Rebirth ERO

   DISK2 Shining Girl :trak2              BY zodiacok
 
 
 
 

ユイナはネルフで戦闘の訓練を受けていた

「えーっと、目標をセンターに入れて、スイッチ。」

ババババッ!!

パレットライフルから発射された弾丸が3Dポリゴンで形作られた敵の体を貫く

「まったく、彼女にも困ったものね。」

リツコがそう嘆くのも無理は無い
当初、射撃訓練の的はサキエルをかたどったものだったのだが
ユイナが

「かわいそうで撃てない!」

と駄々をこねたために、急遽変更になったのだ

「まぁまぁ、リッちゃん。あの天真爛漫さが彼女のいいところなんだからさ。学校のほうでも持ち前の明るさを発揮させてか、友達もたくさんできてるようだしね。」
「その明るさが、彼女の処世術な訳ね。」
「そういう言い方は止せよ・・・・。」

チラッと向けられた加持からの視線から、逃げるようにリツコはモニターに目を落とす
加持も腕を組んだまま‘やれやれ’といった感じに肩をすくめて見せた

「ま、いいさ。・・・それよりもさ、昨日もまた電話がかかってきたよ。」
「え?誰から?」
「ユイナ君の親戚の伯父さんと伯母さんからだよ。」
「なんて?」
「‘こっちで元気にしているのか’とか‘もうユイナ君は帰ってこないのか?’とか‘たまには声を聞かせてほしい’とか、さ。」
「相当気に入られているのね。」
「ああ、つまり彼女は碇司令と一緒に暮らせないなら、ここにいる必要も無いんだよな。」
「そうね。じゃあ、何故彼女はここにとどまっているのかしらね。」
「それに足る理由がある、ということなんだろうな。」
「それを調べるのが、あなたの仕事じゃなくて?」
「そこまでプライベートに踏み込むこともないだろうけどさ。」

モニターの中では、ライフルを目標に当て続けている初号機がいた
 
 
 

その日のお昼休みも、ユイナは屋上にきていた
転校してきてからもたくさんの友達ができたし、今日も何人かの友達と一緒にお弁当を食べてきた(その中に一人、名前の知らない子がいるけど)
でも必ず日に一回はここにきて

「アスカちゃん・・・。」

こうして写真を眺めては、ため息をついている

「アスカちゃん、会いたいよぅ・・・・・。」

今までも、ずっと会いたいと思っていた

でも、こんなに切ない気分になったことは無かった

こんなに、苦しいと思ったことは無かった

こんなに、会いたくなるなんて思わなかった

こんなに・・・・・こんなにも・・・・・

「・・・アスカちゃん。」

アスカは、写真の中にいる
写真の中で、ユイナに微笑んでいてくれている

もっと、微笑んでほしい、ユイナはそう願う

その声を聞きたい、その鼓動を感じたい、その手に触れたい

その、唇にも・・・

そのすべてに、さわりたい

でも、彼は今ここにはいない

「私、アスカちゃんのことが好き・・・だよぅ。」

小さな胸に、そっと写真を抱く

「会いたい・・・・・会いたいよぅ。」

なんてユイナが感傷に浸っているところに

「屋上にて孤独に浸る・・・・・まさにヒーローの図っちゅう感じですなぁ。」

という声がした

「えっ?」

写真をあわててポケットにしまいこみながら、ユイナは振り返った
そこには二人の少女が立っていた

「あっ、アヤメちゃん!と・・・・ふ、不良さん!?」

「ちゃうがな!」

ムースで固められた短めの頭に、真っ黒のジャージ
本人はそう否定するが、傍から見ればそう思われてもいた仕方ないいでたちだ
しかし、その少女はそう言われたことにすっかり腹を立ててしまった
今にも殴りかかりそうになっているのを、後ろからアヤメが羽交い締めにして必死に止めている

羽交い絞め・・・英語で言えば‘フルネルソン’、この状態のまま後ろに放り投げれば‘フルネルソンスープレックス’いわゆる‘ドラゴンスープレックス’になり、前方に投げつけると‘ノーフィアー・大森隆夫’が好んで使っている‘フルネルソンバスター’になる
・・・閑話休題

