エヴァクエ!
そのに
「へぇ〜〜〜〜〜〜〜〜」
きょろきょろきょろきょろ、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
「もう、アスカ。恥ずかしいから少しは大人しくしていてよ」
サランに着いてから、アスカは持ち前の好奇心をいかんなく発揮し、さも東北の山奥の農村から東京へ出てきた田舎もののようにはしゃいでいた。
店先で品物を見ていたアスカがヒカリの非難に反論する。
「だって〜、私今までこうやって誰にも邪魔されず買い物とかしたこと無いんだもん。あっ、何あれ!かっわい〜!」
新しいおもちゃを見つけた子供見たく次の獲物へと走っていく。
もちろん回りの注目をビシビシ浴びていた。
「も〜〜〜〜〜、マユミさん、マユミさんからも何か言ってあげてちょうだい!」
後ろに控えているマユミに意見を求めた。が、
「ほらほらヒカリさん!これ凄いんですよ!ここをこうすると・・・、ほら、ここが回るんです!ね、凄いでしょ!?」
「・・・・・・・・・・・・」
頑張れヒカリ!負けるなヒカリ!君が突っ込んでくれないと、ボケ倒しになりそうな勢いだ!めげるなヒカリ!ファイトだヒカリ!さあ、君の明日はどっちだ!(←意味不明)
「もう、2人とも。少しは目立つ行動を押さえるって言う頭はないの?これでも私たちお尋ね者なんですからね!」
城にいるものも、無能ばかりではない。そろそろ、アスカがいなくなった事を気付き始める頃である。
「さ、追っ手が来ないうちに、さっさとここから退散しましょ」
「え〜〜〜〜〜〜、だってまだお店半分も回ってないよ!」
アスカが頬を膨らませた。
「そうですよ、もうちょっと回ってからでも・・・・」
ギロリ
「そ、そうよね〜、見つかっちゃうとまずいし早く行きましょうか」
「は、はい!善は急げです。さあ、出発しましょ〜」
マユミはおろか、アスカさえも視線一つで黙らせるヒカリ。実は彼女こそが最強だ、と言う声も城の中であったりする。
「はあ〜〜〜。あなた達、本当に分かってるの?いいわ、説明してあげる。とりあえず、次の町に向かいましょ。歩きながら話してあげるわ」
もうすでに、必要な武器、防具、そして道具類は買ってあった(もちろんヒカリが)。一行は全町民の視線を受けつつサランの町を後にした。まあ、彼女等に隠密の旅ができるとは、お釈迦様でも思うまい(古いか?)。
「な、なに〜〜〜〜!!!アスカが城を抜け出しただとぉぉぉぉ!!!!」
「はい、そのようです。部屋に鍵がかかっておりましたので、ちょっちぶち壊して中に入ったところ、すでに中はものけの空。応急処置のされていた壁がまた破壊されていた事から、姫はそこをぶち破って、逃走したものと思われます」
「アスカが、アスカが・・・。ブクブクブクブク・・・・」
泡をはいて引っくり返ってしまった。
「それと、これは未確認情報なのですが、お世話役の洞木ヒカリ嬢と、シスターの山岸マユミ嬢の姿も見当たらないそうです。推測するに、同行、もしくは拉致された可能性があります」
王は白目をむいちゃっている。
「ラングレー王、いかがなさいますか?」
もちろん答えられるははずがない。見かねて隣に立っている大臣が命を下す。
「葛城ミサト、貴公をリーダーに、赤木リツコ、加持リョウジとパーティーを組み、姫の追跡に当れ。今回の事は諸君等お目付け役の失態である。良いか、必ず連れ帰るのだぞ!」
「お任せ下さい。姫は必ずこの私が連れ帰ります。では、失礼します」
今だ「アスカ、アスカ・・・」とうめいている王を、親ばかめと罵りながら、ミサトはその場を後にした。
「で、アスカを連れ帰るという命を受けてきたわけね」
ここは魔法研究所赤木リツコ用特別室、通称マッドのお部屋、もしくは地獄の入り口。中にはなんに使うのだろうと思わせる、薬品、実験器具、書物か目白押しだ。
「リツコ、人事みたいに言ってるけど、あんたもそのメンバーの一人なのよ」
「あら、私行かないわよ」
当然といった顔で、さらっというマッド。
「そんな事してたら、研究が遅れちゃうじゃない。今度の学会で発表しようと思ってるのに」
頭を抱えるミサト。
「あのねぇ、行かなかったら命令違反よ、め・い・れ・い・い・は・ん!重罪よ重罪。下手したら死刑になっちゃうかもしんないのよ」
「大丈夫よ、マヤを行かせるから」
「マヤ、ちゃんを?」
ミサトを見ずに頷くリツコ。
「ええ。それなら王も納得するでしょ」
が、ミサトは固まっていた。
(あ、あの子が一緒に?一緒に旅をして一緒に同じ宿に泊まって一緒の部屋に寝るの?・・・・・い、いや〜!百合は嫌ぁぁぁ〜!私は男が好きなのよぉ〜!)
