ここが変だよエヴァンゲリオン

作:やがみ きょうしろう

初めに

 SF(Science Fiction)……それは、漢(おとこ)のロマン!!

近年のSFブームは、SFファンの私としても、本当に嬉しい。だが、本当に科学的に正しいのだろうか?

ここでは、SFブームの火付け役である(と個人的に思っている)「エヴァンゲリオン」を取り上げ、検証してみようと思う。

 

注意!!

この話は、あくまでパロディです。

しかし、内容上、エヴァのイメージを損なう恐れがあるので、エヴァの世界観を大事にしたい方は御遠慮下さい。

 

 

 

エヴァの体重は戦車50台分!?

 色々なことを考察する前に、とりあえずこのアニメの主役(?)でもある、エヴァの身長と体重を求めてみよう。

 まず、身長の方だが、アニメを見る限り、あまり正確には決まっていないようだ。
戦艦に載るぐらいの大きさかと思えば、山より大きいこともある。あるホームページにも「可変」と書かれてあったし……。(笑)
とにかく、なにか比較対象になるものがあればいいのだが……。
おお、そういえば、コミックス3巻に、シンジが荷粒子砲で撃たれた綾波を助けるために、
エヴァでエントリープラグを抜き取るシーンがあったはず。
エヴァとエントリープラグとの大きさの対比から、身長が割り出せるのでは……。

 早速コミックスを見てみると、確かにエヴァがエントリープラグを抜き取るシーンがあった。
エヴァが、エントリープラグをつかんでいるシーンを見る限り、
プラグの直径は、エヴァの手でギリギリつかみきれるぐらいの大きさのようだ。
そこで、実際に、自分の手でギリギリつかめるぐらいのものの太さを測ってみると、大体5cmぐらいだった。
エントリープラグの直径は、シンジの身長や、アニメで描かれている様子から考察すると、ほぼ1.5mといったところか。

 とりあえず、以上のデータから、エヴァの身長を割り出してみよう。
まず、プラグをつかんでいるシーンから、エヴァと人との手の大きさの比率がわかる。つまり、

エヴァ:人 = 1.5m:5cm = 150cm:5cm = 30:1

手の大きさと身長はほぼ比例するので、エヴァの身長は、人の身長の約30倍だとわかる。ここでは、男子の平均身長である170cmを用いて計算してみよう。すなわち、

1.7mx30=51m

うーむ、でかい……。ガン●ムの身長が大体18メートル、ウルトラマンでさえ40メートル程度なのに……。
50メートルといえばゴジラとほぼ同じ大きさではないか……。

 とにかく身長はでた。残るは体重である。
まず、体重を考えるにあたり、エヴァの構成物質が何であるかを考えなければならない。
これは、例えば、エヴァが鉄でできているのと、プラスチックでできているのとでは、体積は同じでも、重さが大きく異なるためだ。
ところが、ラッキーなことにエヴァは人造人間。つまり、人とほぼ同じと考えてしまっても問題ないだろう。
エヴァは、人と比べると少し痩せすぎだが、拘束具が鉄でできているとして、差し引きゼロとしてしまうことにする。
後はエヴァと人との体積比がでれば、そこから体重が割り出せる。

 体積は、長さの3乗に比例するので、エヴァと人との体積比は

エヴァ:人 = 30x30x30:1 = 27000:1

となる。身長170cmの男子の体重を、約60kgとすると、

エヴァの体重 = 60kgx27000 = 16200000kg = 1620t(トン)

おおっ、何と1620トン!!これは重い!
身長が60メートルもあるガメラでさえ、体重が80トンしかないのにその20倍以上とは……。

戦車でさえ、1台あたりの重さが約2、30トン、
ほ乳類で最大の大きさを誇るシロナガスクジラでさえ、その体重は170トンしかないのに……。

 第3新東京市では、使徒がくるたびに、戦車50台分、シロナガスクジラ10頭分もの重さがある決戦兵器が暴れていたのだ。
住民にとっては、さぞかし迷惑なことだろう。

 

歩くと気絶する!

