【新世界エヴァンゲリオン】

 

 

<ネルフ本部テストルーム管制室>

 

「プラグ深度更に沈降します」

防壁ガラスの向こうにはLCLに浸かったシミュレーションプラグが並んでいる。

今では2週間毎となった定期シンクロテストの最中である。

「調子はどう?」

リツコの入れたコーヒーを飲みながらミサトが聞いた。

「いい調子よ。鈴原君は48%、アスカは70%。ハーモニクスも正常値だわ」

「へぇアスカ絶好調じゃない」

そういって同じ様にコーヒーを飲んでいるシンジを振り返る。

「何ですか?」

少しむっとした様子でシンジが答える。

シンジはまだプラグスーツが出来ていないので今日は見学である。

…リツコのことだからプラグスーツをあれこれ改造してんのよ、とはミサトの談だ。

「わかってるくせにぃ〜」

このこの、とシンジを肘でつつく。

やれやれと思いながらリツコはもう一人の方を見た。

その少女、霧島マナはファイルを読みながらう〜んう〜んとうなっている。

 

先日の一件…それだけで片付けるには公私に渡っていろいろとあったのだが。

…そう、それはもう本当にいろいろとね

ミサトはコーヒーをもう一口すする。

マナの顔にはもう涙の跡は残っていない。

…シンジくんがいてくれて本当によかったわね

 

以後、マナは技術部預かりの見習い職員としてネルフに移籍していた。

まあさすがに今は単なる見学者である。

「何、霧島さん?」

ちなみに同じ職場にマヤとマナでは紛らわしいということでミサトとリツコは霧島さんと呼ぶことで意見の合致を見た。

「あ、はい赤木博士」

「何かわからないところがあるのならどんどん質問しなさい」

教師のように話すリツコ。

…わかんないことばかりです、え〜ん。

と泣きたいマナであった。

「その、適格者でなければエヴァンゲリオンが起動しないことはわかりましたがこのシンクロ率というのはそんなに重要なのですか?起動すればエヴァンゲリオンの性能自体に差は無いと思うのですが。それにシンクロ率は同じパイロットでも大きく変動してるみたいですし…」

マナに渡したのはリツコが即興で作った初歩の用語集とでもいったものである。

そのためマナの様な質問は当然である。

もっともそれにしたって高度な教育を受けていなければ理解できないが。

…わざわざ複雑な言い回しを使ってんのよ、とは同じくミサトの談だ。

「そうね」

リツコはしばし考え込む。

「…例えば、エヴァを起動することだけなら世界中に何人も候補者がいるわ。

 でも、それではエヴァを歩かせるのが精一杯というところ」

「………」

「鈴原君ぐらいのシンクロ率が出て初めて高度な作業ができるの。

 だから鈴原君がいればそんな動けるだけのエヴァなんて何体あっても敵じゃないわ」

「はぁ」

「次にアスカと鈴原君のシンクロ率の差だけど、シンクロ率はエヴァの全ての動きに関係するの。射撃を例に取ると、命中率だけを考慮すればこのシンクロ率の差から言って二人がライフルで撃ち合えば、アスカの弾は当たるけど鈴原君の弾は外れてアスカの勝ちというところね。

 もっとも高すぎるシンクロ率にはいろいろと悪影響もあるのだけれど」

そう言ってちらりとシンジの方を見る。肩をすくめるシンジ。

「悪影響といいますと?」

「エヴァとシンクロすればするほどパイロットはエヴァと感覚を共有するの。

 たとえばエヴァが殴られたらパイロットも殴られたように感じる。

 当然、シンクロ率が高ければ高いほど痛みは本物に近いわ。

 シンクロ率が高い方が戦闘には有利だけどその代わりにパイロットへのダメージも馬鹿にならない。これも一種のジレンマね」

「なるほど」

実際はそれだけではないのだがひとまず納得するマナ。

「最後にシンクロ率の変動ね。

 確かに精神的なコンディションによって個人のシンクロ率は大きく変動するわ。

 最近のアスカのデータ傾向からすると今回の数値はとても良好な成績ね。

 だけどこれはたぶんシンジくんのせいよ」

「けほっ!けほっ!」

コーヒーを飲んでいたシンジがむせ返る。

それを見てふふっと笑い合うリツコとマナ。

「でもね、絶対的な実力差というのは存在するのよ」

「絶対的な実力差…ですか?」

「実例を見せてあげるわ…シンジくん」

「はい?」

「頼めるかしら?」

そういいながらインタフェースヘッドコネクタを白衣から取り出す。

「…わかりました」

シンジは手近なテーブルにカップを置くとコネクタを受け取った。

部屋を出ていくシンジを部屋の全員が期待を込めて見送る。

「シンジもシンクロテストするって事ですか?でもプラグスーツが無いとか言って…」

「プラグスーツは確かにシンクロの補助をしてくれるわ。でもね…」

そこでリツコはいったん言葉を切る。

「…しょせん補助は補助なのよ」

リツコは自信ありげに微笑んだ。

 

『プラグbO7LCL注水完了』

『各エントリー準備終了』

『シンクロスタート』

マナの目の前でみるみるシンクロメータが上がっていく。

先刻見たアスカやトウジとはくらべものにならない速度だ。

「各パルス正常。

 シンクロ率依然上昇中、60…70…80…90…シンクロ率91%で安定。

 ハーモニクス誤差、計測誤差範囲内。

 全て問題ありません」

マヤが弾む声で言った。

テストルームの全員が会心の笑みを浮かべる。

「す、すごい」

マナが唖然とする目の前のスクリーン。

制服姿でLCLに浸かっているシンジは何も問題ないと親指を立てて合図した。

「ま、これが実力の差ってやつかしらね」

誇らしげにミサトが締めくくるのと同時にエヴァ七号機が咆吼をあげた。

『ウォォォォォォォーーーーーーン!!』

「きゃっ!」

それは仕えるべき主人を手に入れた喜びの声だったのかもしれない。

 

 

「さすがにセンセにはかなわんな〜」

「ま、当然の結果よね。無敵のシンジのシンクロ率は400%だもん」

トウジとアスカはテストの結果を聞くと感想を述べた。

ちなみにシンジは普通の服でLCLに浸かったので服をクリーニング中である。

「なんや悔しがるかと思たら…」

「バカね、シンジは特別なのよ。ま、あんたや私とは格が違うのよ」

自分のことのように誇らしげに言う。

「もっともシンジを除けばアタシがbPだけどね」

「へいへいさいでっか」

「しかしプラグスーツ無し、コアの調整もまだでシンクロ率が90%を越えるとは…さすがはシンジくんというところか」

冬月がデータを見ながら言った。

ゲンドウは黙ったままである。

「データは以前、初号機に使用したものをそのまま使いました。量産型用に調整し直せば更に上昇すると考えられます」

リツコは淡々と報告する。

「なんかすごいところに来ちゃった…」

「もう遅いわよ霧島さん。リツコに目をつけられたら逃げ出せないんだから」

「…何か言った葛城一佐」

「別に何も言ってないわよ赤木博士」

にこやかに笑みをかわすリツコとミサト。

二人に挟まれたマナは生きた心地がしない。

そこにシンジが戻ってきた。

拍手と口笛に迎えられ照れくさそうにするシンジの腕をアスカが引っ張って連れてくる。

「さっすがはシンジね。プラグスーツも無しであのシンクロ率!」

「ありがとうアスカ」

「ほんまやな、わしなんか足下にもおよばんわ」

「そんなことないよトウジ」

「どうだった久しぶりのエントリープラグは?」

「そうですね、やっぱりLCLは気持ち悪いです」

「我慢しなさい男の子でしょ」

ミサトはそう言って笑い出す。シンジも仕方なく笑う。

そのまま部屋中に笑い声が満ちる。

「次回のテストで連動試験を行います」

「…わかった。では後は任せる」

そういとゲンドウと冬月は消えた。

「第156回定期試験終了。みんなお疲れさま、あがっていいわ」

 

