『おぎゃぁ、おぎゃぁ、おぎゃぁ!!!』

「産まれたー!!」

桐生アスナ邸・分娩室前の廊下で大声をあげたのはシンジ。
・・・と言うのも当然、ここにいるのは彼一人だ。

「嬉しいのはわかるけど、一応大声をあげるのは止めてね。」

「アスナさん!」

ドアを開けて出てきた彼女は、苦笑しながらそう言った。

「母子共に健康、男の子よ。」

「あ、会えますか?」

「手短にね、奥様はお疲れなんだから。」

「はい!」

言うや否や、シンジは分娩室に駆け込む。
残されたアスナは苦笑しながらその姿を見送った。

(やれやれ・・・。)



分娩室

中にあるベッドに横たわるマナ、付き添っている看護婦に抱かれているのが産まれたばかりの赤ん坊だろう。

「マナ!」

「・・・シンジ。」

余程疲れているのだろう、弱々しく微笑むマナ。

「赤ちゃん、見た?」

「こちらですよ。」

看護婦が赤ん坊をシンジに手渡した。
恐る恐る、腫れ物を扱うような手付きでそっと抱いて、見る。

「これが・・・僕達の息子。」

「そう、名前を決めてあげてね、シンジ。」

「任せてよ!」

シンジはそう言って、看護婦に赤ん坊を返すと分娩室を後にした。

「また来るから、今度は母さん達も連れてくるよ。」

「うん・・・、待ってる。」





碇邸・リビング

夕食後、リビングにはシンジ・ユイ・ゲンドウが座っていた。

「良かった、無事に産まれたのね。」

「そうなんだ、男の子だよ。」

「・・・明日にでも見に行かないとな、ユイ。」

「そうね、詳しい話をアスナに聞きたいしね。」

「それじゃ、僕は急いで仕事に行かなきゃいけないから。」

両親が来てくれる事を確認したシンジは嬉しそうにしながらも、慌てて仕事場へと向った。



『魂友』カウンター内

「今日は遅れてゴメン!」

「謝らなくて良いよ、今日は休んでもいいって言ったんだから。」

既に営業を開始している店に慌てて入ってきたシンジに、カヲルは微笑みながらそう言った。

「で、どうだったんだい?」

「産まれたよ、男の子だったんだ!」

(シンジ君の息子・・・楽しみだよ。)

嬉しそうに語るシンジを見ながら、裏ではこんな事を考えるカヲルであった。





翌日・桐生邸

昨日言ったように、シンジ・ユイ・ゲンドウはマナと赤ん坊の様子を身に来ていた。

「おはようございます、シンジ君、ユイ様♪」

「おはよう、早速だけどマナちゃんの所ヘ案内してくれる?」

「こちらです♪」

ゲンドウには挨拶、視線すらも向けずに3人を案内していく。

「マナさん、入りますよ〜?」

『どうぞ。』

部屋の中へと入ると、ベッドに座っているマナの腕に産まれたばかりの赤ん坊が抱かれていた。

「あらあら、抱かせて頂戴。」

「どうぞ、お義母様。」

赤ん坊で盛りあがる女性陣を見ながら、ゲンドウがシンジに話し掛けてきた。

「・・・シンジ。」

「何?父さん。」

「これからが色々大変だぞ。」

「うん、わかってるよ。」

「・・・何か、何かあったら相談しろ、私は親の先輩だからな。」

「ありがとう・・・父さん。」

言い終えたゲンドウの表情は少しだけだが微笑んでいた、シンジにはそれが頼り甲斐を感じる表情に見えた。

「しかし・・・」

「ん?」

「しかし、何故女の子ではないのだ?」

(・・・最悪だよ、父さん。)