 さて、エヴァは、パイロットによって操縦されている。そして、昔からあるロボットアニメと同様に、
遠隔操作ではなく、実際に乗り込んで操縦されている。
だが、現実的には、乗り込んで戦うという行為は、非常に危険な行為なのである。

 少し考えればわかることだが、身長50メートルもある、激しく動き回るエヴァに乗り込むなど、命知らずも甚だしい。
ましてや、エヴァは決戦兵器。破壊されることを前提に作られているのである。
そんなものに乗り込んで、使徒という得体のしれないものと戦うのだから、パイロットには相当な根性と覚悟が必要だろう。

 とにかく、実際にエヴァが歩くと、中にいるパイロットにどんな力がかかるのか、検証してみよう。

 普通、人は1秒間に2歩のペースで歩く。エヴァは、パイロットのイメージで動いているのだから、
エヴァが歩くときもおそらく同じペースで歩いていると思われる。
さて、我々が歩くとき、少なくとも3センチは身体が上下する。
上で計算したとおり、エヴァの長さの比率は人の30倍なので、歩くときの上下運動の大きさも30倍である。すると、

3cmx30 = 90cm

つまり、1歩歩くたびに、中にいるパイロットは、1メートル近い落差を感じるのだ。
エヴァも人と同じペースで歩くとすると、結果的に、1秒間に2回、高さ90cmの幅で上下に振られることになる。
これでは、パイロットは、歩くたびにエントリープラグの天井に頭をぶつけて、気絶は免れないだろう。
本編第2話で、シンジが初めてエヴァに乗ったとき、リツコ博士が、「歩くことだけを考えなさい」と言っていたが、
1歩歩くだけで気絶してしまい、何の役にも立たない。やれやれ、いったい何のために出てきたんだか……。

 さて、次に、走る場合を考えてみよう。
歩くだけで気絶するのだから、走るという行為がいかに無謀なものであるかは、容易に想像がつく。

 人が全速力で走るとき、大体1秒間に4歩のペースで走る。
また、1歩足を踏み出すたびに、最低でも20cmは身体が上下するだろう。
歩くときと同様に、エヴァが人と同じペースで走るとすると、その落差は、

20cmx30 = 600cm = 6m

何と、エヴァが走るだけで、中のパイロットは、1秒間に4回、6メートル幅で上下に振動させられるのである。
これでは生きた心地がしない、というより、おそらく生きてはいまい。

 だが、エヴァのパイロットに襲いかかる苦痛は、この程度にはとどまらない。
本編の中盤を過ぎた辺りから、パイロットの成長があってか、エヴァの走る速度が上がっているのである。
実際にどれぐらいの速度が出ているのかはわからないが、
衝撃波が発生しているところから考えて、まず音速は越えていると考えて良いだろう。
ここでは、速度がマッハ1.5だとして検証してみよう。

 まず、エヴァが走るときの歩幅を求めてみよう。
平均的な人間が走るとき、その歩幅は2メートル程度である。
すると、エヴァの歩幅は2メートルの30倍、60メートル程度だと推測される。

 次に、エヴァの1秒間あたりの歩数だが、これはエヴァの速度を歩幅で割ってやればいい。つまり、

マッハ1.5x340 = 510(m/s)

510(m/s)/60m = 8.5(歩/秒)

何と1秒間に8回以上、上下に振られるのだ!
また、これだけの速さで走っている以上、上下に振られる幅も6メートルより大きいと思われる。
あの狭いエントリープラグの中で、1秒間に8回以上、
それも幅6メートル以上でシェイクされる状況など想像の範囲を超えている。
パイロットは、生きてないのはもちろんだろうが、果たして原形をとどめているかどうかも疑問である。
うっかり音速以上で走ったために、プラグ内は血の海、なんてことになりかねない。うーむ、恐ろしい……。

 

