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   DISK6 残酷な天使のテーゼ   :trak2                                                                   BY    zodiacok  
 
 


「な・・・そ、その声は・・・・・・。」 

アスカは、自分の顔から血の気が引いていくのを感じ取った

「お・・・お前・・・・キ、キリシマかっ!!」
「やだぁ〜。マナ、って、よ・ん・で。」

‘きゃはっ’という笑い声とともに、昔馴染みの返事が返ってくる

「っ!ざけてんじゃねーよ!何でお前がそこにいるんだ!!」
「あ・・・・あはははは・・・なんで、だろーね。」
「・・・・・キリシマ?」

アスカも、すぐに気が付く
その笑い声の裏に隠された悲しみに

「・・・ど、どうしたんだよ?何で、お前はそこにいるんだ?」

吊り上っている参号機の目は、今は泣いている様にも見えた
それでもアスカは、再開の喜びのほうが上回っていた

「ま、まぁよかったぜ。お前の行っているアメリカ支部が爆発したというときは、心配したんだからな・・・。」

「違うの!!」

「キリシマ?」
「違うの・・・違うのよ・・・・・・・。」

なぜだろう?
今まで聴いたことのない悲しい声が、共鳴しているATフィールドを通して聞こえてくる

「私ね・・・私、失敗作なんだって。」

どうしてだろう?
彼女が、今泣いているような気がするのは

「私はね、‘綾波=レイ’を作る際の失敗作なんだって。」

切なげに訴えてくるその声

「だからね、消されるはずだったんだって!」
「なんだ・・・って。」

しかしそれは、アスカに数少ないキーワードから容易に答えを導かせるには十分な物だった

「だから、ゲンドウ直々の辞令。・・・だから、アメリカ支部の消滅か!!」
「アスカ・・・ねぇ、アスカァ・・・・私、私・・・・・・。」
「そうか、俺や、キリシマだけじゃない。ファーストですら、操り人形ってわけか。」
「アスカ?」

‘ギリッ’と音をたて、歯を食いしばる

「ゲンドウ!なぁ、ゲンドウ!!そこに居るんだろう!聞こえているんだろう!!」
「アスカ・・・。」
「答えろよ!答えろよ!!」

答えなんて、返って来る筈はない
わかっていても、アスカは叫ばずにはいられなかった

「ゲンドウ!答えろゲンドウ!!」

 ・・・・・

一方、そして

「にゅ〜・・・・いててててなの。」

強かにぶつけた頭をさすりながら、ユイナは目を覚ました

「うにゅ〜・・・・あっ!!」

顔を上げて、目に飛び込んできたのは・・・・

「アスカッ!!もうっ!アスカに何するのっ!!」

使徒に馬乗りにされ、攻撃されている(ユイナにはそう見えた)弐号機の姿だった

そしたらもう、後は感情の爆発に身を任せるだけだ

「アスカッ!!」

使徒にやられている恋人を助けるため、一目散にダッシュした
作戦とか何だとか・・・
色々あったような気もするが、既に頭の中からは綺麗さっぱり抜け落ちてしまっている

今あるのは、‘アスカを助ける’・・・ただそれだけ

「ええぇぇぇぇい!!」

 どがっ!!

「きゃぁぁぁっ!!」

「なっ!ユイナッ!!」

走りこんでの飛び蹴りが、全く警戒していなかった参号機を吹き飛ばす

「こんのーーー!!」

蹴って蹴って、殴って殴って殴って・・・
繰り出す技の一つ一つは単純だけれど
それがつながる事で、流れるような連続攻撃となっている

「えーい!!」

 バシッ!ドカッ!バキッ!!

パンチが矢のように、キックが鞭のように、参号機のボディを確実に傷つけていく

「いやぁっ!!」

マナも必死の反撃を試みようとするが、いかんせんスピードが違いすぎる
そしてそれは、アスカにとっても同じ事だった

「やめろぉっ!ユイナァァッ!!!」

懸命に追いかけるも、ユイナの攻撃するスピードに、動く早さに、全く付いていけない
それどころか、繰り出すパンチを、キックを、目で追うことすら出来ない

「ユイナッ!!」

月のように、陽炎のように
追いかけても追いかけても、追いつくことが出来ない・・・

「やめろぉっ!ユイナッ!俺の言う事が聞けないのかっ!!」

瞬間、脳裏の甦ったのは

  ・・たくっ!こんな時に通信がいかれやがって!!

