『シンジ先生と惣流さん』








『キーンコーンカーンコーン!』

「はい、今日はここまでです。」

『きりーつ!礼!!』

授業が終わった教室、途端に騒がしくなる。
その様子を見ながら、教師は荷物をまとめて教室を出ようとする。

「シンジ先生!!」

「ん?今日の授業でわからない所があった?」

女生徒に呼びとめられたのは、碇シンジ。新任の社会科教師で23歳。
童顔と授業のわかりやすさで、新任早々で人気者に。(特に異性)
生徒達からは『碇先生』でなく、『シンジ先生』と呼ばれている。

「はい、ここなんですけど・・・・・。」

「ああ、これはね・・・・・。」

一つ一つを丁寧に教えていく。
よく見ると、女生徒はシンジの顔に見とれているが、本人は気付いていない。





その様子を見つめる一つの影・・・・・。

(そんな事をしても無駄よ、シンジ先生はアタシの彼氏なんだから。)

頭に赤い髪飾りをしている少女が、不適な笑みを浮かべながらシンジを見つめていた。





「・・・・・ってなるんだけど、わかった?」

「は、はい!ありがとうございました!!」

(わからない所が無くなって、よっぽど嬉しかったんだなぁ。)

顔を真っ赤にしながら、教室へと駆け戻っていく。
その様子を微笑みながら見送ると、職員室へと向う。



職員室に戻ってくると、授業を終えた教師達が雑談していた。

「・・・でねぇ、っとシンちゃん、お疲れ〜。」

「か、葛城先生、シンちゃんは止めてくださいよ・・・。」

*葛城ミサト 29歳独身 担当科目・英語。

シンジがここに赴任してきた時から、ミサトに呼ばれつづけているのが、『シンちゃん』である。
何度も止める様、頼んでいるのだが・・・効果無し。

「ミサト、嫌がってる事はするものじゃないわ。」

「赤木先生・・・。」

*赤木リツコ 29歳 独身 担当科目・理科

「シンジ君も言う時はビシッと言わなきゃダメよ。」

「は、はい!」

ミサト以外の教師は『シンジ君』と呼ぶ、と言っても皆が皆そうではないのだが・・・。

「そうそう、シンジ君はこの後予定ある?」

「明日やる小テストを家で作ろうかと思ってるんですけど・・・。」

「真面目ねぇ、それは置いといてさ、飲みに行かない?」

(葛城先生と飲みに行くと大変なんだよなぁ・・・。)

シンジが赴任した時には『歓迎会』と言う名目だったのだが、酔っ払って暴れたミサトの面倒を全て押し付けられた事があった。
それ以来、あまり飲み会に参加する事は無くなっていたのだ。

「い、いえ、遠慮しておきます。」

「付き合い悪いなぁ、シンジ先生。」

「か、加持先生!!」

*加持リョウジ 29歳 独身 担当科目・体育

職員室に入ってきて早々、会話に参加してきた加持。
味方を得たミサトは、ここぞと参加させようと誘いをかける。

「確かに、この間は悪かったけどさぁ・・・今度はコイツに面倒見させるから、ね?」

「お、俺かよ、おい!」

「ね?シンジ君。」

抗議の声をあげる加持を無視するも、シンジは首を縦に振らなかった。

「明日の授業で使うんですよ。次回は参加しますから、約束します。」

「・・・しょうがないか。その代わり、次回は絶対よ!」

「はい、失礼します。」

他の教師にも挨拶をし、シンジは職員室を出た。
中からはミサトがシンジ以外のメンバーで飲みに行く事を決定しているのが聞こえた。

(本当にお酒が好きなんだなぁ・・・。)

笑みを浮かべると、シンジは学校を後にした。





シンジの家は学校から近い所にある。
・・・と言っても、入り組んだ所にあるので、生徒達には見つかっていない。

(今日の夕飯はどうしようかな、食材は冷蔵庫にあるから・・・・・。)

歩きながら夕飯の献立を考えていると、自宅があるマンションが見えてくる。
時間が時間なのだが、ベランダには洗濯物が揺れている部屋がいくつかあった。

(そうだ、洗濯物をかたづけないと・・・って、あれ?)