「ちょ、ちょっと落ち着いてよ!・・・ご、ごめんねユイナ。この娘がさ、ユイナに話があるっていうから連れてきたんだけど。」
「ええい!放せぇ!アヤメ、放しなされぇ!!」
「で、殿中でござる、殿中でござる!」
「はにゃ(・・?」

なかなか面白い漫才のようだが、ユイナはついていけてない

「漫才ちゃうわ!!」

違ったのか・・・

「トウコ、誰と話してるの?」
「う、うるさい。と、とにかく放しや!」
「だ、だめだって。だってどうせ‘ぶつ’つもりなんでしょ!?」
「大丈夫やって!いきなりそんなことはせーへんから!」
「・・・ほんとでしょうね〜?」
「ああ!」

しぶしぶといった感じでアヤメはその腕を解いた
トウコも、アヤメをキッと睨んだ後2,3回肩を鳴らし、今度はユイナを睨み付ける

「エーか、転校生!」
「・・・・・?(・・ )( ・・)」
「あんたのことや!」
「へへへ〜。やっぱり。(^^ゞ・・・私‘碇=ユイナ’、よろしくね。」
「あたしは‘鈴原=トウコ’・・・ってちゃうわ!」
「はにゃ・・・じゃあ、なんて名前なの?」
「い、いや、それは‘鈴原=トウコ’や。」
「よろしくね、トウコちゃん。」
「あ、ああよろしゅう・・・って、ちゃうわ!」
「えっ・・・・仲良くしてくれないの?(・;)」
「あ、いや、そんなことは・・・って!ええか、よう聞きや!!」

ズビシ!とユイナの鼻先にその人差し指を突きつける

「う、うん。」
「あたしの弟はなぁ、今ケガして入院しとんのやで!とうちゃんもじっちゃんもあんたのおる研究所づとめで看病するのは、あたししかおらへんねん!」

突きつけた指を下におろす

「まぁ・・・あたしはそんなんかもてへんけど。せやけど弟の顔に傷でも残ってみいや、美少年が台無しや!!・・・・かわいそうとは思わんか!?」
「うじゅぅ〜・・・かわいそう。」
「せやろ!」
「でも、そんなにかっこいいの?」

ユイナはこっそりと、スカートの上からアスカの写真に触れてみた

「せや!まさに21世紀の‘じぇ〜むず=ぢぃ〜ん’や!!」
「ほぇ〜。すごいねー!!」
「そうやろ、そうやろ。」
「うん!すごいすごい!!」
「そ〜かな〜?あの顔が‘ジェームズ=ディーン’ねぇ・・・・だいたい、トウコは‘ジェームズ=ディーン’なんか知らないでしょ。」
「うるさいわ!」

ギロ!とアヤメを睨み付ける

「と、とにかくや!そないなことになったんは誰のせいやと思う!?」

再び、ユイナに指先を突きつける

「アンタはんのせいや!」
「え・・・わたしの?」
「アンタはんがムチャクチャしたせいで、ビルの破片の下敷きになったんや!!パイロットかなんや知らへんけど、チヤホヤされてええきになってんやないで!!」
「・・・ごめんなさい。」

ユイナは深々と頭を下げた
トウコも、その姿にちょっとは許そうという気にはなったが、ここは心を鬼にすることに決めた

「あ、いや・・・・ご、‘ごめん’ですむ問題とちゃうで!」
「ごめんなさい。・・・・・でも。」

顔を上げたユイナは、悲しそうな目でトウコを見つめた

「でも、みんなは私がEVAのパイロットだから仲良くしてくれたの?みんな、友達だから仲良くしてくれたんじゃなかったの?」
「あ、あの・・そ、そんなことはないんちゃうか?。」
「アヤメちゃんは?」
「そんなことあるわけ無いでしょ。友達だから、仲良くしてるのよ。」
「ほんとに?」
「せ、せや。それはほんまや。・・・誤解するような言いかたしてすまんかったな。」
「ううん。そんなこと無いよ。」

そう言うと、ユイナは‘にぱっ’と笑う

「じゃあ、これでおあいこだね。(^^)」
「へっ?」
「おあいこだね。(^^)」
「あ・・・いや。それとこれとは・・・・。」
「おあいこでしょ?(^^)」
「せ、せやな・・・。」