先ほどまでの『頼れる父』はどこへやら、シンジはこんな父を持った己を呪いたくなった。




「アスナちゃん、マナちゃんの退院は何時なの?」

「そうですね・・・自然分娩ですし、週末には退院できると思います。」

「週末ね、わかったわ。」


「(週末だって、早くマナが抱きたいのにな。)」

「・・・バカ、2人目はまだいらないわよ。」

「わかってるよ。」

『ちゅ♪』











                           〜愛のある生活〜


                         最終章「愛のある生活・・・?」











「お父さん、早く早く!!」

「ほら、こんな大事な日に遅れるのは嫌よ。」

「わかってるよ。」

着慣れない格好の為か、しきりにネクタイを気にするのはシンジ。
隣を歩くのは、こちらはビシッと決まっているマナ。

「2人共遅いよ〜。」

2人の元に駆け寄ってきたのは1人息子の『ユウマ』。
今日は息子の小学校の入学式、背負われたランドセルは日光を浴び、ピカピカ光っている。


「ユウちゃ〜ん♪」

そう呼びながら、後ろからやってきたのは一人の女の子。
その女の子の後ろには一人の女性が歩いていた。

「ダメよ、そんなに走ると転ぶわ。」

「ママも早く早く〜!」

「わかったから、そんなに走らないで。」

仕方無しと言った感じに答えると、女の子に追いつこうと走り始めた。

「おはよ〜、ユウちゃん♪」

「うわっ! おはよ、レンちゃん♪」

挨拶しながら、ユウマに思いっきり抱きついた女の子、彼女の名前は『碇レン』。
そして・・・。

「お疲れ様、姉さん。」

「・・・ええ、疲れたわ。」

後ろから走ってきたのは碇レイ、シンジの姉であり、マナの義姉だ。

「早いよね、あれからもう7年だよ・・・。」



7年前

マナがユウマと共に碇邸に帰ってきてから、レイが子供好きになった。

「・・・可愛い。」

マナ・シンジを除けば、一番面倒を見ていたのは彼女だろう。
2人が出掛ける事になれば、率先して面倒を見ると言うのだ、ユイが居ようが居まいと関係無しにだ。

そして、それから1ヶ月くらいしてからだった。

「私も・・・子供が欲しい。」

交際している相手がいるのは家族は既に知っていたので、結婚するかと思ったのだが・・・。
それから更に2ヶ月ほどして、子供が出来たことを知ると別れてしまったのだ。


「・・・貴方は嫌いではなかったわ。」

「そ、そんな!」

「・・・さよなら。」


と、こんな会話があったと本人が発表したのだ。
そんな事もあり、レイはシングルマザーとなって入学式に向っていると言うわけだ。



小学校

体育館での式典を終え、教室での説明会を親が受けてる中、子供達は一足先に家へと帰っていた。

「おんなじクラスだったね♪」

「うん、学校でもよろしくね。」

「うん♪」

えへへ、とお互いに笑いあいながら、手を繋いで歩いている2人だった。



それから数時間後、同じ道を歩く3人、シンジ・マナ・レイだ。

「まさか同じクラスだったとはね・・・。」

「・・・大丈夫かしら?」

「言い聞かせれば大丈夫よ、・・・多分。」

笑顔だった子供達と比べ、親達は沈んだ表情を浮かべていた。

「好き、なんだろうね、お互い。」

「・・・そう、かもね。」

「ダメよ、おめでたい日に沈んでたら、さ。」

お互いに近い場所にいるからだろうか?
ユウマとレンは仲が良いのだ、異常なほどに。
朝の様に抱き合うのは日常だし、『〜のキス♪』なんてキスしまくるし・・・。

「元々の原因は貴方達・・・。」

「「うっ!!」」

そう、全てはシンジ・マナが所構わずいちゃついていたのを真似しているのだ。

「な、何とかなるよ。」

「そ、そうそう。」

(・・・ダメね、これじゃあ。)

非情に頼りない、そう思うレイであった。







色んな問題があるけれど、きっと何とかなるはずだろう。
だって、この2人には『愛』が、誰にも負けないくらいの『愛する気持ち』があるのだから。

「マナ、愛してるよ!」

「私もよ、シンジ♪」


「よし!今夜は『入学祝い』で頑張っちゃおうかな?」

「・・・Hなんだから。」

大丈夫だろう・・・多分、うん。











<後書き>

ども、ウエッキーです。

これにて「愛のある生活」は終了でございます。
今までお読みくださった方々、掲載してくださったタームさん、本当にありがとうございました。m(_ _)m

さて、しばらくはSSを書くのは止めようかなと思ってます。
思った様に書けないので、1ヶ月、2ヶ月空いてしまうようなペースではダメかな、と私的に思うので。
・・・なんて言ってても、何時の間にか投稿してるかもしれませんが。(^^;
投稿されてたら読んでやってくれると嬉しいです、あと感想も欲しいです〜。<おいおい

それでは!


マナ:なんて幸せな生活なのかしらぁ?

アスカ:(ムカムカムカ)(ーー#

マナ:家族みんなで楽しく生活してるって感じね。

アスカ:アタシは、何処行ったのよーーーーっ!

マナ:脇役なんだから、こんなものよ。

アスカ:ファーストの方が目立ってるじゃないのっ。

マナ:綾波さんの謎は最後まで謎だったけど・・・子供達は幸せそうね。

アスカ:母親になって幸せそうじゃないっ。

マナ:とっても素敵なハッピーエンドよねっ!

アスカ:うがーっ! アタシは最後まで報われなかったわっ!

マナ:あぁ、最高のエンディング。ウエッキーさんありがとーっ!
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frontier@tokai.or.jp

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ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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