DISK4 恋せよ乙女
BY zodiacok
大体どの学校にもある・・・‘七不思議’や‘言い伝え’
それは、この‘第三新東京市立第壱中学校’とて例外でじゃない
校門の横に立っている、バカでかい木
その名は・・伝説の木
この木の下で、女の子の方から告白してうまくいったカップルは、永遠に幸せになれるという
そんな、伝説・・・
・・いや、ジンクスかな?
教室の机に頬杖をつきながら、ユイナはぼんやりとそう思った
視線の先には‘伝説の木’
その木陰に立つ、一組の少年と少女
「・・・ば〜かアスカ。」
‘ぷぅ’とほっぺたを膨らませ、ちょっとだけ垂れ気味な瞳を三角形に吊り上げて
机の上に、頬杖をついて
会話が聞こえるような距離じゃないけど、
聞かなくたって、その内容ぐらいは分かる
120%決まっていることだ・・・アスカが、告白されているなんてことは
ラブレターを読んでた事も知ってるし
頭良い娘だよね、机の中に入れるだなんてさ
授業中退屈してるアスカだったら、きっと読んでみるだろうしね
下駄箱に入れといたら、アスカは読みもしない・・・・捨てもしないけど
手紙の上から靴を突っ込んで、
邪魔になったら、テキトーに掻き出して・・そのまんま
そういえば、1度それで先生に怒られた事もあったっけ?
・・・・・
「チッ。」
小さく、舌打ちをする
「どったの?アスカ」
サイズ20.5cmの白い上履きを手にして、ユイナは‘ちょこ’っと小首をかしげた
「ああ、靴がはいらねーんだ。」
「うにゅ?」
覗き込むと、中には押し込められたラブレターでいっぱいになっていた
「ぶぅぅ〜!((−0−))」
「そう睨むなよ・・・俺が悪いわけじゃねーだろ。」
「ぶぅぅぅぅ〜っ!!((−0−))」
「・・・わかった、わかったから。」
‘ポンポン’と彼女の頭を2回軽く叩いてから、中の手紙を左手で掻き出した
床に散らばる比較的新めの封筒
その後から落ちてくる、ボロボロになっている紙くず
片思いの、残骸
今だ中には多少の手紙が残っているが、そんなことを気にも留めず、アスカはシューズを突っ込む
と、
「おい!」
大声が、横から聞こえてきた
それに反応して、アスカとユイナはそちらに目をやる
そこに居たのは、五分がりの頭、ブルーのジャージ、手にした竹刀
あまりのステレオタイプなキャラクターに、アスカは内心頭を抱えた
「・・・惣流、これは何だ?」
‘ばしばし’と、手にした竹刀で床に散らばっているラブレター(の残骸)を叩く
「これ?・・・て言うかさ。」
「なんだ?」
そいつは、竹刀で叩くのをやめた
「おまえ、誰?」
蒼い瞳に怪訝な色を乗せ、そいつの顔を‘じっ’と見つめる
「はっはっは!笑えないジョークだな、え、おい。テメーの学校の教師のことを忘れるとはな!!」
教師と名乗った男は、ちっとも面白くなさそうな顔で叫んだ
「・・・ふ〜ん、あっそう。」
「ふみゅ〜、あ、っそう。」
しかし無視する二人
上履きに履き替え、その横を通り過ぎようとする
「何無視してるんだ!」
バシッ!