それを聞いたユイナは、ますます‘にぱにぱっ’とトウコに笑いかける

「よかった。・・・じゃあ、改めて。私‘碇=ユイナ’よろしくね。」
「は、はい?」
「もう、私たちお友達でしょ?」

にぱにぱ

「ねっ!」
「せ、せやけど・・・。」

「碇さん。」

と、その会話に割り込んでくる声が
三人が振り返った先には

「あっ、レイちゃん!」

いまだ包帯姿も痛々しい、綾波=レイの姿があった

「非常召集よ・・・・行きましょ。」
「あ、うん。今行くよ。」

レイの方に駆け出したユイナは、途中で‘くるッ’と後ろを振り向く

「アヤメちゃん、トウコちゃん、またね〜。」
「うん、またね。」
「あ・・・・ま、またね・・・。」

大きく手を振るユイナに、‘バイバイ’を返すアヤメと、唖然とした顔で手を振り返すトウコ

「レイちゃん、そのけが大丈夫なの?」
「ええ。」
「ぶ〜!ぜんぜん大丈夫じゃないよッ!」
「そう・・・。」

ユイナとレイは、そろって階段を降りていった
・・・残されたのはアヤメと、トウコの二人

「・・・ねぇ。」
「・・・・・なんや。」
「なんか、体よくあしらわれてない?」
「・・・せやな。」

市内には、シェルターへの非難を告げる警報が鳴り響いていた
 
 
 

ネルフに向けてジュラ紀の生物のような姿をした巨大な怪物‘使徒'が飛行を続けていた
すでに第三新東京市に特別非常事態宣言が発令され、戦闘形態に移行している

「それにしても司令の外出中にお客さんか。思ったより早かったな。」
「前は15年のブランク。今回はたったの3週間ですものね。」
「こっちの都合はお構いなし。そんなんじゃ、女性にもてないな。」
「・・・加持君が言うと、説得力があるわね。」
「たはは。リッちゃんは手厳しいね。」

外では使徒に対しての迎撃が行われているが、何の成果も上げていない

「税金の無駄遣いだな。」

冬月がそうつぶやく

「加持一尉!委員会からEVANGELIONの出動要請がきています!」
「やれやれ。あんまりうるさいのも、女性には嫌われるぞ。・・・ユイナ君!用意はいいかい!?」

「うん!まかセ〜ロリ!・・・なんちゃって、キャハハッ!!」

「・・・彼女、テンション高いわね。」
「ああ。また、学校で新しい友達ができたんだってさ。」
「ふーん。」
「なんか‘不良’がどうとか、‘ジェームズ=ディーン’がどうとか・・・。」
「なにそれ?」
「さぁ・・・。」

リツコに肩をすくめて見せる加持だった
 
 
 

GEO−SHELTER‘第334地下避難所’には第壱中学の生徒が避難していた
当然その中にはアヤメとトウコの姿もあった
そのアヤメはビデオカメラをチェックしており、トウコはアヤメのことをボーっと眺めている

「・・・始まるわね。」

ビデオのディスクを口にくわえたまま、アヤメがつぶやく
しかし・・・

「ちぇっ、まただ〜。」

そう嘆くと同時に、口から‘ポトリ’とディスクが落ちた

「何してるん?」
「見てよこれ。」

差し出されたビデオカメラには、アンテナから受信されたTVの画像が映っていた
が、

「また文字ばかり。あたしら民間人には何も見せてくれないのよ〜。こんなビッグイベントだって言うのに〜!」
「・・・アヤメもホンマ好きどすな〜、こーゆーの。」
「うき―!一度で良いから見たいよ〜。今度は、いつこんなチャンスがくるかわからないし〜。」

がりがりがり!と頭をかきむしっていた手を‘ぴた‘と止め、アヤメはトウコの方をゆっくりと振り返った

「ねぇ〜、トウコ〜。」
「・・・なに?」
「外、出ない?」
「・・・はい?」

しばしの沈黙
・・・そして

「あ、あほ!そないなことしたら、死んでしまうやないの!!」

「バ、バカッ!・・静かに。」

人差し指を唇に当て‘し〜!’というアヤメ

「そんなの、ここにいたってかわりゃしないわよ。・・・それに・・・・・・。」
「なんですの?」
「トウコだってユイナの友達なんでしょ。だったら、彼女の戦いを一度ぐらい見守ってやるべきじゃないの?」
「せやけど・・・。」
「今日だってさ、良く考えもしないで変な言いがかりつけちゃって。ユイナが戦ってくれたからこそ‘トウジ君’だって怪我で済んだんじゃない。下手したら、あたしたちだって死んでたかもしれないのよ。・・・そんなこと考えもしないでさ。」
「う・・・。」

