Reirth

DISK9          Man&Woman                                              BY zodiacok
 
 


「クッ!」

銃弾、ミサイル、劣化ウラン弾
何十何百と放ったそれは、全てがオレンジ色の光の壁によって防がれた

「てめーはぁ!俺が倒す!!」

弾切れを起こしたマシンガンを投げ捨て、2丁のミサイルランチャーを両肩に担ぐ

「これ以上あいつに、でかい顔させらんねーんだ!今度からは、俺があいつを護ってやるんだ!!」

 ドンッ!

EVAの巨体からすれば、小型のミサイルが
2つ同時に、そして立て続けに何発も発射される

・・・だが

 キィィィィィィィン

あたかもビデオを再生しているかのように、先ほどと同じ光景が繰り返されるだけだ
 
「くそぉっ!!」

 ジャキッ!

肩から抜いた短刀・・・プログレッシブナイフ
右手に構え、一直線に使徒に突っ込む

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 ザザザザッ

抉るように大地を踏みしめ、猛然とダッシュを見せる
と、その時

 キラッ

虚ろだった使徒の瞳の奥底に、白い光が垣間見えた

「くっ!」

本能的に身をかがめた弐号機の後方で、山が一つ吹き飛んだ
その轟音を、遠く耳にしながら
しゃがんだ勢いそのままに、手にしたナイフを振り上げる!!

「死ねぇっ!!」

差し出した左手でATフィールドを中和しながら
右手に持ったプログナイフは、正確に使徒のコアを狙っていた!


