Rirth2

   DISK5 いとしのエリー                                            BY   zodiacok 
 
 
                 

 見たんだ、俺・・・

そう言って視線を下に落とした




激昂していたアスカだが、加持の説得かユイナの笑顔か、少しばかりの落ち着きを取り戻してきた
左手に持ったコーヒーを一口、飲み干す

「・・・・で?」
「何が・・・って、ジョーダン!ジョーダンだよ、アスカ君!!」

‘どうどう’となだめる加持を一睨みして、アスカは再びイスに腰を下ろした

「・・・ジョーダンを言える、状況なのかよ。」

片手で髪をかきあげた時に見える横顔は、少しだけ、愁いを帯びていた

「まぁ・・・確かにな。ただ、こっちもまだ情報収集の段階なんだよね。」
「そうか・・。」

アスカは再び、自分の前に置かれているマグカップに手を伸ばした
ややこげ茶色の表面を確認した後、口に持っていく

「・・・ねえアスカァ。」

と、ユイナがマグカップを持っている手の肘を‘くいくい’と引っ張った
アスカは視線だけをそっちに向けて、マグカップを口から離した

「・・・何だよ。」
「カラオケ行かないの、ねぇ?・・・・カラオケ行こうよぉ。」

  くいっくいっ、くいっくいっ

「ね〜え〜、カーラーオーケ〜!」
「ユイナ・・・。」

左の眉を跳ね上げ、呆れたかのように溜息をつく

「お前なぁ・・・今、どういう状況かわかってんのか?」  
「うみゅ〜、だってぇ・・・・・。」
「だってじゃね−だろ?」
「だってだってぇ〜・・・・・。」

  くいっくいっ、くいっくいっ

何度も何度も引っ張る

「だってだってだってだってだってぇ〜。」

‘うるる〜’と瞳を潤ませて、アスカの顔を見上げるように覗き込む

「カラオケ、カラオケ、カラオケェ〜。」
「・・・ユイナ。」
「行ってくればいいじゃないか。」
「ねっ!でしょでしょ!!」
「加持さんまで。」

喜びと非難の視線が、同時に加持に向けられる

「まぁまぁ。アスカ君も、ここに居たってしょうがないだろう?だったらユイナ君とデートでもしてきたらどうなんだい?」

加持は、腕と足を組んだまま、アスカに向かってそう微笑んだ

「何かあったら、真っ先に連絡するから。」
「・・・だけど。」
「ねぇ、アスカァ。」

なおも戸惑うするアスカを、‘うるうるっ’と目を潤ませて、ユイナは見上げた
それが、決め手だった

「・・・わかったよ、カラオケでも行ってくるか。」
「ほんと!やった、カラオケカラオケ!!」

ユイナはあまりの嬉しさに、部屋中を‘ぴょんぴょん’と跳ね回る

「・・・たっく。」

アスカも呆れたように溜息をつくと、イスから立ち上がった
そのまま、ジャンプしている小うさぎを捕まえる

「そんなにカラオケが楽しみなのかよ。」
「にゅ?・・・違うよ。」

うさぎは跳ねるのを止め、‘じ〜っ’と蒼い瞳を覗き込む

「アスカと、デートだから嬉しいんだよ。」

 にぱにぱっ

「・・・・バ〜カ。」

でもそれは、アスカの照れ隠しだってユイナも知っている

「へへ〜。(*^^*)」
「・・行くぞ。」

まとわりつくユイナもそのままに、アスカはドアの開閉ボタンに手をかけた

「じゃあ、加持さん頼んだから。」
「ああ、楽しんでおいで。」

 バシュッ!

入ってきたときと同じ音を立てて、二人は部屋を後にした


 見たんだ、俺・・・

そう言って視線を下に落とした 
その横顔を、山間に沈みかけた夕日がオレンジ色の染め上げている

 