ジャンプをすると命を落とす

 歩いたり走ったりする行為がいかに無茶なものであるかが、これでわかった。
だが、エヴァの無謀な行為は、さらにエスカレートしていく。

 感覚的にもわかることだが、ある高さまでジャンプしたときに感じる衝撃は、その最高点から飛び降りたときと同じ衝撃が加わる。
つまり10メートルジャンプすると、中のパイロットが感じる衝撃とは、高さ10メートルから落とされたときの衝撃なのだ。
おまけに、しっかりと椅子に固定されたまま落とされるのある。

 エヴァの公式のジャンプ力がいくらなのかはわからないが、
身長60メートルのエヴァのジャンプ力が、10メートル程度しかないとは思えない。
画面上で確認するかぎり、少なくとも身長の3倍の180メートルは跳んでいるように思われる。
東京タワーの約半分の高さである。
なるほど、確かにこれだけのジャンプ力があれば、エヴァの跳びげりを食らった使徒は、ひとたまりもないだろう。
だが、使徒に与えた力と同じだけの衝撃を、エヴァも受けることを忘れてはいけない。

 とりあえず、パイロットが受ける衝撃を、具体的に求めてみよう。
衝撃力の大きさには、その物体の質量、すなわち重さと、着地速度、そして着地時間の3つの値が関係してくる。
もちろん、重さは軽いほど、着地速度は小さいほど、着地時間は長いほど、衝撃は軽くなる。

 初めに、着地速度を求めてみよう。最も簡単に求めるには、エネルギー保存則を用いるとよい。
ただし、この方法だと、空気抵抗を無視することになるが、
エヴァがやせ形、かつ足から落ちてくることを考慮して、まあ無視してしまってもよいだろう。
エヴァが、180メートル上空から、使徒目掛けて、フライングボディーアタックをかますのなら、話は別だが……。

 では実際に計算してみよう。
途中経過は省略するが、最終的に出てきた答えは……何と秒速60メートル、時速216キロだ。
おいおい、時速216キロといえば、新幹線並の速度ではないか……。
新幹線が、時速200キロ以上でコンクリートの壁にぶつかった、などという話は聞いたことがないので、
実際にどのような衝撃なのかはわからないが、まあ、想像を絶するものであるのは間違いないだろう。

 とにかく、着地速度は出た。後は着地したときの具体的な衝撃力である。

 着地速度は既に求まっている。シンジの体重も50キロぐらいとしよう。
残るは着地時間だが、これは、エヴァの着地の仕方により、大きく変化する。
例えば、膝をぴんと延ばしたまま降りてくれば、着地時間は短くなるので、加わる衝撃も大きい。
反対に、膝を柔らかく使って着地すれば、着地時間は長くなり、その分衝撃も軽くなる。
今回は、膝を使っている様子から考えて、着地時間を0.5秒ぐらいとする。

 すると、衝撃力は612キロ。……何だ、以外に小さいではないか。てっきり、トンは越えると思ったのに……。
冷静に考えれば、瞬間的に600キロ以上の力がかかれば、普通の人間では、首の骨でも折って、即座にあの世行きになる。
だが、あのエヴァを造ったネルフの科学力をもってすれば、なんとかなりそうな気がする。

 さすがはネルフ。なんだかんだいって、やっぱりちゃんと考えてるんだなあ。
よかったよかった、これにて一件落着……というわけにはいかない。
くどいようだが、エヴァは決戦兵器である。当然、使徒と、文字通り命を賭けた格闘をするのである。

 ユニゾンの回を見てみよう。
確か、分裂した使途を倒すために、シンジとアスカの二人による、二点同時荷重攻撃を行なっていたはず。
で、実際にテレビの方で確認してみると……ああ!やっぱり……。
そう、二人仲良く跳びげりをしているのである。
え、跳びげりの何がいけないかって?
想像していただきたい。跳びげりをするとき、どんな格好で落ちてくるか……。そう、足をピン、とはったまま落ちてくるのだ。
これでは、前述の着地時間が極端に短くなってしまう。おそらく0.02秒ぐらいだろう。
衝撃力は、着地時間に反比例して大きくなるので、もはや絶望的な数値が出てくるのは間違いないのだが、
ここは涙を呑んで計算してみよう。

