天才ユイナちゃんが行く!
 

 LOVE AFFAIR〜秘密のデート                      BY zodiacok
 
 
 

 アスカ
 

君と初めて会ったのは何時のことだったっけ

そう・・・・あれは2年前、大学のクリスマスパーティだったと思う
あの時君は、一人で寂しそうにしてたんだっけね
一人壁に寄りかかりながらグラスを傾けている・・・・三流の少女漫画みたいなシチュエーションだったけど、それが本当に良く似合ってた
嫉妬の気持ちもあって、みんなから‘天才’と呼ばれた君の美しさに
私は、思わず息を飲んだ

そのまま、しばらく見つめていた

話し掛けているのは、一部の教授連中だけ・・・・それも、社交辞令というか、顔みせと言うか
応対する君の態度も、微笑んではいたけれど、どこかうわべだけのものだった
それでも、その会話に耳を傾ければ、君の聡明さに触れることが出来た
何倍も生きてきた大人達と会話できる君の精神年齢には、少なからず驚かされたっけ

でも、その視線は悲しげで・・・

そんな・・・そんな‘あなた’に私は興味を持った
 
 
 

今見つめてる横顔は、あの頃よりもっと綺麗になっている

男の子なんだよね・・・‘綺麗’って言うのは変かもしれないけど、それが一番合っている
1ヶ月も会わなかったわけじゃないのに、君はこんなに成長している

より、輝いて見える

「ふ〜ん。」
「・・・なんだよ、キリシマ。」

そう言って助手席からこちらを見る視線は、あの頃からなにも変わっていないのにね

 ・・・・・

「彼女の、おかげなのね。」
「なにが。」
「ふふっ。」
「なんだよ。」
「羨ましいな。・・・嫉妬、しちゃうな。」
「・・・・・・。」
「彼女は、私が手に入れられないものを始めから持っている。」

目を潤ませて覗き込むマナの視線に、アスカはそっと顔をそむけた

「しょーがねーだろ。おまえは、男・・・。」

そんなアスカの唇に、そっと人差し指を当てる

「それは、言わない約束でしょ。」

マナは、そう言って寂しそうに微笑んだ

「あ・・・・わりぃ。」
「くすっ・・・いいのよ、別に・・・・。」

しかし、すぐにいつもの笑顔に戻った

「でも、アスカも、あんな娘のどこがいいのよ?」

アスカは、ほんの少し視線を宙をさまよわせ
元に戻す

「ん〜・・。」
「どこ、よ。」
「顔・・・かな。」
「かお〜?」
「だよ。だって、かわいいじゃん。」
「あら、私だって、なかなかのものよ。」

マナは、アスカに‘にぱっ’て笑いかける

だけど、アスカは冷めた視線をゆっくりと下にずらす

「ふっ・・・俺はミサトのような‘ゴイスバデー’系の女が好きなの。」
「・・・・・はぁ!?じゃ、じゃあ、あの娘のどこが‘ゴイスバデー’なのよ。」
「ふんっ、バーカァ!だ・か・ら特別なんだろ。」
「な、なによぅ・・・‘You are special’ってこと?。」
「そっ・・・大体、お前は・・・・。」

再び、マナがアスカの唇に自分の人差し指を当てた

「だから。それは、言わない約束でしょ。」
「ん・・・あ、ああ。」

‘じー’っとアスカの瞳を覗き込んでいたマナは、しかしすぐにその視線をはずした
今度はアスカが、寂しそうな目をする番だった

「ふふっ、でも、アスカがあんなにボーリングが下手だなんて、思わなかったな。」
「しょーがねーだろ。やったこと無かったんから。」
「何よ、でもすぐうまくなっちゃってさ。かっこつけちゃって。せっかく私が、手取り足取り教えてあげようと思ってたのに。」
「ばーっか!」

「・・・・・。」
「・・・・・。」

マナは、運転席から伸ばした右手を、アスカの唇から、その頬に移動させた

「アスカ・・・・。私、遊園地で食べたパスタ、芦の湖畔で見た虹、ガーデンで飲んだカクテルの味を、一生忘れないから。」
「なんだよ、その言い方。別に、今生の別れってわけじゃねーだろ。」
「そう、だけど。」