「「ラブマッシーン!!」」

 し〜ん・・・・・

「イェ−−イ!!(^^)V」
「いえ〜い!!(^^)v」

と、Vサインで決めるアヤメとユイナ

「イェ−イ、じゃねえ。バカ。」

広げた曲リストに頬杖をつきながら、アスカはじと目で二人を見つめる

「大体、何でお前らがここにいるんだよ。」
「え〜、いいじゃな〜い。別に〜。」
「いいじゃにゃ〜い。」

「「ね〜。」」

2人でマイクをしっかり握ったまま、頷きあう

「・・ったく。」

呆れて物も言えないアスカ

「・・・・で、お前は何やってんだよ。」
「はい?」

視線を横に向ければ、焼きそばをがっついているトウコが

「お前・・・・。」

こっちにも、何も言う事は出来ないアスカ・・・
これはある意味八方塞かもしれない

「「う〜っはぁ〜っ!!」


あきらめてウーロンハイに手を伸ばしながら、自分の歌う曲を探す
ストローの袋をちぎった所で顔を上げれば、続けて3曲目に入ろうとしている2人の姿が

「「うっO=(^^o、はっo^^)=O、はにゃにゃ〜\(^^、 はにゃにゃ〜^^)/。」」

「‘はにゃにゃ’じゃねー。何曲続けて歌ってんだよ。」
「いいじゃなーい。」
「いいじゃにゃ−い。」

「「ね〜。」」

調子をそろえている2人

「‘ねー’じゃねー!」

 プッ!

 こつん

「にゃっ!(><)」

吹き矢のように吹いたストローの袋が、ユイナの額に命中した

「にゅ〜!・・いたい〜。(;;)」
「きゃ〜!ユイナちゃんかわいそー!!」

アヤメは、慌ててユイナを抱きしめる

「にゅ〜、いたいのいたいの〜。(;;)」
「かわいそかわいそ〜。」

うそ泣きするユイナの頭を、アヤメはやさしく‘い〜こい〜こ’する

「お前らな〜・・・。(−−;」
「にゅ〜にゅ〜・・・いたいのいたいのぉ〜。(;;)」
「かわいそかわいそかわいそ〜〜。」

とか何とかやってるうちに・・・

 ウー!ハー!!

スピーカーから、曲の終了を告げるフレーズが流れ出た

「あーー!!」
「うにゅ〜!!」

「「おわっちゃったぁ!!」」

「ざま−見ろ。」

‘うるうる’と涙する少女たちに、アスカは冷ややかな視線を投げかける

・・・だが

「いいもんいいもん、こうなったら・・・。」
「こうなったら?」

ウーロンハイを‘ちゅ〜’と吸い込みながら、嫌な予感のするアスカ
そんな彼に‘ふふふ’と不適な笑みを浮かべる2人

「こうなったら・・・。」
「もう一曲歌うまでだもん!」

「「ね〜〜。」」

 パラッパラ!パラッパラ!パラッパラ!!

どっちにしろ歌うつもりだったのだろう
既に次の曲の前奏が始まっていた

「・・・・・もう、勝手にしろ。」

アスカはもう、傍観を決め込んだようだ

「勝手にしてい−んだって、ユイナ。」
「うにゅ・・なら、あれだね。」
「・・・やるのね。」
「うん。」

 パラッパラ!パラッパラ!パラッパラ!!

 ・・・・

曲は半分を終えようとしていた・・・
と、ここでアヤメは自分のマイクを置いた

「・・・ん?」

ふと、アスカは怪訝な顔でユイナのほうに視線を向ける
なぜかその顔はほんのりと紅く染まっている
そして、それを見て‘ニヤリ’と笑うアヤメとトウコ・・・

「・・・紹介します、特務機関に勤めてる惣流さん。」

「!!!!!!!!!!!!」

あまりのことに、アスカの思考は一瞬スパークしてしまった
横には、してやったりのアヤメとトウコ
前には‘てれてれ’状態のユイナ

「背は、まあ高いほうだし、優しい人。」

「え〜?嘘だ嘘だ!」
「せや、それは嘘や。」

「パパと一緒で、巨人ファンなの。・・・だってパパは巨人ファンに悪い奴はいないって言ってたし。」

「あ〜、そうね、いい事言うわぁ〜。ユイナのお父さん。」
「なんてこと言いますの、そんな嘘教えちゃあきまへんがな。」

「うにゅ〜・・ねっ、パァ〜パ!」


 ハイハイッ!

