Rebirth ERO

   DISK2 Shining Girl :trak1              BY zodiacok
 
 
 

ユイナは目を三角にさせたまま、加持の運転する車に乗っていた

「む〜!」
「・・・ユイナ君。本当にいいのかい?お父さんと暮らさなくても。」
「いいの!・・・パパなんか知らないんだから!!」
「やれやれ・・・。」

それは使徒の自爆から三日後、ユイナが退院した日の事だった

 「・・・・え・・・・・どういうこと?」
 「つまり、アスカ君はまだドイツにいる、ということだ。」 
 「だ、だってアスカちゃんが帰ってくるって、ここに居るからって。写真だって送られてきたのに・・・。」
 「ああ、帰っては‘来る’。誰も帰って‘来た’とは言っていない。」
 「そ、そんな・・・。」
 「・・・・。」
 「うそつき・・・・・。パパの、うそつき!」
 「嘘をついた覚えはない。」
 「じゃあ!アスカちゃんはどこに居るの!?」
 「ドイツだ。」
 「・・・アスカちゃんには、会えないの・・・・・?」
 「いや、そんなことは無い。」
 「じゃ、じゃあアスカちゃんにはいつになったら会えるの!?」
 「近日中には来日する予定だ。」
 「近日中って?」
 「近いうちに、ということだ。」
 「近いうちにって?」
 「き、近日中にだ。」
 「近日中にって?」
 
 「「近いうちに(だ)。」」

 「む〜!(−−メ」
 「・・・・・。(●_●;」
 「もう!パパのばかぁ!パパなんかだいっ嫌い!!」

そしてユイナは司令室を飛び出し、加持と暮らすことになったのだ

 ・・・・・

一方、司令室ではその事についての話が行われていた

「いいのか、碇。」
「ああ、十年近く離れて暮らしていたわけだからな。いまさら共に暮らそう、などとは思わんよ。」
「だが、彼女の方は一緒に暮らしたかったのではないのか。」
「それはあくまでも向こうの問題だ。私はそうは願ってはいない。」
「ユイ君に、似ているからか?」
「・・・・・。」

冬月が、ずずっと音を立ててお茶を飲む
ゲンドウは、いつもの姿勢を崩そうとはしない

「この間の話ではないが、彼女は確かにユイ君によく似ているな。」
「そうか。」
「顔立ちがどうの、という訳ではない。彼女のもっと本質的な部分、持っている‘モノ’とでも言うのか・・・そういった部分がユイ君にそっくりだ。」
「・・・・・。」
「確かにお前の気持ちはわからんでもないがな。彼女と暮らせばユイ君を思い出すだろう。彼女の存在を認めてしまえば、この計画を根底から覆すことにもなりかねん。・・・だが。」
「だが・・・なんだ。」
「加持君と同居などさせて、本当によかったのかね?」
「ぬっ・・・も、問題ない。/_;\」

その時ゲンドウの顔に出た冷や汗を、冬月は見逃してやることにした

「まぁ彼も、自分の半分も生きてない少女に手を出すとは思えんがな。」
「ああ、それに彼にはネルフに居続けねばならない理由もある。」
「そうか。」

再び、冬月は目の前に置かれたお茶に手を伸ばした
そしてゲンドウも、その姿勢を崩そうとはしなかった

 ・・・・・

ユイナは加持につれられて、加持の住むマンションの部屋の前にまできていた

「男の一人暮らしだったんで‘多少’散らかってるかも知れんが、まぁその辺はあまり気にしないでくれ。」
「あ、はい。」

加持がカードキーを差し込むと、自動ドアが開いた

「さ、入った入った。」
「あ・・・じゃ、失礼します。」

そう言って入ろうとしたユイナを、加持は右腕で通せんぼをした

「えっ?」
「違うだろ、ユイナ君。ここは君の‘ウチ’なんだぞ?」
「あっ!・・・ただいま、加持さん。」
「ユイナ君、おかえり。」

加持はユイナに、ユイナは加持に微笑んだのでした

・・・・・しかし、その幸せも長くは続かなかったのです

「な、なんなんですかこれは!」
「いやぁ・・・はっはっはっは。」

そこはまさしく‘男の一人暮らし’な部屋だった
散らかしてある雑誌にビールの空き缶
キッチンには洗われた形跡の無い食器と空になったカップラーメンの残骸
机の上には灰皿からあふれているタバコの吸殻に、昨日の夕飯だろうかレトルトのカレーを食べた形跡が残っている
寝室には脱ぎっぱなしになっている洋服や下着、おそらくはお天道様を拝んだことなど無いであろう万年床には‘サルマタケ’でも生えていそうだ

