『人』と言う道を捨てた時、僕はどうなるんだろう・・・・・・・。



自室でシンジは目を閉じていた。
眠っているわけではない、大きな選択肢について考えていた。



EVAが無くても自分を守る『力』に、新しい友達と過ごす永遠とも言える時間か・・・・・。



今の状況では『捨てる』方がメリットがあるように感じていた。
今までは『人』であったから、『力』が無かったから、辛い事が多かったとも思えるからだ。
だが、シンジはその選択肢の間で悩んでいた。



カヲル君は大丈夫かな・・・・・。



不意に浮かんだ『友人』の笑顔、シンジは無性に寂しさを感じた。










 
                       ・ 自由への道のり、愛の扉 ・ 
 
                           第2話 「選択」












同時刻・Nerv

司令室ではゲンドウがミサトに指示を出していた。

「第17使徒、サードチルドレンの捜索を始めろ。
 使徒は捕獲して連れてくる様に、ダメならば殲滅も構わん。」

「しかし、人間サイズではEVAでの捕獲は厳しいと思われますが。」

「・・・何の為に、君がここに居るのだ?」

ミサトの言葉に、ゲンドウは一層声を低くしてこう言った。

「も、申し訳ありません!」

「・・・名ばかりの作戦部長など要らん。」

『コンコン!』

不意にノックの音がした。
ゲンドウはミサトから視線を外し、モニターに目をやる。

「入れ・・・。」

ドアのロックを解除する、そこに立っていたのはアスカだった。

「失礼します。」

(初めて入ったけど・・・気味悪い感じよね。)

目だけを動かし、部屋内を観察する。
無駄に広い空間に、ある物は1組の机と椅子だけ、それが気味悪さを感じさせた。

「セカンド、葛城三佐に聞きたい事がある。」

「「は、はい。」」

「先ほど、使徒・渚カヲルが言っていた事はどう言う事か説明したまえ。」

「「・・・・・・・。」」

答えない、答えられるわけが無い。
端から見ても、ゲンドウがシンジの事で怒る事は無いだろうとしても、2人は口を開こうとはしない。

「・・・答えられないのか?」

「「・・・・・・・。」」



しばらく、無言の状態が続いた後、ゲンドウが口を開いた。

「もういい・・・。」

その言葉に、2人は大きく息を吐いた。

「セカンド・葛城三佐、必ず渚カヲルとサードを捕獲する様に、以上だ。」

「「失礼します。」」

2人が部屋から出て行くと、ゲンドウは受話器を上げ、ボタンを押した。

『はい。』

「私だ。」

『どうされました?司令。』

「サード、フィフスのIDを抹消しろ。」

『わかりました。』

受話器を下ろし、手を口の前で組む。

(あと少しなのだ・・・その為には必ず取り返さねばならん。)







その頃、カヲルはNervから『家』へ帰っているところであった。

(アダムの回収は完了だね、後は・・・・・。)

ちらっと後ろを見る。
本人達は上手く隠れている様だが、カヲルには尾けられている事がわかっていた。

(今はそんな事をしている場合じゃないんだけどね。)

苦笑しながら足を止め、後ろを振りかえった。

「隠れててもわかるよ、このまま尾いてこられるのは迷惑なんだ・・・わかるかい?」

言い終えて微笑を浮かべた、瞬間!

『ダダダダダ!!!!!!』

『パァン!パァン!!パァン!!!』

『ドン!!!ドン!!!』

様々な重火器から弾がカヲルに向って、一斉に発射された。

『キィィィィィン!!』

甲高い音と共に『真紅の壁』がカヲルの前に出現し、迫る弾を全て防いでいた。

「無駄だよ・・・。」

(1、2、3、4・・・・・10、11人か、仕方ないね。)

数を確認し、1歩1歩、『捜索人』の方へと歩み寄る。
平気で近づいてくるカヲルに向って、パニックを起こしながらも、引き金を引きつづける『捜索人』達。
そして、カヲルが彼らの目の前に立った時、銃撃が止んだ・・・弾切れである。

「尾いてこなければ、長生きできたのに・・・残念だね。」

カヲルの右腕が横・縦と十字に振るわれた。
そして次の瞬間、その場に居た11人は物言わぬ屍へと変わった。

「・・・綺麗な赤だね。」

屍に背を向け、カヲルは家路を急ぐのであった。





その頃、家の中ではサキエルと誰かが話をしていた。

「ねぇねぇ、シンちゃんは?」

「シンジ君?お部屋に居るんじゃないかな?」

「行ってみよ〜っと。」

「邪魔しちゃダメよ。」

台所で片付け物をしているサキエルは、走り去っていく『妹』にそう言うと続きを始めた。



『コンコン!』

(カヲル君、かな?)

