Rebirth ERO

 DISK4 サヨナラは今もこの胸に居ます                        BY zodiacok
 
 
 

少女が泣いていた
それは、今までに彼女が経験したことのない悲しい涙だった

「うっ・・・うぐっ、うっ、うわ〜〜〜ん!」

あふれ出る涙を止める術など、持ち合わせてはいなかった

「うわぁ〜ん!わぁ〜〜ん!!わぁーーーん!!」

大声を出して泣き叫ぶ彼女の前には、一人の少年が立っていた
彼は、いつ果てるともしれないその涙を見つめていた

「うえ〜ん!うえ〜〜〜ん!!」

少年は、ほっとくといつまでも泣きつづける少女に小さくため息をつく

「はぁ・・・。いいかげん、泣きやめよ。」
「ひ、ひっく・・・うっ、だ、だって〜・・・・・・わぁ〜ん!(TOT)」
「はぁ・・・・。」

もう一つため息をつくと、今までそうしてきたように、‘ぽん’と少女の黒い髪の毛の上に右手を乗っける

「ほら、もう泣くなよ。」
「うぐっ・・・だって、だって!(:o;)」

二人の視線が、交錯する

「だって、アスカちゃんとさよならなんて!・・そんなの・・・・・うぐっ・・・・・そんなのやだもん!(:o;)」
「ユイナァ・・・。」
「う、うわぁ〜〜〜ん!(TOT)」
 
 
 

そこで、ユイナは目を覚ました

「あ・・・・あれ?」

どこかで見たことのある天井だ
ユイナがそんなことを考えながら‘ぼ〜っ’としてると
横から声がした

「碇さん。」

ベッドから、体を起こしてその声に振り向く

「レイちゃん。」

レイが、心配そうにこちらを見ていた

「碇さん、泣いているの?」
「・・・・え?」

そっと両手を目じりに当てる

「あ・・・・。」

その手で、‘ごしごし’と目をこする

「ち、違うもん。私、泣いてなんかないもん!」
「そう・・・。」
「違うもん、違うもん、違うもん・・・。」

ユイナは、一生懸命に目をこすった

「ほ、ほら、泣いてないでしょ。」
「・・・そうね。」

レイは、いつもの表情のままユイナを見つめていたが、思い出したようにユイナの前に食事の乗ったプレートを置いた

 かたっ

と、プレートが横にあった棚にぶつかってしまい、その拍子に上においてあったユイナの財布が床に落ちてしまう
拾おうとしゃがみこんだレイの目に、それに挟まっていた一枚の写真が飛び込んできた
金色に輝く長髪と、深い青の瞳
こちらを振り返って微笑んでいるその顔が、レイはどことなく自分と似ている気がした

・・・そう、無機質な感じが

そう思ってレイが写真を見つめていることに、涙を拭き終えたユイナが気がついた

「レイちゃん?どうしたの?」

ユイナの言葉に、レイはその写真を差し出した

「これ・・・・。」
「あっ!(・・)・・・だめっ、レイちゃん!」

飛びつくように、レイから財布と写真を奪い取るユイナ

「これはだめなのっ!!」

大事そうに‘ギュ〜!’っと自分の胸に抱きかかえる

「ご、ごめんなさい・・・。」

レイは、悲しそうに謝る
ユイナは、‘はっ’とそのレイの方を向いた

「レ、レイちゃん・・・。」
「・・・・・・・。」

悲しそうに見つめるレイに、ユイナは慌てて両手を‘ぶんぶん’と左右に振る

「あ・・・レイちゃん。ち、違うの。これはね、特別なの。・・・・ごめんね。」
「・・・特別?」

レイは、不思議そうに小首をかしげた

「うん・・・・・。(///)」

顔を真っ赤にしてうつむいてしまったユイナに、レイはなんと話し掛けていいのかわからない
出した食事にも手をつけないので、何とか注意を促そうと思った
そのとき目に入ったものは、やっぱり、ユイナが大事そうに持っている写真だった