その、アスカとユイナの足元に竹刀が叩きつけられる
「きゃっ!」
ユイナが、小さく悲鳴をあげた
「・・・・・。」
アスカは立ち止まり、竹刀の持ち主を黙ってねめつける
「んだ、その目は?」
「ふん・・・ハハッ!」
しかし、アスカはすぐにカバンを持っていない右手を額に当て、笑いはじめた
「わりぃな、この目の色は生まれつきでね。」
口の端を吊り上げる
「で、何のようなんだ?」
「・・・何のようかだと?」
突きつけられた竹刀は、再び床のラブレターのほうに向けられた
「貴様は床にゴミを散らかしたままにしておくつもりか!あ!?」
無意味に穿り返された‘片思い’の欠片が、わずかに宙に漂った
「ゴミ?」
「ひどい・・・。」
ユイナは思わず、右手でアスカの腕を‘ぎゅっ’て抱き締める
たしかに、アスカだってぞんざいに扱ってるし
自分もそうしてくれていることが嬉しいと思ってる
でも、それは当然のことだ
アスカには私がいる、アスカは私の物だ
それを横から出てきて掠め取ろうとする人なんだから、そのぐらいされても仕方が無いのだ
・・・だからといって、おんなじ人を好きになってくれた娘の気持ちを踏みにじるなんて
そんなの、ひどいよ
ほんの少しだけ、ユイナの目が潤んだ
「・・アスカ。」
抱き締めたアスカの腕に‘そっ’と顔をうずめる
アスカも、視線はさっきの教師に向けたまま、ユイナのことを優しく抱き寄せた
でも・・・
「だな。」
アスカは‘ニヤ’と笑った
「・・・アスカ?」
「何だと?」
2人のきょとんとした目が、アスカに向けられる
「確かに、これはゴミだよなぁ・・・そうだろ?」
大仰な手振りでリアクションを求める
それでも、ユイナは張り付いたまま
「あ、ああ。そうだ!だったら・・・。」
「だったら、いいのこよ、これをそのまんまにしといてさ。」
「それは俺のセリフだ!」
「そうか?・・これ、どっから出て来たか知ってんのか?」
「貴様の靴箱からだろう!」
「だな。・・・だったら・・・。」
アスカが‘すぅ’と目を細め、教師を睨む
「これって、いじめじゃね−のか?」
「なっ。」
「アスカ・・・。」
驚愕に視線が、アスカに注がれる
「そうだろ?」
「なっ!・・ち、ちが・・・。」
「ちがわ・・・・ねーよな。」
「き、貴様が捨てたから、ゴミになったんだろう!」
「違うなぁ・・・元から、ゴミが入れられてたんだ。」
ユイナを引き連れ、‘そいつ’の横を通り過ぎる時、‘ポン’と、そいつの肩に手を置いた
「・・・気をつけろよ、今世間じゃあいじめ問題には敏感になってるからな。」
特に、相手がチルドレンだとな
そう付け足すと、後はうしろも振り向かずに教室に向かっていった
・・・・・
やっぱり・・・
「アスカ、捨ててたわけじゃないよね。」
「は?何がですの?」
突然の独り言にトウコが突っ込む
「な〜んでもないよ。」
顔は伝説の木に向けたまま、そう、答える
「あ・・・そ。」
トウコも、それ以上は深くは追求しない
「そーいうこと・・・・あっ。」
頬杖を突いてた手から、顔を上げた
「・・・どないしました?」
律儀に聞き返すトウコ
「相手の女の子、かわいかったみたいだね。」
「そう?・・・どれどれ。」
ユイナの言葉に、アヤメも窓から身を乗り出した
そこには、アスカに肩を抱かれて歩いている少女の姿が
「はぁ・・・よぅ見えますな。この距離で。」
「何言ってるの、顔なんか見えるわけ無いじゃない。」
「なんやアヤメ。そしたらなしてかわいいなんて言えるんどすか?」
「ばっかねぇ。」
「なんやと!」
「アスカ君が、女の子連れ込もうとしてるのよ。・・・あの面食いのアスカ君が。」
「・・・なるほど。」
「なるほど・・・じゃないでしょ?」
振り返れば、ユイナが‘じと目’でこっちを睨んでる
「むぅ・・・。」
「あ・・・ははははは。」
「むぅ・・・・いいよ。ねぇ、アヤメちゃん、体育倉庫かな?」
「ううん・・五時間目は三年が体育館使うはずよ。」
「じゃ、保健室かな。」
「そうね、保険の先生は午後から陸上部の付き添いに行ってる筈だから。保健室は開いてるはずよ。」
「そう・・・。」
ユイナは唇に人差し指を当てて、ちょっと考え込む
(考えるときのその癖、アスカ君と同じなのね)
アヤメも、自分の唇に‘そっ’と人差し指を当ててみた・・・
「アヤメちゃん。」
〜次回予告
消えたアメリカ第2支部
だけど、そんなことより大事なのはカラオケに行くこと
持ち歌は色々あるけれど・・・
とりあえず、アスカのために歌います!!
・・って、ええ!それを見られてた!?
CHANGE DISK TO THE 「いとしのエリー 」
「うん!・・そしたら・・・・。」
「ああ、‘ユイナ’って、歌ってやるよ。
〜あとがき
かなりの見切り発車です・・・・・
大!スランプというか・・・マンネリ感というか・・・・・
ともかく、何とか完成にこぎつけたことに、感謝したい・・・です
感想、お待ちしています
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