自分の部屋のベランダを見ると、干してきた筈の衣類が全て無くなっているではないか。

(風はそんなに強くなかったはずだし、飛んだ事は無いと思うけど。)

気になって見に行ってみるも、自分の洗濯物どころか、何も落ちてはいなかった。

(・・・まさか、ね。)

自分の中に浮かんだ1つの可能性。
それは1番あってほしく無い事なのだが、この状況だとそれくらいしかシンジには思いつかなかった。

(はぁ、一気に疲れたよ・・・・・。)

重い体を引きずって、自分の部屋のドアの前。
立ってみてわかるのは、確実に自分の部屋の中に人の気配がする事。
鍵を取り出し、ドアを開けようとすると、先にドアが開いた。

「おかえりなさい、ダーリン♪」

(やっぱり・・・・・。)

「・・・惣流さん、何をしてるんですか?」

出迎えたのは、シンジの学校の制服にエプロンをつけた女の子。

*惣流アスカ 17歳 高校3年生 彼氏無し(シンジにベタ惚れ) 学校一の才女  

「何って、愛するダーリンをお出迎え。」

「じゃなくて、どうして部屋に入れたの?!」

シンジのその問いに、アスカはエプロンのポケットから何かを取り出した。

「これよ、これ。」

「それ・・・何時の間に作ったの?」

取り出したのは鍵、いわゆる『合鍵』と言う物だ。

「この間、初めて先生のお部屋に入った時に発見したから、持って帰って作ったの。」

「とにかく、それは私に返して、そして家に帰りなさい。」

「ダメよ、お夕飯作っちゃったもん、アタシの分も込みで。
 ・・・ねぇ、一緒にお夕飯食べていってもいいですよね?シンジ先生〜。」

目を潤ませ、上目遣いでお願いされたら、男性としては了承せざる終えないだろう。
しかも、それがとびっきりの美少女なれば尚更だ。

(・・・・・僕は弱くていいです、父さん、母さん。)

「わ、わかったよ、夕飯を食べたら帰るように、いいね?」

「は〜い♪」

(はぁ・・・、もう嫌!)

アスカはシンジの鞄を取ると、スキップで部屋の中へと戻っていった。
それに続いて、背中を丸め、ため息を漏らしながら帰宅するシンジであった。







「いただきまーす♪」

「・・・いただきます。」

対照的な2人の声。
片や『とびっきりの笑顔』で、片や『この世の終わりのような顔』をしていた。

「嬉しくないのぉ?先生。」

「・・・いいえ。」

「何か嫌いなものでもあった?」

「・・・気にしないで。」

(もしも、こんな所を見られたら・・・僕の教師生活は終わりだよ〜!!)

どうでもいい事(?)を心配していると、対面に座るアスカが何やら苦戦している。

「っと、この、もう!」

「どうしたんだい?・・・ってあらら。」

目に入ってくるのは、ぐちゃぐちゃになった焼き魚。

「上手く出来ないの、先生やってぇ。」

「しょうがないな、お箸も貸してくれる。」

「ん。」

アスカから箸とお皿を受け取ると、手馴れた手付きで骨を取っていく。

「ここの大きな骨を取ってしまえば簡単なんだ、食べようとした所からやるから難しいんだよ。」

「先生、凄く上手ね・・・。」

「小さな骨も取った方がいいかい?」

「うん、取って。」

「・・・・・・・はい、これでいいかな。」

綺麗に骨と身を別けられた皿と箸をアスカに返すと、アスカに尋ねた。

「惣流さんは家で魚を食べないの?」

「食べるけど、骨はママに取ってもらってるから・・・。」

「ダメだよ、自分でやれるようにならないと。」

「わかってるけど・・・。」

「自分に子供が出来た時に、子供に教えて上げなくちゃいけないんだからね。」

このシンジの発言に、アスカは笑みを浮かべてこう返した。

「それなら大丈夫!
 だって、アタシは先生と結婚して子供を産むんだから、先生が教えてくれるもの♪」

(だから、どうしてそうなるんだよ〜。)

あからさまにわかる、『自分への好意』。
しかし、それを受けるわけにはいかないと思っていた。



『生徒』と『教師』の関係なのだから・・・・・と。



「そうじゃなくて、お母さんから教えてもらう様に。」

「は〜い。」


    〜 食事中 〜


そんなこんなで食事も終わり、2人で食後のお茶を飲んでいた。

「どうして、僕なんだい?」

「えっ、何が?」

「だから、どうして僕なんかが好きなのかな?って。」

シンジの問いかけに、アスカはふふっと笑った。

「何がおかしいのさ?」

「ごめんなさい、先生は魅力的よ。」

「よく、わからないよ。」

「沢山あるのよ・・・1つは優しい所かな。」

そう言われたシンジは、わからないと言った表情を浮かべる。

「わからないって顔してる。
 けど、それだけじゃないんだけど、他は秘密♪」

「優しいだけなら他にもいるじゃないか。」

「だから、他にもあるの。
 でも、そんな事よりも大事なのは、『アタシが先生のことが好き』って事。」

「・・・僕は君の事はちょっと困る生徒、としてしか認識してないよ。」

「それでいいわ、アタシは先生をその気にさせる自信があるもの。」

胸を張って、そう言うアスカにシンジは驚いていた。

(どうしてここまで言えるんだろう、彼女の容姿なら好意を寄せる子は沢山いるだろうに・・・。)


