【新世界エヴァンゲリオン】

 

 

<翌朝、通学路>

 

「おはようアスカ、碇君」

いつものように腕を組んでやってきた二人を見つけるとヒカリは言った。

正確にはアスカがシンジの腕にしがみついているという所だが。

「おはようヒカリ」

アスカは腕をほどくとヒカリの隣に並んだ。

「おはよう委員長」

シンジはそのまま二人の少し後ろにつく。

こうして学校までおしゃべりしている二人の後ろをシンジがついていくのがいつもの通学風景だ。

以前ならトウジとケンスケが一緒だったのだが二人の家はサードインパクトの際に木っ端みじんになって今は反対方向である。というわけで以前と違って3バカトリオそろっての登校風景が見れるのは学校近くになってからだけとなった。

これから学校までシンジは物思いにふけり、呼ばれたときだけ反応する。最近は家でも寝るまではほとんどアスカが一緒にいるためこの間だけが一人きりの考えに没頭できる数少ない時間となっている。もっともアスカのガードも担当している以上警戒は怠ってはいない。今朝の考え事の題材はネルフの…

「あら、なにかしら?」

ヒカリの声で思考は遮断された。

少し先で電柱にもたれて座り込んでいる高校生らしい少年がいた。

「ウチの制服みたいね…あーっ!

「カヲル君!?」

あわてて駆け寄る3人。

カヲルは顔を上げると弱々しい声で言った。

「…や、やあおはようシンジ君。君にこんな朝早くから会えるとは幸福の極みだね。生の充実を覚えるよ」

「あいかわらず訳分かんないこと言ってるわね」

渚カヲル。あくまでマイペースを崩さない少年であった。

「どうしたの、こんなところで?」

シンジが当然の質問をする。

「いい質問だね。昨日、遅刻してしまったのでね。今日はちゃんと時間前に入ろうと2時間前に家を出たんだけど、なかなか学校にたどり着けなくてね。おまけに力が入らないので少し休憩をと思ったわけさ」

「に、2時間前…」

「と、とにかく学校へ連れていきましょう、碇君」

「うん。ほらカヲル君つかまって」

歩きながらアスカが感想を述べる。

「…つまり方向音痴というわけね。しかも超がつく」

「アスカ!」

ヒカリがたしなめる。

「事実でしょ」

「面目ないね。なにぶん出歩かない生活が長くてね。慣れない町並だとすぐ迷うんだ」

「じゃ、カヲル君ここにきてからずっと?」

「ああ、引っ越してきた日もマナにお茶をごちそうになった後散歩に出たんだけど帰ってきたときには日付が変わろうとしていたよ」

「冗談じゃないところがすごいわね…」

が、すごいのはそれだけではなかった。

 

「「「栄養失調〜!?」」」

保険医の診断を聞いて3人は驚かざるを得なかった。

「ま、そういうと大げさだけど。君、最後に食事をとったのはいつ?」

「確か冷蔵庫にはミネラルウォーターしか入ってなかったからマナにごちそうしてもらったお茶菓子が最後かな?」

「何よそれ!信じらんない!」

「よくカヲル君お腹空かないね」

…なんか妙なところだけ綾波と似てるなぁ

「それは確かに倒れるわね」

ヒカリもさすがに呆れている。

アスカはしばらく逡巡していたが意を決すると鞄を開く。

「…しょうがないわね、はい」

「え、アスカ?」

アスカが鞄から取り出したのはシンジの弁当箱だった。

「シンジの考えることぐらいお見通しよ。どうせ自分の分は無くてもいいからこいつに食わせろっていうんでしょ?」

「う、うん」

…どうしてわかったんだろう?女の勘とかいうものだろうか?

「今回だけ特別よ。そのかわり!

「な、なに?」

そ、その、お昼は私のお弁当を二人で食べるのよ…」

途端に声が小さくなるアスカ。

「う、うん」

「あ、アスカ赤くなってる」

「ヒカリ!」

「はいはい。じゃ渚君、私たち先行くから…」

振り返ったヒカリが固まる。

「ふぇ(えっ)?」

既に口一杯に食べ物を詰めて頬張っているカヲル。

「あんたってやつはーっ!!

