死者の道

「いくらか未来が好きになる、」

 

 

 

死体、死骸、屍、

全て魂があったことは過去の事である、

なぜ単なる有機体になってしまったのか、

理由がある、そう死という出来事を通ってしまったからだ、

どんな生き物も死という運命は避けられない、

人間が脳を発達させ、生命の神秘について思考をはじめた時から、

文化を持ち、社会を持ち、個人と他人を意識し始めた時から、

終わる生命を思考する生物に進化した時から、

死を人間社会から追放したんだ、

だが、もっと身近なものだったはずだ、

誰もが現世での終わりをゆっくり考え、それに備えていた、

心も精神も体も未知の世界への旅立ちを考えていた、

だが、人間から死を離した人種がいる、

そう、肌の色の違いを人種の違いとみなす、全てが合理的に、画一的にできてる世界だと信じてる、神の名を口にしながら異教徒を絶滅する、そして科学的領域が宇宙を征服する日がくると信じてる、

そんな人種が世界にはたくさんいて、その人達は死を全ての終わりとしてしまった、

死こそが敗北、死は弱者、死に至る苦痛は最も苦しく、耐えられないほどの苦痛である、

故に死は最も人間が恐れる行為、避けられないが現実的に捕らえることはタブー視されてきた、

そして、身近な死は闇の世界とされ、死は悪魔の行為とされた、

死神という創造物まで作ってね、

 

シンジ君、

君はどう思う、

死は終わりかい、

死んでいく生き物は本当に悲しいのかい、

この世界から消えることは辛いことなのかい、

もう、僕達は疲れた、

どんな自由も存在しない事に気がついた、

だって魂の存在すら自由にできないんだ、

良く言うだろ、最後の自由は自殺だと、

でも、それは嘘さ、

自殺しても魂の束縛からは逃れられない、

輪廻転生が待ってるだけだった、終る事はないよ、

だから本当に終わる時を待っていた、

もう一万年以上かな、2万年以上かな、

忘れてしまったよ、

君が勧善音菩薩でも、全能の神でも、恐怖の大王でも、なんでもいい、

僕の魂を解放してほしい、

人間でいるのに、疲れたんだよ、、、

 

 

