翌日にゲンドウが戻り、シンジ達の立会いの中、サルベージが行われて成功した。



「あなた、シンジ達から手を引いてください。」

「わかった。」



あっさりと決着がついた。
ゲンドウにしてみれば、ユイが居てくれればいいのだ。
アダムも初号機もレイも必要無い、なら執着する必要も無いと言うわけだ。


『まあいいか』


こんな空気がNerv内を包む中、1人納得してない者がいた。

(なによコレ、こんなんでいいわけ?!)

アスカである。
一世一代の告白も拒否され、殺されかけた。
このままいくと、『自分はシンジと会う事は許されなくなる。』と思う。


(だったら、これが最後のチャンスよっ!)


家へと帰ろうとするシンジ達の前に立ちはだかった。

「シンジ!」

「・・・何?アスカ。」

「お願い!ミサトの所じゃなくてもいい、アタシは一緒にいたいの!アンタが好きなの!!」

「・・・ゴメン。」

ボソッと呟く様に、視線を逸らしながら答えた。

「シンジ・・・。」

「ゴメン、アスカの気持ちには答えられないよ。」

「・・・・・・・。」

「それと、この間はゴメン・・・。」

シンジはそれだけ言うと、その場から歩き去っていった。

「何よ、バカ・・・。」

アスカの瞳からは涙が零れていた。
2度目の告白も断られたことは辛いが、『すぐに謝る』、自分の好きなシンジがそこにいた事は嬉しかった。



「・・・碇君はバカじゃないわ。」

「!! ファ、ファースト?!」

アスカは目元を慌てて拭う。

「・・・碇君はバカじゃないわ。」

「バカよ。アタシなんて良い女を振るのよ、バカよ、大バカ、バカシンジよ。」

「・・・・・。」

「何よ?」

レイは制服のポケットから何かを取り出すと、アスカに差し出した。

「何、コレ?」

「・・・。」

「見ろって事ね。」

アスカは受け取って中を開くと、住所が書かれていた。

「ファ、ファースト・・・。」

「・・・私、ファーストじゃないわ。」

「あっ、レ、レイ、いいの?」

「・・・来るだけなら止めないわ。」

そう言いと、レイはそこから歩き出す。

「そ、そう。」

レイは歩みを止めると、振りかえってこう言った。





「・・・貴方に勝ち目は無いもの。」





「えっ?」

(今、アイツ笑った・・・?)

アスカはレイの口元が緩んだ様に見えた。
しかし、それは確認することは出来なかった。
















                        ・ 自由への道のり、愛の扉 ・ 

                           第9話「新しい生活」
















シンジ達が自由に生活できるようになって1週間が経った。



「レイ、それを取ってくれる?」

「・・・これ?」

「うん、ありがとう。」

シンジとレイは2人で昼食を作っている最中だった。
現在、この家にはこの2人しかいない。

「カヲル君達はさ、今何処にいるんだろうね?」

「・・・わからないわ。」

「まあでも、僕はさ、皆がいるのもいいんだけど、その、レイと2人きりってのもいいかなって・・・。」

「・・・・・。」

返事が無いのでレイを見てみると、頬を赤らめて固まっていた。

「も、もしかして、照れてる?」

「(ぷいっ!)」

顔を覗き込もうとするシンジの視線を避けるように、レイは首を横に振った。

「嬉しいなぁ、僕だけがそんな気持ちだと思ってたから。」

「・・・私も。」

「え?」

「私も、碇君と、ふ、2人きりで・・・。」

「2人きりで?」

既に聞かなくてもわかりそうだが、あえて尋ねてみる。
レイの顔は真っ赤になり、凄く恥ずかしそうであった。

「2人きりで、う、嬉しいわ・・・。」

「ありがとう、でもね。」

「?」

「碇君、は止めて欲しいな。シンジって呼んでくれるかな?」

「!!」

呼び方を変えるだけで凄い反応を示している。
その証拠に、レイの顔はこれ以上無いくらいに赤い。

「さっ!」

「・・・シ、シンジ、君。」

「ありがとう。徐々に馴れていこうね、レイ。」

「(こくん)」







一方、カヲル達は薄暗い部屋の中にいた。

「反応は?」

「・・・はい、ここで間違いありません。」

「よし、最後の仕事に取り掛かろうか!」

『了解!』

カヲルを残して、声の主達は何処へと消えた。

(これが終われば、また一緒に暮らせるようになるよ・・・シンジ君。)