 

「ところでシンジくんのシンクロ率はどうして高いの?」

二人っきりになったところでミサトが口を開く。

「…さすがねミサト」

質問の意味を理解して微笑むリツコ。

…シンジと初号機とのシンクロ率が高いのはわかる。だが、疑似的なコアしかない量産型エヴァシリーズで初号機並に高い数値を出すのはなぜか?条件はアスカでも同じではないか?ならばむしろ訓練期間が長いアスカの方が高くなるのではないか?

全てを知る者がゆえの疑問だ。現に技術部員の多くも単に初号機でシンクロ率が高かったから量産型でも高いのだろうという程度の認識しか持っていない。

「…推測の域だけど」

「構わないわ」

…何も知らないよりはまし。

それに推測とはいえリツコが口に出すということはかなりの確信を持っているということだ。

「…心を開く…」

「へ?」

リツコの言葉の意味がわからず変な声を出すミサト。

「言うなればエヴァに対してどれだけ心を開けているか…そういうことよ」

「………」

「鈴原君はそもそもエヴァのなんたるかを知らないからあのシンクロ率。アスカはエヴァを拒絶する意識はないけど、代わりに弐号機とは違うという意識が根強く残っているはずよ」

「…じゃ、シンジくんは?」

「そうね。シンジくんはエヴァを認めているのかも知れないわ」

「エヴァを認める?」

「そう七号機をエヴァンゲリオン七号機という名の一つの生命体として認め心を開いているの」

「エヴァを認めて心を開く、ねぇ…」

 

 

「それにしても霧島。そんなん読んでようわかるな」

エレベータを待つ間も勉強中のマナを見てトウジが言った。

「う、一応多少の教育は受けてたんだけど、はっきりいってレベルが違うわ、たはは」

「でも程々にしておきなさいよ。もうすぐ期末試験でしょ」

「「うっ」」

トウジとマナがうめき声をあげる。

「やな事思いださせんといてくれや…」

「そうよ、アスカ。大学出てるあなたと違って私たちにとっては悪夢なんだから」

マナも普通の高校生に比べかなりの教育を受けているがそれはあくまでパイロットもしくは工作員としての偏った教育だ。本式に大学を出ている二人とは違う。

「ふーん。そんなもん?でもシンジは落ち着いてるわね」

「え?」

3人の視線が集中する。

「あ、いや、ほら一応留学してたからそれなりに勉強もね…」

「そういえばどこで何してたか一つも聞いてなかったわね」

「え、あ、そうだね」

…そのまま忘れて欲しかった。

「もしかしてシンジも大学卒業したとか?」

「そんなアホな、シンジに限って!」

「あ〜ら3バカトリオもこれまでかしら?…で、どこ?」

「えーと…」

とりあえずシンジは『一つ目の』大学の名前を言うことにした。

「あーあそこか結構レベル高いわよね。やるじゃない」

アスカは簡単に言うがアスカの常識も一般とはややずれている。

「なぁ霧島、どっかで聞いたことあるんやが、そんなに有名な所か?」

「た、たしかアメリカでも1,2を争う工科大学だと思ったけど…」

 

 

期末試験の結果はアスカとシンジが同点一位だった。

アスカはシンジが同じ成績だというだけでそれから先を考える必要を認めなかったがかつてのシンジを知る者達は「そんな馬鹿なぁーっ!?」と悲鳴をあげ、学年上位を目指していた者達はこれからは常に順位が一番下がるという事態に衝撃を受けていた。

「…ま、当然の結果よね」

 

 

 

「それは本当か!?」

受話器に向かって冬月は叫んだ。

『ええ、事が事ですので赤木博士とシンジくんにも連絡をお願いします。では』

カチャリ

通話が切れると冬月は受話器を置いた。

「加持君からだ。

 …フィフスチルドレンが見つかった」

ゲンドウは沈黙で答えた。

 

 

 

【第伍話 五人目の適格者】

 

 

 

ピーピーピー

朝のけだるい授業…もっとも居眠りでもしようものならミサトのチョークが飛んでくるためみんな懸命に眠気を堪えている。

もっともそのミサトが一番嫌がっているのだが。

鳴ったのはミサトの携帯だった。

…授業中よ!

と思いつつも出るミサト。

二言三言聞くと顔が厳しくなる。

通話が終わると宣言した。

「みんな、後は自習よ。洞木さんお願いね」

ただならぬ雰囲気にヒカリもうなずくことしかできない。

「シンジくん一緒に来て!」

そう言い捨て教室を飛び出る。シンジも素早く席を立つ。

「…シンジ?」

事情がわからず不安そうな目のアスカ。

「大丈夫。悪いけど鞄頼むよ」

「う、うん…」

「ありがとう。じゃ行って来る」

ミサトに負けない早さで飛び出ていく。

後には不安そうなアスカ達と事態についていけないクラスメート達が残された。

「なぁ3人一緒ならわかるけど、なんでシンジだけなんだ?」

「それがわからんからわしも困っとんじゃ」

「シンジ…」

「大丈夫よアスカ。碇君もそう言ってたじゃない」

「うん」

爆音を立ててミサトの車が校庭から飛び出していった。

 

ネルフ本部へと爆走するミサトのルノー。

相変わらずの運転だが、

…戦闘機に乗っていると思えばたいしたことないさ

そう思って気を落ち着けるシンジ。

「何があったんですかミサトさん?」

「わからないわ、ただ最高度の緊急呼出よ」

答えるミサトの表情は固い。

「………」

 

 

「来たか」

執務室に入るとゲンドウ、冬月の他にリツコと加持がいた。

「どういうことでしょうか?」

「非常事態よ葛城一佐」

リツコが真剣な口調で言った。

「…シンジ」

ゲンドウが口を開く。

「はい」

「フィフスチルドレンの所在が確認された」

 

 

シンジが倒れなかったのは強靱な精神力の賜物だろう。

同じようにショックを隠せないミサトが質問する。

「渚カヲル…いえ、第十七使徒がですか?」

「使徒は全て倒した。そうでなければサードインパクトを起こせまい」

冬月が否定した。

「おそらくはダミープラグの母体。言ってみればレイと同じクローンと推測されるわ」

ネルフ本部を襲ったエヴァシリーズを操るダミープラグ。

これに渚カヲルのダミープラグが使用されていたことは確認されている。

シンジはかつてレイの肉体が漂っていたLCLの水槽を思い返していた。

「リリス…レイはサードインパクトの後、人間として再び生を受けました。同様に渚カヲルの魂も使徒としての生を終えた後、別の肉体に宿り、そして再び生を受けたと考えられます。…シンジくん?」