 アタシがシンジのために愛情を込めて作ったお弁当をーっ!!」

「あ、アスカ落ち着いて!カヲル君は一応病人なんだから!!」

「そ、そうよアスカ!!」

懸命にアスカを制止するシンジとヒカリ。

「放してーっ!!こんなやつにシンジのお弁当をーっ!!」

「いやー実においしいよ。こんなお弁当を毎日食べれるなんてシンジ君は幸せだね」

「カヲル君頼むから油を注がないで!!」

 

 

【第六話 最後の使徒】

 

 

「…というわけでマナにお願いがあるんだ」

シンジは朝の出来事を説明した後、マナに切り出した。

「しょうがないわね、他ならぬシンジの頼みだし」

「え、僕まだ何も言ってないけど?」

「カヲルがまともに通学できるようになるまで一緒に登校してほしい、でしょ?」

「うん、そうだけど…どうしてわかったの?」

…アスカといいマナといい不思議だ。

成長していてもどこか抜けているシンジであった。

「センセは人がええからな」

「シンジの考えそうなことぐらい誰でもわかるわよ」

「でも、碇君って友達思いなんですね」

「そんなことないよ山岸さん」

「でも碇君のことだから食料の買い出しとか手伝うつもりなんでしょう?」

「う、うん」

…山岸さんにまで読まれている。うーん。

未だに自分が本質的にお人好しということに気がつかないシンジ。

「やっぱり優しいのよ」

「そ、そうかな?あ、アスカ、ごめんそういうことだから…」

「そういうことだから放課後一緒に帰れない、でしょ。いいわアタシもつきあったげる。本当に馬鹿みたいに人がいいんだから」

「ありがとうアスカ」

「ま、そーいうところがシンジらしいっていうかなんていうか。だから私も…」

「だからなーにアスカ?」

マナが突っ込む。

「う、うるさいわねマナこそどうするのよ?」

「ま、仕方ないわね。毒を食らわば皿まで。付き合うわ」

「ありがとう、アスカ、マナ」

そういってシンジは極上の笑顔になった。

「「うっ」」

思わず動きを止める二人。

…あ、あいかわらずね。じきに耐性が出来るかと思ったけど日々強力になっていくわ

…し、心臓に悪いわ、シンジの笑顔は。

シンジは気づかずにこにこしている。

そのころ事の張本人は保健室ですやすやと眠っていた。

 

 

 

NEON WORLD EVANGELION

Episode6: We are HUMAN! 

          And we are ANGEL!!

 

 

 

「で、なんでみんなついてくるの?」

シンジはトウジ達に尋ねた。

「なんや水くさいな」

「まだ霧島と渚の引越祝いをしてないからね」

ケンスケはカメラのズームをチェックしている。

「そういえばそうね、マナがネルフに移籍して………ねぇマナのマンションってウチと同じでネルフの建物よね?」

ふと尋ねるアスカ。

「え、そ…そうなのかな?」

「決まってるわ。…で、なんであんたネルフのマンションに住んでるの?」

ネルフのマンションということは表向きはどうあれネルフの官舎と言ってしまって問題ない。

カヲルを睨むアスカ。

「…あ」

シンジはまだ自分が大事なことを話していなかったことを思い出す。

「そういやそうやな」

「渚君もネルフの関係者なんですか?」

「ああそういえばまだ言ってなかったね」

「シンジは知ってるの?…ってそもそもあんた達どういう知り合いよ!?

「あーそうだ私もそれを聞くの忘れてた!!」

…どうせならそのまま忘れて欲しかった。

最近こういうパターンが多いなと分析するシンジ。

「これはおもしろくなってきた」

ケンスケが撮影を開始する。

「ちょっとマナ、アスカ」

「言っていいのかなシンジ君?」

一応確認するカヲル。

「…このメンバーならいいと思うよ」

「では改めて。…僕の名前は渚カヲル、マルドゥーク機関の報告書によるフィフスチルドレン。つまり、エヴァンゲリオンの操縦者ってことさ」

『えーっ!!』

 

「思い出した!フィフスってアタシの弐号機に乗った奴ね!!」

「あぁその節は申し訳なかったね。僕も心苦しかったんだけど…」

バッと離れて警戒するアスカ。

「あ、あんた確か第十七…」

「アスカ!」

慌てて遮るシンジ。

「シンジ!?」

ただ事ではない雰囲気に何事かと思うトウジ達。一人カヲルは笑っていたが…

「アスカちょっと」

「ちょ…シンジ!?」

ぐいぐいとアスカの腕を引っ張りみんなから引き離すシンジ。

アスカは足を踏ん張ったがずるずると引きずられていく。いつもと逆である。

…何よ、見かけだけじゃなく力まで強くなっちゃって!