 ・・・・・

「・・・・・・・・・・お前ら、最低。」

机に突っ伏したまま‘ピクリ’とも動かない・・・いや、動けない
顔で泣いて心で泣いて
アスカはもう、死にたかった

だが、そんなアスカをほおって置く彼女たちではなかった

「ほら、次アスカ君の番よ。」

その手にマイクが渡される

「あ、ああ。」

ぼんやりと、顔を上げる
しかしモニターに写ったタイトルに、一瞬左の眉を跳ね上げた

「・・・お前ら、何を期待している?」
「べっつに〜。」
「べっちゅに〜。」

2人そろって顔に‘ワクワク’と書いてあったら、説得力はゼロだろう

「期待、してないのか?」
「まっさかぁ。してるに決まってるじゃない。」

きっぱり・・・そして

「「ね〜。」」

どうやら、なかなかにいいコンビのようだ

前奏が始まっている
流れている曲のタイトルは・・・・・‘いとしのエリー’

「・・・・泣かしたこともある。」

「ほんとだよ〜。」
「ねぇ〜。いっつも‘ぴぃぴぃ’泣いてるもんね〜。」

「・・・冷たくしても、なお。」

「ねぇ、ちょっとアスカ君ってユイナに冷たいわよね。」
「せやな。」
「でも、それがまたかっこいいのぉ〜。(*^^ *)」

「・・・寄り添う気持ちがあればいいのさ。」

「そうそう!アスカ、だぁい好き!o(^^)o」

「「けっ!」」

「俺にしてみりゃ、これで最後のLady。」

「最初で、でしょ?」
「・・・そんなわけないやろ。」
「・・・そんなわけないわね。」

「・・・・・・・・。」

「「「・・・・・・・(ワクワク)。」」」

「・・・ユ。」

「「「ユ?」」」

「・・・ああっ!エリー、My love so sweet。」

「「ええっ!?」」

「なんでぇ〜?(;;)」

「あったりまえだ!!」




 見たんだ、俺・・・

そう言って視線を下に落とした 
その横顔を、山間に沈みかけた夕日がオレンジ色の染め上げている

「見たって、何を?」

オレンジ色の光源から逸らすように、わずかに顔を彼のほうに向ける
その拍子に落ちてきた自分の髪を、払いのけるように左手でかきあげた

「・・・ヒカル?」
「え・・・あ、そ、惣流・・・・あ・・・・そ、その・・・・・。」

またまた、うつむいてしまう

「なんなんだよ。お前だろ、人を公園に呼び出したのは?」
「あ・・・ご、ごめん。今日も、放課後は碇さんとデートだったのか?」
「バ〜〜カ。ちげえよ。」
「あ・・・そうなのか。」
「ああ・・昨日、ちょっとな。」

ふと、あさっての方に視線を向ける
髪の毛に当てたままの左手を、ようやく下におろしながら

何気ないアスカのその一言は
しかし、隣に座る少年には少なからずの動揺を与えていた

「あ・・・だから、俺、見たんだよ。」
「だから、何をだよ?」
「あ・・だから、昨日お前が・・・・。」

 鈴原さんと、一緒にいるところを

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・は?(−−;」
「いや、‘は?’じゃなくてさ・・・・・。」

そう言って、再び顔をうつむかせる

「俺の気持ち・・・知ってるんだろ?」
「ん・・・まあな。」
「だったら!」

‘ガバッ!’と、勢いよくアスカのほうを振り向く
至近距離で見つめるその目は、わずかに潤んでいる

「惣流・・・・。」
「‘惣流・・・’じゃねーだろ。」

だがアスカは、左の眉を跳ね上げて大仰に溜息をついて見せた

「その時は一緒に、ユイナだって、相田だっていただろうが。」

 あん?

と、肩をすくめるアスカ

「・・・そうだっけ?」
「そうだよ。」
「で、でも!」

そのすくめたアスカの肩を、ヒカルは縋り付くように両手でつかんだ

「鈴原さんの好きな人って、お前かもしれないんだ・・・。」

そして、搾り出すように、そう呟いた

「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・それは無い。」
「そうか・・・な?」
「仮にそうだとしても、俺にはユイナがいるし・・・・・第一。」

(あいつじゃ勃たね−よ(−−; )

「ん・・・なに?」
「いんや、なんでもね−よ。・・・大体、何でそんな風に思うんだよ。」
「あ・・・・だって、鈴原さんって、いっつもおまえと一緒にいるし・・・。」
「ユイナが近くにいるからだろ?」
「よく、お前と話しているし・・・。」
「ほとんどケンカ腰だけどな。」
「それに、お前って・・やっぱかっこいいし、頭もいいし、運動神経も抜群だし・・・。」
「だからって、好きになる理由にはならね−だろ。」
「な、何でそんなに否定するんだよ!」
「肯定する理由がねーからだ!!」

思わず立ち上がった二人
そのまま・・ゆっくりと腰をおろす

「ヒカル・・・ひとつ聞くけどさ。」
「・・・なんだ?」
「あいつの、どこが良い訳?」
「え・・・・・かわいいところ、かな。」

そういうとヒカルは、夕日よりもなお、顔を赤くした

「・・・・・・・・・・・・はぁ!?

