『コンコン!』

「入るよ。」

レイはドアに目をやると、そこには待ち焦がれたシンジの姿があった。

「やあ、綾波。」

「・・・碇君。」



(何故?碇君に見られてるだけなのに、暖かさを感じるの・・・。)

見詰め合う2人。
レイは自分に向けられた、シンジの微笑に心地よさを感じていた。

「綾波、単刀直入に言うよ・・・。僕達と一緒に来てくれないかな?」

「え・・・。」

「その、僕は綾波が『人間』じゃない事は知ってるんだ。」

「・・・・・・・。」

「僕の事を聞いてるかもしれないけど、僕ももう『人間』じゃない。
 カヲル君やアルサミエル、君と同じなんだよ。」

「・・・・・。」

「もちろん、その、あの、それ以外にも来て欲しい理由があるんだけど・・・。僕達と一緒に来ない?」

「・・・何故、顔を真っ赤にしているの?」
 
レイは突如、顔を赤く染めた理由をシンジに尋ねた。

「色々な理由があるのさ、それは後でシンジ君が直接教えてくれるそうだよ。」

「カ、カヲル君!!」

カヲルの余計な一言に、シンジは大声をあげる。
そんな中、アルサミエルがレイに近づきこう言った。

「一緒に『お家』に帰ろうよ、お母さん!」

「!!」

その一言に、レイは思いっきり驚いた表情を浮かべた。

「それも後で話すから、僕らと一緒に来ないかい?」

「・・・・・・・。」

「ここにいる事は君にとっていい事ではないはずだよ、さあ!」

「・・・・・・・。」

カヲルはレイにそう言うものの、レイは動こうとはしない。

「綾波。」

「・・・碇君?」

シンジの声に反応し、視線を向けると、顔がまだ赤いままだった。

「ぼ、僕にき、君が必要なんだ。
 だ、だ、だから、だから、一緒に来て欲しいんだ!!」

叫ぶ様に言った後に訪れた静寂。
3人はレイの口から出る返事に耳を澄ませる。



「・・・わかったわ。」

「「「!!」」」

そう答え、レイはベッドから降りようとする。
それに気付いたシンジは、そっと手を差し伸べた。

「行こう、綾波・・・。」

「・・・(コクン)」

頷いて、その手をレイが取った瞬間。



(カッ!!)



病室内をまばゆい光が包んだ。
光が消えた後、4人の姿は無くなっていた・・・・・。















                        ・ 自由への道のり、愛の扉 ・ 

                           第6話 「夢と現実」
               














あ・・ちゃ・、・すか・・ん、アスカちゃん・・・・・。

                                                                             (・・・懐かしい声、この声はママ?)

あっ!起きたわね、おはよう♪

                                      (ママだ、アタシを見てくれてる頃のママ・・・。)

まだ、お眠したいのかな?

                                       (夢・・・何でもいいわ、ママがいるんだもの。)

でもね、今日はこれから出掛けるから着替えましょうね。

                                   (この頃のアタシって幾つだっけ・・・?覚えてないわ。)

流石は私の娘ね、何を着ても可愛いわ♪って、親バカね。

                                         (久しぶりのママの顔・・・やっぱり綺麗。)

今日はね、ママのお仕事してる所に連れてってあげるのよ。

                                        (Nervに?アタシ、この事は覚えてない。)

アスカちゃんに見せてあげたい物があるのよ。

                                             (エヴァよね、弐号機・・・・・。)








どう?これがお母さんの作ってる『エヴァンゲリオン弐号機』よ。

                                (何、これ・・・。これってアタシの知ってる弐号機じゃない。)

でもまだ途中なの、この上に『装甲』って服を着せてあげるのよ。

                           (装甲を着けてないエヴァってこうなってるなんて、知らなかった・・・。)

これがね、服を着せた後のイメージ映像なの。赤くてカッコイイでしょ?

                                          (アタシの弐号機、知ってる弐号機だわ。)

ここまで行くには、もうちょっと時間がかかるんだけどね。



                                          Dr.ソウリュウ!来てらしたんですか?

                                          ええ、この娘に見せてあげたくて。

                                          そうですか、パイロットも娘さんに?

                                          ・・・テストの結果次第、かしらね。
                                          でも、私は選ばれてほしくないわ。

                                          何故です?

