天才ユイナちゃんが行く!   (アメリカンプロレス編)
 

 ベルトの価値                      BY zodiacok
 
 
 
 

S.A.L「俺が、本当にほしいのは・・・・。」
 

会場内が水を打ったように静まり返る
その、すべての視線が、S.A.Lに注がれていた
 

S.A.L「俺が手に入れてみたいものは、ただ一つ。それは・・・。」

「「「「「「それは。」」」」」」

S.A.L「四冠ヘビー級チャンピオンベルトだ!!
    そして・・・
    俺の持っているこの‘E.V.Aヘビー級ベルト’と合わせて、五冠統一ヘビー級チャンピオンの誕生だぁ!!

「「「「「「なっ!!」」」」」」

カヲル「・・・なんだって。」

加持「な、な、な、なんということだぁ
  彼が、S.A.Lが求めていたのは、
  ‘ゼ−レプロレス’の所有する‘四冠ヘビー級・・・。」

ゲンドウ「なんだとっ!!
 

今度は全員がモニターのほうを見る
S.A.Lも、ゆっくりとモニターのほうに顔を向けた
そこには、立ち上がり、こちらをサングラス越しに睨みつけている‘オーナー’ゲンドウの姿があった
 

ゲンドウ「貴様は・・・貴様は、あのベルトの価値がわかっているのかっ

S.A.L「・・・・・・それがどうした?」

ゲンドウ「あのベルトは、貴様などが簡単に巻けるものではない
    それに‘5冠統一’だと・・・
    そんなことが許されるわけが無かろう

S.A.L「なぜ、と聞いてもいいかな?」
 

口の端を歪め‘二ィ’と笑うS.A.Lを、ゲンドウは貫くばかりの視線でねめつける
 

ゲンドウ「あのベルトは、・・・
     ‘E.V.Aチャンピオンベルト’のような玩具とは違うんだ同列に扱うんじゃない!!

「「「「「「ざわざわ。」」」」」」
 

ゲンドウの‘E.V.Aチャンピオンベルトは玩具’という爆弾発言に、会場内の観客はざわめきを隠せない
カヲルを始めとした‘n.G.e’のメンバーも落ち着きを無くしている中
S.A.Lとレイだけは、いつものように不適な笑顔を、無表情な顔を見せていた
 

ユイナ「パパ・・・。」
 

そしてユイナは、S.A.Lにしがみつきながら、心配そうにモニターの向こうを見つめている
 

加持「そ・・・そうです・・・・・。」
 

加持が絞り出すようにしゃべり始めた
 

加持「そうですこれは、はっきりと言っておかねばなりませんっ!!
   激闘の歴史、多くの血と汗を流したレスラー達
   その伝統は、比べるべくもありません
   今このプロレス界があるのは、
   あの‘四冠ヘビー級チャンピオンベルト’のおかげといっても過言ではないのですっ!!
   否あの‘四冠ヘビー級チャンピオンベルト’こそがプロレスなのです!!
   そうそれに比べたら‘E.V.Aヘビー級チャンピオンベルト’など、おもちゃにしか過ぎません!!

ゼルエル「あーあ。言っちまったよ。」

カヲル「タブー。‘禁忌’に触れてしまったようだね。
    ・・・人は、‘アダムとイブ’の頃から何も変わってはいないのかもしれない。
    でも・・・・。」

ゼルエル「ん?」

カヲル「これも、彼のシナリオなのかもしれないね。」

ゼルエル「まさか。」
 

しかし、ゼルエルの見た先には、マイク片手に不敵な笑みを浮かべるS.A.Lの姿が
 

ゼルエル「・・・・なるほどな。」
 

そう言ってカヲルに肩をすくめて見せた

S.A.Lは、それに気付いたかどうか
マイクのスイッチをONにした
 

S.A.L「だから、どうした?!
     貴様らが見に来たのは、歴史か伝統か
     そんなものが見たけりゃ、ビデオ屋に行ってAVと一緒にレンタルでもするんだな
     テメーらの目の前にいるのは、一体誰なんだ?!
     あ!!

再び、会場内が水を打ったように静まり返る
だが・・・
 

「ア・・・アスカ!」

「「アスカ!!」」

「「「「「ア・ス・カア・ス・カア・ス・カア・ス・カ!!ア・ス・カ!!ア・ス・カ!!!」」」」」

加持「そうでした
   我々には‘(惣流).A(アスカ).L(ラングレー)’がいました!!
   歴史がなんでしょう?!伝統がなんと言うのでしょう!!
   今、私たちの目の前にS.A.Lがいる、それでいいではありませんか!!
   他に何を望むというのでしょうか?!!