建物の壁との間にアスカを挟むとシンジはくっつくくらいまで顔を近づけた。

「…な、何よ。そ、そんなに顔を近づけたら…」

あまりに近いシンジの顔にアスカの顔に赤みが差す。が、シンジの目は真剣だった。

「アスカ、よく聞いて」

さらに小声でアスカだけに聞こえるように話すシンジ。

「何?」

「カヲル君は…確かに第十七使徒だった」

「…だった?」

シンジは過去形で話している。

「僕が殺したんだ…カヲル君を」

シンジの瞳に深い哀しみが浮かぶ。

乗り越えたと言っても心の傷は消えはしない。

たとえカヲルが生きているのだとしても。

たとえカヲルが許したとしても。

「シンジ…」

その瞳をみるとすっと怒りが冷めシンジを心配する気持ちでいっぱいになるアスカ。

「…だから使徒はもういない」

 

 

 

 

「カヲル君は…綾波にとても似てるんだ」

シンジはもう一つの秘密を打ち明ける。

「レイと?」

「うん…ダミープラグが何で出来ていたかは聞いたよね?」

「…ええ」

アスカはうなずく。

 

レイはサードインパクト後、赤子になっていた。

それを、はいそうですか、と信じる人間はいない。

アスカはレイの秘密を教えられた数少ない一人だった。

「アスカが戦ったエヴァシリーズにはカヲル君のダミーが搭載されていた」

「!?」

忘れかけていた恐怖が蘇り思わずシンジの腕をつかむアスカ。

「…つまりそういうことだよ。

 だけどなぜカヲル君の魂が受け継がれたのかはわからない。

 カヲル君は綾波の意志じゃないかと言っている。

 僕もそう思っている。

 綾波がカヲル君を救ってくれたんだとね」

「レイが何で使徒…あいつを助けたりするのよ?」

事実は把握できてきたが理由が分からない。

「それは、たぶん、自分と同じだったからじゃないかと…」

声が更に小さくなるシンジ。

「ん?…あーっ!!レイと同じってまさかシンジを!?

「あーアスカそこまで!!」

…何でこういうときだけ異常に察しがいいんだ!

アスカの口を塞いでトウジ達を振り返るシンジ。どうやら気付かれてないらしい。

「…なるほどね」

アスカの口調が剣呑になる。

「な、なに?」

少し弱気になるシンジ。

「アタシが寝てる間にファースト以外とも浮気してたのね?」

アスカの目が怖い。

「う、浮気ってそんな…」

「言い逃れる余地はないわね。まったく、よりにもよって使徒、しかも男だなんて!!

「アスカ、かなり誤解を招く言い方なんだけど…」

五階も六階もないわよ!!道理であんな台詞がはけるわけよね!

 だって人間じゃ…」

「アスカ!!」

思わず声を大きくするシンジ。びくっとアスカが震える。

「ごめん、アスカ、でも…」

「…」

アスカも自分が何を言おうとしていたかに気付いた。

しかしわかっていても納得できない。

…そっか、私やきもち焼いてるんだ。

そのままうつむいて黙り込むアスカ。

「アスカ」

「…」

シンジはふぅっと息をはくとアスカの顎を持ち上げた。

「えっ?…!?」

シンジは身を屈めてアスカに顔を寄せる。

思わず目を見開いた後、アスカは静かに目を閉じた。

 

…あったかい、シンジの唇。

アスカの心が温かいものに満たされていった。

 

「きゃー!!」

「くー!シンジ何て真似を!!」

「シンジ大胆!」

「やるなセンセ!」

「…素敵」

驚く一同をよそにカヲルは微笑んでいた。

…君たちの心はガラスのように繊細で本当に美しいね。僕にもそんな美しい心がいつか生まれるのかな…君のようにねリリス…そしてありがとうシンジ君

 

