恋人達の事件簿出張版
 
 
 
コンフォート17外伝:「ケーキバトル」
 
 
 
 
 
 
 
 なんだ? コイツ。
 どうしてすぐ寝れるんだよ。
 ぼく、信頼されてるのか?
 いや・・・きっとバカにされてんだ。
 ちくしょーっ!
 襲ってやるぞっ!
 
 と意気込みつつも、そんなことができるシンジではなく、ただモンモンとした時間が過ぎようやく眠りにつけたのは、日が変わってからしばらくした頃だった。
 
 2時過ぎ。
 
 部屋の端のベランダへ出るガラス戸に凭れ、月を見上げて座るアスカの姿。
 
 「寝れないよ・・・ママ。」
 
 
 

 
 詰め将棋、と云う物がある。
 要するにこう打てばこう来てそれを詰めていく、と言うある意味結果の見えている代物なのだが、人生に関して言えばそうはいかない。
 具体的な例を挙げれば、自分が踏み出す一歩がどうなるのかさえも、はっきりと分かっている者はいないのだ。
 例えば暴走した車が突っ込んでくるかも知れないし、パンをくわえた少女とぶつかるかも知れない。
 あるいはもしかしたら、バナナの皮に滑って転ぶかも知れない。
 そして・・・距離を置きたがっていた相手と妙に接近してしまう事とか。
 
 
 
 
 
 “やなヤツ”
 アスカ、シンジ共にお互いへのこの感覚は変わっていなかったが、生理的な嫌悪感とは若干違う。
 成り行きのせいとは言え婚約者を宣言したせいで、ベタベタなカップルを演じる羽目になり、しかも押し掛けてきた奇怪な二人組のおかげで一つ屋根どころか床まで一緒になってしまったのだ。
 普通の場合と同様、精神より先に身体の方が慣れてくる。
 とは言え、二人ともスレている訳ではないし、そこはやはり年相応の初々しさは保っている。
 眠れずに月夜の下、月をぼんやりと見上げていたアスカもそうだし、何とか先に寝付きはしたものの、翌日振ってきたひらひらのパンティーに顔を真っ赤にしていたシンジもそうだ。
 しかし元より危機察知能力は低いシンジであり、この時も疚しいことは無いのに顔を赤くして返しに行ったシンジに、マヤが内心で舌なめずりしていた事には気付かなかった。
 シンジの姿に捕獲を決意したマヤだが、元からショタコンの素質はちゃんと持っており、殊に趣味にかけてはすばらしい行動力も持ち合わせていた。
 
 
 が。
 「なによなによ何なのよあの娘はー!!」
 きぃ!と地団駄踏んでいるのはマヤであり、その理由はアスカにあった。
 すぐに調査の触手を伸ばしたマヤは、即座に婚約者関係の二人と言う事実を割り出したのだ。
 冗談か偽装かと思ったら、近所でも学校でもとても仲がいいと言う。
 シンジと同い年=自分より若い、と言うことは頭を過ぎりもしなかったが、一つ屋根の下というこれはまずい。
 「よくも私のシンジ君を・・・」
 勝手に盛り上がったマヤだったが、数秒して髪の毛が一部、ピンと逆立った。
 アンテナみたいなそれからして、いいことを思いついたらしい。
 「食べてしまいましょそうしましょ。ふふ、ふふふふ・・・」
 
 
 
 「え?アルコールを入れない物を一つだけ?」
 「ええ、お願いします」
 「分かりました・・・」
 マヤが頼んだティラミスは三つで、その内二つにブランデーを大量に入れるよう注文したのだ。
 無論、これを持ってシンジ邸を襲撃する予定である。
 だがマヤは既にアスカの事を知っているし、そうなると数は合わないのだが答えはマヤの鞄にある。
 少女趣味のマヤだが、危険な物にも妙に通じており、裏路地の店で怪しげなスプレーを手に入れたのだ。
 ただし、乙女チックなマヤも犯罪チックまで走る気はなく、これを食物に入れればいい気分になれる代物であり、その間に自分とシンジがアルコールたっぷりのケーキを食べて出来上がってしまおうと言う寸法だ。
 「出来ましたが・・・何かあっても責任は持てませんが・・・よろしいですね?」
 中身はともかく、さっきからショーウィンドーを見て顔を崩しているマヤを見れば、どう考えてもささやかな悪戯に使うようには見えない。
 従って免罪符とも取れる念を押したのだが、
 「大丈夫−問題ないわ」
 全身ひらひらの娘がにやっと笑うと、店員はもう何も言う事は出来ず、ただこくこくと頷くだけであった。
 なお。
 「あのね、今日来た女の客が妙に少女趣味でしかも変なケーキを作らせたの。すっごく怖かったよう」
 恋人に甘え混じりにぼやいた事は付加しておく。
 
