Reirth

DISK11    激情                                                    BY   zodiacok 
 
 

 


俺、もうだめだ





アスカーーーッ!!

だけど、ユイナの叫びも、もう届かない・・・


 

アスカの壊れた笑い声と
ユイナの嗚咽だけが、発令所に響き渡る
誰も、何も言う事が出来ずに
レイも零号機の中で、ただ唇を噛み締めるばかり

そんな彼女に、一つの通信が入った

「・・・レイ、ドグマを降りて槍を使え。」

総司令からの、直々の命令
それに反応したのは、2人の少女
口から出たのは、同じ言葉

「なんで・・・なんで今ごろ。」

1人は呟くように・・・
もう一人は、心のそこから叫ぶように

「なんで!なんで今なの!?なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」

  そうすれば、アスカは助かったのに!

ユイナは、心の底からそう思った
その槍がどんなものなのか、なんに使うのか良くわかっていなかったが
使えば使徒を倒せるものなのだという事は分かった
だから・・だから本気で怒ったのだ

「なんで今なの!!」


そして、レイも・・・ 

「・・・・どうして今なの?」

命令を受けたときも
地下に槍を取りに行ったときも、その帰り道も

アラエルを殲滅した今も・・・・
心に残るわだかまりは、初めて感じた司令への不信感は

  消えなかった



静まり返った発令所
微動だにしない3体のEVA

残されたのは
ただただ、慟哭するユイナと
LCLに揺られ、呆然とした表情のレイ
壊れたオーディオのように、無意味に笑いつづけるアスカ

サングラス越しには表情を伺う事の出来ない、碇総司令



それから、どのくらいの時間が経ったのだろう

EVAの撤収が終了し、体についたLCLをシャワーで洗い流した後も
レイは一人、更衣室のベンチに腰掛けたままだった
身動ぎもせずに、じっと、壁の一点を見つめつづける

 自分の存在価値を否定されたかのような、そんな気持ち

違う・・・それは事実
今まで信じてきたものに、裏切られたのだから

「・・・碇司令。」

何度も呼んできたその名を、再び呟く
でもそれは、昨日・・・いや、ついさっきまでのような気持ちにはさせてくれなくなっていた
それよりも、心にもやもやとした違和感を感じている

「私・・・私は、碇司令のこと・・・・・。」

 どう思っているのだろう?
  どう思って、いたのだろう

ずっと、彼の言葉にだけ従ってきた
ただ、彼に喜ばれる事だけを願ってきていた
自分の存在価値は、そうする事だと思ってきた

 疑う事すら知らずに
 疑う事すらせずに

「・・・・好き。」

この感情は、そういうものだと思っていた
愛する・・・とは、こういうことだと思ってきた
でも、それは違っていた

「碇さんは・・・・。」

彼女は、そう、確か言っていた・・・・

 確か・・・・

 バシュッ

「アスカ!!」

「!!!」

記憶を手繰り寄せていたレイは、
しかし、突然入ってきたその声に驚きの顔を上げ、そちらを振り返った
そこには、そう、さっきまで記憶を手繰り寄せていた張本人がいた

「・・・碇、さん。」

華奢な肩で大きく息をし
小さな瞳で‘じっ’とこっちを睨みつけている

「アスカはっアスカはどこっ!?
「碇さん・・・どうしたの?」
「アスカがいないのっずっと待ってるのに、全然出てこないのっ!!
「なら、まだ中に・・・。」
「ううん中に入って探したのでもっでもアスカ何処にもいないのっ!!

