死者の道 第十二話

 

「天国へ行ける!」

 

 

 

 

いつまで二人で抱き合っていたのだろう、

時間なんかどうでもいい、

時計を考えたやつは最も罪深い人間だ、

僕達は信じあえる、僕達は傷つけあえる、

だから恋人になろう、

世界中が祝福してくれないけど、

きっと世界でいちばん素敵なくちずけができるよ、

シンジ、、

なに、

私達、弱いね、

うん、でも強い人間なんていないよ、

 

 

 

「もう大丈夫?」

「うん、、シンジは?」

「僕も大丈夫だよ、」

二人は長い静かな旅から現象界に戻ってきた、

退廃的なキスも、もう過去になっている、しかし、どれほど過去のものになっても、永遠のキスだった。

「へへ、、シンジの目、、赤いね、」

「アスカの目も赤いよ、」

二人ともウサギの様な赤い目をしていた。

「小さな綺麗な湖があるんだ、、」

「湖?」

「そう、何重にも光が屈折して複雑な色彩を生むんだ、、、生きてるもの全てを引き込み、そこに体を沈めると綺麗になれる、僕の体をそこで綺麗にしたかったんだ、、」

「だから、、その湖で自殺したの、、」

アスカの言葉にシンジは黙ってうなずく。

「アスカはアレルギー持ちなんだよね、」

「そうだけど、それがどうかしたの?」

「レイは僕らの世代には珍しく体にアレルギーとかないし、身体的な障害もない、そう思ってたんだけど、実は、、、、」

アスカはゆっくりと話すシンジの言葉を黙って聞いている。

「レイの瞳は生まれつきレッドなんだ、、、」

「え、、だっていつも、」

「黙っていたけど、普段はカラーコンタクトしてるんだ、」

「本当に、、、レッドなの、」

「うん、、、レイは自分の瞳が大嫌いだから、いつもレッドの瞳を隠してるんだ、、、」

「そうなんだ、、」

「でも、レイはレッドの瞳を隠せる、アスカのアレルギーは薬でなんとかなる、、でも僕は、」

「シンジも生まれつきの何かあるの、」

「いや、、僕は身体的に何も障害はないんだ、本当に僕達の世代には珍しいけれど、きっと母さんがとても綺麗な体と血を持っていたんだと思うんだ、、」

母親の話しをするときのシンジはうれしそうな瞳をする。

「そんな、綺麗な体をもらったのに、、、僕はその体と心を汚したんだ、、あのときから妖精は見えなくなった、、僕の手に乗る雪はすぐに溶けて消えてしまう、、もう雪の妖精を暖めることはできないんだ、」

「そんなことないよ、どんな事があってもシンジの瞳は純粋なままよ、私の心を、他人の心を純粋にしてくれるじゃない、、シンジの歌声とシンジの信じてる世界は純粋なままよ、」

アスカは必死にシンジに話しかける、だがシンジの心から過去の色を消す事はできない。

「シンジ、、この私が自分から彼女になりたいって言う男は世界でシンジだけ、、だから、、そんな事、、、自分が汚れてるなんて、、、お願い、言わないで、」

アスカも祈る様に話す。

「うれしいよ、、アスカ、とても嬉しい、、、ハートにひびが入るほど素敵な事だよ、アスカにそんな事いってもらえるなんて、、、普段じゃ絶対言わないのにね、」

少しだけシンジが笑う。その笑顔につられてアスカも少しだけ笑う。

「なによ、、私だって本当は、、、、素直で、、、」

「素直で世界で一番愛される瞳をもった女の子だよ、アスカは、」

シンジの言葉に頬を少し赤くするアスカ。

「でも、、、僕の体はもう、自分の物じゃないんだ、」

「自分の物じゃないって、、、」

「湖に沈んで、事前に意識がなくなったんだと思うんだけど、、、、、落ちていく自分を自分が見ているんだ、、、そして僕にいったんだ、、」

アスカはシンジの言ってる意味がいまいちわからなかった、

「君の体を取り替えてあげる、さぁ、エヴァの心と鎧をつけるがいい、、、ってね。」

 

 

 

 

                                                

レイはベットの上で上半身を少し起こした状態で呆然と空間を見ていた。

何故かうつろな瞳で、口を少し開けている。

「レイ、何か飲む?」

ミサトが軽い感じで話しかける。しかし、レイは反応しない。

「ちょっと、レイ、聞いてるの、」

ミサトの手がレイの体に触れた瞬間、レイの体が大きく震える。

「ご、、ごめんなさい、、、何もいりません、、」

「そう、ならいいけど、、、」

ミサトはその反応を見て満足そうに不気味な笑みを浮かべる。

(まぁ、あれだけ調教しておけば、レイもしばらくはおとなしくなるでしょう、)

