「う・・・」

彼、青葉シゲルは目覚めた。近くには同僚2人、日向マコト、伊吹マヤもいる。しかし、冬月コウゾウ副司令の姿は無い。

とりあえず、同僚2人を起こす。

「あれ、僕どうなったんだ?確か、ミサトさんと…」

「あれ、先輩どこです?先輩!?」

「とりあえず、状況の確認を!」

「あっああ、そうだな。ってあれ?副司令は?」

「確かに、さっきまで居たのに…。」

「先輩も…どこ行っちゃったんだろ?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「…とりあえず、状況の確認をしましょう!」

辺りの状況は、酷いモノだった。サードインパクトのせいなのは、疑う余地もない。

「・・・・・・」

「酷い…」

「ああ、確かに。」

本部の半壊状態にあるレーダー網からの情報だが、少なくとも周辺50km四方は壊滅だろう。

「どこかに、生存者は…?」

「あっ!」

「どうした!?何かあったのか!?」

マヤが見ているモニターには、シンジがアスカの治療をしている姿が写されていた。

「無事だったか…。」

「良かった…アスカ…。」

「えーっと、場所は…?」

どうやら、地底湖跡近く。つまり、ここから近いらしい。

「…周辺に敵影は?」

マヤの体が、震えた。

「いや、確認出来ない。そもそも、初号機起動と前後して戦自は撤退し始めていたから、おそらく…」

「巻き込まれた、か。」

とりあえず、可能な限り武器と医薬品を持ってシンジ・アスカの所に行くことになった。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

二人、同じ場所

       第二話「…互いの最も醜い部分。それ故…」

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「シンジ君!」

「アスカ!」

「シンジ君!」

その声を聞いて、シンジは声のした方を見た。オペレーターの3人が走って来ている。

「青葉さん!日向さん!マヤさん!良かった、無事だったんですね。」

「ああ、なんとか。君の方こそ、大丈夫か?」

「アスカ、アスカ大丈夫?」

「う、うん。当たり前…よ。」

「シンジ君、応急処置、上手くなったな。」

「…僕には、この程度のことしか。…あのっ、病院は?」

「…残念だが、サードインパクトで周辺一帯は壊滅状態だ。」

「!?…サードインパクト、やっぱり…起きたんですか?」

「…気付いてなかったのか?」

「いやっ、その…なんか、わけが分からないんです。何があったのか。」

「そうか…、俺にもよく分からないが、あのエヴァシリーズはその為に来たらしい。…俺たちは、本部にいたから助かった。」

「ああ、確か副司令がアブソーバーのことを言っていたな。」

「それって…本部は最初からサードインパクトのことを想定して?」

「…おそらく。副司令は最初から分かっていたらしいし、…なら当然司令も。」

「…あのっ、それなら本部施設の病院は!?」

「…残念だが、戦自突入時に本部施設はあらかた破壊されたから…。」

「アスカっ!アスカしっかりして!」

その声のした方を見ると、アスカが再び気を失ったらしい。

「アスカ!」

そんな時だった、戦闘機がやって来たのは。

「戦自の戦闘機!」

「くそっ!まだ来んのか!」

その戦闘機はこちらに気付くと、近付いて来た。そして武器を構えている2人を見て、警告を発する。

「武器を下ろしたまえ。今回のことについて聞きたいことがある。抵抗しなければ何もしないし、危害を加えるつもりも無い。これは日本国政府からの通達である。
繰り返す…」

「2人とも…武器を下ろして。」

素直に、従った。抵抗したところで無駄であり、…拒否など、出来るわけが無かった。この国で生きていきたければ.。
                   ・
                   ・
                   ・
                   ・
                   ・
                   ・
                   ・
                   ・
                   ・
                   ・
連れて行かれたのは、サードインパクトの影響の少ない戦略自衛隊の基地だった。

アスカは容態が悪いので入院。彼女への尋問は容態が落ち着いてからになった。

そして、残った4人は素直に尋問を受けた。

元々、一介のオペレーターとパイロット風情に与えられた情報などあまりにも少なかった。

が、冬月副司令が行方不明間際に言ったことも含め、知っている事は全て話した。

「つまり、こういうことかね?
人類補完計画の目的とは、エヴァシリーズを使ってサードインパクトを起こし、アンチATフィールドとやらを使って全人類を融合させる。
そしてその後、リリスとかいう人類の産みの親に回帰することだと?」