シンジは涙を流していた。

…カヲル君も綾波と同じように生きている。

「シンジくん」

ミサトが口を開く。

「…大丈夫です、ミサトさん」

そう言って涙を拭った。

…今は泣いてなんかいるときじゃない。僕のやるべき事をやらなくちゃ

シンジの脳が正常に回転し始める。

「使徒でないなら残る問題は彼がフィフスチルドレン…適格者だということだね父さん」

「…そうだ。エヴァを起動できると考えねばならん」

「そしてもしエヴァをネルフ以外の組織が所有していたら…」

ネルフはエヴァンゲリオンという圧倒的な軍事力をもって世界の監視を行っている。

だが、ネルフに対抗しうる力を持った勢力が生じたらそのバランスは一気に崩れる。

それだけはなんとしても阻止しなければならない。

「フィフスチルドレン…あるいはそのボディは現在一体だけ確認されている。無論所在地もだ」

「僕達がしなくてはならないのはダミープラグの母体となりうるパーツの存在の確認及び破壊、それからフィフスチルドレンの身柄の確保だね」

「そうだ。無論、状況に応じてフィフスチルドレンの排除もありうる」

状況を確認するシンジとゲンドウ。

「…わかった。僕が行くよ」

「シンジくん!?」

「ミサトさん、可能性だけなら起動可能なエヴァが存在するかも知れないんです。

 もしもの場合に備えて最低一機のエヴァが必要です。そしてそれは僕の役目です」

「…シンジくん」

シンジの意志は固いと悟るミサト。

「もっともこれが高価な囮作戦という可能性もあるがな」

「どういうこと?」

加持の言葉を聞き返すミサト。

「つまりエヴァに乗ってのこのこ現れた僕をエヴァごと誘拐するんですよ」

苦笑しつつシンジが説明した。

「………あきれた」

開いた口がふさがらないとはこの事だ。だいたいエヴァをどうやって誘拐すんの?

「ま、確かに馬鹿げた話だがシンジくんとエヴァが出向く所まではうまくいっている」

「エヴァの状況は?」

「七号機の調整は終わっています。現在、輸送の準備中です」

「リツコさん輸送手段はいりませんよ」

「? いくらS2機関のおかげで電源の心配が無くても…」

「忘れましたか?エヴァシリーズには羽があるんですよ」

 

 

 

「…というわけでシンちゃんはちょっち出張することになったの。すぐに帰ってくるから心配いらないわ」

「何が!…というわけ…よ!

 全然説明になってないじゃない!!」

アスカは電話の向こうのミサトに怒鳴った。

「ごめん。機密事項なの。勘弁して」

「………しょうがないわね」

パイロットに知らせられない事態なら、ミサトを責めても仕方がないとわかっていた。

「あ、それから私もちょっとの間帰れないからね」

「………ミサト」

「な、なーに?ちょっち声が怖いわよ」

「機密がどうこう以前に何かアタシに隠しごとしてな〜い?」

…たはは、さすがはアスカだわ

「…してないって言ったら信じてくれる?」

「………」

「ごめん。卑怯な言い方だったわ」

謝るミサト。

その声からミサトの心を察したアスカは気持ちを切り換える。

「…ま、いいわ。パイロットには言えないこともあるだろうしね」

「物わかりのいい妹をもっておねーさんは幸せよん♪」

ころりと機嫌のよくなるミサト。

「そのかわり一つだけ…」

「なに?」

「………」

アスカが押し黙ってしまった理由がわかりすぎるほどわかるミサトは努めて明るく言った。

「…馬鹿ね。シンジくんはちゃんとアスカの所に帰るわよ」

「ア、アタシは別に!」

「心配ないわ。シンジくんはアスカを悲しませるようなことは絶対しない、そうでしょ?」

「…うん」

「それにアスカが元気ないとシンジくんも悲しむわよ」

「…うん、そうね。今日はもうお風呂入って寝るわ」

「そうしなさい」

「ミサトもがんばってね」

「はいはい、じゃおやすみ」

「おやすみ」

受話器を置くとミサトはプラグスーツに着替えたシンジを見た。

…予想通りプラグスーツには何やら怪しい箇所が多数ある。

聞いた話だとエントリープラグ自体も改造されているとかいないとか…それはともかく

「聞いてのとおりよ」

「………」

シンジは答えない。

「ふふふ照れちゃって。ま、あたしの言いたいこともわかってるでしょうから言わないでおくわ」

「はい」

素直に返事する。

日向が報告を入れる。

「ドイツ支部から入電!作戦を開始します」

瞬時にミサトのスイッチが切り替わり命令を発する。

「以後、全ての指揮をMAGI経由で本部へ移行!

 エヴァンゲリオン七号機発進準備!」

『エヴァ七号機エントリー準備、パイロットは至急ケイジへ移動して下さい』

アナウンスが流れ発令所が騒がしくなる。

「じゃ、行って来ます」

加持とリツコにあいさつしてドアに向かうシンジ。

「ああ、気をつけてな」

「しっかりね」

そこへ少しの間だけ姉の顔に戻ったミサトがからかう。

「浮気しちゃ駄目よ〜」

「そんなことしません!!」

 

「先行部隊距離8千まで接近」

「エヴァ七号機エントリー終了。シンクロ率103%ハーモニクス正常。全て問題ありません」

『10番リフトへ移動完了』

『進路オールグリーン』

『カタパルト準備よし』

ミサトが司令塔を見上げる。ゲンドウは無言である。冬月が頷いて答えた。

ミサトもうなずき返すと振り返り命令を発した。

「エヴァンゲリオン七号機発進!!」

 

シンジは2年ぶりの加速圧を心地よく感じていた。

「射出三秒前、二、一、射出!!」

エヴァ七号機は地上へ出る加速をそのままに空中へとカタパルトで打ち出された。

…行くよ

シンジが念じた瞬間、背中から巨大な白い翼が展開されエヴァ七号機は自らの力で天空へと駆け昇っていった。

 

 

「七号機上昇中、まもなく大気圏外へ出ます」

「ATフィールド、出力安定」

「周回軌道に移ります」

「監視衛星より映像入ります」

星の海をバックに七号機が飛んでいく。

化け物じみたデザインとは裏腹に神々しいものさえ感じさせる姿だった。

 

…翼ある蛇ケツアルカトルか

古い神話を思い出すリツコ。

蛇身の神を崇めていた人々の気持ちもわからないでもない。

「ねぇリツコ」

そばに来たミサトが小声で尋ねる。

「なに?」

「単刀直入に聞くけどなんでエヴァは飛んでいられるわけ?あの位置、あの速度なら地球に落下するはずでしょ?第一、宇宙空間で羽なんてナンセンスよ」

「ま、もっともな意見ね。…七号機がATフィールドを張ったのは何故だかわかる?」

「大気圏を突破するためでしょ?」

「ま、それもあるけど…エヴァは強力なATフィールドを張ることで重力すら遮断することができるのよ」

「それって…」

 

「先行部隊より入電。コード101!」

日向の報告に素早く指揮官の顔に戻るミサト。

「即時爆破、攻撃開始!!」

 