                     来るべき時が来た時、この娘を戦わせる事になるわ。
                     それは私の望むべき事では無いもの・・・。

                     ・・・・・・・。

                     非難してくれてもいいわ、私はこの娘が大事なの。

                     親ならそう思うのでしょう、私にはわかりませんけどね。

                     ありがとう。

                     私は仕事がありますからこれで、ごゆっくりしててください。

                     貴方も頑張ってね。

                                       (知らない人・・・いいえ、覚えてないのかも?)



                                                 



                                                 (!? 場面が変わった?)

ただ今より、最終起動実験を始めます。

                                                       (ママの声!)

実験開始!

起動を確認、シンクロ率・・・60・・・70・・・80・・・90%を超えました。

実験は成功だ、プラグを排出しろ。

!! こちらの操作を受け付けません!

シンクロ率の上昇、止まりません!

・・・110・・・150・・・200・・・250・・・300・・・350・・・400%に到達!!

                                             (これって、シンジの時と一緒?!)

プラグが排出されました!

・・・・・何て事だ。

                                             (やっぱり、シンジと一緒・・・。)





これより、Dr.ソウリュウのサルベージを開始します。

                                      (成功したのよね、ママはあの時にいたんだから。)

サルベージを開始!

・・・ダメです、反応がありません!

娘がいたはずだろう、ここに呼べ!

それが、パイロット候補生でテスト中なんです・・・。

くっ、仕方あるまい・・・強引にでも成功させる!

                      (どうして?!アタシを呼んでくれれば、ママはああならなかったかもしれないのに!)



・・・サルベージ、成功しました。

医療ルームに運べ、エヴァ建造にはかかせないのだからな!





アスカちゃん、どうして何も話してくれないんですか〜?

                                (そう、ママは壊れてしまった・・・ここからの事は覚えてる。)





アスカちゃん・・・。

                                                 (ママの声がする・・・。)

私はここにいるわ。

                                                 (後ろ?・・・・・ママ!)

アスカちゃん、大きくなったわね。

                                                      (ママ!ママ!)

私はあの時に、エヴァにとりこまれてしまったの。

                                                   (最終起動実験の時?)

そう、それからずっと弐号機となってここにいたの。

                                             (じ、じゃあ、ママは・・・・・。)

ええ、貴方を見守ってたのよ。時には力を貸したりもしたわ。

                                (ママ、ママはずっと一緒にいたのね、アタシと一緒に・・・。)




アスカちゃんは、まだ戦うの?

                                             (ええ、シンジを取り返したいの。)

今のままでは無理よ、勝てないわ。

                                                      (どうして?!)

シンジ君の心にいるアスカちゃんは、憎しみの対象になってる。
取り返したとしても、意味が無いわ。

                                            (・・・じゃあ、どうすればいいの?)

自分の気持ちを思いっきりぶつけて、謝るの、精一杯。

                                                    (でも・・・・・。)

好きなんでしょう?シンジ君の事。

                                                        (なっ?!)

正直になりなさい、その為ならママも力を貸してあげる。

                                       (・・・わかったわ、ママ。
                                        アタシは、アタシはシンジの事が好きだから!)

さあ、そろそろ起きなさい・・・。

                                                 (うん、ママ・・・・・。)





目を覚ましたアスカ、目の前の世界は青一色だった。

「・・・って、ここはどこよ!
 アタシは病室にいたことは覚えてるんだけど・・・・・。」

周りを見渡してみると、自分がプラグスーツまで着ているのに驚いた。

「わけわかんないわよ、ミサトー!説明しなさいよ!!」

とりあえず、事情を知ってそうな人物で、平気で文句を言えそうな作戦部長に向って通信を始めるのだった。











『ただいま!!!』

「・・・・・。」

そう言って、家の中へと入っていくシンジ達だったが、レイだけはどうしていいかわからない表情で立っていた。

「こう言う時はね、『ただいま』って言えばいいんだよ、綾波。」

「・・・ただいま?」

「そう。」

「ただいま・・・。」

『おかえり!!!』

(おかえり、初めて言われた言葉・・・。)

レイは大声で言われたのと、初めて言われた言葉に驚いていた。

「部屋は用意してあるから、ついて来て。」

「(コクン)」

2人が2階へと上がっていくのを、カヲルは黙って見ていた。

(話しておきたい事はあるんだけど・・・今日はいいかな。)