すぐに、大‘アスカ’コールでいっぱいになった
それを満足そうに見回していたS.A.Lは
しかし両手を野球のセーフのようにゆっくりと広げ、三度場内を静かにさせる
 

S.A.L「言いか、テメーら・・・・よーく聞け。
     Team Two−Million!! I’m ASUKA!!
        (チーム=2000000!!)                   (俺がアスカだ!!

「「「「「「おおおおおおおおおお−−−−−−−!!!!!!」」」」」」
 

 ドドドドドドドドドドドド!!!!!
 

加持「お聞きくださいこの重低音!!
   ストンピングが鳴り響いています!!!
 

まさにこの会場内はS.A.Lを中心に興奮の坩堝と化していた
 

ゲンドウ「黙れ!!
 

モニターの中で、‘オーナーゲンドウ’が叫んだ
 

ゲンドウ「S.A.L・・・いい気になるのは、少し早いんじゃないのか
     よもや、もう忘れたわけではあるまい
     貴様の敵はあの‘n.G.e’なのだぞ!!
     そうだなカヲル!!

カヲル「ええ、もちろんですとも。」

ゲンドウ「そして、早速だがS.A.L
     貴様の次回の対戦相手を発表する
     それは・・・・n.G.e’サキエルだ!!
 

その言葉とともに、花道の奥にいる‘サキエル’にスポットライトが当てられた
 

加持「さぁいよいよ‘T2M’と‘n.G.e’とが激突します!!
   S.A.Lが五冠王者への道を突き進むのか?!
   ‘n.G.e’がその野望を打ち砕くのか?!
   それでは皆さん、また次回お会いしましょう。」
 
 
 
 

舞台裏の通路、ダウンから復帰したトウコが歩いている
そこにアヤメ(リポーター)がマイクを差し出した
 

アヤメ「王座から陥落してしまいましたが・・・。」
 

 がしっ!
 

アヤメ「きゃっ
 

その言葉を聞いたトウコが、振り返り、アヤメの襟首を掴む
 

トウコ「アヤメェ!!
    確かに、あたしはベルトは失った。だがそれがなんやというんや!!
    あたしは負けたわけや無いこの決着はいずれ付けたる!!

アヤメ「それは‘ユイナちゃん’とですか?‘S.A.L’とのことですか?」

トウコ「どちらとでもかまへん

アヤメ「しかし、S.A.Lはヘビー級ですが?」

トウコ「そんなのカンケーあらへん
    あたしは‘プロレスラー’やリングに上がれば、階級なんぞなんぼのもんじゃい!!

アヤメ「では、いずれはS.A.Lの対戦相手に名乗りをあげると・・・。」

トウコ「いや、あたしが本当に決着をつけたいのは‘ユイナ’はんの方や。」

アヤメ「ユイナちゃん、ですか?」

トウコ「せや!あんな決着の仕方あるかい!!
    彼女は、箱入り娘のふりをしとるだけなんや
    ええか、アヤメェ!!
    彼女の本当の実力を知っているのは、あたししかおらへん
    彼女の本当の力を引き出せるのは、あたししかおらへんのや!!

アヤメ「それでは、ユイナちゃんに再戦を申し込む、というわけですね。」

トウコ「せや誰にも邪魔はさせへん
    そしてこの次は、あたしのルールで戦ってもらう!!

アヤメ「トウコさんのルールといいますと・・・。」

トウコ「もちろん
    ‘ノーロープ・有刺鉄線・金網・電流・爆破・デスマッチ’や!!
 

 つづく
 
 
 

あとがき

今プロレス界は大変なことになっている
だが、アスカの台詞にもあるように
ファンが見たいのは‘過去の歴史と伝統’ではなく
今の‘レスラー達の技と力のぶつかり合い’
だということを、果たしてどれだけの人がわかっているのだろうか?


マナ:サルも大それたことを言い出したみたいね。

アスカ:サルって言うなーっ!

マナ:四冠ってことは、4つのタイトルを取らないといけないのかしら。

アスカ:でしょうねぇ。

マナ:その前に、トウコがリターンマッチを申し込んで来てるし、どうなるんだろう。

アスカ:やっぱり、先にリターンマッチなんじゃないかしら?

マナ:てことは、ユイナちゃんがまた戦うのね。

アスカ:ユイナのこともあるし、四冠のこともあるし大変だわ。

マナ:あんまり、無理しちゃ駄目よぉ。

アスカ:あら、心配してくれるの? 珍しい。

マナ:サルには、限界があるんだから。(^^v

アスカ:サルって言うなーっ!
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