左の眉を跳ね上げるのも忘れて、頭にでっかい汗を乗っけるアスカ

「い、いや・・・・そりゃ碇さんはかわいいし、いいこだよ。・・・でも鈴原さんだって、負けないくらいかわいいじゃないか。」

 惣流だって、そう思うだろ?

頬を染めて、上目遣いにそう尋ねられたりしたら・・・・

「あ・・・・ああ・・・・・。」

と、アスカは頷くしかないのだった・・・・・・





アスカは、‘チラ’と横目でヒカルと話をした公園を見やった
そこは、昨日と同じように夕日に染まっている

こういう・・EVAに乗った状態であの公園を見たのは、別に初めてなわけではない

だけど、今までとは違って見えるのは・・・夕焼けのせいではない筈だ

「・・・・ユイナ。」
「ん・・・何、アスカ?」

 ブン

と音がして、目の前に愛しい少女の姿が浮かび上がる
その笑顔を目にするたびに、口元に笑みが浮かぶのは・・・

もう、どうしようもないことなのだろう

「今回は、お前は後方支援だ。・・・いいな。」

戦闘ということに限っていえば、あまり得策ではない
初号機・・・ユイナの近接戦闘は、そのシンクロ率からも群を抜いた物だ

「うじゅ〜・・・やっぱり。」
「あたりまえだ!前回、自分がどんな結果に陥ったかわかってんだろ!?」

それは、詭弁・・建前に過ぎない

「・・・・うん。」

悲しい顔をしてうつむかれても、これは譲るわけには行かない

「・・ユイナ。」

ヒカルは、もう告白はすましたのだろうか?
そしたら、鈴原はどんな反応を示したんだか・・・かなり気になる
相田の奴、きちんとビデオに撮ってるだろうな?

「にゅ〜・・・何、アスカ?」

見回せば、よく行くゲーセン、一昨日行ったカラオケ・・・
そう言ったものが見つけられる自分に、少し驚いた

「ユイナ。」

守りたい・・・こんな感情は初めてだ

「だから・・な〜に、アスカ。」

何よりも、この少女を・・・・!!

「こいつを倒したら、今度は二人っきりでカラオケに行こうぜ。」
「うん!・・そしたら・・・・。」
「ああ、‘ユイナ’って、歌ってやるよ。」

口の端をわずかに吊り上げる  
心底嬉しそうに笑うユイナの顔が視界に入る

そしてEVAを戦闘態勢に入れる

新たなる使徒を迎え撃つために

 

 

〜次回予告
使徒にのっとられた参号機
本部との通信も切れ、絶体絶命に追い込まれた3人
そのとき、感情を爆発させた天使は、残酷なメロディを奏でる

 CHANGE DISK TO THE 残酷な天使のテーゼ

「っ!ざけてんじゃねーよ!何でお前がそこにいるんだ!!」

「あ・・・・あはははは・・・なんで、だろーね。」
 
 

あとがき

多分これが掲載されているということは、こんな内容でもOKということだとは思いますが・・・
だいじょーぶなのかなー?・・・という気もしないでもないですが・・
OKなら、OKなんでしょう・・・・ね

でも、いまどきこんな替え歌を歌う奴なんかいませんね

では、感想・批評をお待ちしています


マナ:なんだか、zodiacokさんの趣味がよくわかる作品ね。

アスカ:好きな曲と、好きな球団は、たぶん・・・。

マナ:でも、あそこでアスカも”ユイナ”って言ってあげたらいいのに。

アスカ:きっと、恥かしいのよ。

マナ:でも、嬉しいものよぉ?

アスカ:乙女心がわかんないのよねぇ・・・わかっててやってるのかもしれないけど。

マナ:乙女心? なんでアスカにわかるの?

アスカ:喧嘩売ってるわねっ!(ーー#
作者"zodiacok"様へのメール/小説の感想はこちら。
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感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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