「あっ!いけない、もうこんな時間!!」

アスカの驚く声で、咄嗟に時間を見ると午後8時を過ぎていた。

「さてと、送ってくよ。」

「いいの?」

「8時とは言え、夜に女の子の1人歩きは危ないからね。」



シンジの車に乗り込み、駐車場を出た所でアスカが話しかけてきた。

「そうそう、先生に好意を寄せてるのってアタシだけじゃないのよ。」

「寄せてるだけにしてほしいよ、こう言う事は勘弁かな。」

言われたアスカは頬を膨らませた。

「もう、そう言う事言わないでよね!」

「慕ってくれる分には構わないけど、恋愛関係にはならないのがいいんだよ。」

「どうして?」

「教師と生徒なんて、上手く行かないに決まってるんだから。」

「じゃあ、アタシがそれ覆すもん!」

「へ?」

頬を膨らませながら、大声で宣言するアスカにシンジは間の抜けた声をあげる。
 
「アタシが在学中に先生と恋人同士になって、卒業したら結婚式をするのよ!」

「・・・・・本気?」

「いい?絶対、アタシは先生の事嫌わないからね!!」

(そこまで僕の事を・・・・・。)

ここまで真っ直ぐに自分に好意を寄せるアスカに、シンジは少しだけ愛おしさを感じていた。


そうこうしている内に、アスカの家の前に到着した。

「それじゃあね、先生。」

「惣流さん。」

ドアを開け、車を降りようとしたアスカにシンジは声をかけた。

「ん?」

「君が卒業した時に、君が誰とも付き合ってなかったら・・・僕と付き合ってもらえるかな?」

シンジのその言葉に、アスカは目に涙を浮かべて聞き返した。

「・・・本当に?」

「君が本気なのはわかったから、僕も君が卒業するまでは誰とも付き合わない、約束する。」

言い終えると、シンジはアスカを抱きしめた。

「シンジ先生・・・。」

「今はこれだけしか出来ないけど、この先が出きる日が来る事を祈ってる。」

「ん・・・。」

アスカはシンジの背中に手を回すと、お互い抱きしめあった。


しばらくして、どちらからとも無く手を離す。

「それじゃ、帰るね。」

「うん、おやすみ。」

「おやすみなさい、・・・シンジ。」

愛しい人を名前だけで呼ぶと、アスカは逃げる様に家へと入っていった。
シンジはそれを見届けると、車を出した。



「ただいま〜っと。」

家へと帰ってきてから、シンジは大事な事を思い出した。

「あ〜!合鍵返してもらうの忘れた!!」

(あんな事があったからなぁ・・・明日も来そうな気がする。)

困った顔をしながらも、どこか楽しみにしている自分もそこにいた。

「まぁ、いいか・・・。」



そして、その予想通りに『通い妻』状態となるアスカであった。

「おかえりなさい、シ〜ンジ♪」





その後、翌年の6月に1組の夫婦が生まれるのだが・・・それはまた、別の話。














<後書き>

ども、ウエッキーです。

突如思いついたお話です、細かい事は気にしないで下さい。(^^;
今回は自分の都合で投稿が遅くなったので、お詫びになればと・・・。

それでは!



ウエッキー「LAS・・・だよなぁ。」

レイ   「・・・・・・・。」

ウエッキー「レ、レイちゃん、いたんですか?!」

レイ   「・・・裏切ったわ。」

ウエッキー「そ、そんな事無いですよ。」

レイ   「・・・裏切った。」

ウエッキー「これはアスカじゃないとダメなんですよ、他はキャラが合わないから。」

レイ   「・・・霧島さんは?」

ウエッキー「そっちもあったか・・・。」

レイ   「・・・裏切った。」

ウエッキー「ゴメンなさい!それではー!!」(逃亡)

レイ   「・・・捕まえて、続きを急いで書かせないと。」

ウエッキー(最近は逃げてばっかだなぁ・・・。)


アスカ:おーーーほほほほほ。やっぱり、こうでなくちゃっ!!!!

マナ:(ーー)ぶすぅぅぅぅぅ。

アスカ:こーんな楽しいSSが来たのよ? なに、膨れてんのよっ!?

マナ:綾波さんにもアスカにも、美味しい作品が来たのに、わたしだけ・・・。(ーー)

アスカ:こないだまでアンタ主役だったでしょっ!

マナ:使うだけ使って、わたしに飽きたのねっ!>ウエッキーさんっ!

アスカ:ちょっと・・。聞きようによっては危ないわよ。(ーー)

マナ:(ーー)ぶすぅぅぅぅぅ。

アスカ:通い妻ぁ、なんていい響きなのかしらぁ。続編、期待してるわねぇっ!

マナ:(ーー)ぶすぅぅぅぅぅ。
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system