…そうよね、心配しなくても大丈夫。シンジはアタシを…

唇が離れると残念な気持ちになるアスカ。

「…あ、アスカ。えーと」

自分でやっておいて顔が赤いシンジ。

「ま、まぁ謝らなかったのは合格よ」

照れくさいのをごまかすアスカ。

「アスカ…」

「な、何よ?」

「…かわいい」

ぼそりと呟くシンジ。

アスカはその言葉を理解するのにしばし時間を要した。

「な、何言ってんのよ!」

真っ赤になって慌てるアスカ。

「はははは、ごめん。アスカ」

「…わかったわよ。シンジが信じるならアタシも信じてあげる。でも、アタシの弐号機を使った借りはいずれきっちり返してもらうわよ」

「………」

…おまけにその弐号機を僕の乗る初号機と戦わせたなんて聞いたら血の雨が降るな。

シンジは流血の事態を避けるべく対応を考え始めた。

 

「ま、今日の所はシンジの顔を立てて見逃して上げるわ!」

アスカは腰に手を当てきっぱりと宣言した。

「それはどうも。深く感謝するよ」

「何よ、その顔は?それにみんなも」

トウジ達は赤くなった顔を見合わせた。

「あぁそれはきっと二人の愛情表現を見たためだね」

「え?」

すっかりカヲル達の存在を忘れていたがあの光景は当然見られていると気付くアスカ。

きゅーっとつま先から頭のてっぺんまで赤くなるアスカ。

「君の心はとても純粋だね、好意に値するよ」

心持ちアスカに顔を寄せるカヲル。

「は、はぁ?」

「好きってことさ。惣流アスカラングレーさん」

『どっしぇーっ!!』

「あ、あ、あんた何言ってんのよ!」

「カヲル!あんたますます混乱させてどうすんの!?」

「不潔よ不潔!不潔だわーっ!!」

「…センセも災難やな」

「…そうでもないよ。何となくこうなるだろうと思ってたから」

「…余裕だなシンジ。やっぱり白昼堂々とキスする奴は言うことが違う」

「…ケンスケ」

 

「ふーふー」

…あ、悪夢だわ。なんなのよこいつは。レイより始末が悪いんじゃないの。

「ま、まぁ落ち着きましょう。ようするにシンジを好きって言うのと同じ意味よね。友情よ、友情」

とりあえず場をおさめようとするマナ。

「そうなのかいマナ?」

「あんたのことでしょう!!」

思わずカヲルを締め上げるマナ。行動がとみにアスカに似ている。

「シンジと惣流はともかく霧島もとんだお隣さんが出来て災難やな」

「トウジはどうなんだよ?」

「ま、わしはとりあえず蚊帳の外みたいやし、仲間がふえるのは心強いわ」

 

 

<ネルフ本部 ミサトの部屋>

 

「ミサト!!」

ドアを開けて仁王立ちのアスカ。

「あらアスカ、どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないわよ!何なのよあいつは!?」

ミサトに詰め寄るアスカ。

「あいつって?」

「フィフスよフィフス!」

「あー渚君。そういやパイロットって言ってなかったわね〜」

心持ち目をそらすミサト。

…たはは、やっぱりばれたか。当然ね。

「そうじゃなくて!」

その後ろからシンジが入ってきて軽く頷く。ミサトも頷き返した。

「あー彼1回死んじゃった件?」

けろんとしてとんでもないことを言うミサト。

「でも、シンジ君から話聞いて納得したんでしょ?」

「シンジが信じてるって言うからよ!!」

「じゃあ何?…あ、そうか、ふーん」

ミサトが冷やかしモードに変わる。

「な、何よ?」

「シンちゃんと仲がいいのが気にくわないんだ〜」

「ア、アタシは別に!!」

「大丈夫さアスカ」

「あ、加持さん」

「シンジ君に限って心配無用さ。それに、白昼堂々、天下の公道でシンジ君にキスしてもらったそうじゃないか。それでも不満なのかい?」

「あ、な…」

またしても真っ赤になるアスカ。

「へーそうなの?やるわねシンちゃん」

「…ははは」

シンジはどうしていいのかわからず頭をかく。

「よかったわねアスカ。渚君よりアスカの方がいいって行動で示してもらえて」

アスカには言い返す言葉がない。

「でもシンジくんと渚君は一緒に風呂に浸かって同じ部屋で寝たことがあるくらいだし」

「ぬわぁんですってぇー!?」

「ネルフ本部の大浴場だよ!