2ピー才、今だ独身。まだまだ結婚の夢は捨てきれてないようだ。
「そ、それはまずいんじゃない?だ、だってさ、一応リツコが指名されたわけなんだし」
「あら、マヤは優秀よ。私の後輩なんですから。手取り足取りみっちり私じきじきに仕込んだんですからね。十分私ぶんの働きはしてくれるわ」
(手取り足取りって、その上腰まで取ってんじゃないわよ!)
声には出せない。そんな命知らずな事、彼女には出来なかった。
焦るミサト。
(考えろ、考えろミサト!百合は、あの世界だけは踏み込んじゃ駄目なんだから!)
彼女の親友(彼女自身はそうとは認めないが)は、自分には手を出さない、それは確信できていた。が、彼女の後輩はそうは行かない。最近マヤの目つきにラブラブ光線が混じっていることに危機感を覚えていた矢先である。
と、ミサトにあることが思いつく。
「リツコ!あのね、〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・」
耳打ちをされてしまい聞く事が出来ない。ただ断片的に。『実験台』だとか『子猫』だとか『あさり放題』だとかが聞こえてくるのだが。・・・・・・・・・もしかして聞こえない方が幸せなのかもしれない。「知らぬが仏」ってね。
「わかったわ、行きましょう!」
目の色が変わっている。やっぱり少し知りたいかも。
「あなたならそう言ってくれると思っていたわ!・・・・・・・・さて、後はあの『あほ』だけね」
「彼ならいつもの所にいるんじゃない?」
「多分ね。私ちょっと行ってくるから、その間に準備済ませておいて」
「わかったわ。少しは手加減してあげるのよ」
それには答えず無表情で出て行くミサト。
「加地君、今度こそ本当に死んだわね」
一人残されたリツコは、投げやりにそう呟いた。
さてここは、噂の加地リョウジがいるところ。その名も「メイドさん控え室」!・・・この展開、ばればれでした?