 「全神経カット!いそげっ!!」
 「え・・は、はい!!」


青白く振動するナイフがオレンジ色のコアに突き刺さろうとした瞬間
加持の命令によりシンクロ率が全面カットされ

 ごとり

同時に、弐号機の首が・・・転げ落ちた

「・・・・・ちくしょう。」

後には、敗者となった少年の、かすかな声だけが・・・残されていた



ユイナはそれを、EVAのエントリープラグの中で見ていた
射出されたときには、レイが特攻に失敗した後だった

「・・・・・・。」

首の無い弐号機

「・・・・・・・。」

黒焦げで倒れている零号機

「・・・・・・。」

状況を把握する事ができたのは、寸胴な使徒と目があった(ような気がした)時だった

「!!!!!!!」


ミサトは、その光景をスイカに水をやりながら見ていた
アスカの敗北には衝撃を受けた
レイの自爆には驚きもした

だが、今目の前で繰り広げられている光景には・・・多少なりの感動を受けていた

意味を感じたわけじゃない
戦いに酔いしれたわけじゃない

ただ殴り、ただ蹴る

紫の巨人の見せる、圧倒的な強さ

「ふふふふ。」

意味なく、笑いが零れる

「さあ、碇司令。あなたは、彼女に対して責任を取れるのかしら?」

呟き、問い掛ける

「きっと、シナリオにはなかったでしょうね。彼女のこれほどの強さは。
 思いもしなかったでしょう。あの娘が、こんなに強いなんて。」

襲い掛かる反撃すら物ともせず
初号機は闇雲に殴りつづける

「もう気付いているのでしょう?あの娘は、あなたの駒にはならなかった。」

押さえつけ、力任せにコアに掴みかかる

「加持君も気付いてないようだけど・・・あの娘はもう少女じゃないのよ。」

 ピシッ

球体に、亀裂が生じる

「一人の女として動いている。強すぎる想いを胸に、動いている。
 ・・・・・その導火線をつけたのは、碇司令、あなたなんですよ。」


自爆する事すら許されずに

 使徒、殲滅


ミサトは、それをスイカに水をやるのを止めて見ていた

「さあ碇司令。あなたはあの娘に対して、責任を取れるのかしら?」

手には、カラになったじょうろが一つ


 
発令所内には、なんともいえない空気が立ち込めていた

「・・・・・リッちゃん。」

顔だけを斜め後ろに向けて
腕を組んだままの加持が、声をかける

「まさか・・・そんな・・・・・。」

その彼女は、青い顔をさせたまま、小刻みに震えていた 

「・・・リッちゃん?」

加持が・・・いや、発令所の全員が、疑問に満ちた顔つきで白衣を着込んだ女性を見つめる

「彼女が目覚めたと言うの?・・・いえ、そんな風ではなかったわ・・・・・・なら・・・・。」

だが、当の本人は`ぶつぶつ’と独り言を繰り返すだけ
かと思えば、縋るような目をして後ろを見上げたが
   
そこには、彼女が助けを求めたい人物の姿はすでに無かった

「な、なぁリッちゃん。」

控えめに、三度声をかける

「ど・・どうして、初号機は活動時間が過ぎた後でも動けたんだい?」

その質問に対する答えは、ついぞ返ってはこなかった


使徒を倒した少女と
使徒に敗れた少年

二人のチルドレンは、街灯が照らす道を並んで家路についていた

手をつなぎたいと、少女が手を伸ばしても
少年は、ジーパンのポケットから手を出そうとはしない

「・・・・・・ねぇ、アスカ。」
「・・・・・・。」

不意にかけられた言葉に、少年の肩が`ピクリ’と揺れた

「ごめんね、アスカ。」
「・・・・・・何、謝ってんだ。」
「アスカが、怒ってるから。・・・だから、ごめんね。」
「別に・・・怒ってね-よ。」

顔はそむけたまま、返事を返す

「・・・ごめんね、アスカ。」
「怒ってね-って、言ってんだろ。」

うそ!

‘タッ’って走って、アスカの前に回りこむ、
アスカも、思わずその足を止める

「アスカ怒ってる!・・・・・怒ってないなら、何でそんなに怒ってるの!」

`ぎゅっ’って歯を食いしばり、両目に零れそうに涙を浮かべて
上目遣いに、アスカを睨みつける

アスカは、その視線から目をそらした

「・・・怒って、ねーよ。」

小柄なユイナの肩を押しのけ
アスカは、その横を足早に通り過ぎ去った


 ダメな男ね。


「ほんと、ダメな男ねぇ。」

 ん?何がだい?

「何が、じゃなくて、誰が、でしょ?」

 んじゃ、誰がだい?

「あんたよ。・・・いいのぉ、こんなとこでこんな事してて?」

 いいの?・・・って、君はいやなのかい?

「私は嫌いじゃ・・・って、そうじゃなくってぇ。あの子達の事よ。任されてるんでしょ?管理を。」

 管理・・・って言うか。俺は家族のつもりなんだけどね。

「だったらぁ。いいの?あの子達の事、放っておいても。」

 別に、放って置いてるつもりじゃないさ。

「だったら。・・・判ってんでしょ。あの子達に何があったか、なんてことぐらい。」

 ん・・・ああ、もちろん判ってるさ。

「だからぁ、いいの?って聞いてるのよ。」

 大丈夫だよ、判ってるって。

「判ってる、じゃなくてぇ。どうするのよ。」

 判ってるって、大丈夫だよ。ちゃんとやるさ。

「やるって、何をやるのよ。」

 判ってるって。・・・なぁ、そんな事、今ここで話す事なのかい?

「ここ、じゃなくてぇ。今、話しておかなくちゃ、って思ったのよ。」

  ああ・・・大丈夫だよ。ちゃんとやるからさ。・・・・・・それより、もう一回。な。


「ダメな男ね。」

そう言ってリツコは、苦めのコーヒーを一つ口にした

「無事に使徒殲滅したと思ったら、女と逢引とはね・・・。」

椅子に座り、傾けた小首
頬に金色の髪がかかる

「いやな事からは逃げる。・・・・・でも。」

 それは私も同じね。

そう言ってリツコは、苦めのコーヒーをもう一つ、口にした


〜次回予告

少年が告げる、思い出の日
それは、忌まわしき過去
封印してた心の奥底

心的外傷(トラウマ)が、彼の心を壊していく

 CHANGE DISK TO THE ガラスのメモリーズ   」

「・・逃げるなよ、現実から。」


あとがき

いやな事から逃げるのは、男の特権ですね
逃げて逃げて逃げて・・もう、どうしようもなくなっても、逃げて
それでもいいんじゃないですか
いずれくる死以外、逃げ切れないものなんてありはしないのですから


マナ:ユイナちゃん強いわね。

アスカ:それより、あんなに頑張ったのに、アスカが負けたってのが問題よっ。

マナ:アスカ弱いわねぇ。(ー。ー)

アスカ:(ーー)なんか、腹立つ言い方ねっ!

マナ:このままシンクロ率が落ちて行っちゃうのかしら?

アスカ:あれは、辛いわよ・・・。

マナ:葛城さんの言葉を生かして、ユイナちゃんが支えてあげれられればいいんだけど。

アスカ:早くしないと、あのヤな奴が来ちゃうわよっ。ユイナ頑張るのよっ!

マナ:ヤな奴? 女のアスカ?

アスカ:アンタバカーーっ? 女の子のアスカは、プリティーで可愛い奴でしょうがっ!

マナ:(ーー)

アスカ:アラエルよっ! アラエルっ!
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