Days

Days


by JUN



Third Day



少年は歩いていた


限りなく広がる廃墟

かつて自分が守った街を
そして自分が壊した街を

自分が罪を犯した街を
自分の罪が広がる街を


少年は歩いていた







―道が始まりし駅―




かつて、そこには駅があった

少年の罪の物語の始まりし駅が

今は僅かに残る線路の後が、その面影を残すのみ





少年は呟く

誰に語るでもなく
自分自身に語る為に
何も浮かべぬ表情(かお)で
何も浮かべぬ瞳を持って

少年は呟く



「ここから・・・なんだよな」

己の罪の道が始まったのは

「ここから始めるのが相応しいのかもしれない」

己の罪の道を遡るには



父からの手紙

ずっと昔に自分を捨てた父からの

「来い」

ただそれだけしか書かれていない

父からの手紙



「あの時は嬉しかったんだ
 もしかしたら僕はまだ父さんに捨てられていないんじゃないか
 もしかしたら父さんと仲直りできるきっかけができるんじゃないか
 そう思ってたんだ」

その期待は最悪の形で裏切られる事となったが




「あの時、父さんは僕に謝っていた」



補完されていく世界

全てがL・C・Lへと還っていく中で

少年の父は

少年の母に抱かれ

己の弱さを語り

少年に謝罪した

そして


















喰われた











母に?

自分に?












「遅いよ」

全てを謝罪するのが

「勝手だよ」

散々道具として扱ってきたのに

「あんた、気持ち悪いよ」

少年は父を捨てた







「そういえば、ここから逃げ出そうとした事もあったけ」


4人目の天使との戦い
吹き飛ばされる紫の巨人
足元で震えていたクラスメート
切れたケーブル
逃げろと言う指揮官
逃げなかった自分
手にした勝利

叱られた自分
何もかもが嫌になって
結局逃げ出した


行く当ても無く


「結局、僕は子供だったんだ。
 逃げてもどうしようもないのに、
 逃げる事しか浮かばなかったんだ」


出逢ったクラスメート
羨ましいと言われた


何故?


あんなに恐いのに
あんなに苦しいのに
あんなに辛いのに


何が羨ましいというんだろうか?


「あいつ等も子供だったんだよ」


エヴァのパイロットだと知って騒ぐクラスメート
騒ぐだけ騒いで、結局助けてはくれなかった者達


肉親を傷つけられたと言って殴り掛ってきた者
その後友人となり
そして自分がその右足を奪った親友


自分を羨ましいと言った者
いつも自分に義望の眼差しを向け
最後に自分を傷つけていった親友



「お前等、気持ち悪いんだよ」



少年は友を捨てた












「ここだけでも、こんなに思い出す事ができる」


己の罪と

他人の罪を


「君達の罪も、結局は僕の所為なんだ」


少年はそれは己という存在が生み出した罪だと言う

例えどんなに短い人生でも
罪を犯さずに生きれる者など居ないという事に
気付くことも無く・・・



人は生きるために動物を殺し

人は暮らすために植物を殺す

人は楽するために地球を壊し

人は快楽のために地球を冒す




少年は、それが人の『原罪』であることに気付かず



只、己を苦しめる為

只、己を傷つける為

只、己を殺す為に


少年は罪を受容れてゆく







この回想の最後に

他人である筈の女に受容れられた事を

自分が歓びを知り、涙した事を忘れ・・・







只、罪のみを受容れてゆく

























「次は何処に行こうかな」


少年は罪を探しに

再び歩き出した











後に残ったのは

割れた大地と歪んだ線路



少年の進む道を示した

駅があった


(つづく)



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