「碇さん・・・・。」
「・・・・ん?」

ユイナが、目を潤ませながらも、レイの方に顔を向けた

「その、写真。・・・特別なのね。」
「うん・・・・。」
「その写真の人。・・・大事な人なのね。」
「うん!そうなんだよ。」
「そう・・・・。」

レイは、そんなユイナの顔を見つめる

「その人、かわいい娘ね。」
「・・・・はにゃ?かわいい?」
「・・・違うの?」
「違うよっ!アスカちゃんは‘かわいい’じゃなくて、‘カッコイイ’だよっ!!」
「それは、おかしいわ。」

レイは、思ったことを口にするタイプだった

「女の子に対して、‘カッコイイ’という言い方はしないわ。」
「違うもん!アスカちゃんは女の子じゃないもん!!男の子だもん!!」
「そう・・・。」
「そうだもん!((−o−))」

レイは、思ったことは口に出すタイプだった

「そしたら、やっぱりおかしいわ。」
「どこが!?」
「男の人に‘ちゃん’をつけるのは、おかしいわ。」
「・・・でも、アスカちゃんは‘アスカちゃん’だもん!」
「でも・・・やっぱりおかしいわ。」
「むぅ・・・・だったら、なんて言えばいいの?」

でも彼女は、意外と無責任だった

「それは・・・・・・・・・。」
「むぅ・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」

「「・・・・・・。」」

二人は、押し黙ってしまう

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

・・・ア、アスカ。///)」

‘ポツリ’と、ユイナがつぶやいた

「え?」
「ア、‘アスカ’なら、どうかな?(///)」

うつむいているので表情は見えないが、頭から湯気が出ているのはよくわかった
レイは、そんなユイナのことがとてもかわいらしく思えた

「そうね。それなら、おかしくないわ。」

レイは、ユイナに頷いて見せた

「えへへ〜・・・。‘アスカ’かぁ〜。(^‐^)」
「・・・・・。」
「なんか。こ、恋人どーしみたいだねぇ〜。(^‐^)」
「・・・・そうね。」
「ふにゅぅ〜・・・‘アスカ’かぁ・・・・・。いいかもねぇ〜。(^‐^)」

ちょっと‘?’な感じがしないでもないが、でもどうやら元気が出てきたみたいなユイナに、レイは少し安心した

「食事、食べておいた方がいいわ。」
「あっ、うん。」

ユイナは目の前の病院食に手をつける
レイはそれを確認すると、ポケットからメモ帳を取り出し、開いた

「碇さん。そのままでいいから、聞いて。」
「ん?」
「明日午前0時から発動される作戦のスケジュールよ。」
「・・・・・え。」

かたん

ユイナが、フォークを落とした

「碇・綾波の両パイロットは、本日17時30分ケイジに集合。」
「あぁ・・・・・。」

レイの言葉とともに、ユイナの脳裏によみがえってくる光景

「18時00分、エヴァンゲリオン初号機および零号機起動。」
「あ・・・あぁ・・・・・。」

零号機の起動実験中に鳴り響く警報

「同05分、出動。」

EVAに乗って、兵装ビルから射出されて・・・

「同30分、双子山仮設基地に到着。」

その直後、目の前のビルを打ち抜き、自分に向かってくる一筋の光線

「以降は別命あるまで待機。」
「い、いや・・・。」

そのとき見た‘閃光’、感じた‘衝撃’と、‘痛み’

