同人王惣流

written by 右京


 

「アスカー。ご飯だよー。」

いつものように夕食を仕立て上げ、アスカを呼びに彼女の部屋へ行くシンジ。
だが、今日はいつもと少々勝手が違っていた。

「…?アスカ、寝てるのかな…。」

いつもなら、ご飯の時間になるとすぐに出てくるアスカが、今日に限って全く出てこないのだ。

「アスカ、入るよ」

シンジは、少し心配になって、ドアを開けた。

 

 

 

そこには、異様な光景が広がっていた。

「あ、シンジ。ご飯?」

「ア、アスカ…。何やってるの?」

アスカは、机に向かってなにやら一心不乱に作業をしていた。
シンジがびっくりしたのも無理はない。アスカは一度大学を卒業した身。
最低限の事以外は、普段ほとんど机に向かわないのだ。

「原稿書いてるのよ」

「原稿?何の?」

言いながら覗き込むシンジ。そこには、ペンで綺麗に枠が引かれ、その中で何人かの人物が……。

「……これ、漫画?」

「うん。今度の新刊用にねー」

(……新刊?新刊って……)

「アスカ…。漫画家だったの!?」

「アンタバカァ!?」

驚愕の事実に声を上げるシンジに、即行で否定の言葉をかけるアスカ。

「これは…、同人誌の原稿よ!」

「ど…。どうじんし?」

聞きなれない単語にちょっと引くシンジ。

「簡単に言うと…。素人の書く、漫画のようなものね」

「へええ…」

 

すごいなあ。最近は、素人の人でも漫画本を出せるんだ。

 

まだいまいちよく分かっていないらしいシンジ。
まあ、無理も無いだろう。作者だってこの世界は、人づてに聞いて知っているだけだから。

「それにしても…。結構、絵上手いね、アスカ」

まだ線画だが、それでもかなり上手い。
少なくとも、その辺の少年漫画誌でギャグ漫画書いてる作家よりよっぽど上手だ。

「そんな事無いわよ。こっちの世界には、それこそプロ顔負けの人がいっぱいいるんだから」

謙遜しながらも、誉められて満更でもなさそうなアスカであった。

「そんな事無いって…。これ、どんな話なの?」

「あっ、ダメっ!」

紙をめくろうとしたシンジの手を、アスカが大慌てで抑えた。

「これは、まだ未完成だから…」

「あ、そうなの?」

そのまま、アスカはそばに置いてあった袋に手を入れ、何かを取り出した。

「はい、これ」

「これは?」

「この前の夏に委託してもらった、私の最初の本よ。コピー本だけどね」

「へえ…」

数枚の紙が、ホッチキスで本の形にまとめられていた。
コピーして作ってあるからコピー本というらしい。

「読んでみて」

「いいの?」

「別にいいわよ。あんたも無関係じゃないし」

「……?」

最後の発言がちょっとひっかかったが、読んでみたい気持ちの方が強かったらしい。
シンジは、パラパラと適当にページを開いて見て……。

 

ばたむっ!

 

一瞬で閉じた。

「あら、もう読み終わったの?」

「違うよっ!」

真っ赤になりながら、アスカの方を見るシンジ。

「これ…。18禁じゃないかっっっっっ!!!!」

心の準備が無かったので、かなり効いたらしい。

「あれ?シンジ、そういうの嫌いなの?」

「い、いや、嫌いじゃないけど……」

「ならいいじゃない」

あっけらかんとしているアスカ。

「それに…。あんたの話よ、それ?」

「えっ?」

慌てて読み返すシンジ。

 

「…………」

 

どこかで見たような背景。
どこかで見たような展開。

 

「…これ……」

 

主人公はシンジそっくりで、名前は「碇 シンジ」。
ヒロインはアスカそっくりで、名前は「惣流 アスカ」。

 

「僕達の初体験の時の話じゃないかーーーーーーーーーーっ!」

「リアリティがあるって、好評だったわよ?」

そりゃそうだろう。
アスカが、原稿用紙を指し示した。

「ちなみに、続編」

「…書いてるの?」

「『最近シンジがかまってくれないから私ちょっと寂しいな…』編よっ!」

びしっとシンジを指し示すアスカ。
青い顔のシンジ。

「…何、そのタイトル?誰が決めるの?」

「ヒカリよ?」

「へ?」

(……洞木さん?)

「私の委託先、ヒカリのところだもん。続編もヒカリが『アスカは今やうちのドル箱なのよっ!絶対に書いてくれないと困るわっ!』って」

「……。洞木さんって……」

「ついでに、この後プロポーズ編、新婚生活編、出産編とかもリクエストがあるそうね」

「…僕の人生、決定済み……?」

ヒカリの家の方角へ呪詛の言葉を吐くシンジの肩に、アスカがポンッと手を乗せた。

「冬には『できちゃった編』を出したいから……。頑張ろうねっ、シンジッ♪」

「なにをだあああああああああああああああああああああああ!」

 

シンジの絶叫が、コンフォートの一室に響き渡ったのであった。

 

 


お久し振りです。右京です。

久々に投稿用に書いたんですが……。いかがだったでしょうか?

僕の過去の作品の中でも、トップクラスの電波度だと自負しております(笑)。

あと、作中にも書きましたが、僕はこの世界あまり詳しくありません。

何か間違いがあったらご指摘お願いします。

それでは。


マナ:なんか、未来○記みたいな、同人誌ね・・・。

アスカ:リアリティのある同人誌を目指すからには、真実を元にしなくちゃね。

マナ:真実を元って・・・逆でしょ。

アスカ:嘘つくわけにいかないもん。

マナ:だからって、やりたい放題じゃないの。(ーー#

アスカ:アタシの人生設計に狂いは許されないのよっ!

マナ:シンジの意思はどうするのよっ。

アスカ:そーんなの。アタシの為にあるようなもんよっ!

マナ:ぬぬぬ。こうなったら、わたしだって同人誌書くんだからっ!

アスカ:なーに? 『一生アスカの下僕になります』編?」

マナ:そんな同人誌書くわけないでしょっ!!!

アスカ:あら? 売れそうなのに。儲かるわよ。

マナ:そんなことまで書いて、儲けたくなーいっ!(ーー#
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