「了解」

ジョニーがリモコンのスイッチを押すと郊外にいくつもの火柱が立った。

偽装された対空砲台のなれの果てである。

「さぁモタモタしてないで行くわよ!」

ライフルを構えてジャネットが走り出す。

「リョウジの婚約者は厳しいらしいからな」

都市迷彩を施した戦闘服のポケットにリモコンを戻しジョニーも続く。

同様に対人兵器を抱えた部隊が二人の周囲を駆ける。

その先では人間と人間との殺し合いが始まっていた。

 

 

ドイツ郊外の小さな町に彼はいた。

窓の外に火柱が見える。

「綺麗だね」

そうつぶやいて夜空を見上げる。

「早く来ないかなシンジ君」

 

 

「機動部隊、該当地区に侵攻」

「敵地上部隊の8割を殲滅。目標の確保に向かいます」

「先行第一小隊のアンダーソン一尉より入電。

 『地下施設への侵入口を確認、侵入許可を求む』

 以上です」

「許可します。尚、今後越権行為には厳罰をもって処すると伝えて」

日向の報告に堅い顔で答えるミサト。

「了解」

隅で椅子にもたれて見物している加持は苦笑した。

 

「オーコワ」

既に地下第三層まで侵入した所で返答を聞いたジョニーはおどけて見せた。

「お見通しとはさすがね〜」

仮の指令所を作りながらジャネットが言った。

周囲では通信員達が忙しそうに作業している。

「第三班が第五層にて格納庫を確認!現在、進路を確保中とのことです」

一瞬二人の動きが止まる。が、それからの処置は迅速を極めた。

「総員退去!直ちに地上へ後退しろ!」

「ネルフ本部に緊急連絡!第三目標を確認!

 コード405の必要ありと認む!!」

「急げ!!」

ジョニーも自分の装備をつかむと地上への通路へ駆け出した。

 

「コード405の要請です!」

「目標エリア地下120mにてATフィールドの発生を確認!」

「パターン赤!出力はほぼエヴァ一体分に相当します!」

「捜索部隊を除く全部隊に撤退命令!

 目標地区より半径2km以遠に後退!

 …シンジくん」

「はい」

サブスクリーンにシンジの映像が入る。

「残念ながら出番よ」

「わかりました。…ミサトさんそんな顔をしないで下さい。大丈夫ですよ」

励ますように笑顔で言うシンジ。

…そんなにつらそうな顔してんのかしら?

リツコが簡潔に情報を伝える。

「MAGIの分析ではダミープラグ使用の可能性が一番高いわ」

「はい、ありがとうございます」

 

「目標が移動を開始!地上に出ます!」

 

地響きをあげながらビルや町並みを突き崩しそれは地上に姿を表した。

嫌悪感をもよおす口を大きく開き咆吼をあげる。

「キシャァァァァーッ!!」

それは両手でつかんだ双刃剣をふるいビルをなぎ倒す。

破壊衝動に導かれるままただただ破壊を実行する。

 

「やれやれ、怪獣映画の見過ぎかな?」

落下する構造物をかわしながらジョニーは言った。

「シンジ達って14歳であんなのと戦ってたのよね〜」

「………」

二人は恐怖を押しつぶして走っていた。

正常な人間なら必ず覚える本能的な恐怖だ。まして報告書通りなら、あの白い巨人には銃弾もミサイルもN2兵器さえも通じないはずである。

二人はシンジ達への賞賛の念を高めていった。

 

 

シンジは目標の上空に到着すると一旦停止し翼をとじる。

頭を下にしてエヴァは落下を始める。

重力のみならず自ら加速して。

 

 

制御を失い破壊を始めた白い巨人を眺めていた少年だったが、ノックの音で振り返る。

「カヲル・ナギサかい?」

ジョニーはライフルを肩に担いで尋ねた。

「ええ、そうですよ」

 

 

「あらーシンジに負けず劣らずの美少年ね〜」

ジョニーが通信兵に指示を始めるとジャネットが言った。

カヲルの瞳と髪は漆黒に染まっていた。それがヒトの証だというかのように。

その顔がにっこりと微笑む。

「それはどうも。でも、シンジ君の方がハンサムですよ」

…うーん。上玉だわ

不謹慎だが感心するジャネット。

「さて、お休みの所悪いが同行してもらおうか。なにせあんなのが近くで暴れてたんじゃ生きた心地がしないんでね」

そう言ってジョニーが窓の外を顎でしゃくる。

「不完全なダミープラグを使ったせいです。あれはもはやエヴァンゲリオンとは言えません。ただの怪物ですね。コントロールルームは既に破壊されているでしょうが、ま、自業自得でしょう」

「それならなおさら早く脱出するわよ」

「大丈夫ですよ、もうすぐシンジ君が来ますから」

カヲルは確信に満ちた表情で言った。

 

『第一目標を確保!第三目標はダミーと確認されました!!』

『エヴァ七号機大気圏に突入します!』

 

夜空から赤い尾を引いて流星が落ちてきた。

流星はまっすぐ白い巨人に向かって落下する。

刹那、爆音と振動が辺りを揺るがした。

メインスクリーンがノイズの嵐に覆われ音声がとぎれる。

「状況は!?」

「駄目です!センサー系統が復旧しないことには!」

「急いで!」

 

「勝ったな」

冬月が呟いた。

「ああ」

ゲンドウは満足そうな表情を浮かべた。

 

「うおっ!?」

「きゃっ!?」

ジョニー達が伏せる中、一人カヲルはその閃光を見つめていた。

「…久しぶりだね、碇シンジ君」

 

 

 

NEON WORLD EVANGELION

Episode5: Fifth children

 

 

 

『回線復帰、映像入ります』

『おぉ…』

メインスクリーンには先ほどの巨人と似ていながらも、別次元の神々しさを放つ白い巨人が翼を開いて立っていた。

「目標は完全に消滅。痕跡、確認できません」

「エヴァ七号機各部正常。損害ありません」

「第一目標並びに各部隊への被害ゼロ」

「敵残存部隊が投降を始めています」

「投降を認めます。以後、エヴァ七号機並びに第一目標以外への対処権限をドイツ支部へ移行。パイロットに帰投命令を」

そういってから司令塔を振り返る。

「本日1000をもって本作戦の終了を宣言します!」

「…ご苦労だった」

司令席がゆっくりと降下していく。

 

「シンジ君本部へ帰投してくれ」

日向からの通信が入る。

「あ、わかりました」

そういいながらも視線が周囲をさまよう。

「シンジくん、彼の輸送はUNが護衛してくれる、心配ない」

加持が横から言った。

「…そうですね。帰投します」

大きく翼を羽ばたかせると七号機は空に昇った。

 

「ところでリツコ。シンジくんはどんなふうに敵を倒したの?まさに瞬殺だったけど」

ひとまず落ち着いて手が空いたミサトはリツコに尋ねた。

「七号機のレコーダから送られて来た記録からすると、まず目標をATフィールドで拘束。

 動きを止めた上で落下のエネルギーをそのまま乗せて敵ATフィールドを破って目標に体当たり。

 最終的にはATフィールドによる剣か槍の様なものがコアを直撃したと思われるわ。

 コアの爆発で敵は完全に消滅」

「コアが爆発した割にはやけに被害が少なかったんじゃない?」

「シンジくんのATフィールドならそもそも上空からでも一刺しで敵を倒せるわ。それなのにここまで手間をかけたのは、更に敵の外側を内向きのATフィールドで囲って爆発の被害を抑えるためよ。力の大部分はそれに注いだのね」