一気に喋りきると、再び2、3度肩で息をした

「アスカはどこなのっ!?」

大声で叫ぶと
黒目がちの瞳から、涙が一つ、零れ落ちる

「うぐっ・・・アスカ・・・・アスカが・・・・えぐっ・・・・・・。」

 また一つ
 もう、一つ・・・

堰を切ったかのように、次から次へと涙があふれ出てくる

「うっ・・アスカが・・・いないの・・・・何処行っちゃったの?」
「・・・碇さん・・・・・泣かないで。」

レイは立ち上がると、そっと、人差し指で涙を拭った

「う・・・うぐっ・・レイちゃん・・・・アスカが・・・・うっ。」

それでもまた、涙をこぼすユイナに

「なら、探しに行きましょう・・・惣流君を、一緒に・・・・。」

レイはその手を取り
自分の悩みをいったん忘れて、優しく微笑みかけた

「・・・ね。」
「・・うん・・・・さがす・・・・・。」

 グシグシ

と泣いていた少女は、

 ごしごし

と涙を拭って、
その手を、ぎゅって、握り返した


 

念のため、ユイナも探したと言う男子更衣室をもう一度探した
彼女か、彼のせいか
中はメチャクチャに荒らされていた
ありえないとは思うが、ロッカーに隠れていないかも見た
人の気配は、何もなかった

ただ、真っ赤なプラグスーツが、床に投げ捨てられているだけだった


 

結局、何処を捜し歩いても、ネルフの中にアスカの姿を探し出す事は出来なかった

「うぐっ・・アスカァ・・・アスカどこぉ・・・・。」

 グシグシ、グシグシ

止まったはずの涙が、再びユイナの頬をぬらし始めた
つながっている親友の手を、強く、強く握り締める

そして、強く握り返された

「・・・・碇さん。」
「えぐっ・・何、レイちゃん・・・・。」

 グシグシ、グシグシ

ポロポロポロポロと涙をこぼしながら、
立ち止まって振り返った親友を見上げる
じっ、と見つめてくるレイの視線に、ユイナはちょこんと、首をかしげる

「・・・・・レイちゃん?」
「碇さん・・・・。」
「・・・・なぁに?」
「司令のところに、行きましょう・・・・。」
「・・・・・・え。」

唖然とした顔で、見上げつづける

「碇司令に頼んで、探してもらいましょう。」

レイの提案に
しかしユイナは、ふるふると首を左右に振った

「や!・・・パパ嫌いなの!だからパパはやなの!!」
「けど・・・誰かに探して貰わないと、私たちだけでは、もう無理だわ。」
「でも!でもやなの!!」
「そう・・・・でも・・・・・。」

ほんの少し、レイはユイナのように眉をハの字にした

「なら・・・どうするの?私たちだけで、探すの?」

 それは無理

そう、言外に告げる

「ぶぅぅぅぅー・・・・・・。」

それでも、不満そうにユイナは頬を膨らます

「・・・・むぅぅぅぅ。」

じろっと睨んでも、レイはその視線を変えない

「にゅぅぅ・・・・なら。」
「・・・・碇さん?」
「なら、加持さんにお願いする。」
「・・・そう。」

ほんの少し寂しそうな顔をした親友に気がつかず 
恋する少女は、さっきとは逆に、親友の手を引っ張って歩き出した



それでも、レイはまだ信じたかったのだ
だからユイナが家路についた後、
一人、発令所に足を向けた・・・


 

光の螺旋・・・それは、16番目の使徒

二人の少女は、EVAに搭乗して、その様子をうかがっていた
一人は、悲しげな気持ちを、その赤い瞳に浮かべて
もう一人は、いまだ怒りの視線を向けて
二人は、同じ男性の事を思っていた
 
が、今
そんな感傷に身を任せている猶予は、やはり無かった

 ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

突如!
蒼く鈍い光を放っている螺旋の輪が、それを切り離し、リボン状になって零号機に向かってきた

「レイちゃん!!」

最も早くそれに気がついたのは、ユイナだった
しかし当のレイは、それに気づくのが一瞬遅れてしまった

「え・・・・きゃぁっ!!」

 バシィィィィィィィィィン!!