「ねぇ、チコちゃん、そう言わずにさ一緒に出かけようよ。ちょうど明日俺暇でさ、チコちゃんもだろ?」
「ええ、そうですけど・・・」
「そうだろ、なら問題ないじゃないか」
「でも、加地様に泣かされた女の子いっぱいいるって聞きますし・・・・」
「そんなのただの噂!俺ってこう見えてけっこうシャイなんだぜ。こうやって誘うのもチコちゃんだけ・・・・」
「へぇ〜〜〜〜・・・・・・・」
「!」
後ろを振り返らずともそこにいるのが誰だか判る加地。気配をまったく悟られずに加地の後ろを取れるのは、この女くらいしかいない。その上、首には、銀色に鈍く光る切れ味抜群そうなものが当てられていた。殺気のおまけ付きで。ますますもって確率が100%になる。
「そこのあなた」
血も凍るような、地獄のそこから響くような声でチコちゃんへと警告する。
「さっさと仕事に戻りなさい。・・・わかった?」
「は、はい!!!」
慌てて駆け出すと、一目散にこの部屋から出て行く。汚い話だが、彼女が失禁しなかったのは奇跡と言っても良い。
「で、加地君。あなた今、ここで何をしていたの?」
「ななななな、なにって、そ、それは、そう、スキンシップだよスキンシップ!」
「へえぇ・・・、あなたのスキンシップはデートに誘う事なの」
「い!いや、それはだなぁ、なんと言うか・・・・」
「じっくり聞かせてもらえるかしら?」
そこから約一時間のあいだ、その場所から男性の悲鳴が途絶える事はなかったという。
彼ら三十路トリオの関係ってのは、そんな感じ♪
彼女たちは今テンペを目指して歩いていた。
「あのね、アスカのパパが治めているこのサンドハイム国は結構広いの。今行ったサランの他に、テンペという村と、フレノールと言う町があるわ。あと、バザーが不定期で開催されていて、それもサンドハイムの管轄なんだけど、不定期の上、場所もばらばらだから「面倒見きれていない」って言うのが実状ね。今向かっているのはテンペの町」
アスカが感心する。
「へぇ〜、ハンドハイムって結構大きな国だったんだ」
「アスカ・・・あなたの国でしょ。まあ、いいわ。それで、もしアスカが本気で腕試しの旅に出たいのなら、このサンドハイムから出なくてはいけないの。ここからいける他の国は、エンドール」
「エンドールって、あのカジノのある?」
「アスカ、そんな知識だけはあるのね。でも、そう、そのエンドールよ。そこまで行けば取り敢えずは安心だわ」
「エンドールかぁ、で、そこへはどうやって行くの?」
ヒカリは人差し指を口元へ持っていく。なかなかチャーミングな仕草だ。
「えっと、確かフレノールの南にエンドールに通じるほこらがあったような」
「よし、じゃあ目指すはフレノールね!」
「あ、あの・・・・」
おずおずと手を上げ、今まで発言していなかったマユミが声をだす。
「ん?何、マユミ。この期に及んでまだ行かせないなんて言う気じゃないでしょうね?」
「いえ、もう諦めました。でも、姫、私達だけでは・・・・。ミサト様や加地様に付いて来て頂いた方が・・・」
「だめよ。それじゃあ腕試しにならないじゃない。それとマユミ、私のことはアスカって呼ぶようにって言ったでしょ!」
顔を曇らせるマユミ。
「で、でも・・・」
「デモもストライキもないの!アスカって呼ばなかったらこのままここにおいてくわよ!」
「わ、分かりました。あ、アスカ・・・・様」
眉がつり上がる。
「ア・ス・カ!」
「アスカ・・・さん」
「もう。ま、いいわ。マユミにはそれが精一杯でしょ。譲歩してあげる。で、ヒカリ、テンペってのに行くにははこっちでいいの?」
横で先程の会話を聞きクスクスと笑っていたヒカリだったが、急にアスカに話を降られ慌てて体裁を整える。
「ええ、このまま真っ直ぐ。夜になる前にはつけると思うわ」
「ふ〜ん。でも何か拍子抜けね。パパが外の世界は危ない危ないって言うし、最近はモンスターが多いっていうから、期待してたのに。何もないじゃない」
「アスカ、そんなこと言うもんじゃないわよ。モンスターは出ないにこした事はないんだから。それにそんな事話してると・・・」
「アスカさん、ヒカリさん、モンスターです!!!」
「っていうお約束のパターンになるのよ」
何故か悟りきった表情で呟くヒカリ。意気揚揚とモンスターをにらみつけるアスカ。怯えるマユミ。三者三様の、彼女たちのファーストバトルの幕がここに切って落とされた。
目の前に立ち塞がっているのは、バッタのモンスター、キリキリバッタが二匹と、スライムの赤色バージョン、スライムベスが二匹。
「全部で四匹。いいわ、まとめて私が面倒見てあげる!」
不敵な笑みを浮かべるアスカ。右足を一歩引き、同時に右手も引く。左手を前に突き出し腰を落とす。アスカ独特のフォームだ。彼女の武器は己自身、分別すれば格闘家という事になる。
「さあ、どっからでもかってきなさい!」
呼応するかのように一匹のスライムベスがこちらに向かって突進してくる。
「甘い!」
全身からすべての酸素を抜くが如く、息を吐く。
「ふ〜〜〜〜〜〜・・・・・」
右手にたまっていく力を暴走しないようにコントロールする。簡単なように見えるが、これが、なかなかどうして難しい。
が、ヒカリとマユミから見てみれば、アスカは腰が抜けて動けないように見える。
「アスカ!避けて!」
ヒカリの声が飛んできたのと同時に、下げていた右手を突き出す。
「はあ!!!」
ボン!!!