「・・・・・。」
「ま、まあとりあえず、家族が一人増えたお祝いでもしようか?」

加持は灰皿を机の端っこに追いやり、レトルトの袋とカレーのお皿を流しに放り込んだ
開いたスペースにコンビニの袋からお弁当やらなんやらを出して並べる

「さ・・・さ、ユイナ君も座って「片付けるの。」」
「へっ?。」

ちょっとマヌケな顔でユイナを見る

「加持さん、片付けるの。」
「あ・・・いや、しかし今日はもう遅いし・・・。」
「片付けるの。(−−)」

ユイナの目は完全に据わっている
加持はそれを見て「アハハハ」と乾いた声で笑うだけだ

「片付けるの。(−−)」
「それはまた今度にしよう。なっ!?」

「片付けるの。(−−)」
「と、とりあえずはご飯を食べてからにしようか。」

「片付けるの。(−−)」
「ほら、せっかく暖めてもらったお弁当がさめちゃうぞ。」

「片付けるの。(−−)」
「ユ、ユイナ君?」

「片付けるの。(−−)」
「・・・・はい。」

ようやくわかってくれた加持に、ユイナは‘にっこり’と微笑む

「じゃ、私は食器を洗っちゃいますから、加持さんは雑誌とかを片付けちゃってくださいね。」
「あ・・・いや、本とかはこのままにしといてくれ。」
「どうしてですか?」
「書類とか、資料とかなんだ、それは。」
「はい。」
「散らかってるように見えるかもしれないけど、俺はちゃんとどこに何があるかわかってるんだよ。」
「へ〜。」
「だから、かえって片付けちゃうと、どこに何があるかわからなくなっちゃうんだよね。」
「・・・・・・。」
「わかって、くれた?」
「片付けましょ。」
「・・・・・はい。」

ユイナは‘てきぱき’と食器を洗い、その後ろで加持は散らばっている(彼が言うには)書類を‘のそのそ’とまとめ始めた

 ・・・・・

それから2時間もする頃には不意の来客にも対応できるほどに片付いた
ユイナは掃除機を片手に満足げにリビングを見回す

「うん、よくできました。」

思えばこの二時間というのも色々なことがあった

買ってきた物をしまおうと冷蔵庫を開けてみると、きれいさっぱり中には何にも入っていなかったり
ユイナが寝泊りする予定の部屋には、おそらく川口探検隊ですら入ったことが無いのかもしれない、真冬の雪国と見まごうほどに埃が積もっていたり
なかなかはかどらない片付けに怒ったユイナが、手当たり次第に雑誌(資料?)を捨てようとして慌てて加持が止めに入ったり
鋏は見つからないのに、やたらとスリッパが見つかったりと
多分に散々なものだった

これぐらいやってあれば許容範囲だろう
ふとユイナは、さっきまで気がつかなかった二つ目の冷蔵庫があるのを発見した

「はにゃ?こっちには何が入ってんだろ?」
「あ、いいよ。そいつはまだ寝てるだろうから。」

いつのまにか、ユイナの後ろに加持が立っていた

「加持さん。・・・寝てるって?」

と、突如冷蔵庫の扉が開き、中からペンギンがお風呂セットを抱えて飛び出してきた

「あ〜!かわいい〜っ!!」

自分の横を通り過ぎようとしたそのペンギンをユイナはすばやく抱きかかえた

「かわい〜かわい〜!!(くるくる)」
「クッ、クエッ!!(@◇@)」

突然ぶんぶんと振り回されて、そのペンギンは目を回している

「ユイナ君、もうその辺にしといてあげな。ペンペンも目をまわしてるぞ。」
「ヘ―‘ペンペン’って言うんですか。」

ユイナは振り回すのをやめたが、一向に放そうとしない
代わりに両手できつく抱きしめる

「クェ〜。(@◇@)」

ペンペンはもうノックアウト寸前だ

「ほらほら、ユイナ君。ペンペンが死んじゃうぞ。もう放してあげな。」
「え〜。(ぎゅ〜っ!!)」
「ク、クェ〜・・・。(@◇@)」

カコン、と音を立ててペンペンの手(?)からお風呂セットが滑り落ちた

ペンペン、沈黙

「あれ?」
「ほら。」
「うじゅ〜・・・。」

ユイナは暗い表情で、気絶したペンペンを冷蔵庫に戻した

「・・・・ごめんなさい。」
「そんなに気にすることは無いよ。どうせお風呂は沸かしたばかりだったんだしな。また、お風呂が入ったら起きてでてくるさ。」
「そうですか?」
「そう。さ、お弁当を食べちゃお。俺ももうおなかすいちゃったから。」
「あ、お茶を入れてきますね。」
「ああ。じゃ、用意しているね。」
「はーい。」

