ま、待ってってばーーーっ!

アスカ:憧れの人が髭ですってぇぇっ! ざけんじゃないわよーっ!(▼▼#

マナ:だからそれはアスカがウエッキーさんを監禁なんかするからっ!

アスカ:ポジトロンライフル標準オッケーっ! 目標っ! ウエッキー!!(▼▼#

マナ:きゃーーーーーーっ!!! やめてーーーーっ!

アスカ:発射ーーーーーーーっ!(ズガガーーン! ズガガーーン! ズガガーーン!!)(▼▼#

マナ:ウ、ウエッキーさん。大丈夫?(@@;;;

アスカ:殺してやるーーっ!(ズガガーーンっ! ズガガーーンっ! ズガガガガガーーーーーーンっ!)(▼▼#
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ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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