「「いってきまーす!!」」 「「いってらっしゃい。」」 外から聞こえてくる子供の声と母親の声。 (・・・もう、そんな時間なのね。) 目覚まし代わりにしているのだろうか? 隣の家に住むアスカは目を覚ました。 碇家の娘達に子供が生まれてから少し経った頃、焼けてしまった家の建て直しが終わった。 居づらさを感じていたアスカにとっては、とてもありがたい知らせだった。 何故居づらいのか、そう・・・・・。 『自分だけ彼氏も子供もいなかったからである。』 子供を抱き、幸せそうにしている友人達。 そこに入れない自分、それはアスカにとって苦痛にしかならなかったのだ。 しかし、シンジ・マナがどれだけいちゃつこうが気にはならなかった。 いちゃついてるのはからかったり、嫌味を言ったり、対処する方法は幾つもあった。 けど、子供を持つ事には対処の仕様がなかった。 相手もいなければ、経験も無いのだから。 (アイツらは幸せそうね、こっちはこの歳までバージンだってのに・・・。) 〜愛のある生活〜 最終章・外伝「アスカノアイ」 その日の午後、アスカは隣の碇家を尋ねた。 理由は休暇で暇だからだ。 持ったままの合鍵でドアを開けると、リビングへと向う。 「はろ〜、お2人さん。」 「アスカ、いらっしゃい。」 「お茶、淹れるわね・・・。」 ちょうどティータイムだったマナとレイは、アスカを笑顔で迎え入れた。 「暇そうね、アンタ達は。」 「そう言う事言う? ここに来てるアスカだって暇人って感じよ。」 「う、うっさいわね!」 会うと何時もこの調子なアスカ・マナ、彼女達は喧嘩するのがコミュニケーションなのだろう。 そして、それを止めるのがレイだ。 「アスカ、お茶。」 「あ、ありがと、レイ。」 早速、淹れてもらったお茶を口に運ぶ。 「美味しい、流石はレイね。」 「ありがと・・・。」 顔を真っ赤にして答えるレイ、アスカが好きなのは昔から変わらない。 2人もわかっているので、反応を茶化したりはしない。 それから3人はファッション雑誌を広げたり、ワイドショウを見ながら盛りあがったり、そんな時間を過ごしていた。 しばらくして、レイがアスカに尋ねた。 「アスカは結婚しないの?」 「相手もいないし、アンタみたいにシングルマザーって柄でもないわ。」 「そうよね、尻に敷かれたがる男の人はいないわよねぇ。」 「アンタねぇ〜!」 「冗談よ、冗談。 けど、もういい年齢なんだよ、『高望み』をするのは止めたら?」 マナの一言に、アスカの表情が固まった。 そして、それは一気に怒りの表情へと変わる。 「何よ、高望みしなきゃ結婚だって、出産だって出来たって言うの? 自分がいい結婚しからってさ、哀れむ様にそんな事言うんじゃないわよ!!」 「な、何をそんなに怒ってるの?」 何かとしてきたこの話題。 しかし、アスカがここまで激昂するのは今回が初めてであった。 「アタシの・・・アタシの・・・。」 「マナ、ここは私に任せて。」 「お、お願い。」 レイはそのまま、アスカと共に自室へと向かった。 (アスカ・・・どうかしたのかしら?) 言い過ぎたとは思っていない、前から言ってきた事だから。 マナはアスカの反応に首を捻りながら、リビングを片付け始めるのだった。 レイの部屋 レイはベッドに座り、泣いているアスカを宥めていた。 「・・・どうしたの?」 「ゴメン、なんでかわからないわ。」 「・・・そう。」 (表面上は何でもないフリをしてても、心の中ではストレスが溜まってたのね・・・。) 言葉に出さず、黙って背中をさすっていると。 「ありがと、もういいわ。」 「・・・・・。」 言われた通り、さするをやめるとアスカが口を開いた。 「嫉妬、って言うのかしらね。 我慢出来なくなったんだと思う、何でもないようにしててもイライラしてたから。」 「・・・そう。」 「でもね、アイツ以上の男に会えないんだからさ、恋だの結婚だの出来ないのよ。」 「・・・シンジ?」 「そう、知ってたんでしょ?アタシがアイツの事を好きだった事。」 「(コクン)」 レイは黙って頷いた。 「昔から好きだったなぁ・・・。 弱虫で、すぐ泣いて、いつもアタシの後ろにアンタと一緒にくっついてて、『アタシがずっと守るの!』なんてね。」 「そうね、私は命を助けられたもの・・・。」 「ああ、あの時ね。」 今から20年以上も前、レイが交通事故にあった事があった。 すぐに病院に運ばれたものの、出血が酷く危険な状態だった。 輸血が施されようとしたその時、レイの血液型が特殊だった為、病院にあった血液パックでは輸血できない事がわかった。 「じゃあ、アタシの血を使って!」 そう言ったのが子供の時のアスカ、彼女はレイと同じ血液型なのだ。 それに続く様に、母・キョウコも言った。 「私からもお願いします。 