「明朝日付変更と同時に「いやぁ−−−−!!」

「!・・・碇さん?」

突然の叫び声に、レイはメモ帳から顔を上げた

「ど、どうしたの、碇さん?」
「いやぁ・・・いやぁ・・・・。」

その目に飛び込んできたのは、自分の肩を抱きしめながら‘ガタガタ’と震えている少女の姿だった

「碇さん・・・。」

身を縮ませているユイナを、レイは‘そっ’と優しく抱きしめていた

「・・・・碇さん。」
「い、いやぁ・・・・・いやぁ・・・・・・・・。」

なんでそんなことをしたのか、自分でもよくわからない
でも、小さく震えている彼女を見たとき、そうしなければいけないような気がした
自然に、体が動いていた

しばらくそうしていると、ようやくユイナの震えが収まった

「大丈夫?・・・碇さん。」
「うん・・・・大丈夫。もう、大丈夫。・・・レイちゃん、ありがとう。」
「ええ・・・・。」

とは行ったものの、ユイナはまだ、うつむいて自分の肩を抱きしめている

「怖いの?」
「えっ・・・・うん。」
「そう。・・・なら、初号機には私が乗るわ。」
「え・・・・。」
「パーソナルデータの書き換えなんて、すぐだから。」
「レイ、ちゃん。」

うつむいていた顔を上げ、ユイナはレイの方を向く

「碇さんは、ここで待機してくれればいいから。」

そう言ってレイはユイナに微笑もうとしたが、それは成功したとはいえなかった

「ね・・・。」
「ううん、いい。私が乗るよ。」
「碇さん?」

‘ふるふるふる’とユイナは首を振った

「私が乗るよ。・・・私、乗らなきゃだめなの!」
「・・・・。」
「私アスカに会いたいの!でも、EVAに乗らなきゃ会えないの!だから、だからEVAに乗らなきゃだめなの!!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「絆、なのね。」
「え・・・・うん。」
「・・・・そう。」

レイは、ユイナに後ろを向いて歩き出した
部屋のドアを開けると、ゆっくりとユイナのほうを振り向いた

「なら・・・・・60分後に、また。」
「あ・・・・うん。」

ユイナは、部屋に一人になった
手には、今彼女を支えているモノ・・・・‘アスカの写真’

「アスカァ・・・・。」

思い出されるのは、さっき見た夢の続き
 
 
 

あの日、二人は空港にいた
アスカがドイツに行ってしまうのだ

アスカはずっとユイナの側にいた
嬉しいとき、楽しいとき、彼は横にいて一緒に笑ってくれた
悲しくて泣いているとき、彼は泣き止むまで‘いーこい−こ’してくれた
幼稚園に行くときも、その帰り道もずっと手をつないで歩いた
遊ぶときも一緒だった、お弁当も並んで食べた

小学校に行ってもそれは変わらないと思っていた
終わりを告げる日のことなんて、考えたこともなかった

「わぁ〜〜ん!やだよぅ、やだよぅ!アスカちゃんとさよならなんてやだよう!!」

アスカとのお別れ、それを考えただけでユイナの涙は止まらなくなった

「うわぁ〜〜〜ん!!」
「ほら、ユイナ。泣き止めよ。」
「うぐっ・・・泣き止んだらアスカちゃん、さよならしない?」
「・・・・・・。」

ユイナの黒いショートヘアーを‘い−こい−こ’しながらも、そんな風に言われると、思わず視線をそらしてしまう

「・・・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。(−−;」
「・・・・・うっ。(・;)」

黙りこくるアスカに、ユイナの目にはまた涙があふれてくる

「うわぁ〜〜〜〜ん!!(TOT)」
「・・・・ユイナァ。」
「うわーーん!うわーーん!!うわーーーーん!!(TOT)」
「・・・・・。」
「やだよう!やだよう!さよならなんて・・・・そんなのやだよっ!!」
「ユイナ。」

アスカはユイナに優しく微笑みながら、その頭を‘そっ’となでてやる

「バカだな、ユイナは。」
「うっ・・・・え?(・0;)」
「相変わらず、バ・カ・ユ・イ・ナ、だな。(^^)」
「うぐっ・・・ち、違うもん!ユイナ、バカじゃないもん!(・o;)」
「・・・・ふふっ。(^^)」