後一押し
アヤメは最後の攻勢に出た

「それなのにユイナは、トウコのこと‘友達’だって言ってくれたんじゃない。トウコだって、それに答える義務があるんじゃないの?」
「わかった、わかった。・・・あんたはホンマ、自分の欲望に素直やなぁ。」
「・・・とか何とかいっちゃってぇ。ほんとはトウコも見たかったんじゃないのぉ?」

アホ!誰が見たがってる・・・う、うぐっ。」

「あ、あもう!しずかにぃ!」

慌ててトウコの口をふさぐアヤメ

「あ、イインチョ。あたし達ちょっとトイレに言ってくるね。」
「・・・っぷはぁ。せ、せや便所や便所。」
「あ、あんまり女の子が便所なんて言うなよ(*・・*)」

真っ赤になっている‘委員長’をよそに、二人はそそくさと外に向かった

 ・・・・・

ドアのロックを開けて外に出、高台に上りきった二人の前に第4使徒‘シャムシェル’がその姿をあらわした

「おぉ〜!かわいくは無いけど、確かにかっこいいかもぉ。」

ビデオカメラ片手に、興奮を隠し切れないアヤメと

「きしょ〜。」

ブルーな顔でそれを見るトウコだった

そこへ兵装ビルの中から‘EVANGELION初号機’があらわれた

 ・・・・・

シャムシェルと対峙した初号機、パレットライフルを構えたまではよかったがそこで動きが止まってしまった
エントリープラグの中で、ユイナは迷っていたのだ

「えーっと、目標をセンターに入れて・・・・なんだっけ?」

‘ぽやぽや〜’としているユイナを、敵は見過ごしてはくれなかった
シャムシェルの‘光のムチ’がとんでくる!

「きゃあっ!」

ユイナは思わず手にしていたパレットライフルでそれを防ごうとするが

シュパパパッ!・・・・ドォォーン!!!

それは細切れにされ、爆発してしまった

「あ・・・。」

その爆煙でユイナは一瞬視界をふさがれてしまう

ヒュン!

その隙を突いて再び‘光のムチ’がEVAに襲い掛かかる
とっさに腕をクロスさせて左のムチを防いだが、右から襲ってくるムチには対処できなかった
ムチは初号機に足払いをかけた

「きゃ!」

転倒した初号機に向けて繰り出される使徒の攻撃
ユイナは‘ごろごろ’と転がって避けるのが精一杯だ

発令所では加持が厳しい表情でモニターを睨みつけていた

「あのムチは厄介だな。・・・ユイナ君!間合いを取るんだ。予備のパレットライフルを出す!」

「は、はい!」

だが、その行動は裏目に出てしまった
射出された武器を取ろうと後ろを向いたところに、光のムチが振り下ろされる

「おっと。」

それは間一髪かわすことができたが

シュパッ!

「しまったー!」

加持が頭を抱えたが、もう遅い
EVAの、文字どうりと言ってもいい、生命線である‘アンビリカルケーブル’が切断されてしまった
モニターの横に大きく‘5:00’という制限時間が表示され、次に瞬間にはカウントダウンが開始される

そして、その衝撃で倒れこんだ初号機は足にムチを絡み付けられ、後方に投げ飛ばされた

「キャァー!!」

 ・・・・・

まぶしいほどの夏の日差し、
むっとするような草の匂い、
さわやかに吹き抜ける微風、
陳腐な言葉だけれど、青い空に白い雲・・・

「・・・・いい天気どすなぁ。」

トウコは土手に寝そべりながら、ぼんやりと空を眺めていた
街のすぐそばにこんな自然があるなんて知らなかった

自分と空との間を2匹のチョウチョが‘ひらひら’と戯れている
遠くの方ではセミが鳴いている・・・そういえば、毎年段々とセミの数が増えていっているらしい
何はともあれ、自然が増えていっているのはいいことだと思う