こうしてユイナの第三新東京市での生活が始まっていく
 
 
 

その次の日からユイナは新しい学校に通うことになった

転校生として簡単な自己紹介の後
一時間目の授業のときに、そのメールはやって来た

担任の老教師は誰も聞いちゃいない話を延々と語っている

「・・・というわけで、人類は科学の発達と共に爛熟した文明を謳歌してきたわけですが、すべてが灰燼に帰すときがやってきたのであります。
西暦2015年7月3日、地球が横転したのは皆さんもご存知だと思いますが、これにより地軸はほぼ垂直に傾き、大地震、大津波、大噴火に大陥没
およそ天災と呼ばれる自然災害が、まとめてセットでやってきました。」

転校初日ということもあったが、比較的まじめに授業を聞くタイプであるユイナは、なぜ先生がまだきてもいない日のことについての話をしているのかチンプンカンプンだった
もっとも、この教師がきちんとした授業をしていてもユイナにはチンプンカンプンだっただろうが
そして他の生徒は、いつものこととして勝手気ままな時間をすごしていた

「これが世に言う‘大転倒’でありますな。」

その後も続いている話にいいかげん頭がこんがらかり始めていたとき
ノートパソコンにメールの着信を告げるメッセージが現れた
開けてみると

『あのロボットのパイロットってほんとなの? <Y/N>』

とあった
ユイナはちょっと考えた後

『N』

を、押してメールを転送した
その後も、授業はなんの滞りもなく過ぎていった

そしてお昼休みがやってくる
ユイナが朝早くに起きて作ったお弁当を食べてると、何人かのクラスメイトが近寄ってきた

「ねぇねぇ碇さん、なんで疎開が始まってるのにこの学校に来たの?。」
「ん〜・・・・・(もぐもぐ)。」
「?・・・・碇さん?」
「・・・・・(ごっくん)。」

ユイナは縦に大きく顔を動かして、自作の卵焼きを飲み込んだ

「う〜んとね、パパに呼ばれたの。‘来なさい’って。」
「へー、お父さんに。」
「うん。」
「別々に暮らしてたの?」
「うん。」

話し掛けてきた子の方に顔を向ける

「ね、ねぇ・・・。」

また、最初に話し掛けてきた子の方を向く

「なぁに?」
「ちょ、ちょっと変なこと聞いてもいい?」
「?・・・いいけど。」
「あ、あの・・・。」

ほっぺをぽりぽりと掻いたりして目線を泳がしている少女を、ユイナはちょっと小首をかしげながら見上げている

「碇さんって、こっちに来る前はどこに住んでたの?」
「第二新東京市だよ。」
「誰と?」
「親戚のおじさんとおばさんだよ。」
「お母さんとは、暮らしてなかったの?」

一瞬、クラスが静まり返った

「ん、と・・・・ママは、死んじゃったの。」
「・・・・やっぱり。」
「え・・・?」
「あ、ごめんね。そういう意味じゃないのよ。」
「う、うん。」
「あのね・・・このクラスの生徒って、みんなお母さんがいない人たちばかりなんだ。」
「そうなんだ。」
「だから、碇さんもひょっとしたらって思ったの。」
「うん・・・・・ママは、私が3歳のときに事故で死んじゃったんだって。だから私、ママの顔とかよくわかんないの。」
「・・・わたしも、碇さんと同じくらいのときにお母さんが死んじゃって。わたしもお母さんの顔、覚えてないの。」
「・・・・・・。」
「あっ、ごめんね。せっかく転校して来てくれたのに、こんな暗い話をしちゃって。」
「ううん。私たち一緒だね。」
「え・・・・あはっ!そうね、わたしたちって一緒ね。」
「うん!一緒、一緒!!」
「うふふ、碇さんって明るい人ね。・・・わた「あたし‘相田=アヤメ’よろしく!」」
「よろしく。」

二人の少女の間に、いきなりアヤメが割り込んで来た

「ねぇ、君のお父さんってどこに勤めてるの?」
「んー‘ネルフ’だよ。」
「ふ〜ん・・・・。」

アヤメはあごに手をあて、名探偵よろしく考え事を始めた
それを見た先ほどの少女は、再びユイナに話し掛けようとする
しかし、

「あ、あの「ねぇ、ほんとにあのロボットのパイロットじゃないの?」」

再び、アヤメに阻まれた

「うん、違うよ。」
「はぁー・・・やっぱ違うのかぁ。」
「そうだよ、ロボットじゃなくて人造人間なんだって。」
「へー、そうだったんだ。」
「うん、そうなんだよ。」