「「バカじゃないもん!ユイナだもん!!」」

「あははははっ!(^▽^)」
「うじゅ〜。(・・)」

右手でユイナの頭を少しだけ引き寄せると、首をかしげるようにその顔をのぞき込んだ
アスカは、自分ができる最高の笑みを浮かべて、ユイナの瞳をのぞき込んだ

「違うだろ、ユイナ・・・・・。」
 
 
 

・・・・・・と

あのときのアスカの見せてくれた笑顔と、写真の笑顔が違うことに気がついた

「・・・・アスカ。」

ユイナは悲しい気持ちになった
彼女も気づいたのだ・・・・その笑顔が‘無機質’な感じがすることに

「アスカ。楽しく、ないの?」

ユイナは知っているのだ
アスカはつらいとき、悲しいとき、泣きたいとき、涙を流すのを我慢して・・・

「いつも、そうだったもんね。」

いつも、そうやって無表情になっていたんだよね

はやく・・・

「アスカァ・・・はやく・・・・・。」

はやく、会いたいよぅ
 
 
 

でも、そのためには今日‘EVA’に乗らなければいけない
 
 
 

夕日が山の向こうに消える頃
2体のEVANGELIONが、発信口の中からヒグラシの鳴声とともに姿をあらわした

対第5使徒殲滅作戦、‘ヤシマ作戦’が発動された
 
 
 

とうとう太陽は、地平線の向こう側へとその姿を隠してしまった

第5使徒‘ラミエル’は正八面体の青い体を月明かりに照らされながら、その最下部から出ているドリルをNERV本部へと掘り進めている

そしてNERVでも、オペレーターやその他のスタッフが駆けずり回っている頃
二子山仮設基地で、ユイナとレイが加持から今回の作戦についての詳しい説明を受けていた

「これからする説明をよく聞くんだ。いいね。」

「「はい。」」

いつに無くまじめな顔の加持は、2人の返事に大きくうなずいた

「よろしい。・・・まず、これが‘ポジトロン・ライフル’。」

そう行って加持が指し示す先にあるのは、いくつものコードの刺さった、長大なライフル銃

「戦自研で開発途中だったものをNERVが徴発し、組み立てたものだ。・・・もっとも、間に合わせだけどな。
計算上は、この距離からでも敵さんのA.Tフィールドを貫くには十分な威力を持っている。
まぁ、もともと精密機械な上に急造仕様だから野戦向きじゃないのが、難点といえば難点だけどな。・・・・そして。」

今度加持が指さしたのは、巨大な盾だ

「この盾。・・・こちらも急造仕様だが、もとは‘SSTO’の底部で対レーザー蒸発塗装もしてあるから、相手使徒の砲撃にも17秒は耐えられる。」
「はうっ!‘SSTO’?!・・・・‘スーパー・スペース・トルネード・オガワ’!!」

ユイナの頭の中ではS.T.O(外掛けの改良技)と同時に大爆発が起こるようなイメージが浮かんでいた

「違うわ。‘スペース・シャトル・トランスポート・オービター’。いわゆる、‘スペースシャトル’のことよ。」

しかしそのイメージは、レイのツッコミによりあっという間に吹き飛んだ

「うじゅぅ〜。(−△−)」
「いいかい?・・・・そして、ユイナ君は初号機で砲手を、レイは零号機で防御を担当だ。」

「「はい。」」

「これは、ユイナ君の方がシンクロ率が高いためだ。今回はより精度の高いオペレーションが必要とされるからだ。」

それを受けて、リツコが説明を続ける

「ユイナちゃん。陽電子は地球の自転、磁場、重力の影響を受けて直進しません。」
「?????(?O?)」
「はは、大丈夫。君はテキスト通りにやって、最後に真ん中のマークがそろったときに撃てばいいから。あとは機械がやってくれるさ。」
「あ、はい。・・・・でも、それが外れちゃったら、どうするんですか?」
「2発目を撃つには、冷却や再充電なんかに最低20秒はかかる。
その間にも敵の反撃が予想されることを考えると・・・まぁ、最終的にはレイの盾に守ってもらうしかないな。」
「ん?・・・え〜っと。20秒は撃てなくて、でもレイちゃんの盾は17秒しか持たないんだよね・・・。」

