【エヴァンゲリオン幻戦記】

 

 

 

 

西暦2011年9月13日。

第十一地区マザーコンピュータ<ゼーレ>発狂。

エネルギーラインシステムの暴走を誘発。相前後して第十一地区全土を異常なレベルの大地震が襲い、人類がその叡知を尽くして築き上げた高度機械化社会は完全に崩壊した。

その直後、第十一地区と他地区との間には強力なシールドが発生し、交通はおろか通信もままならぬ状況となった。地球の北半球に位置し四方を海で囲まれたその列島は、これにより完全な閉鎖状態に陥ったのである。これは<ゼーレ>の仕業なのか、あるいは難局にあるグランドコンピュータが他地区への影響を恐れ故意に第十一地区を封鎖したのか、地獄図の中をくぐり抜け生き残った者達には、判別することができなかった。もしかしたら他地区もここと同じ様な惨状にあるのか。そもそも地球は本当に原形を留めて存在しているのか。

答えは得られぬまま時は過ぎ、いつしかこの大惨事は<セカンドインパクト>と呼ばれることになる。

 

 

 

 

【序幕 花】

 

 

 

 

ピクリ

眉が僅かに震えた。

その人物を形容する言葉は非常に多種多様だがこの場ではこれが一番ふさわしいだろう。

すなわち、

『美しい』

あるいは、

『綺麗』

となる。

端正な眉の下の両眼は細められ幻想的な紅の瞳には強い意志の光が宿っている。

唇には不敵に笑みを浮かべているがそれすらも美を高めるかのようである。

細い線で描かれた顔は優美な曲線を描きつつ日本女性の美しさを漂わせている。

手入れをしていないにも関わらず艶を失わない髪は短かすぎず長すぎずわずかな風にさざなみを立てている。

すらりと伸びた身体に無駄な肉は一切なく理想のバランスを体現しているかのようだ。

ゆっくりと拳を握りしめその人物は隣に立つ長身の男性に確認する。

「…加持、“僕”は一つ確認しておきたい事があるんだが?」

その声もまた美しい響きを伴っていた。

 

(…やれやれ)

加持は内心でため息をつく。

自分はレシーバーを付けている途中だったのでよく聞こえなかったかとか、風向きが悪くてこちらには聞こえなかったとかいろいろと言い訳は思いつくのだが、あいにくと加持の耳は常人よりは(かなりとても)よく音が聞こえることをこの王子様は知っている。ごまかしは通じないだろう。だからといって馬鹿正直に、

『あんな女みたいなナヨナヨした奴つれてきてどうするんだ?』

なんて声が聞こえたとは言えない。言わない方が彼らの身のためだろう。そこで加持はこう返す。

「実際、美女と間違われても仕方ないくらい綺麗なんだから仕方ないんじゃないか?」

そもそも“彼”は“男”のくせに綺麗すぎるのだ。

 

 

 

 

荒野と化した大地にも、人々は力を尽くして井戸を掘り、粗末ながらも家を作り、あるいはテントを張り、身を寄せ合う様にして集落を作った。この時、非常に大きな意味を持ったのは「バンク」の存在である。

「バンク」は前社会の遺産とも言うべき物資補給システムで、地中深く設置されたエネルギーバンクのことである。各地に存在し、それぞれが<ゼーレ>の支配を受けぬ独自の機構を有する。水や食料から武器に至るまで多彩な物資を蔵するこれら「バンク」は、随分以前から非常時に備え準備されていたものらしい。確かに、もしもこのような拠り所が存在しなかったなら、果たして人々が今のように共同生活を営み始めることが可能であったかどうか甚だ疑わしい。

 

セカンドインパクトは熟しすぎた社会に神が下した審判ではないのか。行き詰まった時代は終末に向かい、そしてまたゼロから再生が始まるのだ。生き残った者は、誰もが一様にそう信じていた。信じたがっていた、と言うのが正しいのかも知れない。しかし実はそれが彼らに与えられた試練の、ほんの序章でしかなかったことを、人間達はすぐに思い知らされることとなった。

第十一地区全土を統括するマザーコンピュータ<ゼーレ>は中央統一政府の支配を逃れ暴走し、なおも生きていたのである。今や「彼女」の所在を知る者はいない。快適な管理社会に暮らす一般市民にとって「彼女」は絶対不変な存在であり、<ゼーレ>の手は全土に張り巡らされた情報網を通じて都市の末端にまで届いていたために、その本体そのものがこの地区のどこに据えられているのかを知る機会はなかったのだ。<ゼーレ>と直に関わるのは、ごく少数のエリート集団『セレクト』に限られていた。彼らは<ゼーレ>の反乱の初期段階で、彼女により一人残らず抹殺されたと言われている。