「さて、僕はお風呂に入ろうかな。」

「あっ!わたしも入る〜♪」

「やれやれ・・・。」

今にも服を脱ごうとしているアルサミエルを宥め、苦笑しながら2人は風呂場へと向った。



「ここが、綾波の部屋なんだけど・・・・・。」

「?」

案内した部屋の前で、シンジは言葉を濁した。

「あの、その、僕と同じ部屋なんだ、けど・・・いいかな?」

「・・・ええ。」

「ほ、ほ、本当に?!」

「・・・構わないわ。」

トマトの様に真っ赤なシンジに対し、レイはわかっていないかのように表情を変えない。

「じ、じゃあ、あ、開けます。」

開かれたドアの中には、本棚・テーブル・机・椅子・座布団が置いてあるが殺風景な部屋。
1つしかないベッドには、シンジのチェロが掛かっている。

レイは部屋の中を見回すと、口を開いた。

「・・・碇君。」

「は、はい?!」

「・・・ベッドが1つしかないわ、私はどこで寝るの?」

(こういう子なんだよな、綾波は・・・。)

何処か的外れな問いに、シンジは安心感を覚えた。

「ベッドで寝るんだよ。」

「・・・碇君は?」

「ベッドだよ。」

「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」

お互い見つめあう。
この時、相手が何を考えてるかはわからないだろう。

「・・・あの。」

「な、何?あ、あ、綾波?」

「・・・枕が一つしかないわ。」

「だ、大丈夫なんだよ。」

「・・・そう。」

何か変な会話を追えた2人は、揃ってベッドに腰掛けた。

「・・・・・・・。」

(な、何か話さなきゃ、その、2人きりなんだし・・・。)

黙っているのを苦痛に感じ始めたシンジは、何か話題を振ろうと一生懸命悩んでいた。
しかし、それは無駄に終わる。

「・・・碇君。」

「な、何?」

「貴方はこれからどうするの?」

「・・・僕は、この家にいる皆と仲良く暮らしていきたいだけだよ。」

「でも、セカンドや葛城三佐、碇司令はここへ来るわ・・・きっと。」

「追い返すだけだよ、邪魔はさせない。」

何処か不安げな声で聞いて来るレイを安心させようと、はっきりとそう答えた。

「・・・殺してはダメ。」

「そんな事しないよ、弐号機をそれなりに壊せばいいだけなんだから。」

「約束・・・。」

レイは小指を立てシンジに向けた、指きりである。

「わかった、約束する。」

レイの白い指に自分の指を絡ませて、シンジはそう答えた。




(優しいね、君は・・・、そんな所が好意に値するんだけどね。
 君は彼女と一緒にいてくれれば良いのさ、『敵』は僕らが排除するからね・・・・・。)
 










<後書き>

ども、ウエッキーです。

W杯も終わってしまいましたね。
次回のドイツ大会では日本に頑張ってもらいたいです、目指せベスト4!夢は優勝!!

改めて、投稿が遅くなってしまい、申し訳なかったです。m(_ _)m
今後もこんなペースになってしまうと思いますが、見捨てずに読んでもらえれば幸いです。

でわ!



レイ    「・・・・・。」

ウエッキー 「怒ってます?怒ってますよね?」

レイ    「・・・・・。」

ウエッキー 「もしもーし、レイさん?」

レイ    「・・・・・。」

ウエッキー 「出来るだけ、次回は頑張りますから・・・機嫌直してくださいよ〜。」

レイ    「・・・・・。」

ウエッキー 「・・・レイさん?」

レイ    「・・・碇君と指きり、暖かかったシンジ君の指・・・・・はふ。」(トリップ中)

ウエッキー 「・・・・・・・・。」



<次回予告>

アスカの復活により、ミサトは『第2次ホカク作戦』改め『ファースト・サード奪還作戦』を開始しようとする。
その頃、シンジ達はのんびりとした1日を過ごしていた・・・。

次回、・ 自由への道のり、愛の扉 ・ 第7話 「策謀と平穏の1日」


アスカ:ぜーーったい、シンジを取り戻してみせるわよっ!

レイ:碇君の憎しみの対象・・・。もう無理。

アスカ:素直にシンジに気持ちを打ち明けたら、帰って来てくれるもんっ!

レイ:手遅れ。もう碇君は私のものだもの。

アスカ:弐号機と、ママがアタシに協力してくれるわっ!

レイ:碇君は弐号機を壊すって言ってたわ。

アスカ:そー簡単に行くもんですか。また、シンクロ率を400%にしてっ!

レイ:今の碇君には勝てないわ。

アスカ:負けるもんですかっ! 第2次ホカク作戦こそ勝つわよっ!

レイ:その名前、そのまんまだから、ファースト・サード奪還作戦に変わったわ。

アスカ:そうなの? 結構、アタシあの名前気に入ってたのに・・・。
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frontier@tokai.or.jp

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