にやにやと笑っているミサトを見ているマヤが、

「それにしても葛城さんの???に、さすがのレイも懲りたようですね、」

「あら、やっぱり一番効いたのはマヤの????じゃない、」

「え〜、葛城さんの???にはかなわないですよ、」

「まぁね、もし自分があんな事されたら、恥ずかしくて死んじゃうかもね、」

「「ははははは!」」

恐ろしい30代女性の想像を絶する責め?にレイはすっかり大人しくなっていた。

そして、地獄のような会話で高笑いする二人とは対照的にレイは自失呆然としていた。

(シンちゃん、、、シンちゃん、、、、、、そうだ、シンちゃんに慰めてもらおう、シンちゃんならアタシの体、綺麗にしてくれるわ!)

そう思いベットから立ちあがるレイ、そして部屋から出て行こうとした時、

「あら、レイ何処にいくの、外出は一切禁止よ!」

ミサトの冷たい一言が背中に刺さる。

「そうよ、レイ、明日の仕事まで、レイは私達と一緒にいるのよ、」

マヤが恐ろしい笑顔と笑っていない瞳で、レイの肩に手を置く、

「、、、、、はい、」

今のレイには逆らう気力はなかった。

「そうよ、そうやって素直にしてれば、もう???な事や?????な事されずに済むのよ、」

レイには、耳元でささやくマヤの笑みほど恐ろしい物はなかった。

だが、レイの心のショックもだんだん薄れはじめていて、

(くそ、、、シンちゃんに体を綺麗にしてもらったら、、、憶えてろよ、ばばぁどもが!)

心の奥でそう叫んでいた。

やっぱりレイを調教するのは一筋縄ではいかなかった、、、

 

 

 

                                                

ノーマとケイが訪れた湖を別の人物が見つめていた。

月の光だけで輝く神秘的な光、

男と女は風が木々に擦って起こす言葉に耳を傾ける、

「心の旅、ですね。過去を懐かしんでいるのですか、」

「違う、過去は未来の為にあるだけだ、」

「未来も過去の為にあるんですか、」

「そうだ、過去の代償を未来で払わなくてはならない、」

「その代償がシンジ君なんですか、その未来がユイさんの魂を閉じ込めてるんですよ、」

「だが道の先にある扉を開けなければ、人類に未来はない、、」

「ユイさんとシンジ君が天国にも地獄にも行けなくてもですか、全ての魂は流転します、そして、いずれは涅槃か地獄の様な現世に戻ります。でも、ユイさんとシンジ君の魂はどちらでもない世界、まさに空の世界に留まり、世界の苦痛を救い、その代わりに、人類全ての悲しみと絶望を背負う事になってもですか、」

「苦しみをただ取り除けばそうだろう、だがシンジが望む世界が彼らの思う世界とは違うかもしれない、」

「憶測で話しをするなんて、碇教授らしくないですよ、」

「憶測ではない、そのためにアスカ君やレイをつけてあるのだ、」

「わざわざカオル君まで用意した、」

「そうだ、シンジの自殺は彼らの計画だったのか、今ではわからん。だが、今彼らが行おうとしている事は明確にわかる。」

「どうして、湖の底からシンジ君を助けた後、いっしょにいてあげなかったんですか?」

「その質問は答える必要があるのかね、」

「いえ、単なる興味本位です。」

「そうか、、、」

碇ゲンドウは湖の光をサングラスに反射させながらしばらく見つめていた。

「私の魂は本来の道を外れた、、」

「でも、一時的にでも世界を救いました、」

「いや、チベットのあの蒼い花は世界を救う事などに使うべきではなかった。あの花は純粋な心を取り戻すために、あのままあの山の上で静かに咲いているほうがよかったのだ。あの花から採れる特殊な成分がダイオキシン性のガンの特効薬になる事を、科学の勝利と勘違いした西洋の合理主義者どもを喜ばせる為に使用するべきではなかったのだ、」

「ユイさんが拒んだからといって、世界中が拒んだわけではないですよ、」

「ユイが私に言った言葉、、、“世界で一番綺麗な花は、人類を救いません、純粋な心を取り戻す事だけが世界を救えるのです”」

「その為に、この花は使うべきだと、」

「結果として世界中が中国、インド、チベットなど西洋文明を受け入れず、独自の道を歩んだ文明を殺してしまった。西洋の合理主義者たちが食物の新たな種子を求め、あらゆる自然を破壊していった。世界中のプラトン・ハンターと呼ばれる食物の種子を研究している人間が、新たな種子を発見するたびに、新たな悲しみを作っていった、、、、」