ユイナは、いち、にぃ、さん・・・と指を折って数え始めた

しー、ごー、ろく・・・・・

「うにゅっ!(><)」

が、ようやく両手じゃ数えきれないことに気がついた

「うじゅ〜。(T△T)」
「マイナス、3秒よ。」
「あっ、レイちゃんありがと。・・・でも、マイナス3秒って?」
「3秒、足りないってことよ。」
「3秒、足りない・・・・。それじゃ・・・・。」

一瞬の沈黙が、あたりを包んだ

「それじゃあ、だめじゃん。」

・・・・再びの、沈黙

「あ、あのねぇ。ユイナちゃん!(−−メ」
「ま、まぁまぁリッちゃんも落ち着いて。・・・・ユイナ君もさ。つまり‘2発目は考えるな’って事だよ。なんとか1発でしとめてくれ。」
「わかりました。」
「うん。・・・さ、時間だ、2人とも準備してくれ。」

「「はい!」」

 ・・・・・

ユイナとレイは、EVAの昇降タラップの上で待機している

街の明かりが一つ、また一つ・・・・あるいは一度に、消えていった

その光景を、二人は黙って見つめていた

「私たち、死んじゃうのかなぁ。・・・・私、私死にたくないよぅ。」

体育座りしている脚の間に、ユイナは顔をうずめた
レイも、同じように座りながら、ユイナのほうに顔を向ける

「レイちゃんは平気なの?レイちゃんは怖くないの?」
「・・・・・・。」
「・・・レイちゃんは、何でEVAに乗るの?」
「・・・・・・。」
「レイ、ちゃん?」
「絆・・・・・だから。」

 ‘絆’
その言葉に、ユイナは顔を上げてレイの方を向いた

「私は他に何も無いもの。」
「・・・・・!」
「・・・・・・。」
「そんな・・・そんなことないよ!」
「・・・・・・。」
「だって、レイちゃんは美人だし、レイちゃんは頭いいし・・・・・。」
「・・・・・・。」
「レイちゃん・・・。」

レイは、ユイナから目をそらすと、ゆっくりと立ち上がった

「時間よ、行きましょ。」
「あ・・・・うん。」

ユイナも、あわてて立ち上がる

ふと、階段を上ろうとしていたレイが足を止めた

「碇さん。」

その言葉に、ユイナも足を止めて振り返った

「あなたは死なないわ。私が守るもの。」

レイも、ユイナのほうを見た
そして、2人の視線が交錯する

その視線をそらしたのは、レイの方からだった

「じゃ、さようなら。」
「あっ・・・・レイちゃん!」

ユイナはの呼び掛けにも答えず、レイはエントリープラグの中へ入っていった

 ・・・・・

00:00:00

デジタル時計が午前零時を知らせた

「ユイナ君。」

真面目な顔から一転、加持が‘にやっ’と笑う

「君に日本を、そしてその全てのエネルギーを預ける!」

「はい!」

「第一次接続開始。」
「第1から、第803区までの送電開始。」

 ヴィィィィィィィン

曲がりくねった山道におかれた送電車両が、低く鈍い音を立てる

「ヤシマ作戦、スタート!」

加持の声とともに、周りのオペレーターたちの声が飛び交う

「電圧上昇中、加圧域へ。」
「全冷却システム出力最大へ。」
「陽電子流入順調!!」
「第2次接続!!」
「全加速器運転開始。強制収束機作動!!」

今、日本中の全電力が、二子山に向かっていた

「最終安全装置解除されました!」
「第3次接続問題ありません!」

一瞬、その視線が加持に集中する

「撃鉄起こせ!!」

その声にユイナが、構えているライフルのレバーを引く

と、コンピューターが標的との誤差を修正し始める

「全エネルギー、ポジトロンライフルへ。」
「発射まで後10秒。9.8.7.6・・・・。」

カウントダウン中、突如ラミエルの周囲が怪しく光を放つ

「目標に高エネルギー反応が!」
「くっ・・・。」

‘ギリッ’と加持は歯を食いしばる

(気付かれたか。だが、奴に先に打たれる訳には行かない!)