アヤメはあからさまに肩を落とし、ユイナはにこにこしながらたこさんウインナーをほおばる
他の生徒も二人の会話に注目していたが、やがてみんなそれぞれ元のポジションに戻っていった
さっきの少女もちょっと残念に思ったが、気を取り直してユイナに話し掛けるタイミングをうかがっている

「へー。」
「・・・・・。(にこにこ)」

少女は、アヤメの反応を見る

「そうだったんだぁ。」
「・・・・・。(もぐもぐ)」

そして、ここぞ!というタイミングでユイナに話し掛けた

「ね、ねえ碇さ「「「「「違うだろ(でしょ)!!!」」」」」

\(−−\(−−\(−−\(−−\(−−\(−−\(−− ・・・・

が、そのとき一斉にクラス中からユイナに突っ込みの手が入った
あわれ、名も無き少女は真っ白に燃え尽きてしまった・・・

「はにゃ?」

食べ終わったお弁当をしまいながら、ユイナは小首をかしげる

「あ、あんたぁ!」

アヤメがユイナの襟首を掴んで‘ガクンガクン’と前後に揺さぶる

「あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″〜。{@◇@}」
「あんたぁ!やっぱりあのロボットのパイロットなんじゃないの!!」
「はにゃぁ〜。(@0@)」

半ばグロッキー状態のユイナの机の周りにクラスの生徒みんなが集まってきた

「やっぱり―!」
「やっぱそうだったんじゃん!!」
「ほんとだったんだぁ!」
「かっこいー!!」

周りが騒がしくなってきた頃、ようやくアヤメがその手を放した

「さあさあ!洗いざらいしゃべって頂きましょうか!?」
「ほ、ほぇ〜。(@O@)」

まだ頭が‘ぐるぐる’しているユイナだったが、周りの異常な状態に気付いた

「はにゃ。(・・? みんなどうしたの?」

「「「「「どうしたの、じゃ無い!!」」」」」

\(−−\(−−\(−−\(−−\(−−\(−−\(−− ・・・・

二度目の突っ込みが入った・・・

再びアヤメがユイナの襟を掴む

「やっぱりあのロボットのパイロットなんじゃないの!」
「違うもん!ロボットじゃなくて、人造人間だもん!」
「おんなじでしょ!」
「違うったら違うんだもん!!」
「どこが違うのよ!」
「だって、リツコさんがそう言ってたんだもん!」
「リツコさんって誰よ!」
「リツコさんは、リツコさんだよ。」

二人の間にしばしの膠着状態が訪れる

「まま、そんなことはどーでもいいからさっ!」

クラスメイトの一人がその間に割って入り、そのままユイナに質問をぶつけ始める

「それよりもさ、あのロボッ・・・人造人間ってなんて名前なの?」
「え〜っとね、エヴァ・・・。」
「パイロットにはどうやって選ばれたの?何かテストみたいなのがあったんでしょ?」
「ううん、そんなのは・・・・。」
「ネェネェ、怖くなかった?」
「あ、うん。顔が・・・。」
「顔?」
「必殺技とかあんのか?」
「え?必殺技って?」

四方八方から話し掛けられ、ユイナの頭はパンク寸前だ

「あの怪獣みたいなの一体何なの?どこかの国の秘密兵器なの?また、襲ってくるの?」

と、一人の生徒が発したその質問に、さっきまだ騒がしかった周りの生徒が不意に静かになった
視線がユイナに注がれる
みんな、心配なのだ

「わたしも、よくわからないの。みんな‘使徒’って呼んでるけど、何かみんなも良く知らないみたいなの。」
「そう、なんだ・・・。」

その少女は、少しがっかりしたようだ

「ごめんね。」
「ううん、そんなこと無いわ。でも・・・怖いわね。」

そう言っておびえる少女に、ユイナは不思議そうに目を向けた

「え?そんなことないよ。かわいいんだよ。」

「「「「「はぁ!?」」」」」
 
 
 

 CONTINUE TO 「trak2」
 
 
 

 あとがき

リ、‘Rebirth’がコメディになっていくぅぅ〜・・・・
それでは、‘trak2’に続きます


マナ:なんだかんだ言いながら、ユイナちゃん強いわねぇ。

アスカ:加持さん、たじたじね。(^^;;;

マナ:加持さんも、あまり綺麗好きじゃなかったのね。

アスカ:これで、ミサトと結婚したら・・・。

マナ:あまり、加持夫妻宅には遊びに行きたくないなぁ。

アスカ:アタシも・・・。

マナ:学校でも、ユイナちゃんいきなり人気者ねぇ。

アスカ:人気者というか・・・どっか抜けてるっていうか・・・。

マナ:コメディー調まっしぐら。楽しくていいわ。(^^v

アスカ:使途が、”かわいい”だもんねぇ・・・(ーー;;;;
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