「そして、世界中の種子を集め、保存し、更なる改良を加え、世界中の自然を穀物を操る組織が誕生したというわけですね、」

「そうだ、彼らの合理主義こそ世界を滅ぼすとも知らずに、、、」

「人間が人間を救えないなんて、、、」

「だから、シンジの魂が必要なのだ、」

ゲンドウとリツコは不思議な光を放つ湖を眺めていた。

まるでその光は心を見透かすように、輝いていた、

そしてその輝きが不純な心を突き刺すようで、リツコの心は痛がっていた。

 

 

 

 

                                                 

シンジの話しを聞いてるうちにアスカはわからなくなっていた。

(自殺したのは、、、シンジだよね、でも、、、沈んでいくシンジに話しかけたのも、シンジだよね、それで、シンジに体を取り替えてあげたの、、、、なに、それ、、、)

シンジの話しはアスカの常識的な感覚では理解できないものだった。

そんなアスカの心がシンジにはわかったのだろうか、少し微笑みながら話す。

「ふふ、変な話だよね、、、レイといっしょにバイクで死にそうになった話しはしたよね、」

「う、うん、、」

「その時は何の意識も無かったんだけど、、、自分で湖に沈んでいった時には、、、」

「それを見ている第三者がいたわけね、、」

「、、そういう事になるね、、、」

アスカには不思議な話しだったが、とにかくシンジの言葉を信じるしかなかった。

シンジは少し疲れたのか、ベットの上に座る。片足をブーツを履いたままベットに乗せる。

「あんまり、信じなくていいよ、僕もあまり信じていないから、」

優しい笑顔で話す。

「変だよね、自分の体が自分のものじゃないなんて、、」

寂しそうに自分の体を眺める。その一方でアスカは複雑な表情をしている。

「シンジ、、本当に私に信じてもらわなくていいの?」

「え、、、いや、、、、、」

「アタシは信じるよ、シンジの言葉を信じる。だから、、そんな事言わないで、、」

アスカもシンジの横に座る。そして、シンジの細く、長い足をまたぐ。

「ねぇ、シンジ、、、」

「な、、なに、、」

シンジの顔の前に、アスカの顔が近ずく。

「見て欲しい、、、シンジだけには、、」

アスカは着ているシャツをいきなり脱ごうとする。

「ちょっ、、ちょっと待って!ア、、アスカ!」

「なに、」

「い、いきなり、、、その、、」

「大丈夫、シンジに見せたいのは、これ、」

アスカはシャツを半分だけめくり、胸のすぐ下にある大きな傷後を見せる。

「ア、アスカ、、、」

シンジの目の前に、白いアスカの肌に何針も縫った傷跡がある。

思わず美しい傷跡にシンジは息の仕方を忘れた、、、

「この傷ねぇ、、ママがくれたんだ、、」

アスカは寂しそうにつぶやく。

「4歳の時に、、ママが私を殺そうとしたんだ、」

「どうして、、、」

「愛してるから、だから私の存在を消したかったの、誰よりも私を必要としたから、自分を保てなかった、」

アスカは自分の傷を優しくなでる、

「ねぇ、シンジ、」

「うん、」

上を向き、アスカの蒼い瞳と目を合わせる。

「この傷、知ってるの、ママとシンジだけだから、、、」

「うん、」

「私も自分の体じゃない気がするんだ、、」

「うん、、」

「だけど、愛してくれるよね、シンジは、」

「うん、」

「シンジは愛を求めてなくても、私とは違う道を求めていても、私を必要としてくれるよね、」

「うん、アスカは必要だよ、僕が生きてくうえで、」

「本当に、」

「うん、でも、アスカこそ天国に行けないかもしれないよ、、、」

「天国が素敵な場所だなんて、勝手に誰かが決めただけよ、」

「そうだね、僕達は地獄でも楽しめるかもね、」

「天国でもなく、地獄でもない、素敵な世界に行こう、シンジといっしょなら、、、、、」

アスカはシャツを全部脱ぎ、シンジの頭を自分の体に沈める、、

シンジもアスカの肌を腕で感じる、、

静かにベットに沈む二人は感じている、

いつか、教えてもらえる日がくる事を信じて、

天国の住所を、教えてくれる日が、、、

きっと二人に訪れることを、、、

 

 

 

 

                                                

