ここでシャワーを浴びていると言うことがどういうことを示すのか
そんなことがわからないほど、無知でも世間知らずでもない
・・・・つい、この間まではそれも否定は出来なかっただろうが
けれど、今は違う
今は・・・・・
備え付けられた鏡を覗き込む
写りこんでいる風景は、まるで自分の家にいるかのように生活観が感じられない
いくつか感じる相違点のうち最大のものは、異常なまでの清潔感だろうか
それとも、静まる気配のないこの高揚感からだろうか
鏡の中のもう一人の自分の赤く火照っているほほが
決してシャワーを浴びた後と言う理由だけでないのを、レイはよく理解していた
そして、これからのことも・・・・
「カヲルさん・・・。」
つぶやいた言葉に、幾許かの期待を込めて
僕は、君に会うために生まれてきたのかもしれない
たった一言だったけれど
わたしにはそれで十分だった
体中に受けた口付けも
全身で感じた体温も
二人がひとつになった一体感さえも
それほどまでには、私の心を満たしてはくれなかった
だから、その言葉を胸に
体の中心からの、心地よい痛みを感じながら
彼の細く白い腕に頭を持たれかけさせ
ほの温かい肢体にその身を預け
かつてないほど深い眠りに、落ちて・・・・いった
君は覚えていないだろうね
でも、知らないはずはないのだから
紅にきらめく湖畔で君と再会したとき
その美しさに息を呑んだとき
僕はそう、確信した
もしこれを恋と言うのなら
僕たちは‘いつものように’恋に落ちた
全ては、プログラムされた回路のように
完璧主義者の映画監督の台本のように
CDに焼かれた音楽のように、僕たちは‘いつものように’計画を推し進める
後は、君が幸せでありますように
Ⅰ wish will be happy life