加持の願いが通じたか、その瞬間、照準のカーソルがそろった!

「発射!!」

EVA初号機が引き金を引くと、ライフルから蒼い光線が敵に向かって伸びていく

しかし

ほぼ同時に、ラミエルからも紅い光の帯が、EVAに向かってきていた

 ギュオオオオオオオオオオオオオン!!

空気を切り裂いて直進している二つのビーム

 ブィンッ

それらはすれ違った瞬間、互いに干渉しあい、その軌道を大きくずらした

 ドォォォォォォォォ−−−ン!!

「きゃっ!」

「「「「うわぁあ!!」」」」

一つは初号機の右に、もう一つはラミエルの後方に着弾

と同時に、ラミエルから伸びたドリルが、ジオフロントを覆う総ての特殊装甲版を貫いた

「敵ドリル、ジオフロント内に進入!!」
「第2射急げ!」

ユイナは大急ぎでヒューズを交換し、2発目を発射するための準備がすすめられる

「目標に再び高エネルギー反応!!」
「早すぎるぞ!!」

その行動をあざ笑うかのように、使徒から加粒子砲が発射される

一直線に伸びてくる光に、ユイナの脳裏には`あの’光景が再び思い起こされた

「イ・・・・イヤァァァァァァ!!

‘ギュッ’と目をつぶったユイナ

・・・・・だが

「・・・・え?」

あの時感じた衝撃は、いつまで待ってもこなかった
ゆっくりと、閉じていた目を開く

「レイちゃん・・・・・。」

逆光に浮かぶシルエットは、零号機のもの
レイが盾を構えながら、ユイナを使徒の攻撃から守っている姿がそこにはあった

 バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

盾にコーティングされた塗装がものすごい勢いで蒸発し、あたりはうっすらと白いもやで覆われてきた

 ドドドドドドドドドド!!・・・・・ドワァッ!!!

それがすべて蒸発し終わると、あっという間に融解してしまった
そして、零号機が総てを受け止める

第2射の照射準備完了まで、残り後3秒というところだった

「レイちゃ−ん!!」

それを間直で見たユイナ

「レ、レイちゃん・・・・。」

グッ

レバーにかかった指に力が入る

「あ、あ、あ、あ、あ、あ・・・・・・。」

それにシンクロしているEVA初号機も、まだ照準の合っていないライフルの引き金に力をこめる
 
 
 

目の前には、両手を広げて立つEVA零号機の姿

今も体が覚えている、レーザーを受けたときの痛み

(レイちゃんが、レイちゃんが・・・)
 
 
 

 そして
 
 
 

「・・・・だめ。」

「え!」

びくっ

その声に、ユイナはレバーから指を離した

「碇さん。・・・まだ、だめ。」

「でも、でもレイちゃん!」

モニター越しに見えるその顔は・・・・痛そうで、つらそうで、苦しそうで

ユイナには

我慢が、出来ないのだ

「レイちゃん、レイちゃん!」

「だ・・め・・・・・あと・・すこし・・・・・。」

 ピ−−−−−!!