次の日の朝、ミサトたちと二人がホテルのレストランで朝食をとっていた。

結局レイはミサトの部屋で一晩を過ごした。そのおかげで、アスカとシンジは静かな夜を過ごせた。

カオルもいつのまにか自室に帰ってきていたが、シンジはアスカの部屋に居た為いつ戻ってきたのか誰も知らない。

誰もが何か心の中に言葉を押し込んで食事を取る中、たった一人、満面の笑顔を浮かべている少女がいる、

「シンジ、オレンジジュース飲む?そういえば、バターよりジャムのほうが好きなんだよね、私のジャムあげる、ほら、かして、パンに塗ってあげる、、」

シンジの横に座るアスカはまるで新婚のように振舞う。(新婚でもこんな夫婦いないよなぁ、)

シンジは多少困った顔をしているが、アスカの言いなりになっている。

隣のテーブルのミサトはパンをくわえながら、黙って事の成り行きを見ている。マヤもアスカの態度の豹変ぶりに驚いている。今まで、確かにシンジのことが好きだといっても、どこかに照れがあり人前で直接的な行動にはでなかったアスカが、周囲の事など気にせずシンジに絡み付いている。

「マヤ、あの二人、、、まさか、、、」

「大丈夫でしょ、シンジ君もアスカもそこまではそう簡単には行けないでしょ、」

「そうね、二人とも純粋すぎるから、なかなかそこまでは行けないでしょうね、」

「でも、アスカのなかで何か変わったみたいですね、」

マヤはアスカの表情を見て、何かが変わった気がしていた、

「シンジ君、うれしそうだね、」

カオルが冷やかしを入れる。

「そ、そうかい、、」

「そりゃそうよ、私といっしょに食べてるんだもん、シンジも嬉しいわよね、」

「う、、うん、」

カオルはシンジと同じテーブルな為、目の前の二人の行為をずっと見せ付けられていた。

「昨夜、二人っきりで何してたの?」

「カ、カオル君、、何も、、してないよ、ほ、本当に、」

「どうしてそんなに焦るんだい?」

「べ、別に、あ、焦ってなんかいないよ、、」

「ふ〜ん、、、、、」

含み笑いを浮かべるカオルの瞳をシンジはまっすぐ見れない。

そんなシンジの気持ちとは関係無くアスカはシンジに絡み付く。

「ア、アスカ、、あまり、くっつかないでよ、、」

「どうしてよ、昨夜はあれほど肌を感じあったのに、、、」

ガチャン!!

隣のテーブルで突然大きな音がする。

3人が振り向くとミサトの前で一言も話さずに黙って食事をとっていたレイが起ちあがっていた。

拳をかため、細かく振るえている。水色に染めた髪の奥にある瞳は、シンジの方を睨み付けていた。

「レ、レイ、、、、、」

シンジは恐ろしい笑顔と鬼の目で睨むレイに恐怖を覚える。

「なによレイ、私とシンジは愛を確かめ合ったのよ、もう邪魔しないでよ、ね〜シンジ。」

「い、いや、、レ、レイ、、ちょっと、、」

右手にナイフ、左手にフォークを握り締め、ゆっくりと近ずくレイ。

アスカが絡み付き、逃げるに逃げれないシンジは、言葉を忘れ蛇に睨まれた蛙状態になっている。

「シンちゃん、、、、どういう事、」

「お、落ち着いて、レイ、僕の話しを聞いてよ、」

「何も話しする事無いわよ、シンジと私は恋人同士になったの、」

「ア、アスカ!」

アスカはシンジに抱きつき勝ち誇った様にレイを見上げる。

「ふ〜ん、恋人になったんだ、、、よかったわね、、、」

ニヤ〜と笑う口元にとてつもない恐怖を感じるシンジ。

「シンちゃん、、、」

「は、はい、、」

「今日のリハーサル、楽しみね、、、、、」

「え、、、」

「どんなお仕置きしようかな、昨日ミサト達から新しいお仕置き教わったから、ホント楽しみだわ、、、、」

そう言葉を残し、不気味な笑い声を残しレイは去っていく。

「大変だね、シンジ君、」

カオルは面白そうに見ている。

「、、、、、もう、慣れたよ、」

 

 

 

 

                                                 

1000人近くはいるかもしれない、

レコードショップの7階にあるホールには様々な人間がところ狭しと立っている。

小さなステージ上には椅子が数個と、バックには大きなスクリーンがアスカの過去のシングルの映像を流している。お客の半分近くがタレント・アスカのトークショウが目的だった。しかし、残りのお客は明らかに、アスカ目当ての客とは違い、容姿は皮のパンツに、黒いブーツ、腕に刺青を入れた少年、少女達、つまり、シンジたちを目的とした子達だった。