そして前機械化社会において労働力として使われていたアンドロイド…通称「人形」…たちは、指令系統を握る<ゼーレ>の支配下に置かれ、意志を持たぬ戦闘マシンと化した。何を意図したものか、<ゼーレ>はアンドロイド軍団を人間達の集落に差し向け、片端から住民を拘束し、いずこかに連れ去ったのである。武器を取り抵抗しようとした者もあったが、人形達に容赦なくなぶり殺された。拉致された人間がその後どのような運命をたどったか…今もって知ることは不可能である。しかし連れ去られた者が戻ってくることは一度として無く、それだけに最悪の事態は想像するに難くなかった。

集落を焼かれバンクを占拠されて荒野に追い立てられては、無力な人間達に生きていく術はない。自衛手段は何としても必要だった。そのような経緯で生まれたのが、武装ゲリラ集団である。

 

 

 

 

 

「僕が美しいのは当然だ。そこに男だ女だと性別を持ち出すのが間違いだ」

少年はそうのたまう。ただ淡々と事実だけを述べるように。

(ま、実際そうなんだがな)

加持もそうは思うが初対面ではそういう感想を持つのは仕方あるまい。

「ならいいんじゃないか」

何がいいのか知らないが、こう言われるとなんとなくもういい気がしてくるから不思議だ。普通の人間ならこれでなんとなくすませてしまうだろう。だが少年は違った。

「気に入らない」

つまりそういうことである。

 

むさくて馬鹿な男達と共同作戦をすることも嫌ならゼーレの基地を潰すという仕事もつまらない。確かに路銀は多いに越したことはないから仕事をした方がいいのだが。

(この連中じゃあなぁ)

それなりの場数は踏んだ連中なのだろうが、そこかしこに田舎ヤクザといった感がある。腕も度胸もそれに見合った物だろう。目標はこの辺りでは最大規模の基地だ。今までにも何度かこのような作戦を持ったことがあるようだが、いざ攻めるとなると皆自分が怪我するのを嫌がり、消極的で及び腰で先ほどから話が進まない。このままだと遠くから適当に砲撃して引き上げるなんていう馬鹿げたことになりかねない。仕事を頼まれた方はそれでいいかもしれないが、なけなしの金を出し合ってこれだけの大部隊をかきあつめたこの地域の住民ご一同にはたまったものではないだろう。なにせ金はなくなった上にゼーレの襲撃も続くのだから。

(…人間は一度逃げる方法を覚えるとどんどん逃げることばかりうまくなっていくからな)

とはいえこの中継基地をつぶせばかなりの広範囲で人形たちが行動不能となる。だからなんとか作戦が続いているのだろう。だがそんなことはお構いなしに少年が声を荒げる。

「なんなんだあの馬鹿共は!あんなちっぽけな基地(多分に主観まじり)、ミサトならこんなつまらん話をしている間に片づけてしまうぞ!」

加持もそう思わないでもないのだがそれはそれ。無用の波風を立てることもない。そもそも自分やミサトと比較されては彼らも可哀相というものだろう。

基本的に彼は気が長い。そして対照的に少年は気が短かった。

「要はあの基地が無くなればいいんだろう!」

少年はそう結論づけると基地に顔を向ける。

 

「なんなんだあのガキは?」

「口が達者なだけの奴かと思ったら癇癪持ちか?」

そんな声が耳に届く。

(いい加減にしないと雷が落ちるな…)

これは比喩ではない。本当に雷が落ちるのである。

「とにかく俺達の仕事は陽動だ。センサーにわざと引っかかって人形達を誘い出す」

加持は少年に確認する。

攻めるとなると及び腰だがそれなりに押さえるべき所は押さえているようだ。情報が多いと少ないとでは話が違う。

基地周辺には当然索敵各種センサーが埋め込まれており、それに引っかかれば人形の群が大量に湧いて出てくることとなる。この辺り一帯でも最大クラスの基地であるからには人形の数も兵器の質もそれに見合ったものだろう。ここに集合したゲリラ数グループでも正面からまともにぶつかるのは危険だ。危険なのだが…加持は先刻の会話を思い出す。

「なら逆に分散して一人一人センサーに引っかかって敵を分散させ、その後、各個撃破すればいいんじゃないか?」

「そんなのは無理だ。これだからよそ者は…」

「なんで無理なんだい?」

「なんでって…」

「………」

加持は無言で相手を見つめた。その視線に気圧されたのか男が小さな声で答える。

「…やったことねえから」

「そうか」

加持はあっさりそういうとそこで会話を打ち切った。

人にはそれぞれ見合った相手がある。

 

「だいたい『エヴァ』だかなんだか知らないが本当に役に立つのか?」

「!?」

(馬鹿が!!)