ノックの音を聞いて、シンジはドアを開ける。
しかし、そこに立っていたのは待ち望んでいる相手ではなかった。

「シンちゃん、遊ぼ!」

「え、えっと?」

(誰だっけ・・・いまいちわからないんだよね。)

『外見』・『中身』と知っている人物、しかし見分けがつかないのだ。

「あたしはアルサミエル、アルちゃんって呼んでって言ったよ!」

「あっ!」

(思い出した、確か・・・・・。)



初めてここに来た時、シンジと使徒達は自己紹介をした。
その時だ。

『あたしはアルサミエル、アルちゃんって呼んでね、シンちゃん!』

『あっ、よ、よろしく・・・。』

と言う会話を交わしたのだと思い出した。



「で、ア、アルちゃんは何か用なの?」

「それはさっき言ったよ、遊ぼ!って。」

「ゴ、ゴメン。」

咄嗟に謝るが、遊ぶ気にはならない。
自分にとって、今考えてる事は一大事なのだから。

「今日はダメかな、今大事な事を考えてるんだ。」

「う〜、残念。」

そう言って、アルサミエルは頬を膨らませながら部屋を出て行く。
ドアが閉じられると、シンジは顔を緩ませた。

(綾波の顔で膨れるとあんな顔になるんだ。)

それも少しの間だけで、すぐさま机に戻る。
朝から考えつづけている事についての答えを出す為に・・・・・。





数時間が経過し、カヲルが戻ってきた。

「ただいま。」

「お帰りなさい、兄さん。」

「シンジ君はどこだい?」

カヲルの言葉に、サキエルは表情を少し曇らせる。

「その、部屋から出てこないんです。食事は食べた様なんですが・・・。」

「わかったよ、行ってみる事にする。」

「はい・・・。」

(そんなに悩ませてしまうなんて・・・シンジ君。)

カヲルは軽く自己嫌悪に陥りながら、シンジの部屋へと向った。



『コンコン!』

「僕だよ、開けてもらえないかい?」

聞かれるより前に声を聞かせると、部屋のドアが開いた。

「お帰り、カヲル君。大丈夫だった?」

「ただいま、シンジ君。その話を含めて、部屋に入れてもらってもいいかい?」

「あっ、ゴメン・・・どうぞ。」

シンジはカヲルを招き入れる、2人は床に腰を下ろした。

「まずは、これがアダムだよ。」

カヲルがポケットから出したのは『赤い六角柱』だった。
中が透けて見えるそれには、何やら『モノ』が見える。

「こ、これが?」

「そう、卵に還元されてから復元したものだよ。
 そのおかげと言うか、君が『力』を得やすい形態でもあるのさ。」

(『力』か、まだ僕は決めてない・・・。)

決断が出てない事からか、シンジの口は開かない。
じっ、とアダムを見つめていた。



「さて、どうするんだい?」

「えっ?」

「出来れば、ここで決めてもらえるのが1番良いんだ。
 『彼』も生きているしね、これ以上の成長は・・・ね。」

「よ、余裕は無いの?」

アダムを見て、何やら考える仕草を見せると、カヲルは口を開く。

「・・・・・1週間、かな。」

「1週間・・・。」

自分の運命を決める、タイムリミット。
シンジにはその期間は短いと思えた。

「よく考えてみてほしい、僕はどちらでも構わないから。」

おやすみ、と一言加えると、カヲルはアダムを持って部屋から出ていった。



(あと1週間、か・・・・・・・。)





一方、シンジがいなくなった為か、葛城家は酷い有様になっていた。
最低限の生活スペースは残されているものの、そこ以外はゴミがこれでもかと置いてあるのだ。

『ガチャッ!』

ドアを開け入ってきたのはアスカだった。

(相変わらず、酷いわね・・・これ。)

酷い状況だと思っていながらも、今現在片付ける気は無い。
溜まり始めた頃は少しは片付けていたものの、溜まる方が圧倒的に多く、放置してしまうようになったのだ。

(早く帰ってきなさいよね、そしたら手伝ってやるんだからさ・・・。)

買ってきたお弁当をテーブルの上に載せると、着替えの為に部屋へと戻る。


『ガチャッ!』

着替えを終え、夕食のお弁当を食べようとすると、玄関のドアが開く音がした。

「ただいま、アスカ。」

「な〜んだ、ミサトか・・・。」

「な〜んだはないでしょ、一応は私の家なんだから。」

そう言うと、自分の夕飯をテーブルに置き、着替えに部屋へと入った。


部屋から出てくると、冷蔵庫を空けてビールを取り出す。

『プシュッ!!』

開けた時の特有の音が鳴り、一気に飲み込む。
いつもの事なので、アスカは何も言わないのだが、シンジがいると違った。


『ミサトさん、1本だけですよ。』

『大丈夫よ、ビールは私のいきる活力原なんだから。』

『で、でも、飲み過ぎは体に・・・。』

『大丈夫、大丈夫!』

『放っておきなさいよ、言って聞くようなミサトじゃないでしょ。
 それより、お腹空いたから早くしてよ。』

『ご、ゴメン・・・。』


今となっては、こんな会話すら懐かしく思える。
シンジがいると賑わっていた食事時も、いなくなっただけで静寂に包まれていた。

「・・・シンジはさ。」

「えっ?」

「シンジは、まだ見つからないの?」

俯きながら、アスカは尋ねた。

(真面目に答えるべきかしら、けど、久しぶりのコミュニケーションだし・・・。)