関係者入り口でマヤとミサトがドア越しに会場を覗いている。

「すごいですね、地方の単なるトークショウなのに、」

「まぁね、アスカは当然としても、思ったよりシンジ君たちのファンが多いわね、」

「そうですね、まだ入場していないお客のほとんどがシンジ君達目的みたいですよ、」

「そう、レコードのセールスも順調だし、プレス関係もかなり協力的になってきてるわ、」

「今回の地方ライブがうまくいけば、一気に全国区でブレイクするかもしれないですね、」

「ううん、“かも”じゃなくて、絶対いけるわ、間違いなく。」

ミサトは埋まっていく会場を見ながら改めて思う。

アスカのファンの子達とは違い、シンジ達のファンの子は求めている、シンジの歌声を、不思議な世界へ行ける鍵をもらおうとしている、たとへ単なるトークショウだとしても、

(シンジ君、一曲歌わないとだめかもね、)

 

「単なるトークショウなのに、よく来るわね、」

「アスカ目当ての人がほとんどじゃないの?」

「まぁ、それは当然として、シンジ達のファンもけっこういるんじゃない、」

「そうかなぁ、」

「大丈夫よ、一応メインは私なんだから、あんたは気軽にしてれば、」

「うん、」

そう言うアスカだが、アスカにはわかっていた。

前の方にいる客はアスカのファンだが、明らかにシンジ達のファンの方が多い事を。

シンジの事は好きだ、だが、仕事や才能といった事となると敵対心を隠せない。

アスカの心は複雑でいた。

「それではイヴェントのほう、時間どうりに始めさせていただきます!」

「よろしくお願いします!」

スタッフの声が上がる。

「ねぇ、シンちゃん、、、、、」

「うん、」

ステージ脇で出番待ちするシンジの後ろにいたレイが小声で呼ぶ。

「一つだけ教えて、、」

「何を?」

「昨夜、アスカと、、、、その、、、」

今朝の食事の時以来、レイは一言もシンジとは言葉を交わしていなかった。それどころか、視線すら合わせ様としなかった。シンジはしばらく放っておこうと思い、シンジから言葉をかけてもいなかったのだが、レイの方がそんな状態に痺れを切らした。

「本当に、、、、」

「何もないよ、アスカとちょっと深く話しただけで、」

「でも、お互いに肌を、、、、って、」

「それも、嘘ではないけど、、、、レイが思ってるような事は何もないよ、」

俯き不安そうにしているレイを、優しく見つめるシンジ。

「大丈夫、僕は誰のものでもないよ、」

「でも、恋人だって、、、」

「うん、でもレイも僕のたった一人の家族じゃないか、永遠に消えない、家族なんだ、、」

「家族、なの、、、」

「うん、、、いつか言おうと思っていたんだけど、、、」

「なに?」

レイは不安を消し去りたい気持ちで、すがるようにシンジの言葉を待つ。

「実は、、、」

シンジは少し照れたように視線をそらす。

「似てるんだ、レイが、とっても、、、、」

「誰に、」

「、、、、、、僕の、母さんに、、、、」

 

レイの頭に浮かぶ、天国の住所、それはシンジのいる場所かもしれない、、、、

 

 

 

                                                

はじめまして、でいいのかなぁ?

Rudyといいます。

もしこの「死者の書」を読んでくれてる人がいたら、今ここで、心を込めてお礼を言います。

ありがとう、

実はあまり後書きとか好きではなく、作品の感想は読んでくれた人の捕らえ方にまかせておくのが一番いいと思っていたのですが、少しだけここで話しをさせてください。

暗い話しだと自分でも思っているのですが、基本的にエヴァ本編と同様に「人間が生きる」という事はとても苦しみを伴うんだ、という事を中心に考えています。それプラス、これは本編では確認できなかったのですが、人類の未来は西洋中心世界だけが未来を作る、という発想を否定していています。

多少かわった思想を持った僕が作るこの作品は、エヴァという作品とブランキージェットシティーと多少の僕の個人的体験をとりまぜた、狂った世界です。

いままで暖かいメールを送ってくれた方々、本当にありがとうございます。

もう少しこの物語は続くと思いますが、できれば最後まで付き合ってもらえると嬉しいです。

 

もし、(いないと思いますが)シンジ君達への希望などありましたら気軽にメールください。

それでは、今後もよろしくお願いします。

 

最後に、DARUさん、こんな稚拙な作品を掲載いただき心から感謝しています。

 

管理者:いえいえ、とんでもございません。このように作家性のある作品を掲載できることは私にとっても非常な喜びであります(^_^) 今後ともどうかよろしくお願いします。

 

第十三話へ続く



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