 
 
 
 
 「シンジ、コーヒー淹れてよ」
 「・・・はあ?」
 「コーヒーよコーヒー、早くしてよ」
 「ぜえええったいにやだね」
 加持もミサトも今日はおらず、また二人きりの夕食となった。
 元に戻ったと言えばそれまでだが、本来なら相手を意識してしまう状況なのにそうならないのは取りあえずアスカのせい。
 正確に言えば嫉妬だ。
 女は家事が出来なきゃならない、そんな事を考えているアスカでもないが、出来すぎるシンジを見ると嫉妬もしたくなる。
 総能力値ではアスカの方が上だが、家事を見るとシンジの方が上であり、女性的な部分だけにアスカが気にするのも無理はあるまい。
 そのせいでつい強気に要求してしまったのだが、二人分作ってその上用意までしたシンジにとっては迷惑千万な台詞であり、たちまち二人の間は険悪と化した。
 「何よあんた、それぐらいやんなさいよっ」
 「やんなさいよっ?それはこっちの台詞だよっ」
 「なんですってえっ!」
 「なんだよっ!」
 それぞれに言い分はあるものの、んな事より顔をくっつけて睨み合っている姿は、
 「ふうん、キスでもするんだ?」
 とツッコミが欲しいところだが、生憎そんな役はいない。
 二人きりの喧嘩、それも男女の場合の困った点はそこにあり、ツッコミ役がいないとすんなり収まらないのだ。
 (!?)
 顔が殆どくっつかんばかりになっていると、二人がほぼ同時に気付いたのだが、ここでどっちかが先に場をこなして引けるようなら恋人同士になれている。
 「あ、あんた何顔近づけてるのよ、さっさとどきなさいよスケベ!」
 「ふ、ふんアスカこそ何迫ってきてるんだよっ」
 「『うぬぬぬ』」
 こうなるともう、どっちも先に引くことは出来なくなり、唇はまだだが額はもうくっつている。
 本人達の意識はともかく、かなり危険な体勢なのだが二人とも睨み合ったまま動こうとしない。
 とそこへ、
 ピンポーン。
 ふっと清涼剤のようにベルが鳴った。
 一瞬そっちを見た二人がさっと離れ、
 「ミ、ミサトかしら・・・」
 「ミサトさん達ならこの時間だともう酔ってるし、それに第一ずかずか入ってくると思うよ」
 「そ、それもそうね・・・って、じゃあ誰よ」
 「さ、さあ」
 二人が期せずして揃って時計を見ると、既に九時を回っている。
 集金・勧誘なら非常識だし、それに勧誘はアスカが派手に撃退したからもう来ない筈だ。
 
 じゃあ誰が?
 
 凸凹コンビの二人だが、外部の侵入を平然と撃退できる力は持ってない。
 まず最初にアスカがすっと青くなり、
 「ア、アスカ・・・と、とりあえずそこに隠れててよ」
 幾分震えながらも告げたのは、男モードが発動したものか。
 (無理しちゃって・・・震えてるじゃない)
 だが今度はさすがに口にはせず、
 「で、電話持ってるから危ないと思ったらすぐ叫ぶのよっ」
 自分もちょっぴり震えているのは気付かなかったが、表情だけは崩さずに、すっと隣の部屋に隠れた。
 アスカが退避したのを見届けてから、
 「は、はーい、どなたですか・・・」
 「私よ、伊吹マヤです」
 心配してたドスの利いた声は来なかったが、脳天気な位明るい声が返ってきた。
 「マ、マヤさん・・・今開けます」
 妙に軽い足取りでシンジが玄関に向かったのを、アスカは感覚で知った。
 (女って知ったら急に浮き浮きしちゃってさ!あれ・・・でも伊吹マヤって誰?)
 元々ヒゲが嫌で下は見なかったマヤであり、従ってアスカもまたマヤを知らない。
 扉を少しだけ開けて覗いたのだが、マヤを見た瞬間アンテナがピンと立った。 
 (こいつは危険だ!)
 アスカの本能がそう告げたのである。
 