 パイロットにかかる衝撃力は……驚く無かれ、何と15300キロ、約15トンである。
しかも、これは平均的な力であり、瞬間的にはもっと大きな力がかかる。
もし、使徒がゴムマリのような身体をしていれば、その分衝撃力も小さくなるが、
これでは逆に跳びげり自体の威力が無くなってしまい、意味がない。
もちろん、外して地面にでも突っ込もうものなら、その衝撃は100%本人に返ってくる。

 それにしても15トンとは……。
いやはや、ここまでくると言葉もでない。
一介の中学生に、15トンもの衝撃を加えればどうなるのか……
こんなことを実際に試したやつはいないので、具体的な結果はわからないが、まあ悲惨なものであることは言うまでもない。

 廃棄処分になった自動車数台分の車体を、一度に1.5メートル四方の鉄の固まりにしてしまうプレス機でさえ、
その圧力は1万トンそこそこだと言われている。その15倍の力が生身の人間にかかるのだから、
まあ、どこかのギャグマンガのように、ペシャンコに押し潰されているか、肉の破片となっているだろう。
人類のために、命を賭けて戦ったパイロットの末路がこれとは……パイロットの冥福を祈りたい。

 

 ネルフって一体……

 結論が出た。やはり、エヴァに乗り込んで使徒と戦うのは、不可能である。
まして、エヴァのパイロットは、適応者が少なくて貴重な存在ではなかったのか?
そんな大事なパイロットを、動く死刑台のようなエヴァに乗せるなど、浅はかにも程がある。
こんなやつらに、人類の未来を任せてしまっていいのだろうか?

 


(後書き)

 うーむ、ついにやってしまった……。
もちろん、この話しの元ネタは、あの「空想科学読本」です。
あの本の作者は、最近のアニメはほとんど見ないそうなので、まあ、僕が計算してみたのですが……。
それにしても、本当にこんなものを書いてしまっていいのだろうか……何かカミソリメールが来そうで怖い……。

 わかって欲しいのですが、僕は別にエヴァが嫌いというわけではないんです。
一種のパロディだと思ってもらえれば嬉しいです。

 後、計算や考え方が間違っているという指摘があれば、ぜひメールで御指摘下さい。今後の参考にしたいので……(笑)


マナ:アスカって危ない物に乗ってたのね。

アスカ:アタシ、よく生きてるわね。(^^;

マナ:やっとわかったわ。きっとエントリープラグの中でシャイクされて頭を打ったのね・・・。

アスカ:なんでよ。打ってないわよ?

マナ:どうりでへっぽこだと思ってたわ。

アスカ:ムッ! 天才美少女に向かって何て言いぐさよっ!

マナ:ほらぁ、頭を打ち過ぎて自分のへっぽこさもわからなくなったのね。(; ;)

アスカ:アンタだって、ロボットに乗ってたでしょうがっ!

マナ:でも、わたしはいたって正常だけど?

アスカ:アンタの場合、前後にシェイクされたんでしょうね。

マナ:どうして?

アスカ:胸を打って、そんなにへらべったく・・・。(; ;)

マナ:な、なんてこというのよっ!

アスカ:でも、そんな危ないのに乗って、なんで平気なのかしら?

マナ:さぁ・・・わたしは乗ったことないから。

アスカ:もしかして、エントリープラグの中にいたのはイメージだけで、アタシ達ってLCLに溶けて込んで、精神だけになってたのかなぁ?

マナ:きっとそうよっ! いっつも溶けてたから、アスカのお腹って水っ腹のプヨプヨになったんだわ!(^O^)

アスカ:殺!(▼▼#
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