「トウコ、トウコ、トウコ、トウコ!!・・・・・」

悪友・・・・アヤメが、自分を呼ぶ声が聞こえる

「なんどすか・・・。」

「EVAが、EVAが、EVAが、EVAが!!・・・・

ったく、本当にうるさいなぁ・・・人がせっかく気分良く日向ぼっこしてるというのに・・・・・

「どないしたんや・・・。」

「落ちてくるー!!」

「なーにー!!」

どっか〜ん・・・・

 ・・・・・

「はにゃにゃにゃにゃぁ〜。(@0@)」

ユイナはEVAの中で目を回していた
なんか、変な気分だ

(え〜っと、私は・・・そうだ、使徒さんと戦っていたんだっけ)

まだちょっと‘ふらふら’とする頭を抑えながら前を見る
と、視界の隅にチラッと何かが映った

「?・・・なんだろ。」

そう思い、その部分を拡大してみると・・・

「キャー!やだ―!!」

初号機の広げられた指と指の間に、抱き合って振るえているトウコとアヤメの姿があった

その姿は、発令所にモニターでも確認された

「ユイナ君のクラスの娘達じゃないか!・・・なんでこんな所にいるんだ!?」

加持は、愕然とした面持ちでその光景を目にしていた

一方ユイナは

「キャ〜!トウコちゃ〜ん、アヤメちゃ〜ん!やだ―、見に来てくれたんだぁ。」

照れるにゃ〜、などとつぶやきながら‘ぽりぽり’と頭を掻いている
トウコとアヤメはいまだ‘ガタガタ’と振るえている
と、それを知ってか知らずか(多分わかってないだろう)ユイナは‘ポンッ!’と手を打つと大急ぎでエントリープラグをEVAから出し
大声で二人に呼びかけた

「ねぇねぇ!せっかくだから乗っけてあげるよ。おいで!」

「あ〜!!ユイナ君!待ちたまえっ!そんな事しちゃだめだって!!!」

発令所では、加持がマイクに向かって大声で怒鳴っているが

「いいのいいの。サービスサービスッ!!」

ユイナはぜんぜん聞いちゃいない

「サービスじゃないっ!許可の無い民間人をエントリープラグに乗せちゃだめだっ!!」

「ぶぅ!加持さんうるさい〜。・・・さぁ、早くおいでよっ。」

なおもわめく加持を無視して‘おいでおいで’をするユイナを、トウコとアヤメはしばし呆然と眺めていたが
しばらくしてトウコがようやく口を開いた

「・・・なぁ、どないしますか?」
「そうね・・・せっかくだから、お言葉に甘えさせてもらいましょうか。」
「・・・せやな。」

二人は‘のそのそ’と立ち上がった

 ・・・・・

ドボン!×2

「「み、水ぅ!」」

二人が中に入ったのを確認すると、ユイナは再びエントリープラグをEVAの中に収納した

「カ・・・カメラがぁ〜。」
「ユ、ユイナはん・・・。」
「ごめんね。ちょっと静かにしててね!」

ユイナはそういうと、‘キッ’と前方のシャムシェルを見据える

「ええぇーい!」

叫びながらユイナは突進する

パシィッ!

しかし、光のムチの攻撃を受けてしまう
それでも突進する

「えい!」

シャムシェルの正面に抱きつき、左手を首に絡め、左足で足払いをかけた!

「ああっ!」
「大外刈り!?」
「いや・・・あれは!!」
「S.T.O!」

発令所の誰かがそう叫んだ

どかっ!どかっ!どかっ!

倒れこんだ使徒の上に馬乗りになり、その顔にパンチを繰り出す

しかし
すぐに使徒に跳ね飛ばされてしまい、またムチで牽制されてしまう

ユイナも、何とかキックで応戦しようとするが、軸足にムチを当てられて転ばされてしまったりと、思うように攻撃できない

そして、また逆に攻撃を受けてしまう

「えぇい!」

再度懐に飛び込んでS.T.Oをかけようとするが、今度は腰を落とされてなかなか決めることができない

そして突き放されてしまう
ちょっとにらみ合ったが、今度はユイナがキックで牽制しようとした

が、再び転ばされてしまい、その足にムチが絡みついてきた

バチバチバチッ

「ああー!!」

何とかそれを振り払うことに成功し、また牽制しあう

と、今度は使徒のほうから突進してきた

ゴッ!ドドォーン!!