気が放たれた音と、スライムベスが破裂した音との相乗効果で、大音響を起こした。
慌てていただけの二人は、当然目を丸くした。
「アスカ、凄い・・・・」
「やりい、大成功!さ、次はどいつ!」
が、モンスターは今の光景を見、怖気づいたのか動く気配を見せない。
「そっちから来ないのなら、私から行くわよ!」
左足を強く踏み、スピードを上げモンスターに駆け出す。
焦るモンスターたち。スライムベスはやけくそになったのか、我を忘れアスカに突っ込んでいく。が、それがアスカの虚をついた。
「わぁ〜〜〜、いきなり突っ込んでくるなぁ!」
猪突猛進。走り出したら止まらない。スライムベスは、大きさ的にアスカの膝辺りまでしかない。スピードを殺せず、スライムベスにつまずく形で前に転ぶアスカ。そこには運悪くキリキリバッタが。
この好機を逃がすほどキリキリバッタも間抜けではない。鎌のような足を振り上げると、アスカに向かって一閃した。
「きゃあ!」
慌てて両手でガードするも勢いは止める事が出来ず、吹き飛ぶアスカ。
アスカは完全にツキに見放されていた。吹き飛んだ先にもう一匹のキリキリバッタが。
(っ!やられる!)
大きく振りかぶられた足が振り下ろされる。
「ヒャド!」
死を覚悟した彼女の上を、冷気の塊が目の前のキリキリバッタへ襲い掛かっていった。
ピキーン
凍りづけされたキリキリバッタは、悲鳴のような音を立て、粉々に崩れ散った。何事かと思ったアスカは声の主を探す。
「アスカ、あなた一人旅しているわけじゃないんですからね」
ヒカリはこちらに向かってウインクする。
「アスカさん、大丈夫ですか!まあ、こんなに出血して!待ってて下さい」
先程、キリキリバッタの一撃から身を守るためにかざした両手が、鎌で切られたようになっていた。傷に手を当てると、マユミは目をつぶり集中する。
「ホイミ!」
見る見るふさがっていく傷。
「あんたたち・・・」
「アスカさん、私たちは一緒に旅する仲間です。私たちを危険にさらしたくないというお気持ちは嬉しいのですが、それは水臭いんじゃありませんか?私たちにもできる事はあります。だからもっと頼って下さい」
微笑を浮かべたまま、マユミは諭すようにゆっくりと聞かせる。
「・・・・分かったわよ。でも、後悔したってもう遅いんだからね。嫌って程こき使ってやるんだから」
マユミに手を借りつつ立ち上がるアスカ。マユミはアスカの頬が少しピンクになっているのを見つけ、クスクスと笑う。
「何が可笑しいのよ!まだモンスターは残ってんのよ!」
「はいはい」
その仕草すらおかしいのか、今だ彼女の笑いは止まらない。そんなマユミを見てますます面白くないアスカ。その怒りはと言うと・・・
「よっくも乙女の柔肌に傷をつけてくれたわね。傷つけられたプライドは十倍にして返すって決まってんのよ!覚悟しなさい!」
向かう先は先程切りつけてきたキリキリバッタ。
「やぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
踏み込みは弱く、スピードを殺さずそのままでさらに体重を乗せ、顔に掌打を一発。続けて裏拳、そのままの回転でソバット!成すすべなくやられるキリキリバッタ。倒れるとフッと空気に溶けるように消えてしまった。
まだまだ鬱憤が晴らせないアスカは、残りのスライムベスを探すべくキョロキョロとあたりを見回す。が、見当たらない。そんなアスカを可笑しそうに眺めるヒカリ。