加持は素早く視線を少年に向ける。

事態は予想通りの展開を迎えるようだ。

少年はばっと後ろに振り返る。

「いいだろう!!そこまで言うのなら特別に見せてやる!貴様らは雁首そろえてそこで待っていろ!!」

「は、はぁ?」

「あの基地を破壊してやるといってるんだ!わかったか!?ふん!!」

王子様は鼻を鳴らすと基地の正面に向き直り歩き出す。

「おい!」

まるで散歩でもしているかのようにスタスタと歩いていく。

その足が赤外線やら紫外線やらををさっさと横切っていくのを見て加持はためいきをついた。

「お、おい…」

声をかける男達に加持は呟く。

「やれやれ困ったことをしてくれたな…」

『!?』

口調は柔らかいが、視線が気配が違っていた。

(…なんだこいつは?)

20代後半の若造に気圧される一同。

加持はそれを無視しレシーバーを外すと防弾ヘルメットをかぶる。

ライフルを一丁手に取ると少年の後を追った。

 

爆発音やら何やらが戦場…というにはあまりにも一方的な破壊活動が行われているのだろうが…から聞こえてくる。

仮の宿舎のベッドの上。飢えた男に見せるには危険すぎる肢体を横たえて、マナは携帯コンピュータのキーを叩いていた。

今頃ゲリラ達は肝を冷やしていることだろう。それで構わない。後で報酬額の割り振りを変更しても文句は言わないだろうし、彼のことを盛大に噂してくれれば本来の依頼人からの依頼の一つを果たすことになる。

「でも葛城隊長ってばもう少しギャラ上げてくれないかな?かよわい女の身でがんばってるのにな〜もう」

25歳とは思えない可愛らしい口調で愚痴をもらす。ちなみにこの口、相手に応じて千差万別に使い分けされる。

入力が一段落したところで手を止め呟く。

「それにしても最近シンジ君とレイちゃんの顔を見ないわね」

 

 

「やれやれひどい有様だな」

辺りを見回し加持が言った。まさに蹂躙されたといった表現がふさわしい。視界の隅に人形の一団を見つけると、手にしたレーザーライフルで薙ぎ払う。

「なんだと?僕のせいだとでも言いたいのか!?どかあん!!」

10数体の人形のただなかで突如爆発が起こり人形達を飲み込む。

「違ったか?」

「結果的に僕が始末するのなら同じ事だろう!?指先どかあん!!」

再び爆発が起こり数体の人形を吹き飛ばす。

無論先程から人形達の銃火が降り注いでいるのだが、どういうわけだが二人の所まで届かず、その1m程手前で何かに弾かれている。ちなみに赤い発光現象はないので念のため。

「そういうことを言ってるんじゃない」

「ああお前はいつもいつもうるさい!結局、あのアンテナと建物がなくなればいいんだろう!?」

「まぁそれはそうだが…待て、何を?」

「決まっている。いくぞっ!スペシャル・ビューティフル・ゴージャス…」

少年が右手を大きく振り上げる。

「待て!!」

「カミナリどっかぁぁぁぁぁん!!」

叫びと共に勢いよく少年の腕が振り下ろされた。

 

「今日もエヴァは強かった、と」

落雷とそれに続く盛大な爆発音を聞きながらマナはスイッチを切る。

外には雲一つない空が広がっていた。

 

 

 

EVANGELION ILLUSION

Prologue: Blossom

 

 

 

 

シンジ「…はじめまして碇シンジです」

その声は喜びと寂しさを伴っていた。

 

 

ミサト「それで旅って何が目的?」

シンジ「人を探しています」

加持「よ、葛城。久しぶり」

マナ「よろず何でも請け負い業よ。よろしくね」

リツコ「やれやれ私の柄じゃないわね」

エヴァ「ああ!だから女は嫌いなんだ!!」

マナ「あら無敵のヒーローでもヒステリーおこしたりするのね」

??「…碇君」

ミサト「みんなに言っちゃっていいわよ。エヴァが助けに来たってね」

 

 

イリス「よろしいのですか風間?」

風間「………加持」

 

 

 

少女「来ます。エヴァがここに」

 

 

???「歌はいいね。リリンの生み出した文化の極みだよ」

 

 