 「シンジ君、この前は迷惑かけてごめんね」
 「い、いえそんな事無いですよ。あの、今日は何かあったんですか?」
 「ううん、シンジ君にお詫びに来たの」
 「お詫び?」
 「ほら、シンジ君に迷惑掛けちゃったから。ところでアスカって言う女の子が確か一緒に住んでるんでしょう?」
 「え、ええ・・・」
 善し悪しは別として、何となく許嫁とは言い難くシンジが曖昧に頷いたそこへ、
 「許嫁のアスカよ−何しに来たのよアンタ」
 妙に挑戦的な態度でアスカが入ってきた。
 
 許嫁ですって!?
 マヤの眉がぴっと上がりかけたが、
 まあ、私に比べれば大した事無いわ。
 
 あくまでもマヤフィルターにはそう見え、シンジの知らない空間でバチバチと火花が散ったのだが、さすがに表情は崩さず、
 「先日下に洗濯物が落ちたのをシンジ君に届けてもらったの。だからそのお礼に来たのよ」
 「ふーん、それでケーキをお礼に持ってきたって訳ね。まあいいわ、でもこれからシンジと団欒の時間だから邪魔されたくないの−何しろ、あたし達許嫁なんだから。ねえシンジぃ?」
 妙に鼻に掛かった声は無論原因がある。
 シンジが気になるどうこうじゃなくて万が一、万が一にもマヤなぞを気に入ったりしたら、しかも自分を用済みなどと言い出した日には人生設計が狂ってしまう。
 折角ここまで虫の居所を押さえて許嫁を演じてきたのも、すべてはママのためだというのにこんな少女趣味女にぶち壊される訳には行かないのだ。
 「あらそうだったの?でも別にシンジ君を取ろうなんて思っていないわ。あなたの分もケーキは持ってきたのよ、ほら」
 そう言ってマヤが見せた箱には一応三つ入っている。
 いや、本来なら三つと言う事はマヤが上がる予定だった事を意味しており、それだけでも撃退理由にはなるのだが、ケーキの存在でなんとなく
 (この女、悪いヤツじゃないのかも)
 と思ってしまった時点でアスカの負けである。
 「いいわ、今日だけは特別だからね」
 勝手にケーキの箱を取り上げると、
 「シン−」
 強い口調で言いかけたが一瞬で状況を思いだし、
 「ね、あたし向こうでこの人と話してるから紅茶淹れてくれる?」
 耳を押さえて呪詛の台詞を投げつけたくなるような甘ったるい声で頼んだ。
 無論“おねだりモード”の視線を添えるのは忘れないが、つい今し方の殺気まで含んでいたような顔は何処に行ったのかと、お笑い芸人ならずともツッコミたくなるのは間違いない。
 ただシンジ自身も、ころころ変わる状況には自分も慣れてきている。
 アスカはやなヤツでも、甘い許嫁生活を送っている自分達を演じないと、ライフパターンが狂ってしまうのだから。
 「いいよ、ちょっと待っててね」
 「うんっ」
 糸を引く蜜みたいな声と共にシンジが台所に消えていく。
 見た目には不気味なほど甘い関係だが、マヤは何となく違和感を感じ取っていた。
 (何か・・・おかしいわね)
 それ自体が元からあったような情景ながらどこか違う−感じ取ったのはやはり経験値が物を言ったのだろう。
 だが結局、その追求がそれ以上進むことは無かった。
 
 (あーっ!!)
 何時からシンジを知ってるのとか、シンジと自分はいかに仲良しだとか、要するに釘を差すみたいな会話を向けてきたアスカだったが、その前に箱を開けた時点でマヤの表情がぎょっと固まった。
 アスカが引ったくったせいで、付けていた小さな目印が落ちてしまっていたのだ。
 引っ張られた衝撃でケーキ同士がぶつかったせいらしい。
 マヤは無論超能力者ではなく、印も無しにケーキの見分けは付かない。
 確かに、多少アルコールが入っていても構わないケーキではあるが、特注のそれは半端な量ではないのだ。
 (こ、こ、この小娘がー!)
 だが表情に出すことも出来ず、恨めしげにアスカを見ただけである。
 それに気付いたアスカが、
 (ふふん、あたし達の間に入れないって分かったようね。ま、素直なのだけは評価してあげるわ)
 すっかり勘違いして一人頷いていた所へ、シンジが紅茶を持って入ってきた。
 「ありがとう・・・あら?」
 シンジが持ってきたカップは二つしかなかったのだ。
 アスカとシンジ、どちらかが抜くのかと思ったら、マヤの前に一つと二人の前に一つ置いた。
 (?)
 その表情が愕然とした物に変わったのは、カップの意味を知った瞬間であった。
 「アスカから先に飲んでいいよ」
 「うん」
 (先?どう言うこと・・・!?)
 アスカが一口飲んでから、
 「はい、シンジ」
 カップをシンジに渡し・・・しかも口を付けた部分でそのままシンジが飲んだのだ。
 「あ、あ、あなた達何をしてるのっ!」
 「何って許嫁だもん、当然じゃない」
 言いながらアスカはにやっと笑った。
 加持とミサトのヤツはしたくもない嬌態を強いてくるが、シンジを巡る敵ではない。
 と言うより存在自体が敵ではあるが。
 だがこのマヤは明らかに敵になりそうだとアスカは本能で知っており、ここは見せつける所だと判断したのだ。
 先手必勝、このもっとも単純な策を取ったアスカの次の一手は、無論“食べさせ”である。
 「まあまあのケーキね。じゃ、頂くわ」
 と、さっさとフォークで切り取ったからこれにはマヤが慌てた。
 まさか、まさかこんな展開になるとは思わなかったのだ。
 「ちょ、ちょっと待って待ってっ」
 慌てて叫んだマヤに、当然のように二人が怪訝な視線を向ける。
 「何なのよ一体」「何ですか?」
 ぴたりと揃った二人に、
 「う、ううん何でもないわ・・・」
 引きつった笑顔で首を振ったマヤは、
 「作戦は・・・失敗だったな」
 と某軍隊の指揮官みたいな台詞を内心で呟いていた。
 