2,3のビルを吹き飛ばし、ようやく一つの兵装ビルに当たって止まる

「くっ!このー!!」

力づくで押し返すと、またS.T.Oを決めた

「「「「おぉ――!!」」」」

その攻撃に発令所がざわめく

立ち上がってきた使徒に、再びS.T.Oを決める!
が、EVAのほうも首にムチを巻きつけられ、頭から地面に倒れこんでしまった
そのとき、右腕を強打してしまう

「いやーっ!み、右手が、右手が痛いよぅ!!」

「初号機、右肩部破損!!」

そのマコトの声に、加持は顔を引きつらせた
モニターでは先に立ち上がった使徒が、まだ倒れているEVAに一撃を加えている
と、振り下ろされたムチを初号機がその右手で掴む
シャムシェルがムチを引っ張ったため、結果的に起こされる形となり

「い、いえ・・・初号機、今の衝撃でずれていた装甲がはまりました!」
「いいぞ!!」

思わずそう叫んだ加持だったが、依然右肩に損傷を負っていることに変わりは無い

「もうっ!」

しかしユイナはシャムシェルに抱きつくと、4度目のS.T.Oを決めた!

シャムシェルの方も負けじと光のムチで一撃を返すが、初号機にダッシュからのS.T.Oを決められてしまい

立ち上がってきたところにS.T.O!
そのままバックをとってチョークスリーパーを決める

「え―――い!!」

‘じたばた’と暴れまわる使徒を何とか押さえ込んでいく
‘ごろごろ’と転がったり、‘ぶんぶん’とムチを振り回したりしているが、ユイナはその手を休めない

ぐぐぐっ

さらにいっそう首を絞める力を強くする

ヒュン!

が、それによってできた隙間にムチを滑り込ませEVAの手に巻きつける

じゅ〜

肉がこげる音がする

しばらくは我慢していたが

「やぁ――!あついぃ―――!!」

とうとう、その手を放してしまった

またもや立ち上がってくる使徒・・・しかし!

「ええぇ――――い!!」

ユイナの、渾身の力をこめた最後のS.T.Oがシャムシェルに炸裂した

それと同時に初号機の内部電源が切れる
そして

「目標、完全に沈黙!」

第4使徒・シャムシェルの活動も停止していた
 
 
 

トウコは教室の中で、珍しく考え事をしていた

「もう、3日もたつんやな・・・・。」
「あたしたちがEVAに乗せてもらってから?」
「あのこが学校を休みはじめてからや。」

トウコは、思い出していた
右腕を負傷させながらも、左腕一本で敵を投げたこと
そして・・・

 「ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
 「・・・・・ユイナはん。」
 「!・・・・へ、へへへ〜。やったぁ。(^^;v」

終わった後の痛々しい笑顔

「・・・ふぅ。」

トウコは、珍しくため息をついていた

「・・・・そんなに心配なら、お見舞いにでも言ってくればいいじゃない。」

アヤメはパソコンを見たまま、投げやり気味にそう言う

「・・・せやな。」

ガタッ

音を立てて、机から立ち上がると、その横に引っ掛けてあったカバンをつかんだ

「ほな、行くで。」
「へっ!?い、行くってどこに?」

始めてアヤメがパソコンから顔を上げた
その姿を斜め上から見下ろすトウコ

「ユイナはんのお見舞いにや。」
「お、お見舞いって。病院、どこだか知ってるの!?」
「知らへんがな!」
「知らないって・・・・じゃあどうすんのよ!」
「ユイナはんのウチに行ってみたら、ええがな。」
「って、今から!?」
「せや。」
「学校は?」
「そんなんサボればええやないの。」

‘ピコ’と、パソコンのスイッチを切る

「あ!何すんのよ、トウコ!!」
「んなもの、後でええやろ。・・・さ、行くで。」
「え〜!あたしも行くの?」
「当たり前ですやん。アンタかてユイナはんの友達やろ?」
「そーだけどさぁ・・・。」
「せやったら、ぐだぐだゆ〜とらんでさっさと行きまひょか。」

そう言うが早いか、トウコはもう教室から出てしまっていた

「ああん、待ってよ!」

アヤメも、慌ててカバンをつかむと、その後を追いかけていった
 
 
 