 男同士なんだから風呂ぐらい入ったって問題ないだろ!?」

「それともアスカもシンちゃんとお風呂に入りたい?」

「え?」

「一緒の部屋どころか同じベッドの中で寝ても別にOKよん。あ、その先はあたしのいない時だけにしてね」

「な、何言ってんのよミサト!」

「あーら照れなくてもいいじゃない。

 アスカのお願いならシンちゃんはいつでもオーケーよ、ね?」

「ですから…ね?と言われても困るんですが…」

 

 

<マナの部屋>

 

「いやーおいしかったよ。すまないねマナ」

カヲルは笑顔で言った。

「ぜんぜんすまなそうな顔じゃないわね」

そういいつつマナは湯飲みをおく。

食料他を買い込んだもののカヲルが生まれてこのかた料理をしたことがないと判明。

やむを得ず今日の所はマナの家でごちそうになると決まった。

ちなみに腕を披露しようとしたシンジは、

「アタシの弁当をあげただけで十分よ!」

と言うアスカに連行されネルフ本部へ向かった。

「しかしカヲルって本当に人騒がせね」

「そうかい?」

とりあえず手伝わせてみたところ、ただやったことがないというだけで教えればすぐに出来ると判明したのでマナから数日基本レクチャーを受けることになっている。

「とりあえずお礼を言っておくよ。いろいろありがとうマナ」

「別にいいわ。ネルフに行ってないときは割と暇だし」

シンジの場合と違ってマナは見習い中である。普通に学校に通うかたわら少しずつ勉強し大学卒業後正式に再審査を行いネルフ配属となる。そのためネルフに行くのは週に数回。学習塾と同程度である。

「そうかい。ところで一つ聞いていいかい?」

「何?」

「君もシンジ君が好きだね」

 

それは質問でなく確認だった。

反論しようとしたマナだが、カヲルの瞳を見ると反論する気が失せる。

…不思議な瞳。本当に変な奴ね。いつもいつも笑ってて。

「…まあね。もっともあたしは身を引いちゃったけど。せめてもの救いは負けた相手がアスカということね」

マナは素直に言った。

「そうかい…」

カヲルはそれ以上何も言わずマナを優しく見つめた。マナも静かにお茶を飲んだ。

 

 

チルドレンのお部屋 −その6−

 

アスカ「………」

レイ 「…カエルみたいな顔してどうしたの?」

アスカ「あんたねぇ!!」(思わずレイの顔を左右に引き伸ばす)

レイ 「ひ、ひふぁい(痛い)」

トウジ「ま、複雑な心境なんやろ。変な奴が現れて気にくわんがおかげでシンジとも仲良う出来る」

カヲル「いや、リリンの心は本当に繊細だね」

トウジ「…お前も天然はいっとるな」

アスカ「ちょっとファースト!

    なんでひと思いに毒殺しなかったのよ!?」

レイ 「だって…」

アスカ「だって、何!?」

レイ 「…碇くんが悲しむもの」

アスカ「………しょうがないわね。死なない程度に殺しましょう」

シンジ「アスカ、それ日本語になってないよ」

アスカ「シンジは黙ってなさい。とりあえずロンギヌス…の槍は殺しちゃうから駄目か」

カヲル「硬化ベークライトで固めるというのはどうだい?」

アスカ「いいわね、ジュラルミンケースに入れて芦ノ湖に沈めようかしら…

    あんたのことでしょ!あんたの!!」(カヲルを締め上げる)

カヲル「ははは、そんなに首を絞めないでくれないか。ヘヴンズドアが見えそうだよ」

トウジ「渚の奴、結構余裕あるな」

シンジ「見えない程度にATフィールドを張っているみたいだよ」

レイ 「………」(どこからともなく黒いシマシマ模様のボールを取り出す)

シンジ「あ、綾波、それは…」

レイ 「…どいて」(ボールをカヲルの上に投げ上げる)

アスカ「ちょっ!」(あわてて逃げる)

カヲル「おや不思議だね、だんだん床が近づいて……」(そのまま床に消える)

シンジ&アスカ「「ディ、ディラックの海!?」」

レイ 「…これなら死なないわ」(にっこりとシンジに微笑む)

 

 

つづく

 

予告

上洛、東京…日本人の心に深く根付くその都の名は京都

その地に辿り着く、ただそれだけのために

人々は血を流し戦うことさえあった

シンジ達が初めて訪れた京都

そこは彼達にとっても戦いの地なのか

男達は古都に戦いしか見ることはできないのか

女達は彼らに掛ける言葉を持たないのか

シンジとアスカは二人何を思うのか

 

 

次回、新世界エヴァンゲリオン

第七話 過去の予感

次回もサービスしちゃうわよん!

 




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