 そして案の定。
 (私のにお酒が入ってますように!)
 天に祈りながら口に入れたケーキは、全くのノーマルであった。
 しかも、二人で食べさせ合うと言うおぞましい行為に耽る二人は、次々食べるせいであっという間にアルコールが回っていったのだ。
 みるみる顔の赤くなった二人に、これはもう無理だと諦めてせめて一矢を報いたいとシクシク泣きながら考えたマヤだったが、
 「あんたねえ〜、邪魔なのよじゃまあ!あたし達の愛の巣を怖そうって言うの〜?ねえ、シンジい?」
 「そうです・・・マヤさんは邪魔なのです!」
 シンジは演技の義務意識がそのまま出ただけだったが、マヤを討ち死にさせるには十分であった。
 「ふ、ふ、二人とも・・・不幸せにっ!!」
 自分でも訳の分からない台詞を叫ぶと、そのままフリルを翻して走り出ていってしまった。
 既に二人とも酔っているから、
 「帰っちゃったよお」
 「帰ったわねえ〜」
 舌足らずな声で言うと、
 「はい、アスカあーん」
 「は〜い・・・んっ、美味しい。じゃ、シンジもあーん」
 「あ〜ん」
 投石もののこの光景だったが、ケーキが無くなる前にふいに終焉を告げた。
 「アスカさ〜、キスしようかあ?」
 いきなりシンジが舌足らずな声で言いだしたのだ。
 しかもアスカも、
 「いいねえ、しよしよ・・・あ、そうだシンジ」
 「なあにい?」
 「口移しで食べさせてあげる、ほらひら遠慮しないのよおう」
 言うが早いかケーキを口に入れると、がしっとシンジの顔を両手で挟んだ。
 「シンジ、んー」
 「んー」
 さすがにかみ砕いた物を流し込むほどクレイジーになってはいなかったが、原形そのままで唇越しに入ってきたそれを、シンジはゆっくりと咀嚼して嚥下した。
 「シンジおいし?」
 「ん、アスカありがと・・・じゃ、次は僕がしてあげるね」
 「ん・・・」
 アスカがちょっと唇をあけて待っている所に、シンジががしっと顔を挟んで唇を近づける。
 「もご、もごー!」
 ぷはあっと顔を離してから、
 「もう強引なんだからあ」
 ちらっとシンジを睨んだが、そこにはいつもの殺気混じりの物は欠片も見られない。
 「んん、アスカごめんねえ」
 と、無論こちらにも。
 これもゆっくりと咀嚼してから飲み込んだが、
 「うふふふ」
 と笑った。
 「どおしたの?」
 「シンジからもらったから、とってもおいしい」
 「ほんとに?」
 「本当よう、信じてないのお?」
 「そんな事ないよ、アスカだからね」
 「『ふふ、うふふふふ』」
 声を揃えて笑い合う二人だが、口許にはお揃いの感じでケーキがくっつている。
 ただそんな事よりも、例え酔いのせいではあってもこの状況だけ見れば、例えミサトだろうとキールだろうと矛先は収めたに違いない。
 しかし・・・酔いというのは怖ろしい物であり。
 「ねえシンジ、もう寝ようか?」
 「そうだね・・・眠くなってきたし」
 