そのとき‘加持=リョウジ 29歳独身’は、ようやく目を覚ましたところだった
寝覚めのタバコを一服しながら‘ぐるっ’と部屋の中を見渡す

「・・・さすがに、散らかってきたかな。」

片付けて無い灰皿、洗ってない食器、散らかしっぱなしの本
昨日まではなんとも思わなかったが、3日目ともなると・・・やはり気になる

「ユイナ君が見たら、またうるさいだろうな。」

自分でも気になるくらいだ、彼女から見れば・・・

「確か、明日にでも退院してくるんだっけな。」

となると、今日中には何とかしなくてはいけない

しばしの喫煙を堪能する・・・彼女がうるさくて、家ではなかなか吸わせてもらえてなかったのだ

「しょうがない、少し片付けるか。」

山盛りになった灰皿の中に短くなったタバコを押し込む
端からネルフは休むつもりだ

「さて、と。」

灰皿を持って立ち上がり、その中身をごみ箱に突っ込んだとき

ピンポ〜ン

と、玄関でチャイムが鳴った

 ・・・・・

ピンポ〜ン

と早速チャイムを鳴らしてるアヤメに、トウコは慌てた

「あ、アヤメ!ほんまにここでええんか!?ここ‘碇’ちゃいまっせ。」
「いいのよ。彼女、ネルフの上司と一緒に暮らしてるって言ってたから。」
「ほなら、ええんやけど・・・。」

なんて、二人が話していると
‘プシュッ’と、音がして玄関のドアが開いて、加持が頭を掻きながら出てきた

「は〜い。・・・っと、君たちは・・・・・。」
「「あ・・・お、おはようございます。この間は、ご迷惑をおかけしました。」」

〈ワイルドで、カッコええなぁ〉
〈ユイナのやつ、こんな上官に命令されてるのね。いいなぁ〉

アヤメもトウコも、二人そろって加持に見惚れていた

「君達は、ユイナ君の友達だね。」
「は、はい!きょ、今日はユイナはんのお見舞いに来ました。」
「そうか・・・・いや、俺もこれから彼女のお見舞いに行こうと思ってたとこなんだよ。」
「さいですか。」
「ちょうどいいから送ってあげるよ。」
「「あ、ありがとうございます。」」
「その代わり・・・ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど。いいかな?」
「「はい!」」
 
 
 

その後疲れきった表情でお見舞いに訪れた二人が、ユイナのことを‘先生’と呼ぶようになったが、その理由は定かではない
 
 
 

〜次回予告
ユイナ、リツコ、ゲンドウ
それぞれが、それぞれの思いで一人の少女を見つめている
その少女の名は‘綾波=レイ’

 CHANGE DISK TO THE 彼女と私の事情

「う〜ん・・・。レイちゃんって、結構着やせするタイプだったんだねぇ。」

「あ、あの・・・碇さん?」
 
 
 

〜あとがき
‘天然’で‘泣き虫’だけど意外と‘したたか’な一面も持ち合わせている
最近、そんなユイナがかわいくて仕方が無い
・・・なんていうのは‘親バカ’なんだろうか?
ちなみに、今回の戦闘シーンのモデルとなったのは‘4.7闘強導夢’の‘橋本×小川戦’です


マナ:トウコもユイナちゃんに押されまくりね。

アスカ:加持さんに引き続き、トウコまでもがユイナちゃんのパワーに・・・。(^^;;;

マナ:けど、アヤメってさ。女のコなのに、あの性格なのね。

アスカ:そりゃ、元があのミリタリーだからねぇ。

マナ:ってことはさぁ、男の子の写真とか隠し撮りしてるとか?

アスカ:・・・・・・ありえるわね。(ーー

マナ:なんか、いやぁ〜。

アスカ:でも、需要があるから撮ってるんでしょ?

マナ:そうとも言うわね。

アスカ:でさぁ、S.T.Oって何?

マナ:そんなことも知らないの?

アスカ:アンタ知ってるの?

マナ:「惣流アスカって.とっても.おまぬけ」の略よ。(^^)

アスカ:ひ、人が真面目に聞いてるってのにぃっ! コロスっ!(ーー#
作者"zodiacok"様へのメール/小説の感想はこちら。
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感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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