だけどマナは、少し悲しそうに笑った

「だけど、アスカがここで車を降りたら、アスカを待っている人のところに行ってしまう。・・・アスカが、待っている人のところに行ってしまう。」

アスカはただ、マナの瞳を見つめていた

「そんなの・・・耐えられないから。」

その瞳を閉じ
ゆっくりと唇を、アスカのそれに近づける

「アスカ・・・・。」
「・・・・・・。」

10cm・・・・・5cm・・・・3cm・・・・

そして・・・・

その距離があと1cmとなったとき、不意にマナはその動きを止めた

その目を開き
微動だにしなかったアスカの、蒼い瞳を覗き込む

「アスカ?」
「・・・なんだよ。」

アスカも、どこか悲しげな視線をマナの瞳に向ける

「どうしたの。抵抗、しないの?」
「・・・キスする前に、くだらね−こと聞くなよ。」

それだけ言うと、アスカはやっとその目を閉じた

「ふふっ、初めてだね。そんなこと言ってくれたの。」

マナも、再び瞳を閉じる

「これが最後だけどな。」

薄暗い車内に、2人のシルエットが重なった

 
 
 

・・・5分
 
 
 
 

・・・10分
 
 
 

「んんっ!!・・・・だぁぁぁぁっっっ!!!!」

 どかっ

突然アスカが、マナを突き飛ばした

「な・・・なにすんのよっ!アスカッ!!」

無理矢理キスを中断されたマナの、当然の抗議
しかも彼女は、突き飛ばされたときに天井に頭をぶつけてしまっている

キスを拒絶された悲しみと、ぶつけた頭の痛み

流れ落ちる涙は、一体どちらの涙か

「なにすんのよ、じゃねぇ!いつまでキスしてるつもりだっ!!」

左手の甲で、唇を拭う
そんなアスカの行為に、マナの心は沈んだが
顔を真っ赤にしてちょっと涙目になっているアスカは、それはそれで‘かわいい’とか思うマナだった

「だってぇ、‘これで最後’だなんて言うんだもの。」

人差し指を咥えて、流し目を送るマナ

「そんなの、あたりまえだろ!」
「やだぁ。・・・ね、もう一回キスしよ。ねっ。」
「ば、ばかっ。ふ・ざ・け・る・な!」

しつこく抱きついてくるマナを蹴っ飛ばし、アスカは転がるように車から降りた

「テメーにはムードってもんがねーのかよ。」
「ムードじゃお腹は膨れないのよ。」
「・・・・・。」
「・・・じょーだんよ。」
「ったく。」

ポケットに手を突っ込んだまま、マナを見つめるアスカ
助手席に体を伸ばしてきて、アスカを見上げるマナ

月明かりと電灯が照らす2人の間に、ほんの少しの静寂が流れた

「・・・なあ。」
「なに?」
「ほんとに、明日空港まで見送りに行かなくていいのか。」
「うん。・・・そんな事されたら、アメリカに行けなくなっちゃうもの。」
「ふん。そん時は箱詰めにして、宅急便で送りつけてやるよ。」
「いいよ。そしたら、アスカも一緒に箱に入れるから。」
「勝手にしろ。」
「ふふっ。」

マナが、そっと右手を差し出した

「・・・・・。」

アスカも、ポケットから右手を取り出す

そして

 パチ−ン!

その手を叩き合った

「「じゃあ、またな(ね)。」」

アスカは‘くるっ’と後ろを振り向き、マナは運転席に戻った

アクセルをふかし、一度だけクラクションを鳴らすと、アスカは後ろを向いたまま、右手を‘ひらひら’とさせる

マナはその姿を確認してから、車を発進させた

アスカは、結局一度も振り返らないまま、マンションに入っていった
 
 
 

ユイナがハンバーグを作って待っている、あの家に
 
 
 

 あとがき

マナ&アスカのラブストーリー
‘Rebirth DISK5’のデートのときのお話です

個人的には、このカップルは気に入ってたりして
こっちを主流にしよっかなーって思っちゃったりしてるんですが
そんな事したら問題なんだろうなー
LASじゃなくなっちゃうもんなー

きっと、ちょっぴり謎なマナに翻弄される、かわいいアスカになると思うんだけどなー

なんちて


マナ:いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

アスカ:ぎゃーーーーーーーーーーっ!

マナ:アスカとキスなんて、いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

アスカ:なんで、こんなことになってんのよっ!!!!!

マナ:思いっきりわたしが、変になってるぅぅ。

アスカ:な、なんでアタシは、マナなんかを拒否しないわけぇぇぇ?

マナ:もうっ! 近寄らないでよねぇっ!

アスカ:近寄って来てるのは、どうみてもアンタでしょうがっ!!! この汚れキャラっ!!!

マナ:だっ、誰が汚れキャラよっ!!!

アスカ:そうとしか見えないでしょうっ!

マナ:もう、いやーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!
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