エヴァ「貴様は所詮風間と会いたいだけだろう!?」

加持「俺の問題だ」

シンジ「僕はそんなミサトさんを見たくありません!!」

マユミ「意気地なし!!」

風間「エヴァとは何です?」

マナ「そんな事を知っている人には生まれてこの方会ったことありませんね」

冬月「碇め、面倒を押しつけおって」

加持「ここでお別れだ」

マナ「嫌な人ですね」

エヴァ「碇、ゲンドウか」

ゲンドウ「その通りだ。エヴァンゲリオンと名乗る者よ」

ミサト「人の知恵の及ぶ限り戦ってそして勝つだけよ」

 

シンジ「だから、逃げちゃだめだ」

 

 

キリエ「排除します」

アリス「死ねよ!!」

マリー「あはははははははははは!!」

 

 

エヴァ「エヴァは無敵!!」

 

 

 

 

 

某二人目の適格者「ちなみにナレーションはこのアタシ…ってあんたマジ!?」

作者「嘘をついてどうする?」何事もなかったかのようにマグカップを持ち上げて珈琲を飲む。

ナレーションの声「予告もアタシ!?…ってたいして変わんないじゃない!!しかもなによ!この妙に暗そうな内容の予告の数々は!?ミサトみたいにお気楽にとは言わないけど、アタシの声には合わないでしょ!!」

作者「そんなことはないと思うよ。今の君の声は学生時代モードだけど、ナレーションや予告の時は25歳以降の大人の女性の声だからね。あ、そういうわけですのでみなさん声優は宮村優子さん、声は20代後半を想像して下さい」

予告の人「あんたねぇ!!」

作者「だってそうでもしないと君の出番まるでないよ。それでもいいの?」

ナレーションを読む役「そんな話を作ることがそもそも間違ってんのよ!!全国1億2千万のLAS人を敵に回す気!?」

作者「1億2千万って…だいたい僕はLASじゃ…」

予告のバイト「あんな作品書いておいて今更何言ってんのよ!!あ、ごめんねアイ。この馬鹿とっちめたらすぐに帰ってごはんにするからね」

作者「そういう新世界エヴァンゲリオンを知らない人にわからない発言を…」

ひょっとすると主題歌とかも歌っているかもしれない人「甘い!!新世界を読んでくれていた人達がこれをLASだと思って読んだらどうすんのよ!」

作者「だから新世界は別にLASを意図して書かれた作品では…」

さすがにエンディングまでは歌わないと思われる人「くどい!世の中何をしようとしたかじゃなくて何をしたかなのよ!」

作者「…とりあえず注意書きです」

挿入歌ぐらいは歌ってそうな人「アタシの話を聞けーっ!!」

 

注意書き

○この作品は私の大好きな若木未生先生の著作「イズミ幻戦記」をベースとしています。

○基本的に話の流れは準拠していますので、「イズミ幻戦記」を読んだ方は確実にネタバレします。

○「イズミ幻戦記」を元にエヴァの世界と自分の訴えたいものを書いています。おおらかな目で見てやってください。

○「イズミ幻戦記」はまだ完結しておりませんので当然「エヴァ幻戦記」はオリジナルの展開へと移行します。

○ちなみに「イズミ幻戦記」はとてもおもしろい作品ですのでみなさんもよろしかったら読んでみて下さい。集英社スーパーファンタジー文庫から刊行されています。

○敢えて言えば新世界エヴァンゲリオンの前にくるお話です。

○とはいえ基本的に独立したお話です。

○その気になればサードインパクトが生じた、あるいは生じるあらゆる物語へつなげられるかもしれません。あくまでその気になればですが。

○なにはともあれこの作品ももちろんハッピーエンドです。

○主人公は一応シンジです。もちろん予定は未定です。

 

 

作者「ひとまず全26話程度の予定です」

アイキャッチで叫んだりはしないだろうお嬢さん「当然毎週一話公開すんのよね」

作者「新世界じゃないんだから…」

以外とCMに出てるかもしれないご婦人「ふぅ、しょうがないわねぇ。ネルフ技術部並に働いている作者だから途中で力尽きるかもしれないけど、再起動するかも知れないから見捨てないでやってね。それじゃ予告よ…コホン」

 

 

 

 

予告

 

人生は旅であるという

目的を持ちしっかりと道を見据えて歩くもの

ただ流されるままに足を動かすだけのもの

想いはそれぞれに、しかし、いつか終焉を迎える時まで人は旅を続ける

 

エヴァンゲリオン幻戦記 第一幕 幻想(まぼろし)

アタシの出番たったのこれだけぇーっ!?




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