腹部に激突した使徒は、抉りこむように、零号機の内部への進入を図ろうとしている

「レイちゃん!!」

「くぅっ!」

ATフィールドを展開するも、完全に密着した状態では、それもままならない
そして、使徒の目論見はモノの見事に成功し
ついにはエントリープラグの内部にまで侵入してきた

「!!!!」

白いプラグスーツにまとわりつく蒼い使徒
レイの体を、そして心を侵食し始める

「あぁっ・・・。」

その、あまりの快感に
全身を廻る恍惚感に
頬を染め、喘ぎ声を上げる

「うぅ、ん・・・・。」

体中を駆け抜けていく快楽の情報は、使徒に伝わり

 そして・・・

「あふぅ・・・ぁ・・・・碇、司令・・・・・。」

想いを感じ取ったリボンのもう一方が、暴走を始める

「碇司令・・あぶ、ない・・・。」

自らの心と一体になったそれに、レイは危機感を募らせた
自分の欲望は、自分が一番よく知っている

 そう思っていた・・・けれど

 ・・・・・

「彼の捜索など、必要ない。」
「・・・なぜです。」
「彼は既にチルドレンとしての資格を剥奪されている。」
「・・・なぜ、です。」

「彼は必要ないからだ!!

「・・・わかりました。」

 ・・・・・

螺旋の向かった先は・・・発令所ではなかった

「きゃぁっ!!」

「・・・碇・・・・・さん?」

視線を動かせば、必死に使徒を押さえつけている初号機の姿があった

「・・・そう。」

 もう、だめなのね

このときレイは、自分の本当の心を悟った

「もう、誰でもいいのね・・・いえ。」

 初めから、誰でもよかった、近くにいてくれる人なら

「きゃあっ!アスカ助けてっ!アスカッ!!もう!やぁっ!!」

一人奮闘を続ける少女に

「ごめんなさい、碇さん・・・。」

謝罪の言葉を口にする

それは、自分の欲望の対象になってしまったことに対して
そして、自分があまりにも無力な事に対して

「・・・あと、私ができるのは。」

動かすだけで絶頂を迎えそうな快楽に耐え
プラグスーツに包まれた手を、座席の後方に伸ばす

そこにあるのは、緊急用の自爆装置

「碇さんを、守ることだけ・・・・・。」

覚悟と共にレバーに手をかけた・・・・

 瞬間

アスカッ!!・・・もう もぅいやなのっ!!

 バシィィィィィィィィッ!!

初号機に乗る少女の叫び声と共に、強力なATフィールドが展開され


 


そして、あたりは光に包まれた


 

一瞬の光が過ぎ去り
レイも、発令所の人々も、ようやく目を開け始める

「アスカは・・・・。」

後に残されたのは、無傷のEVAが2体

「アスカはどこっ!!」

発令所に、少女の叫び声が響き渡った


 

〜次回予告

邂逅、出会い、遭遇
引き合わせたのは、神様の気まぐれ?

偶然、運命、奇跡
手を離せば、林檎は床に落ちるように

すべては仕組まれている
人は皆、役者として舞台を演じるように


 CHANGE DISK TO THE Successful Misson

「ユイナちゃんは関係ないでしょうあなたはあなたの仕事をこなすことだけを考えればいいの
 ・・・わかったら、さっさと着替えてきて頂戴こっちも時間がないのよ!!


 
 
 

あとがき

自分が感動しないものは、他人をそうさせる事は不可能でしょう

あまりに抽象的な情景描写
すべてをせりふに頼りすぎ
読むには少し不自由なテンポ

こんなときに、自分の文才のなさを痛感します
本当は人様に見せられるレベルではないのは重々承知の上なのですが
申し訳ありません、私には、これが限界です


アスカ:アラエルが相手だと・・・危険ね。

マナ:TV本編のことを考えたら、やっぱり綾波さんも・・・。

アスカ:ここまでシリアスが2つ連続すると・・・楽観的な展開になりそうにないわね。

マナ:次は渚くんだから、ユイナちゃんを傷つけることはないかもしれないけど・・・。

アスカ:アイツはよくても、エヴァシリーズが残ってるわ。

マナ:ネルフ最大の危機ね。

アスカ:避けて通ることのできない道は、乗り越えるしかないのよっ!
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