「はい、おそらくそういうことだと思います。」

「…ふう、突飛な話だ。が、この事態を説明するにはそれしかないか…。」

「?どういう事ですか?」

「…身近な例なら、例えば遺体が消えていることが挙げられる。ネルフ本部の遺体は全て消えていただろう?」

「あっ、はい。確かに、そうでした。」

「他にも、世界各地で行方不明者が続出している。例えば、冬月副司令、赤木博士。」

「!そうだったのですか?」

「ああ。また、彼らの多くは自殺未遂経験者だということも分かっている。」

「…それって、まだLCLの海に溶けているってことですか?」

「おそらくそういうことだろう。碇君、君の話だと最後に綾波レイがそのようなことを言ったのだろう?」

「…はい、そうです。」

「そしてあの時、皆が融合したままか、それともバラバラになるかの選択権も君が持っていたのだったな?」

「…はい、そう、だと思います。」

「政府を代表して礼を言う。ありがとう。」

「…あっありがとうございます。」

「ふふっ、礼を言ったのは私の方なのだがな。青葉二尉、日向二尉、伊吹二尉にも協力感謝する。
君達の話を聞かなければサードインパクトも人類補完計画も分からずじまいだった。」

「はっはあ。…分からなかったと言うと?」

「…我々は踊らされていたのだ。委員会に。奴等にネルフの目的がサードインパクトだと聞かされ、君達に攻撃を仕掛けてしまった。
本当の敵は委員会にもかかわらず、だ。
君達ネルフスタッフには、まことに申し訳ない事をした。謝って済む問題ではないが、謝罪させてくれ。」

そう言って頭を下げる政府高官に、彼らは言葉を無くした。

「………………」

そして頭を上げる。

「とは言え、やはり半信半疑だよ。」

「無理もありません。私たちもそうですから。」

「いや、そういう意味ではない。君達の体験した事だよ。」

「えっ…。」

「例えば碇君、君はLCLの海で他人に会ったと言ったが、我々は誰とも会っていないのだ。」

「えっ、あのっ、それってどういうことです?」

「要するに、君が見たのは夢じゃないか?と、いう事だ。少なくとも、我々はそのようなモノを見ていない。」

「えっ、でも…青葉さん達は見ていますよね?」

「いや、俺は見てないよ。」

「私も…」

「僕も見てないよ、そうゆうのは。」

「えっ…でっでも、そうだ!アスカなら!」

「まあ確かに。彼女に聞けば分かる事だな。容態が落ち着いたら、聞くつもりだ。」

――その後、アスカが肯定したことにより、事実と断定。

「もっとも、君は特別だからな、そういうこともあるかもしれん。そしてそれは、君達3人にも言えることだ。」

「えっ!私たちもですか?」

「ああ、君達が見たという綾波レイ―小さい方のな―を、我々は見ていない。まあ、それも単純に距離の問題なのかもしれんがね。よくあるだろ?
マンガなどで、魔法の効果範囲がどうたらこうたら。」

「はっ、はあ。」

「だから、最初に君達の話を聞いたときは正直、狂ったと思ったよ。だが、事実行方不明者が大量に出ているし、遺体も何処かに消えた。
君達の話は、その説明には十分だ。」

「なるほど。…えっ、ということは、まったく気付いていなかったのですか?」

「ああ、そうだ。我々が把握していたのは、サードインパクトが起こった事だけだ。後はまったく知らなかった。正に寝耳に水という表現がぴったりだよ。」

「なるほど、そうだったのですか。」

「まあ、ネルフが最初から我々に事情を説明していたら、こうはならなかったかもしれんがね。」

「すっすいません。」

「いや、別に責めているわけではないよ。君達も知らなかったわけだし。これはむしろ碇ゲンドウに言いたかったことだな。
彼が事前に報せてくれればこうはならなかった。」

――碇ゲンドウの目的も委員会と似た様なモノだったが、真相を知る者はいない。

「…父さん。」

「ああ、すまなかったね…さて、とりあえず話も終わったし、もう解散しよう。」





それでも、幾つかの謎は残った。そしてそれは彼らに聞いても無駄であることは確かだった。

そして、ここで大きな問題が発生した。

マギの故障。

エヴァ、及びリリス、使徒、また人類補完計画のさらなる情報を得る為、マギの調査をしようとした矢先のことだった。

世界各国にあるすべてのマギタイプが原因不明――マギの有機体で構成された部分が、LCLの海と反応したとの説が有力視されている――の故障。

復旧作業は捗らず、また機能が回復しても内部情報は絶望的。マヤにしても知っていることは少なく、エヴァ再建造のヒントにすらならなかった。

謎は謎のまま残り、LCLの海はいつの間にか引いていた。

そして、ネルフは組織解体された。ほとんどの者は、それぞれの国の公的機関に転勤。そして数少ない例外―すなわちチルドレン二人は保護者との相談の上決定。

アスカは、帰国することになった。

それは日本に残る社会的理由が無い少女には当然過ぎる選択だった…。愛を求めた少年に、殺されかけたのだから。






                 〈続く〉




--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
〈あとがき〉
…なんかシンジ・アスカのこと全然書いてないような…(汗)すいません、次回からはちゃんと書きます。ですので見限らないでください。

最後になりましたが、このような拙作にお付き合いいただき、ありがとうございました。それでは、また。

…なんかさらに、駄文度が上がってるような…(泣)


作者"雑嗣種食"様へのメール/小説の感想はこちら。
c04015ku@ed.fuk.kindai.ac.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system