遠く離れた地にいる親友を思いながら、カヲルも姿を消した。







「えーーー!!出て行く?!」

「そうよ、こんな夢の島で生活するのはこりごりよっ!」

コンフォート17、葛城ミサトの部屋では一騒ぎ起こっていた。
アスカが荷物を纏めて、出ていこうとしているのである。

「出て行ってどうするの?」

「決まってるわ、シンジ達の所へ行くのよっ!」

「無理よ、殺されるわよ!!」

アスカはポケットに入れてあった紙を取り出す。

「これ、レイがくれたのよ。」

「何よ、これ・・・って、ええ〜!!」

そう、シンジ達の家の住所の書かれた紙である。
驚くミサトの手から紙を取ると、大事にポケットへとしまう。

「確かに、門前払いに合うかもしれないけど・・・アタシは行くわ!」

「アスカ・・・。」

「それに、ダメならママと住むだけよ。」

「!!」



アスカの母、キョウコもまたサルベージされていた。
ユイとは違って魂だけがコアにあったのだが、出て来た時には体があったのだ。
現在、検査の為に入院しているのである。



「本当の保護者もいるんだし、これ以上世話になれないわよ。」

「アスカ・・・。」

「まっ、夢の島の住人になりたくないってのが本音なんだけど。」

「悪かったわね、夢の島で〜。」

ふてくされるミサトを見て、アスカは軽く微笑む。

「じゃっ、またね!」

「ア、アスカ!」

「ん?」

「が、頑張ってね!」

ミサトの激励に、アスカは親指を立てて答える。
そして、部屋から出ていった。

「掃除しないとね〜。」

椅子から立ち上がると冷蔵庫を開け、愛飲のビールを取り出した。
プルタブを引くと、小気味のいい音をたてる。

「・・・まっ、明日からって事で、今日はアスカの旅立ちに乾杯!」





アスカはシンジ達の家の前に立っていた。
インターホンを押そうとする指が、緊張の為か小刻みに震えている。

(き、緊張するわね、流石に・・・。)


『ピンポーン!』


自分達以外は知らないはずの家のインターホンが鳴り、シンジが首を傾げた。

「誰だろう?」

「・・・来たのね。」

「レイは誰が来たのか知ってるの?」

「・・・ええ、行って来るわ。」

そう言って、レイは1人で玄関へと向う。
シンジは持っていた物を置くと、レイを追って玄関へと向った。


「・・・いらっしゃい。」

「シンジ、いる?」

アスカが尋ねると、レイの後ろからシンジが現れた。

「アス、カ?」

「シンジ・・・。」

「レイが、アスカにここを教えたの?」

「・・・ええ。」

「・・・・・。」

シンジはレイの真意がわからなかった。
そんな時、アスカが口を開いた。

「あの、アタシもここで一緒に住みたいの!」

「えっ?!」

「か、家事も当番制でいいし、もう酷い事しないから・・・お願い!」

言い終えると、アスカは頭を下げた。

(アスカが頭を下げたなんて、本気なんだ・・・。)