カーソルが、重なった

「いまだ!撃つんだ、ユイナ君!!」

加持が言うより一瞬早く、初号機はその引き金を引いていた
 
 
 

 ド
 
 
 

その閃光は、一直線にコアを貫いていた
 
 
 

「敵ドリル、本部直上にて停止!・・・完全に沈黙しました!!」

「「「「「「「やった!!」」」」」」」

その報告に、NERVのスタッフ全員が喜びをあらわにしている頃
ユイナは、崩れ落ちた零号機からエントリープラグを抜き取ると、大急ぎでそれに向かっていた
 

 さようなら・・・
 

別れ際にレイが残した言葉
 

 「ええ。さようなら、碇さん。」
 

いつも、レイが自分に言っていた言葉

ユイナはなんども転びそうになりながら、一生懸命、レイの元に向かって走った

(レイちゃん)

ようやくたどり着いたエントリープラグの、非常ハンドルを握る

「きゃっ!」

あまりの熱さに一瞬手を離してしまう

「ぐぅぅぅぅぅ−−!」

 ジュゥゥゥゥゥゥゥ−−−−

だけど
すぐに掴みなおして、回そうと力をこめる
手のひらが焼ける音がしても、今度は手を離さない

「あついっ!あついあついあついよー!!」

ユイナが、そう叫んだ瞬間

 ガコン

ハッチが開いた

「レイちゃん!」

ユイナが中に飛び込むと、シートに‘ぐったり’と横たわるレイの姿があった

「レイ、ちゃん・・・・・。」

レイは、ユイナの声に‘うっすら’とその目を開いた

「う・・・・・。」
「レイちゃん!」
「・・・・碇・・・・・・・さん。」

そこには、睨むように自分を見つめるユイナの姿

「レイちゃんのバカッ!」
「・・・・え?」
「なんで、なんで・・・・。」
 

 さようなら
 

「なんで、なんで、なんでっ!!」
「・・・・・・。」
「なんで、‘さよなら’なんて言うのっ!!」

(泣いちゃだめっ)

「‘さよなら’なんて、言っちゃだめなのっ!!」

涙が出そうになるのを、下唇をかんで、必死に我慢する

「ごめんなさい。」

レイは、そんなユイナからわずかに視線をそらした

「でも・・・。」

また、ユイナの瞳を見つめる

「ああいうとき、‘さようなら’じゃ、いけないの?」
 

 右手でユイナの頭を少しだけ引き寄せると、首をかしげるようにその顔をのぞき込んだ
 アスカは、自分ができる最高の笑みを浮かべて、ユイナの瞳をのぞき込んだ

 「違うだろ、ユイナ・・・・・。」
 

「違うんだよ、レイちゃん・・・・・。」

ユイナは、一生懸命に笑った
 

 「こういう時にはな。」
 

「こういう時にはね。」
 

「「またな(ね)って、言うんだよ。」」

「・・・・・。」

その言葉に、レイは初めて心からの笑みを、ユイナに向けることが出来た

白い月の光る、暗い夜の出来事だった
 
 
 

「だから・・・。」

アスカは、ユイナのことを力強く抱きしめた

「だから、俺が帰ってくるまで泣いたりするなよな!」
「・・・・うん!」

ユイナも、アスカに一生懸命抱きついていた
 
 
 

アスカ・・・・

私泣いてないよ
アスカとの約束、ちゃんと守ってるよ

でも・・・・・
 
 
 

〜次回予告

一つ隔てた扉の向こう
‘既知’でありながら‘未知’の世界
ドアを開けるのは、手にした‘鍵とわずかな‘心’

 CHANGE DISK TO THE knockin' on your door

「俺が悪いのかぁ?」

「デコピン!」
 
 
 

あとがき

いや、あれはドリルでしょ?


マナ:ユ、ユイナちゃん、何歳だっけ?

アスカ:14のはずだけど。

マナ:りょ、両手って・・・。

アスカ:おもいっきりへっぽこかも。(^^;

マナ:あの娘がエヴァに乗るんだもん・・・大変だわ。

アスカ:まぁ、なんとかラミエルは倒した様だけどねぇ。

マナ:それはそうと、『またね』いい言葉ね。

アスカ:これで、ファーストとユイナの間が接近したのね。

マナ:接近?

アスカ:なんだか、ファーストは実はユイナ狙いだったって噂が何処かで流れてたわよ?

マナ:うっ、うっそーーーー。(@@)
作者"zodiacok"様へのメール/小説の感想はこちら。
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感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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