「なーる」

「さすがはシンジくんと言うところか」

「だってシンジくんだもん」

うれしそうに加持に言うミサト。

「そんな簡単な事じゃないわ」

リツコは厳しい表情を浮かべる。

「相手は量産型のエヴァシリーズ。

 知っての通り、私たちがサードインパクト後に回収できたエヴァシリーズは伍号機から八号機までの計4体のみ。でも後の5体も残っていた可能性は高いわ。その内の1体だったんでしょうね。便宜上九号機としておきましょうか」

「それで?」

加持が促す。

「知っての通りエヴァシリーズにはS2機関が搭載され、また、驚異的な自己修復能力があると推測されるわ」

「確かにアスカにこてんぱんにやられたくせにあっという間に再起動したわね」

記録を思い出し爪を噛むミサト。

「ダミープラグの性能がどの程度かはわからないけど格闘戦では長引くおそれがあるわ。また、敵は自己修復できるかもしれないけど自分も修復できるとは限らない」

「………」

「シンジくんは良くも悪くも初号機での戦いに慣れているわ。だから急には七号機に合わせられない。機体の能力で言えば圧倒的に初号機の方が上だもの」

「なるほど、ATフィールドに始まって、シンジくんについてこれるか、シンジくんの望むとおりに動けるか、わからないというわけね」

「だから、シンジくんは短時間で片を付けるために一撃で仕留めるしかなかったのよ。そのための方法は二つ。コアを破壊するか、エントリープラグを破壊するか」

「なーる。プラグは外からは狙いづらいし、しくじれば逆にコアにあたって爆発したり、どちらも外して反撃を受ける」

「ならば、最初から爆発することを想定し周囲を囲った上でコアを狙う、というわけか」

「そう、その上で七号機で出せる力の限界を推測しATフィールドを使ったというわけ」

「やれやれ、こりゃ大変だ」

「実際、本格的な格闘をやったことがないから不明だけどMAGIの概算では量産機ではアスカの動きはなんとかサポートできても、それ以上は無理だという予測が出てるわ」

「シンジくんの通常の動きはサポートできても…」

ときたまシンジと初号機が見せた異常なまでの動きを量産機ではサポートはしきれない…

「ま、相手が一体ならここに攻めてきたって袋叩きにするだけよ」

相手がエヴァでも使徒でもミサトの口調に変わりはない。

なんであろうと叩きつぶすのみ。

「それにしても圧倒的な力の差ですね」

そういいながらマヤが仮の報告書を提出する。

一読して眉をひそめるリツコ。

「どったの?」

「0.2秒だけどシンクロ率が200%を越えてたの」

「………」

ミサトも顔をしかめる。

「大丈夫さ、初号機ならいざ知らず量産機なんかに飲み込まれるシンジくんじゃないさ」

「あんたって本当にお気楽ね〜」

「ま、一理あるわね。あまり深刻ぶるのはよしましょう。マヤ、しばらく頼めるかしら?」

「はい、先輩」

そういってリツコは出ていく。もちろんレイの様子を見るためだ。

「葛城も一度帰ったらどうだ。シンジくんなら心配ないと思うが」

「うーん、あたしもそう思うんだけどね。一人で帰るとアスカに何言われるか」

「おやおや葛城もアスカには形無しか」

「最近のアスカって妙に鋭いし、察しもいいし、嘘がつけないのよね〜」

「葛城さんみたいですね」

自席から青葉が言った。

「そういえば最近似てきましたね」

日向も追い打ちを駆ける。

「十年後には葛城さんの後を継いでたりして」

「あははは、まーさーかー」

マヤの言葉に乾いた笑いで答えるミサト。

…シンちゃんが総司令になったらありうるわね〜

 

 

「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフーフフン♪」

少年は腕を頭の後ろに回し長い足を組んでメロディーを口ずさんでいた。

「しかしいい度胸してるわね〜」

同じ車内には完全武装の兵士が10人近くいかつい顔を突き合わせて乗っている。

「一つ聞いていいかい?」

比較的まともな顔のジョニーが口を開く。

「どうぞ」

「ダミーが不完全ならなんでボーイを乗せなかったんだ?」

「もちろん僕が拒否したからです。命令に従わないとわかっているパイロットを使う人はいないでしょう?」

少年はこともなげに言った。

「あなたはなぜ拒否したの?」

「僕はシンジ君と戦うつもりはないですからね。たとえ殺されても」

断言されてジョニー達は黙り込んだ。

「あー早くシンジ君に会いたいな〜」

少年は実に楽しそうである。

「シンジって男にももてるのね」

「確かそっちの気は無かったはずだが…」

ちなみにそっちの気を起こしてシンジに近づいた数名は再起不能になって病院に送られた。

 

 

「…というわけでどうやら情報をリークしたのは彼本人のようですね」

加持が報告書を差し出し言った。ゲンドウは無言で報告書を見る。

「おそらくシンジくんが日本に帰ったという情報を聞いて行動を起こしたんでしょう」

「目的はなんだね?」

冬月が尋ねる。

「おそらくは自分の身柄をネルフに委ねるため、一種の亡命ですかね」

そういいながらデスクに手をつきゲンドウを見る。

「そして、シンジくんのそばに近づくため…」

 

「赤木博士の見解は?」

ゲンドウが促す。

「現段階において彼は人間であるとMAGIも判断しています。レイと同様に」

「………」

「おそらく彼は昔のレイと同様にシンジくんのそばにいることに安らぎを見いだしているのかも知れません。もし使徒であっても理解し受け止めてくれるだろうシンジくんに。

 使徒であったときの行動からもレイ同様自分よりシンジくんの存在を重要視していると考えられます」

「…だからこそ今の世界がある」

ゲンドウが重々しく言った。

「彼がシンジくんに敵対する可能性は極めて低いとMAGIは判断しています。ならば、エヴァを起動できるパイロットを登用するのは当然だと判断します」

「だが、万が一彼が十七ないし十九番目の使徒だとしたら?」

冬月が反問する。

「もしそうならシンジが処理する。問題ない」

ゲンドウが断言した。

「…お前がそう言うのなら、よかろう」

 

「渚カヲルをフィフスチルドレンとして再登録。後の処置は赤木博士に一任する」

「了解しました」

「フィフスがシンジ君と接触するのはいつ頃かね?」

「今日の午後には」

 

 

 

<ネルフ本部発着場>

 

VTOLのエンジンが停止すると心地よい風がそよぎカヲルの髪を揺らした。

秋風とはまだ言えないがどこか季節を感じさせる風だった。

「リリスの癒しは世界に満ちているね。この常夏の国にもやがては四季が帰ってくる。

 …心地よい風は身体だけでなく心も癒してくれる。そう感じないか碇シンジ君」

そう言うと少し離れた所にたたずむ少年を見つめた。

お互い昔とは背格好も変わったが本質的な部分は変わらない。

「………」

シンジが目で合図すると、ジョニーとジャネットは先に車に向かった。運転席では加持が興味深くシンジ達を見ている。

「もしかすると僕たちの再会を祝ってくれているのかも知れないね」

そう言ってカヲルは風が吹いてくる箱根の山並みを見る。シンジも同じ方向を見てうなずいた。

「…そうだね」

 

