「やっと着いたわぁ〜。じゃあ、シンちゃん、私は第三支部の方へ行くから、ここの住所に行ってて
くれる?」

「僕は行かなくていいんですか?」

「ん〜、正式な辞令は明日でるからそれまで待ってて。私の場合、もうあそこで働いてるはずだった
んだから。」

「…そうでしたね。」

「そんじゃ、頼むわよぉ。」

「行ってらっしゃい。」








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   EVA−RETURNER   第三話


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途中、(戻る前によく通っていた)商店街で今日の夕飯の材料を買ってから、指定された家に戻り、
荷物もまだ届いていなかったので、軽く夕食の下ごしらえをしてからトレーニングもかねて散歩に出
かけることにした。




「(ん〜、あの時からあんまり変わってないなぁ。)」

そんなことを考えながらシンジは新ベルリンの街の中へ入って行った。


































そして、路地裏をブラブラしている時、事は起こった。



















「キャッ!何してんの、・・・クッ、離しなさいよ!」

ふとそんな悲鳴が耳に飛び込んできた。


僕は、急いでその聞き覚えのある声の元へ走った。

そこには3人組の“いかにも”不良というような輩が、赤い髪の少女を囲んでいた。


僕はとっさに跳んでいた。


正拳突きが少女に手をかけようとした男の顔にめり込む。男はそのまま崩れ落ちた。



「なんだこのガキィ!」

「シィッ!」

「グフッ!」

シンジはそのまま後ろ回し蹴りを放ち相手のこめかみに叩き込んだ。

二人目も2メートルほどぶっ飛ぶ。






「さて、お前はどうする?やらないんなら、そこの二人を病院に連れて行ってもらえるかな?」

シンジは残りの一人に向かって溢れんばかりの殺気を懸命に抑えて、静かに言う。

それでも周りの空気が5度くらい、いや、それ以上下がったように感じる。

「ふ、ふざけんじゃねぇ!そこをどけっ!」

「あれ、逃げてくれるはずだったんだけどなぁ。・・・でも、彼女には手を出させない!」


シンジは男の打ち出した右の拳を軽く避け、その手首を右手で掴み、相手の懐に潜り込むとそのまま
左の肘でみぞおちを突き上げた。


   男の足が浮く。


   男の口から赤いものが溢れる。


追撃をゆるめることなくシンジは身を縮め、思いっきり右足をボディに叩き込む。

そのままソレの脳天にシンジは踵落としを極めて地面に叩き落した。




「あす・・・(やばっ)・・・君、大丈夫かい?ここは危ないから送ってくよ。僕は碇シンジ。シンジでい
いよ。よろしく。」

「え、えぇ。私もよろしく・・・」

その戦い(一方的だったが)に呆然としていた少女はその聡明な頭もこの状況では何の役にも立たず
、それでもこの言葉だけは何とか引き出せた。







「ところで名前聞いてなかったね。」

「あ、まだ言ってなかったっけ。私は惣流・アスカ・ラングレーよ。」

「うん、よろしく、ア・・・惣流さん。」

「アスカで良いわよ。男にこの天才美少女アスカ様のファーストネームを呼ぶこと許可してるのアン
タだけなんだから感謝しなさいよ!これでさっきの借りは返したからね!」

「くすっ、わかったよ、アスカ。」

「何がそんなにおかしいのよ!」


バシッ!


シンジの頬にきれいな紅葉が張り付いた。

「いたたた・・・、ただアスカがやっと笑ってくれたなぁ、って思って。さっきはあいつらに何もされ
なかったかい?」

「さ、されてないわよ!されてたらこんなとこにいないでしょ。」

「よかった。(にこっ)」

少女は今さっきの鬼のような戦いとは180度違う天使の微笑みに首まで真っ赤にしていた。

「(ぼんっ)あ、当たり前でしょ!し、しかも、あ、ああ、あんたがいなくたって私がギッタンギッ
タンにしてやってたわよ。実際、今までだってそうしてたんだから!」

「はは、強いんだね。でもたまには他の人に頼ってみるのもいいんじゃない?強いことだけが全てじ
ゃないでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたの?」

「・・・・・・・・・・・・私のこと、私のことなんかなんにもしらないくせに勝手なこと言わないで!」

「た・・・ただ僕は一般論を言っただけで・・・」

「ふんっ、さよなら!」

憤ったアスカはシンジと反対方向へ二、三歩走り出すが、急に立ち止まり肩を震わせ独り言のよう
につぶやく。

「ママも誰も私のことを見てくれないから、勉強して、トップになって、エースになれば、私のこと
、見てくれると思ってたのに!それなのに、それなのにママは・・・・・・なんで死んじゃったのよぉ・・・
なんでぇ・・・」

「もういい!」

走り寄り、シンジはアスカを抱きしめた。

振りほどこうとするのを、決して離さないとするように、さらに強く抱きしめながら言う。

「何も言うなよ。アスカもずっと一人だったんだよね。寂しかったんだよね。僕も母さんがいなくな
っちゃって、父さんに捨てられたから、自分を見てもらえない辛さはよくわかる。アスカだけじゃな
いんだよ。だから、全部一人で背負い込もうとするなよ、すくなくとも、僕はアスカを見てるから、
さ。」

「・・・ありがと。・・・ぐすっ・・・」

「泣きたい時は、泣いてもいいんだよ。」

シンジはさっきとは違う強さと暖かさでアスカを包み込んだ。

「・・・・・・・・・うぐっ・・・ひぐっ・・・えぐっ・・・・・・え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
















シンジはアスカの肩を抱いて思う。


















僕はこの子を守っていこう。



















そして同時に不安になる。











アスカにとって僕の存在は














加持さんと同じように“憧れ”として終わるのではないか・・・・・・と。














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   あとがき

 
 一週間もたたないうちに次できちゃいました。
 
 まだこんな展開にするつもりは無かったのに・・・
 
 いつのまにか流れでこんなんなりました。

 シンジの行動と言動、明らかに十歳ではないですな。

 しかしこれはシナリオ通り・・・じゃないな。


 でも、まだアスカの心はほぐせないんでしょうねぇ。

 
 次は『シンジ君入学』・・・の予定です。


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