「あれ、あと一匹はどこ行っちゃったの!?」
「さっき凄い勢いであっちの方に逃げて行っちゃったわよ」
森の方に指差しながら可笑しそうに笑うヒカリ。
「な、なんですって〜!敵に背を見せるなんて卑怯よ!男として恥ずかしくないの!」
男かどうか知らないし、スライムベス君だって、君のあの剣幕を見たら、慌てて逃げ出すのも無理ないと思うが。
「きぃぃぃぃぃ〜!悔しいぃ〜!」
地団駄を踏むアスカ。
「ま、なんにしても初戦闘は『大勝利♪』ってとこね」
「はい、幸先のいいスタートが切れましたね」
「私のこの怒りは、どこにぶつければいいのよ〜〜〜〜!!!」
太陽はそろそろ山の向こうに沈もうとしている。赤い夕日にアスカの声がエコーをかけながら吸い込まれていった。
明日も快晴だろう。
加地リョウジは城から出る前に、何故かすでに包帯でグルグル巻きにされていた。子供が見たら「ミイラ男〜」といって逃げ出すに違いない。その前を2人の美女が歩いていく。
「とりあえず、サランの町には、もういないでしょうね」
いかにも私は魔術師ですという事を服装でアピールしているとしか思えないような格好、白いコートで全身を覆い手には少し曲がった杖。髪の毛は金髪だが。
「でも、もう日が暮れるわよ。とりあえず今日のところはサランで宿を取った方が無難じゃない?」
こちらは明らかなファイター。右と左の腰に一本ずつ鞘に収められた剣があるのを見ると、どうやら二刀流のようだ。元は鉄の鎧だったのだろうが、必要最小限の部分意外は取り外されている。所々見える肌がなんともエロチックな雰囲気をかもし出していた。
「そうね!乙女の柔肌には夜更かしは天敵だもの!」
「そう。玉のような肌は、日ごろの行いが保ってくれるのよ!」
「今更何言ってんだか・・・・・」
「メラ」
無表情で標的に火炎魔法を唱えるリツコ。燃え上がる加地。・・・止めときゃいいものを。口は災いのもとっていうじゃないか。包帯のせいで、必要以上に燃えている。
「リツコ」
「ええ、分かってる。ちょっと数が多いわね」
加地がおびき寄せたわけではないだろうが、もうすでに囲まれていた。数は、頭が妙に大きい二足歩行のモンスター土わらしが二匹に、その名の通り発達した耳で空を飛んでいる耳とびねずみが五匹。
「じゃあ私が・・・」
「私が耳とびねずみを相手するから、土わらしはあなたお願い」
驚くミサト。
「ちょっとリツコ!大丈夫なの?」
「ええ、ちょっと試したい事があるの」
妖艶な笑みを浮かべるリツコ。
「後で泣きついてきても知らないからね」
左に下げている剣だけに手をかけ、土わらしへとかけていく。
「大丈夫よ、多分」
彼女は今だ笑みを崩していなかった。
ちなみに加地さんは炭になってます。
「相手にならないわね」
すでに一匹は無へと帰っている。この時土わらしは実感していた。売ってはいけない人物にケンカを仕掛けたことを。そして自分のこの先の運命を。
その3秒後、真っ二つにされ、自分の読みが正しかった事を、文字通り肌で感じていた。
「さて、あっちはどうなってるのかな?」
まだ、リツコの戦闘を確認すらしていないのに、すでに剣を鞘に収めてしまう。それほど信用に値する人物という事か、あの赤木リツコと言うのは。
耳とびねずみは動けずにいた。先程勇敢なる一匹が文字通り特攻を仕掛け、見事玉砕したばかりであるからだ。(もしかしてこの「人」は、レベルが違うのでは?)