ゲンドウッ!てめーか!これも、てめーが仕組んだことなのかっ!!」

そう、叫んでも
全力で追いかけても

届かない、追いつかない・・・止まらない

「ユイナッ!ユイナッ!ユイナーーーーッ!!!」

 バシィィッ!!

振りかぶって放った渾身のパンチが炸裂し、参号機は地面に倒れこんだ

「!!!・・・キリシマーーッ!!」

勢いのまま、馬乗りになり

「このーーーっ!!」

 バシッ!バシッ!バシッ!!

何度も、何度も、何度も殴りつけ、パンチを浴びせ掛ける

 何度も!何度も!何度も!!

「ユイナーー!!」

アスカは、叫ぶことしか出来ない
だがその間にも参号機には衝撃が加わり、亀裂が走り、装甲が弾けとぶ

「こんのーー!!」

そして、拳を大きく振りかぶり・・・

「やめろーーー!!」

叩きつける!!

  ドカーーーンッ!!

「ユイナーーーーーーーッ!!!!」

 ・・・・・

 カタッ

ほんとに小さな、でも、はっきりとした・・・音

「・・・・・・?」

LCLにたゆたえさせていた金髪を、わずかに動かし、顔を上げる

 カタカタッ・・・パシュッ!!

「・・・!!!」

浜辺に縛り付けられたガリバーのように微動だにしなかった参号機から
エントリープラグが勢いよく飛び出した

「キリシマッ!」

アスカの顔に、初めて笑顔が広がる

だが・・・

 ガシッ

横から伸びてきた蒼い手が、それを掴む!

「逃がさないんだからっ!」

「ユイナ・・・・まさか・・・・・。」

そう、その・・まさか

「やめろ!ユイナッ!!ゲンドウッ!やめさせろっ!!加持さん!!」

アスカは、叫ぶ

「誰でもいい!!やめさせろっ!!やめさせろーーーーーっ!!!!」

最後の声を振り絞って、最後の力を振り絞って

「やめろーーっ!ユイナ・・ユイナッ!!」

  ガシッ

「キリシマ・・キリシマ・・・・マナーーーーッ!!!     」



アスカは叫ぶ
最後の声を振り絞って、最後の力を振り絞って 

「マナーーッ!!」

 ありがとう・・初めてだね、‘マナ’って呼んでくれたの

「マナーーーーーーーーッ!!!」

 ねぇ、アスカ・・ほんとに・・・・本当に・・・・・・

「マナ!マナ!!マナーーーーーッ!!!」

「本当に・・・好きだったよ。」

 さようなら

「さよならって言うな!さよならじゃねーだろ!?なあ!!」

 ・・・・・・さようなら

「マナーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」


    


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「trak3」



 あとがき

いやぁ・・・出てきました「マナ=キリシマ」こと「霧島=マナブ」君(^^;
彼に関しては、もう散々ないわれ様でした(;;)

曰く、出てくる必要がない
曰く、一発キャラ・・・・・

だが、だが全てはこのシーンのため!
正直な話、彼がここで登場することは予定通りだったんです
読み返してみてください、ちゃんと伏線(?)を張ってますんで


感想、よろしく御願いします・・・本当に(;;)  


マナ:し、失敗作・・・。(ーー;

アスカ:そっかぁ。アンタって、ファーストの失敗作だったのね。(^^v

マナ:し、しかも、この引きってば・・・。もしかして、わたし。(ーー;

アスカ:失敗作だもんねぇ。さよならぁぁ。(^^/~~

マナ:わ、わたしは死なないわよっ!

アスカ:誰も死ぬなんて言ってないでしょ。

マナ:だって、なんかやばーい引きなんだもん。

アスカ:とにかく、さよならぁぁ。(^^/~~

マナ:だから、なんでさよならなのよぉぉぉぉっ!(TOT)

アスカ:なんでもいいから、アンタがいなくなったら、ラッキーじゃん。(^^v

マナ:わたしを可哀想に思うってのはないのーーっ!!!!?
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