 

「…カヲル君」

シンジが口を開こうとするとカヲルが遮った。

「シンジ君。もし謝罪の言葉なら謹んで辞退するよ。僕はそんなものが聞きたくてここに来たんじゃないからね」

「でも、カヲル君!」

「シンジ君が変わらないのは僕にとって喜びだけどその先を聞いてしまうと僕は君を責めなければならない。そんなのは願い下げだよ」

そう言ってカヲルは目を閉じる。

「………」

「だが、君が自分をどうしても許せないと言うなら………僕が、君に、罰を与えよう。

 それでどうだい?」

シンジはしばらく考えてからうなずいた。

「罰を受けるよ、カヲル君が決めた…」

「…じゃあ判決を告げよう」

「………」

「まず僕を殺し、罪の意識に苦しむこと」

「!?」

「自分の行いを悔い、世界そのものに絶望し、己というものを嫌悪し、

 …そして、その後にその全てを、乗り越えること」

「………」

カヲルは目を開いた。

「それが僕が君に与える罰だ」

「………」

「…ああ、でも困ったな。

 これは全て既にシンジ君が自発的に行ってしまった後だね。

 仕方がないから今回は帳消しということにしよう」

カヲルはシンジに向かって微笑んだ。

「………ありがとうカヲル君」

シンジは震える声で言った。

ぎゅっと拳を握りしめる。

「どういたしまして」

再び目を閉じ風を感じるカヲル。

「…言ってみれば僕とリリスは同じさ」

「?」

「自分の思うとおりに行動するというところがね…彼女と僕はよく似ている…

 リリスは君の望むとおりにサードインパクトを起こし、今もその魂は世界を癒そうとしている…彼女は不幸だと思うかい?」

「違う!そんなことを言ったら綾波を悲しませるだけだ!」

シンジはきっぱりと否定した。

「そうだね。彼女は君の望みを叶えることが出来てきっと幸せだ、愛するシンジ君のね」

「………」

「僕も同じだ。僕は間違ったことをしたとは思わないし、もしもう一度同じ状況になったなら同じ事を繰り返すだろう。

 言っただろう?僕にとってシンジ君が生きることの方が大事なのさ」

「カヲル君…」

「リリスは自らの魂をこの世界を癒す為に捧げ、リリンとしての魂はシンジ君のそばにいることを望んだ。その結果として新しい人生を歩もうとしている」

「………」

「だが、僕の魂は以前のまま。第十七使徒のままだ。あのとき僕の魂は消滅したはずだった。だが、サードインパクトの後、僕は予備の肉体のなかにいた。この身体にね」

そういって太陽に手をかざす。

「リリスは僕が記憶を持ったままリリンとして生きることを願った。そこにどんな意味があるのかまだ僕にもわからない。ただ、僕が望むとおりに生きることを願っていると僕は思っている。

 …彼女と僕の望みは同じだ、シンジ君」

「?」

「君にまた会えて嬉しいよ、碇シンジ君」

「…僕も嬉しいよ、カヲル君」

「ふふ、ありがとう」

 

 

「やれやれシンジくんも大変だな」

シンジとカヲルが車に乗ると加持が言った。

「どういう意味ですか?」

「もてる男はつらいってことさ」

そういってカヲルはシンジの肩に手を回す。

「カ、カヲル君?」

「前にも言ったろう?好意に値するよ、好きってことさ」

「ははは、アスカに聞かせてやりたいね」

「加持さん!恐ろしいことを言わないで下さい!!」

「さっさと帰った方がいいぞ。心配してたからな」

「あなたが加持リョウジさんですね」

「おや、俺の名前を知ってるとは光栄だな」

相変わらずの調子で答える加持。

「有名ですからね、あなたの名前を聞くとみんな震え上がっていましたよ」

「おやおや、それはそれは。ま、よろしく頼むよ渚君」

「カヲルで構いませんよ。シンジ君の大事な人なら、僕にとっても大事ですからね」

カヲルの笑顔には罪がない。

「ははは、葛城にも聞かせてやりたいね」

「そうそう僕の予備はアメリカにまだ2体あるはずですから処理しておいて下さい」

さらっと流すカヲル。車中に緊張が走る。

「情報はありがたくもらうが…いいのかい?」

「ええ、僕にとって重要なのは今シンジ君にふれているこの身体だけですから」

「いやーシンジくん。もてるね〜」

「加持さん!」

「照れなくてもいいじゃないかシンジ君」

「カヲル君!!」

 

 

「………」

リツコは映像を切った。ミサトがほっと息をつく。

「やっぱり怖かった?」

「あったりまえでしょ。ま、良かったけどね。シンジくんが落ち込んだりせずにすんで…ところでリツコ」

あらたまるミサトにリツコは望み通りの答えを返す。

「録画なら心配無用よ」

途端に二人の顔がにやにや笑いに変わる。

「さっすがリツコ。いやーこれはいいわね。美少年が二人!絵になるわ〜」

「シンジくんの結婚式で再生しようかしら」

「それはいいわね〜きっと血の雨が降るわよ」

「フィフスもあなたのクラスに編入させるからよろしくね」

まっかせなさい!こんなおもしろいもん他の奴にはまかせられないわ」

 

 

<ミサトのマンション>

 

「…シンジくん、開けなさいよ」

「…ミサトさんこそ開けて下さいよ」

二人はドアの前で立ち往生していた。

今日は日曜だから学校はない。

アスカがじっと待っているだろう事は想像に難くない。

「…じゃ、二人で開けましょう」

「…そうですね」

息を吸い込んで一二の三でドアを開ける。

「「ただ…」」

開いた口が途中でとまる。

開いたドアの向こうにアスカがうつむいて立っていた。

「た、ただいま」

「ただいまアスカ…」

何とか声を絞り出す二人。

「………お帰り」

そう言うとアスカはシンジの胸に顔を埋めた。

「ア、アスカ?」

「もう少しこのまま…」

そう言ってアスカは小さく身体をふるわせた。

「アスカ…」

シンジはアスカの身体に両腕を回すと抱きしめた。

暖かい感触にアスカは更に強く頭を押しつけた。

アスカの髪を撫でるシンジ。

ミサトは二人を優しく見つめた。

 

 

 

<ネルフ官舎>

 

「ここが君の部屋だ。必要な物は大体そろっていると思うが何かあったら言ってくれ」

カヲルに鍵を渡しながら加持が言った。

「ええ、ご面倒をかけます」

「いや。じゃ、またな」

加持を見送るとカヲルは辺りを見回した。

一見普通のマンションだが各種警備体制が整っているはずだ。

「ふむ」

ふと、隣の部屋を見るとドアの前に荷物が山積みになっている。

見ているとドアが開き、健康的な肌の少女が出てきて段ボール箱を持ち上げた。

「やあ、よかったら手伝おうか?」

「え?」

少女は怪訝そうな声を上げた。

霧島マナ。只今引っ越しの真っ最中であった。

 

 

「本当にありがとう。助かったわ」

前を歩きながらマナが言った。

「どういたしまして。僕も一度引っ越しというものをやってみたくてね」

段ボール越しにカヲルが言った。

「え、ついさっき越してきたって言わなかった?」

「引っ越し会社が優秀でね。何もすることがなかったんだ」

「へえーいいわね」

 

一通り荷物を運び込むとマナがお茶を入れた。

湯飲みを受け取り香りをかいだカヲルが呟く。

「日本茶はいいね。リリンの生み出した文化の極みだ。紅茶もいいけどやっぱりこれに限るよ」

「あら渚君、ひょっとして外国帰り?」

…リリンって何かしら?

