EVA Police Force

〜碇シンジの苦悩の始まり〜

 

 

 

今日、新第三東京市警察署刑事課に一人の新人刑事が配属されてきた。

 

「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしくお願いします!」

 

女刑事だった。街を歩けばだれもが振り返るであろう見事な容姿。一同から

歓声が聞こえる。その中から突拍子も無い声が2つ。

 

「「アスカー?!」」

 

一人は黒髪の青年。なかなかの美男子。

もう一人は銀色にうっすらと青みがかかった髪のかわいいというタイプだろうか

こちらもなかなかの美女である。

アスカが声の方を見ると、見覚えのある顔が2つある。

 

「シンジ!レイ!」

「そうか。シンジ達とは警察学校で同期だったな」

 

そう言ったのはこのここの所長でありシンジの父でもある碇ゲンドウである。

ゲンドウのほうをチラっと見て笑みを返しシンジとレイの方へ走り出す。

 

「ひさしぶりっ!シンジ、レイ」

「ホントひさしぶりだよ。どうしてた?」

 

シンジが問う。そこへ邪魔する一言。

 

「というわけだ。みんなアスカ君をよろしく頼むな。それからシンジ!」

 

突然所長に呼ばれて焦るシンジ。

 

「はっはい!」

「アスカ君はおまえにまかせる。しっかりな!。話は終わった、それじゃ仕事に戻れ」

ニッと怪しい笑いを投げかけるゲンドウ。シンジの背中に悪寒がはしる

 

「(なっ何たくらんでるんだよー)」シンジの心の叫びであった。

「で、どうしてここに来たの?あなた第六分署でしょ」

 

レイがアスカに話し掛ける。

アスカの顔が自信たっぷり自慢げな笑い顔になる。

 

「えっ。ききたいのぉ〜?じゃー教えてあげよう。実はね指名手配犯を8人もお縄にしてやったのよ。」

「へー。すごいじゃないか」

 

と、誉めるシンジ。

 

「あたりまえじゃない!でね、ご褒美くれるっていうからここに移動させてくれって頼んだのよ。」

「なぜ?」

「なっナゼってアンタやシンジがいるからに決まってるじゃない」

「そう」

「レイ。変わってないね、その妙に冷たいところとか。」

「そうかしら?あまりわからないわ。」

「シンジはどう変わった?」

 

話し掛けられたシンジだったが、先のアスカの言葉のせいで完全に意識が飛んでいた。真っ赤な顔をして。

レイがシンジの顔の前で手を振って見るが反応が無い。

 

「どうしたのシンジ…」

「…私には…わからない」

 

 

アスカは僕に会いたくてここに来たのかな。だって今アスカ本人がそう言ったじゃないか。

どうしたらいいんだろう。なんて答えればいいんだろう。僕もアスカが好きだ。好きだ、好きだ。

なんだ、もう答えが出てるじゃないか。

言っちゃうよ僕。アスカ。アスカ。

 

「僕も君が好きだ!」

 

そしてシンジが目の前の天使に抱きつく。

 

 

………………。

 

 

「変態だったのかおまえは」

 

無慈悲な言葉がシンジの脳に届いた。まったく予期していない声。みょーに図太い低い声。

 

「え?」

 

シンジが目を開けるとそこにはゲンドウ所長の顔があった。

 

「私はこれから会議なのでな、おまえみたいな変態にかまってる時間など無い。そこをどかないと公務執行妨害で逮捕するぞ!」

 

叫び声をあげながら飛び離れるシンジ。信じられないと驚愕していた。

 

「シンジ…おまえには失望した。変態だったとはな…」

 

所長は捨て台詞を残し部屋からでていった。後ろをついて行く副所長の冬月も一言残した。

 

「世間の風は冷たいらしいぞ。頑張れ」

 

口調はやさしかったが、目が差別していた。

暫しの沈黙が世界を覆った。

 

「ちがうんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

空間を裂くようなシンジの叫びは、誰の心にも届かずにむなしく部屋をこだました。

突き刺すような白い視線がシンジを串刺しにし、真っ白になっていた。

 

「燃えたよ、燃え尽きたよ、真っ白にね…」

 

消え行くともし火を前に交通課婦警のヒカリがつぶやく。

 

「不潔…」

 

シンジという名のろうそくの炎は完全に消えた。


(つづく)


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