思ってもみない行動に、シンジは驚いていた。
頭を上げたアスカは縋るような目で見つめていた。

「・・・ゴメン。」

「えっ?!」

「・・・・・。」

「そっか、ダメよね。・・・わかってたけど、結構辛いわね。」

「アスカの為なんだ。」

「えっ?」

わからない、そんな表情でアスカはシンジの言葉を待った。

「僕は、その、レイの事が好きなんだ。
 レイも、僕の事を好きだといってくれた。
 だからその、アスカがここで暮らすと言うと、辛いと思うから・・・。」

「・・・優しいのね。」

「僕も、レイと別の男が一緒に暮らしてる家には住めないからね。」

レイにそう言って微笑みかけると、レイは顔を赤らめて目を逸らした。

「・・・わかったわ、シンジ。」

「ゴメン、アスカさえ良ければ友達として・・・。」

シンジのその言葉に、アスカは首を横に振った。

「アタシ、ドイツに帰ることになるの。
 ママが退院したらだけど、だから無理ね。」

言い終えた途端、レイが奥へと入っていってしまった。

「レ、レイ?」

「どうしたのよ、一体?」

「さあ・・・。」

「ねぇ、聞いてもいいかしら?」

シンジが首を捻っていると、アスカが尋ねた。

「うん。」

「どうして、レイなの?」

「え・・・。」

「教えてくれる?」

「彼女じゃないとダメだと思った、かな。
 元々、気になってたし、一緒にいたいと思ったんだ。」

言い終えると、レイが手に紙を持って戻ってきた。

「・・・これ。」

「何?」

アスカは紙を受け取って開く、中にはシンジのメールアドレスが書いてあった。

「・・・私宛てでも、そこに送って。」

「ん、わかったわ。」

アスカはポケットにしまう。

「じゃあ、アタシ行くわ。」

「・・・元気で。」

「いつか、日本に来ることがあったら連絡してよ。」

「じゃあね!」

こうして、アスカはシンジ達の家を後にした。

「これで、良かったんだよね。」

「・・・ええ、良かったのよ。」

2人はどちらからとなく、手を繋いでいた。





3日後、キョウコの退院が決まり、アスカは病室にいた。

「退院おめでとう、ママ。」

「ありがとう、アスカちゃん。」

「これからどうするの?」

今後の事についてキョウコに尋ねた。

「日本にいるわよ。」

「へっ?!」

「Nervでユイの手伝いをする事が決まったから。」

「き、聞いてないわよっ!」

「今、言ったもの。」

「そ、そんな〜。」

すっかりドイツに行くものだと思っていただけに、母の言葉はショックが大きかった。

「どうしたの?」

「ううん、何でも無い・・・。」

「そう言うことだから、アスカちゃんはどうする?」

「どうするって?」

「中学校出てから、高校に行く?」

「アタシ・・・・・。」

一度言葉を切る。

「アタシはママのお手伝いがしたいわ。」

そして、はっきりとこう言った。























<後書き>

ども、ウエッキーです。

ラブラブ度が足りてない気がしてますが、レイ×シンジだし・・・こんなもんかなと。
甘々、べたべたなレイ×シンジってイメージは浮かばなかったもんで。
・・・手抜きじゃないですよ。(^^;

ちなみに、次回で最終話です。



ウエッキー 「前回は休んじゃったんだよな〜。」

レイ    「・・・そうね。」

ウエッキー 「っと、いらしたんですか?」

レイ    「・・・問題ある?」

ウエッキー 「いえいえ。そう言えば、アスカさんに優しかったですねぇ?」

レイ    「・・・ええ、問題無いもの。」

ウエッキー 「余裕、って事ですか?」

レイ    「・・・・・・・。」

ウエッキー 「違うんですか?」

レイ    「・・・あの人も、シンジ君の事が本当に好きだから。」

ウエッキー 「なるほど・・・。」

レイ    「・・・でも。」

ウエッキー 「でも?」

レイ    「・・・シンジ君は私を選んだもの。」

ウエッキー 「よ、要するに、余裕って事ですね・・・。」



<次回予告>

苦しめていた束縛から抜け出し、愛する人と共に生きる少年。
人ならず者として産まれ、特異な外見を持ったが、『同じ存在となった』少年に愛される少女。
2人の物語が今、完結する・・・。

次回、 ・ 自由への道のり、愛の扉 ・ 最終話 「自由への道のり、愛の扉」


アスカ:こ、木っ端微塵に負けたじゃないのよっ!

マナ:わかってたことでしょ?

アスカ:あれだけ頑張ったのにぃぃぃぃっ!

マナ:あなたは、まだ頑張れる機会だけでもあったからいいわよ。(ーー;

アスカ:こうなったら、アタシは仕事に生きるわよっ!

マナ:そして、猫を飼って、金髪に染めるのね。

アスカ:そ、それって・・・。

マナ:そういう人、知ってるもの。

アスカ:マッドと一緒の人生はいやーーーーーーーーーーーーっ!!!
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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