「ああ、先日までドイツの方にいてね」

「へえ私の友達にもドイツ育ちの子がいるわよ。他にも少し前にアメリカから一人帰ってきたし」

「それは奇遇だね。僕の友人も少し前にアメリカから日本に帰ってきたそうだよ」

「世界って案外せまいのね」

…確かに狭い。

「同感だね。そういえば君は一人暮らしなのかい?まだ学生に見えるけど」

「う、うん。いろいろあってね。渚君は?」

「僕は生まれたときから独り身だよ。ま、孤児のようなものさ」

「へー結構私と似てるのね。私も孤児院みたいなところで育ったの」

お互い嘘はついていない…それでも二人の間にはかなりの格差がある。

「そうかい。ところで僕のことはカヲルと呼んでもらって構わないよ。たぶん歳も同じくらいだと思うけど?」

「え、いくつ?」

「16だよ」

「同い年じゃない。…わかったわ、これも何かの縁だものね。私もマナでいいわ。よろしくカヲル」

「こちらこそ」

こうして二人は友人としての第一歩を踏み出した。

 

「しかし、女性だからというわけではないけど一人暮らしはやめた方がいいね。リリン、あ、いや人は一人では生きていけないからね」

「…うん。私も何年か前からそう思ってる。でも、学校へ行けば友達もいるしね。私、結構しぶといんだ」

片腕を持ち上げてガッツポーズをつくるマナ。

「友人、フレンドがいるということは幸せにつながる、いいことだよ。

 …僕にも大好きな人がいる。だから生きている、生きていけるのだと思う。

 …マナのおかげで友達が増えて僕は幸せだよ」

「…カヲルってなんだか仰々しいのね。もっと普通にしゃべれない?」

「その言葉、深く心に刻んでおくよ」

「だからそういう言い回しよ」

そうして二人は声を上げて笑った。

 

 

「で、その馬鹿は今どこ!?」

ミサトは携帯に怒鳴った。

「か、葛城さん」

ミサトがなだめすかしつつ、周囲に頭を下げるマヤ。

…何も職員室で怒鳴らなくたって

『心配しなくてもそのうち学校にたどり着くわ』

「転校早々、遅刻たぁいい度胸ね!」

『…遅刻常習犯のミサトからそんな言葉が聞けるとは思わなかったわ』

「ぐっ」

というような会話をリツコとしていたため不機嫌なミサトであった。

「というわけで5時限目になっちゃったけど、初日から遅刻してくるナイスな転校生を紹介するわ。入ってきなさい!」

やけに細い印象を受けるこれまた美少年が入ってくる。

教室はシンジが転校してきた日とまったく同じ惨状と化した。

「あーーーーっ!!!」

マナが立ち上がってカヲルを指さす。カヲルもマナに気づいて

「やあ奇遇だねマナ。君もシンジ君と同じクラスだったのかい?」

『マナ?』

『シンジ君?』

クラス中の視線が、座席が近いためちょうど一度に見れる二人に集中する。

「おはようシンジ君。いい朝だね」

にこやかに手を振るカヲル。

その笑顔に女子が歓声をあげる。

シンジは軽く手を振って答えた。

…もう昼過ぎよ、たくっ

ミサトは顔をひくつかせた、

「なに、マナもシンジもあの転校生と知り合いなの?」

「う、うん。でもマナとカヲル君が知り合いだとは思わなかったな」

「あたしもシンジとカヲルが知り合いだとは思わなかったわ」

とりあえず落ち着いて席に着くマナ。

それを確認してミサトはカヲルに自己紹介を促した。

「初めまして渚カヲルといいます。先日までヨーロッパにいましたがゆえあってこちらに越してきました。いたらない所もあるかも知れないけどよろしくお願いするよ」

「もうついでだから5時限目は質問タイムにするわ。何か聞きたいことがあったら手を挙げてね」

もはや授業をやる気が失せているミサト。

「はーい、マナとはどういう関係ですか〜?」

素早く手を挙げるアスカ。

「ア、アスカ!?」

「いーじゃない、別に」

たまにはからかい返したいアスカであった。

「マナとはお隣さんだよ。たまたま同じ日に越してきたので少しばかりお手伝いをさせてもらってね」

「あ、なるほど」

…どっちもネルフの官舎ということか、でも出来過ぎの気もするな

…どーせリツコあたりの差し金ね

シンジとミサトの推測は的を射ていた。

「彼女いますか〜?」

「ひょっとしてドイツにおいてきたとか?」

女子の質問攻勢が続く。

「残念ながら女性とつきあった経験はないよ。たぶんもてないんだね」

『うっそー!?』という声が響く。

「そのかわりといっては何だけど、好きな人はいます」

『えー!!』

 

…悪寒がする。

シンジの第六感は訓練とそれに勝る実戦経験で鍛え上げられていた。

が、わかっていても避けられない事は存在する。

たとえば砂漠のど真ん中で大型の弾道弾を撃ち込まれてかわせと言っても無茶だ。

ろくな目に遭わないという点では今の状況と大差ない。

 

「後ろの方に座っている碇シンジ君が僕の好きな人です」

 

一瞬、ぴしっという音がするくらい教室が固まった。

ミサトの顔も引きつった。

カヲルだけが一人にこにこ笑っていた。

そして、静寂の後に訪れたのはやはり嵐だった。

「ちょっと!どういう事よシンジ!!

 あんたいつからそんな趣味に走ったのよ!?」

「く、苦しいよアスカ!だいたいそんな趣味ってどんな趣味だよ!」

予想していたとはいえ首を締め上げられ息も絶え絶えになるシンジ。

…い、今のはかわせなかった。

「シンジ、お前がそないな男やとは思わんかったぞ!!」

「惣流や霧島だけじゃ飽きたらず男にまで手を出すのか!!」

「ちょっ相田君!その霧島ってのは何よ!?

 カヲル!あんたもいきなり爆弾発言するんじゃないわよ!」

「あれ、何か変なこと言ったかい?」

「不潔よ!不潔よ!碇君不潔よ!

 碇君はまじめな人だと思っていたのに!!!」

「ご、誤解だよ委員長…ぐえっ」

「よそ見してんじゃないわよ!!

 一体あいつとどういう関係よ!?」

「素敵…ポッ」

「こらマユミ!なに遠い目してんのよ!!