今のままでは総合病院から届けられるまで持たないのでしょう、娘の血を使ってください。」 「キョウコ・・・。」 「大丈夫よ、パックが届けば2人に輸血すれば良いんだもの。」 「ありがとう、キョウコ。」 こうして、レイにアスカの血が輸血され、1時間後にパックが届き事無きを得たのだ。 「今思うと、凄い事したわよね、アタシ。」 「嬉しかった、これでアスカは他人じゃなくなったから。」 頬を染めてそう言うレイに、アスカは思いっきり引いた。 「な、何いってんのよ・・・アンタ。」 「アスカを守りたいと思ったから、あらゆるものから・・・。」 「レイ・・・。」 しばらく無言の後、アスカが口を開いた。 「アタシは結婚も出産もしないわ。」 「・・・・・。」 「研究一筋で生きていくわ、それこそ世界に、歴史に名を残すような科学者になるのよ!」 「・・・そう、頑張って。」 どこか寂しそうに言うレイ、アスカはレイの頭に手を乗せて言った。 「レンがお嫁にいったら、アンタはアタシを手伝いなさい。」 「・・・いいの?」 「当然よ、アンタとアタシは『姉妹』なんだから。」 「ありがとう、アスカ・・・。」 それから数年後・・・・・・・。 「おめでとうございます、Dr.惣流!」 「ありがとう。」 研究室に報道陣が多数入り、多くのカメラとマイクがアスカに向けられていた。 「最年少女性ノーベル科学賞受賞、この喜びの声を誰に伝えたいですか?」 「大事な親友と、多くの友人に。」 「次の研究は一体何をするつもりですか?」 「しばらくは休みます、正直疲れたので。」 「休暇ですか?その休暇の間に噂になってる男性との結婚はあるんですか?」 「その噂はデマです、私は誰とも交際してません。」 「付き合ってる男性はいらっしゃらないのですか?」 その質問聞いた時、聞いてきた記者を人睨みしてから、こう答えた。 「かつて好きだった男性より、魅力的な男性に巡り逢えないものですから。」 その発言に色めき立つ報道陣。 その時、研究室のドアをノックする音が聞こえた。 『コンコン!』 「失礼します、博士にお客様が来ておりますが・・・。」 「相手はわかっているわ、それでは私は失礼します。」 報道陣にそう言い残して、アスカは研究室を後にした。 「今日、レンがお嫁にいったわ。」 「ユウマの所でしょ。」 「ええ・・・。」 「それじゃ、これからは手伝ってくれるんでしょ?」 「ええ。」 「アンタの研究室そのままそっくり移したんだからね、ここに。」 「ありがとう、アスカ。」 「・・・でも、その前に休みが欲しいわ。」 「どこか、行く?」 「そうね、2人で旅行でもしましょうか?」 「ええ、行きましょう。」 その後、アスカは結婚する事もなく生涯を終えた。 レイと共に研究一筋に生きた彼女の生活に、『愛』は無かったのだろうか? 否。 成就する事が無かったとはいえ、彼女が心に持ちつづけていた『シンジへの愛』は不滅だったのだ。 「『生まれ変わり』って言うのがあるんなら、今度は女性の幸せってのを得てみたいわ・・・。」 <後書き> ども、ウエッキーです。 これにて『愛のある生活』は本当におしまいです。 今まで読んでくれた皆様、掲載してくださったタームさん、改めてお礼を言わせていただきます。 ありがとうございました!m(_ _)m 補足説明として、最後の研究室って言うのはNervではありません。 独立して、自分の研究所を設立したわけです。 レイの娘・レンが、シンジ&マナの息子・ユウマと結婚したと書きました。 『いとこ』同士って結婚出来るんですよね? もし仮に出来ないとしても、そこはつっこまずに流してください。m(_ _)m それでわ! ウエッキー 「アスカ編、終了っと。」 ユイ 「この大きさなら、最終章の後ろにくっ付けて投稿すればいいんじゃないの?」 ウエッキー 「いいんですよ、外伝なんですから。」 ユイ 「まあ、いいけど。」 ウエッキー 「素直に引き下がりましたね?」 キョウコ 「だって、最終章の時点で貴方との契約はお終いだもの。」 ウエッキー 「それってまさか・・・。」 ユイ 「そう、今までの分とまとめてアスカちゃんの攻撃を食らう事になるでしょうね。」 キョウコ 「まあ、そう言うわけだから・・・」 ユ&キ 「じゃあねぇ〜♪」 ウエッキー 「なぁんてこったー!早く逃げなくては、本当に殺されてしまう〜!!」 レイ 「そう、これで終わりなのね・・・。」 *前にも言いましたが、無期限のお休みモードに入ります。 1ヶ月先かもしれないですし、半年先、最悪2度と書かないかもしれません。 しかし、ネタが思いつけば翌日にも書いて、送るかもしれませんので無期限です。
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