 
 数十分してミサト達が帰ってきたのだが、
 「さーて、尻尾出してるかしらねえ」
 勝手に部屋を開けると布団は盛り上がっており、それでもきっと中でそっぽ向き合ったりしてるに違いないとそっとめくる。
 「『・・・・・・こ、これは・・・』」
 さすがに二人が唖然として顔を見合わせた先には、互いの胴にしっかりと腰を回して抱き合っているアスカとシンジの寝姿があったのだ。
 「ち、近頃のガキ共は・・・」
 度肝を抜かれて二人を眺めたミサトだが、ふと加持が首を捻った。
 「どしたのよ?」
 「口許、何か変だぞ。それにこの匂いは・・・酒だな」
 「じゃ、飲んで誤魔化したって訳・・・っていうかこのガキ共未成年じゃない」
 そうは言いながらも、しっかりとくっついている二人を見るとその疑惑も妙に力が弱い。
 「まあいいわ、急性アル中で運ばれてもしたら両親の所に送ってやるんだから」
 南極まで箱詰めして送る気かは不明だが、この顔を見るとマジらしい。
 二人が退散した後の室内に、二人が揃って立てる寝息が静かに揺れた。
  
 
 
 
 
 で、翌朝。
 「う〜頭いたい・・・ん!?」
 何故か顔の数センチ前にある敵の顔に気付き、もう少しで絶叫するのを寸前で押さえたアスカだったが、手が相手から抜けていたのは幸いだったろう。
 これで抱き合ってなどいれば、マンションを揺るがす絶叫をあげていたに違いない。
 (ど、ど、どういう事よこれはっ!!)
 内心で叫んだ途端、ズキズキと頭が痛む。
 「確か昨日・・・あれ?何にも覚えてない・・・」
 取りあえず一発かまして起こし、しかる後に口を押さえてやろうと思った時、口許に何かが付いているのを知って指で触れた。
 「ケーキ・・・シンジと一緒・・・?」
 やっぱりこいつに聞いた方が早いと、決定するや否やいきなり横っ腹に一撃入れた。
 「ふぐー!」
 叫んで飛び起きようとするのを押さえる仕種は、殆ど誘拐犯並である。
 「な、な、何するんだよっ」
 「あんた、夕べのこと覚えてる?」
 「夕べ?夕べは・・・あ、頭痛・・・」
 駄目だこれはと諦め、アスカは事実の掘削を断念することにした。
 無論、妙に危険な体勢の事もケーキのことも隠匿である。
 思い出しちゃだめ、アスカの本能がそう告げていたのだ。
 
 
 
 と言うわけで、初の痴態にも近い二人の一夜も、抜けたアルコールと共に記憶の遙か下方に葬り去られる事となった。
 ただ、アスカがその日どことなくご機嫌だったのは付加しておく。
 度肝を抜かれた目覚めではあったが、記憶にない筈の夢見は悪くなかったのだ。
 そのお陰で結局ミサト達に尻尾を掴まれる事は無かったのだが、これが普段でも当たり前の関係になるのが何時の日かは−おそらく一人を除いては知るまい。
 そう、天上にいるどなたかを別にしては。 
 
 
 
 
 
(了)

地天使です。
何となくな感じでお伺いしたらあっさり承諾頂いたので書いてみました。
ラストにあるとおり酒のおかげの一過性の出来事なので、本編への影響はまったく無い物と思われます。
も少しでぃーぷな展開もアリでしたが、自分が堕ちてると自主規制したのは内緒です(謎爆)


マナ:URIELさん。投稿ありがとー(^^/ ・・・って、いやーーーーーーーーっ!(TT)

アスカ:何騒いでんのよ。(*^^*)

マナ:なんでぇ。なんで、こんなにラブラブなのーーーっ!?

アスカ:どっかの辺境の駄作者の作品を、こんなに素敵に昇華させてくれるなんて、嬉しいじゃない?

マナ:2人ともアル中になっちゃえばいいんだぁ。(TOT)

アスカ:アタシはいいわよぉ。シンジと一緒なら、なんだってぇ。(*^^*)

マナ:うっ・・・。こ、ここまでラブラブだと、何を言っても効かないのね。(・ ;)

アスカ:ラブラブ作品、大歓迎よぉぉぉぉぉ!(^O^/

マナ:もう。嫌ぁ。わたし、帰るぅ。

アスカ:久しぶりの完全勝利だわっ!(^^v
作者"URIEL"様へのメール/小説の感想はこちら。
uriel@cool.email.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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