くしくも土わらしと同じ結論へとたどり着く面々。が、ときすでに遅し。リツコの魔法が完成する。
「・・・・・・、デイン!!!」
耳とびねずみの思考はそこで途切れた。
「ヒュウ♪やるわねリツコ。でもその魔法って・・・」
「そう、勇者しか使えない伝説の魔法、雷魔法の『デイン』系の魔法よ。とはいっても、その中でも基礎のそのまた基礎である『デイン』だけどね。やっぱり『ライデイン』以上になると、死海文書にあった通り勇者しか使えないみたい」
「にしても凄いじゃない!あの伝説の魔法だった雷魔法を使ったんだもの!」
「今度の学会に発表しようとしてた研究の成果の一つよ」
クールに装うが、どこか自慢げである。
「成果の一つって事はまだ他に何にかあるの?」
「ええ、あとは強化型火炎魔法や重力制御の呪文とか、猫召喚の呪文、あとは猫型ロボットどら○モンの設計図や・・・・」
「も、もういいわ」
「そう?残念ね。これからが良いとこなのに」
何が良くなっていくんだろう。泥沼になっていくのなら、分からない事もないが。
「ま、まあ、とにかくサランに向かいましょう」
そろそろ日が落ちる。
「フフフフフ・・・、待っててねサランにいる子猫ちゃんたち・・・・」
「さあ、飲むぞ〜!」
なんともお気楽な人たちである。スキップしそうな足取りでサランへと向かう二人。ん、2人?お〜い、加地さんは良いのかぁ?
後書きと言う名の反省会
死ぬ〜・・・・・・・・
『どうしたんですか、いきなり』
やあ、S・I君・・・。ゴフッゴフッ・・・、いい加減名前で呼ぼうか・・・。
『僕はどちらでもいいんですけど。あの〜大丈夫ですか?顔が土色になってますけど』
ちょっとね、風邪を・・・・ゴフッ
『吐血・・・・。本当に大丈夫ですか?』
いや、人間って風邪でも死ぬんだなぁって肌で感じてみたり・・・・。
『医者には行ったんですか?』
医者は嫌いだ。・・・おぉ、40度超えだした。
『半分は自業自得ですね。まぁ、最近は気候が不安定ですから、体調を崩す人が多いらしいんですけど』
そう、最近自分が弱くなっていってるなぁとつくづく思う。一人暮らしは辛いねぇ。その点君は一緒に住んでいる人が・・・・。ゴメン!ごめんよ、悪気があったわけじゃないんだ。だからそんなに泣かなくても・・・、
『僕が風邪を引いても気付いてすらくれない同居人なんて・・・・(泣)』
そのにをお送りしてみました。どうでしょう?
『戦闘シーンがあいも変わらずしょぼいですね』
・・・・・さっきのをまだ根に持ってます?
『いえ。ただ思った事を口にしただけですけど』
それにしては、凄く棘のある言い方だったような。まぁ、いいか。それで問題なのは三十路トリオの皆さん。う〜ん、設定ではほとんど最強なんですけど、色々諸事情のためどうするかなぁと。
『何を悩んでいるかぜんぜん判りません』
こればかりは自分で何とかするしかないなぁ。
そんなこんなで、今回はこの辺で。では、次の反省会であいましょ〜。