ミサトがこんな事を考え、答えずにいると、アスカが再度尋ねた。

「ねえミサト、シンジはまだ見つからないの?」

「心配?シンちゃんの事。」

「ベ、別にそう言うわけじゃないけど、家の事してくれる人間がいないのが不便なだけよ!」

ミサトは、アスカの顔が赤くなってるのがありありとわかった。

「Magiで街中をサーチしても見つからなかったわ、幾つかサーチ出来ないポイントが出てきたのよ。
 だから、サーチ出来なかった所をエリアで分けて、各エリアに捜索隊を送ったわけ。」

「それで?」

続きを聞きたがるアスカを前に、ミサトは一呼吸置いてから口を開く。

「・・・1ヶ所だけ、捜索隊が戻ってこなかった所があったわ。
 分けたポイントで言うと、『W』ポイントって所なんだけどね。」

「じゃあ、そこにシンジが・・・・・。」

「いる確率は高いわ、渚カヲルと共にね。」

ここで会話が途切れた。





しばらくして、ミサトがアスカに明日の事を伝え、そして2人は部屋へと戻った。

(EVAまで使うのね、明日から捕獲訓練、か。)

ベッドに横になりながら、アスカはミサトの言葉を思い出していた。


『明日の訓練は人間をEVAで捕獲する訓練をしてもらうわ。
 知っての通り、渚カヲルは人間サイズの使徒だし、碇司令の命令で捕獲しなければならないのよ。』


(どうして捕獲なのかしら・・・今までは全部殲滅してたのに。)

かつて、使徒を捕獲しようとした事を思い出すが、結果失敗に終わり殲滅している。
色々と腑に落ちない点はあったが、今日の所は気にせず眠ることにした。

(アタシが行くまで、無事でいなさいよね・・・シンジ。)



その頃、もう一人のチルドレン・綾波レイは月を見ていた。

(何かを感じる・・・自分の近くに何がいる感じ、変だけど嫌じゃない。)

シンジがいなくなったその日から、異常を感じて始めていた。
その頃は気にするほどでもなかったが、最近は妙に気になるレベルになっている。

(碇君は無事なのかしら、早く・・・会いたい・・・・・。)

静かに輝く月を見ながら、少年に早く会いたいと願うのだった。


















<後書き>

今回は短め風味な、ウエッキーです。

う〜んとですね、次回は時間がかかるかもしれません。(^^;

その、買ってしまいまして・・・『スーパーロボット大戦IMPACT』を!!

予約特典のDVDで大声あげ、ゲームの内容やユニットの新技、新キャラに興奮したりと。

好きなシリーズなんですよ、そんなわけで遅くなったら勘弁してください!m(_ _)m





ウエッキー 「さてと、ゲームしようっと!」

レイ    「・・・何をしてるの?」

ウエッキー 「スパロボですよ、レイちゃんも出たじゃないですか。」

レイ    「それは知ってるわ、でも・・・。」

ウエッキー 「でも?」

レイ    「私と碇君が『らぶらぶ』になる日が遠くなるのは、嫌。」

ウエッキー 「け、けど、発売2ヶ月前から予約して、凄く楽しみだったんですよ。」

レイ    「私には関係無いもの・・・、早く書いて。」

ウエッキー 「で、でも・・・。」

レイ    「書いて・・・・・。」

ウエッキー 「ご、ごめんなさーい!!」(脱出)

レイ    「逃がさない・・・、早く碇君と『らぶらぶ』になりたいから。」(ぽっ)


マナ:どうやらシンジたちの居場所がわかったみたいよ。

アスカ:よーしっ! シンジを救出に行くわよっ!

マナ:ちょっと待ってっ! 渚くんが守ってるから危険よっ!

アスカ:むぅぅ。やっかいな状況だわ。

マナ:でも大丈夫っ。ウエッキー邸に潜入して、原稿を書き換えちゃうのよっ!

アスカ:そっちこそ、守りが硬そうだけど?

マナ:入手した情報によると、今スパロボにわき目も振らずはまっているらしいわっ。

アスカ:チャ〜ンス!(ニヤリ)

マナ:シンジ救出部隊突撃ーーーっ!!!o(^O^)o

アスカ:おーーーーっ!o(^O^)o
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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