 ますますややこしくなるじゃない!!」

「シンジは惣流一筋のええ奴やったのに、いったい何があったんや」

「と、トウジ、何も泣かなくても…」

「トウジ、諦めよう僕たちの知っていたシンジはもういないんだ」

「う、う、ひどいわひどいわ碇君」

「ケンスケ!…委員長まで泣かないでよ」

 

「アスカかわいそー」

「碇君てそういう趣味だったのかしら」

「でも、どっちかっていうと受けの方よね」

「あらそうでもないわよ。碇君って案外しっかりしてるし」

「でも、絵になるわよね〜あの二人だと」

「うん。そういう趣味があっても許しちゃうかも」

「あーそこそこ不穏当な会話は慎みなさい」

そういいながらミサトも楽しそうに聞いている。

その前をすたすたとカヲルが歩いていった。

「ちょっ渚…」

 

カヲルはシンジを締め上げているアスカの横に立つと話しかけた。

「惣流・アスカ・ラングレーさんだね」

「…だったら何よ」

カヲルをにらみつけるアスカ。

 

「なーとめたほうがええんとちゃうか?」

「これは血を見るね」

「ちょっと二人とも」

「アスカさんて格闘技の訓練受けてるんですよね?」

マユミがぐっと拳を握って言った。

「何を考えてるのよ」

マナが呆れて言った。

 

「カ…カヲル君?」

締め上げられたままのシンジに微笑んだ後カヲルは口を開いた。

「惣流さん、君は…」

「何よ文句でもあるの?」

シンジを放して戦闘態勢をとるアスカ。

さすがにまずいとミサトが腰を浮かす。

「…君はシンジ君に世界中の誰よりも愛されている。そうだね?」

「!?」

「カ、カヲル君!?」

瞬時に真っ赤になる二人。クラスがどよどよとどよめく。

「シンジ君は君のためならいつでも死ねるくらい深く深く君を愛している」

「な…な…」

返す言葉が見つからず慌てふためくアスカ。

「そして君も同じくらいシンジ君を愛している…違うかい?」

…おーおー言うわ。こりゃリツコにも見せてあげたいわね〜

ミサトは高みの見物を決め込んだ。

返事もできないアスカは視線をさまよわせ、例によってシンジと視線を合わせて二人して頭から湯気を上げる。

「君たちの絆を邪魔できるものはなにもない。もちろん僕にもね。だから何も心配することはないんだよ。ただ良かったら僕にもシンジ君を好きでいさせてくれないかな?」

「な、なんでアタシに…」

「もちろん、君がOKといえば他の誰も文句は言わないからさ。それにシンジ君の愛は確かに君のものだけどシンジ君を独占するのは世界でもっとも罪深いことだよ。そうは思わないかい?」

ひたすらにこにこ笑って言うカヲル。本心から言っているだけにたちが悪い。

「どーするアスカ?」

ここぞとばかりにミサト。

「ミ、ミサト!?」

「何も難しく考えなくてもいいじゃない。シンちゃんの愛はアスカのものだってわかってるけどシンちゃんを好きでいてもいいわよねってだけじゃない。ね、シンちゃん」

「ね、と言われても困るんですが…」

心底困った顔で答えるシンジ。

「そ、そーよ」

「じゃ、いいかい?」

「じゃ、じゃないわよ…それにこれはシンジに聞くことでしょ!

「そうなのかいシンジ君?」

「そ、そうなのかな?うっ」

一同の視線がシンジに集中する。

一部の視線には殺気がこもっている気もするが。

シンジは深呼吸をすると精神を切り替えた。顔つきが真剣になり気迫がこもる。

まるで別人のようになって立ち上がったシンジを見て思わずアスカは胸がときめいた。

…ちょ、なによこの動悸は。それにしてもさっきと違って別人みたいね格好いい…はっ

「カヲル君」

「何だい?」

「…カヲル君が言ったように僕はアスカを愛しているし世界中の誰よりも大事に思っている」

そう言ってアスカを見る。

すでにアスカはゆでダコと化している。

「うん」

「でも、僕は他にも大事な人、好きな人がいる。ミサトさんや加持さん。父さんやリツコさん、レイ。トウジ達クラスのみんな。ネルフのみんな。みんな好きだし守りたい大事な人たちなんだ」

「シンジ…」

トウジが呟く。

ミサトも嬉しそうにシンジを見ている。

「カヲル君も同じだよ。僕の大事な大事な友達。それでいいかい?」

「そうだね。シンジ君のそういうところは僕も好きだよ。

 もちろんオーケーさ。これからもよろしくたのむよシンジ君」

そういって手を出す。

シンジも握り返す。

「うん」

パチパチパチ

マユミが感動して手を叩く。

するとすぐにクラス中から大きな拍手が送られた。

はじめとはうってかわって感動的な結末にミサトも機嫌を良くする。

「よーし、それじゃみんな仲良くやってね。渚君の席は霧島さんの隣よ。よろしくね〜」

「あ、はい」

「よろしくたのむよ、マナ」

「…まったく学校でまで隣とは余程縁があるのね」

「ちがいないね」

尚、シンジの言葉で舞い上がったアスカは日暮れまで現実世界に復帰できなかった。

 

 

 

チルドレンのお部屋 −その5−

 

アスカ「それにしても危ない奴だったわね」

シンジ「あ、カヲル君のこと?」

アスカ「話には聞いていたけどあんなにすごいとは思わなかったわ。気をつけるのよシンジ」

シンジ「う、うん」(何をどう気をつけるんだろう?)

レイ 「………」

アスカ「…ファースト?何やってるの?」

レイ 「…お茶をたててるの」

    シャカシャカシャカ…

シンジ「綾波って茶道の心得があったの?」

レイ 「…本を読んだの、はい」(茶碗を置く)

カヲル「ありがとう、リリス」

アスカ「あんたいつからいたのよ!?

カヲル「最初からいたけど?」

シンジ「き、気がつかなかった…」

カヲル「ATフィールドを張っていたからね。うん?どうしたんだいリリス?」

レイ 「…私はリリスじゃないわ」(微動だにせず答えるレイ)

カヲル「ああそうだったね失敬失敬」(お茶をいただくカヲル)

アスカ「…なんだか寒気がするわね」

カヲル「うーん、やっぱりお茶はいいね。リリンの生み出した文化の極みだ」

アスカ「あんた何でもかんでもそう言ってない!?

カヲル「そうかなシンジ君?」

シンジ「う、うん。たぶん言ってると思う」

アスカ「まあ今回に限っては、あってるかもしれないけど…ちょっとどうしたのよ?」

突如倒れて意識を失うカヲル。

シンジ「カ、カヲル君!?」

レイ 「…大丈夫よ碇くん。赤木博士にもらった薬を盛っただけだから」

シンジ(あ、綾波って…)

アスカ(ファ、ファーストって…)

 

 

つづく

予告

ヒト、それは18番目の使徒

全ての使徒を倒し生にしがみつくリリン

渚カヲルはヒトに何を見たのか?

高校生活をはじめた人間としてのカヲル

彼の出現はいくつもの謎を人々に与えていく

それは彼の意志なのか

それともヒトの意志なのか

マナはそんなカヲルに複雑な思いを覚えるのだった

 

 

次回、新世界エヴァンゲリオン

第六話 最後の使徒

みんなで見てね!

 




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