「ケイ、、、」

ノーマは呆然と立ち尽くすシンジに話しをするケイを見ている、

ケイも悲しいとか疲れるとか、感情を話すんだと思った、

純粋意識、、、、どんな概念もイメージも本物だと思わず、常に真実だけが存在する様に話す、

それが、ケイだと思っていた、だから感情なんて偽者だから、

ケイは人間の感情を無視して生きることができる、そう、ノーマは思っていた。

「シンジ君、この死体は偽物でも本物でもない、なぜなら人間が死体だと判断してもまだ生きてるんだからね、そう魂は肉体に残ってるんだよ、」

その言葉も今のシンジには届いていなかったかもしれない、

シンジはただ、死者のうめき声が自分を読んでることに異常な戸惑いを感じてる、

体が細かく震える、汗が背中を走る、寒さと熱さを何度も繰り返し感じる、

恐怖というよりは迫る言葉に自分を無くしている、

「シンジ君、自分を失ってはだめだ、しっかり現実を認識するんだ、」

カオルの言葉を自分の意識に入れようとしても、何かが邪魔をする、

「シンジ君、これが現実でも虚偽でも、これは自分で考え、判断できる世界なんだ、自分の力を信じるんだ、」

何時の間にかシンジの足元に死体が集まる、

数体の屍が皮膚を腐らせ、肉を削ぎ落としながら、シンジに縋るような瞳を向ける、

「神様、、、、、俺はまだ、、、、、生きてる、、、、、、」

「生きたい、、、、、、生きたい、、、、まだ未練があるんだ、、、、」

「俺を勝手に、、、、、殺すな、、、、医師の分際で、、、俺の体は、、俺のものだ、、、、」

様々な言葉をうめきながら、シンジに近ずく、

シンジはなぜ自分に死骸が話しかけてくるのかわからない、

だが、段々と自我を取り戻してきたシンジは自分の心を感じる、

恐怖ではない、単に気色悪い感覚だけがある、

不思議な世界だが、とても現実を感じる、

「シンジ君、心を深く見つめるんだ、きっと目の前の世界を判断できるよ、」

シンジの耳元で話すカオルの言葉を、少しずつ心に響かせる、

「カオル君、、、この死体は、、」

「さっきも言っただろ、全て精密にできた単なる偽者さ、見世物でもあるけれどね、」

「見世物って、」

「ケイが話したい事、ケイが連れて行きたい世界、その為の演出さ、そうだろケイ、」

真剣な表情のカオルとは対照的に、ケイは冷たい笑顔を浮かべている、

「演出だなんて、ひどいね、僕はこれから話す現実の為にわかりやすい教材を用意したのに、」

「自分の話しを有利に持って行けるようにだろ、」

「まぁ、そんなところかな、」

ケイがシンジに近寄ってくる、そしてシンジの足元にあった死骸を3,4体束ね山積みにする。

「シンジ君、これは偽物でも本物でも、どちらでも良い事なんだよ、」

ケイは無造作にその山積みにされた死骸の上に座る、

「どうだい、あまりいい光景じゃないだろ、シンジ君、」

死骸から赤い液体が流れ出る、ケイの重みで体に圧力がかかり、一気に流れ出る。

「でも、こんな光景が人間はたまらなく好きらしいんだ、、、、、」

シンジは作り物だとわかっていても背中に冷たい水が流れるのを感じる、

「そ、それが、僕になんの関係があるの、」

言葉を搾り出す様に放つ、

「人間は同じ種族で殺しあう、必要、不必要に関係無くね、、、、それでも昔は自分の手で殺していた。」

「今でも自分の手で殺すよ、人間は、」

「そう、だが、昔とは自分の手で殺すといった意味は違う。昔も今も、戦争などで殺す事は何処かに正当性を認めていた。道具を使おうが、手で殺そうがね、だが、どんな時にでも残った死骸をみて心に感じていた、、、、、、悲しさ、虚脱感、人間の愚かさ、人間の残酷さをね、」

「当然だろ、人間なんだから、」

「そう、でも死骸を見なければ、誰がどれだけ死んでも、それはお伽話しさ、自分の世界には関係無い異次元の話なんだよ、」

ケイは死骸を面白そうに見つめる、冷酷な笑顔ではないが、感情は読み取れない。

「そんなことは、、、」

「ないと、いえるかい。悪い人間がやってきて、大勢の人間を殺した。理由は簡単、そこに弱い人々がいたからさ。女達は犯され、老人と子供は燃やされた、若者は奴隷に、逆らう物は皮をはがされた。それが歴史だよ。」

「そんな昔の話だろ、まだ人間が生命の尊さを認識してない頃の、」

シンジはなぜか真剣に答え、ケイの単調だが残酷な言葉に、なぜか苛立っていた。

「失礼だが、人間が生命の尊さを叫んだ記録は、紀元前にギリシャで確認されている。でも、人間が大量に欲望の為だけに殺戮行為を行なうのは二〇世紀まで確認されている、もっも今でも続いているけどね。

悪い人達の子孫は増え続け、山を削り、河を殺し、人工建築物を至る場所にたて、権力者は発明家と娼婦だけを必要とした。」

「それと僕の今の現状と何の関係があるんだい、」

偽物の死体から流れる赤い液体がシンジの黒いブーツにまとわりつく。

「生きる事に必死だった頃は死を身近に感じていた。明日死ぬかもしれない、一時間後には殺されてるかもしれない、眠ったら二度と目を覚ませないかもしれない、そう人間は思い、生きる事に意味を見出してきた。だが、社会を作り、群れを組み、組織を作り、文化をつくり、科学を作り、医学を作り、法律を作った人間は死を忘れてきた。本来人間のシステムの最大の真実を否定しようと考えた。つまり、神様になりたいと考える様になったんだよ。」

「だから、、」

「そして見つけたのさ、神様を、一万年近くかかって、やっとね、」

ケイは死骸の上に座りながら、シンジの瞳を覗き込む。

その瞳はなぜかとても嬉しそうだった、

「エヴァウィルスの存在と、そのウィルスをコントロールできる碇一族の存在をね、」

 

 

 

 

                                               

砂煙を上げる車では加持の話しが続いていた、

「このままでは地球が終わる、と気がついたのは1990年の始め頃だった。人々は世界的経済不況を乗り切る為に、あらゆる資源、科学化合物、新生植物の開発に全ての力を注いでいた時期だった。だが、その結果人間の欲望を満たすシステムが社会の中心になり過ぎて、経済を人間の欲望レベルに保つ事は難しくなっていた。本来、人間には必要無いシステム、科学の進歩という名の元にあらゆる文化や社会が形成されていき、最後には死すら超えようとしていた。だが、当の人間自他はその進化について行けなかった。

自分で作ったシステムなのに、自分で種族としての終わりを演出していたのだと思う。」

加持は後ろの二人に話し続ける。

アスカとレイはその言葉にじっと耳を傾ける。

「自然の破壊は決定的だった。オゾン層の破壊による南極大陸の半崩壊や、森林火災、森林伐採により二酸化炭素が大気中に大量に残ったことで、世界の気候を根底から変えてしまった。多くの生物が絶滅した。

人間の社会が生み出した結果として、他の生物、何万種といわれる種族が絶滅した。それでも、人間は欲望の為に生物を乱獲した。生き残る為だけでなく、贅沢な生活を送る為にね、、、、」

「でも、そうじゃない人間もいたんでしょ、」

加持の絶望的な話しに、アスカが望みを込めて反論する、

「そう、自然の危機、生物としての危機を訴えてた宗教家、科学者は大勢いた。だが、、、、、世界中の政治家、軍人はそうは思わなかった。人間は高等生物として地球の上に君臨した生物だ、これからも科学、すなわち人間の脳の発達により、必ず危機を回避できると信じて疑わなかった。地球自体が人間を否定してるのに、、、、、おかしな話だ。」

車はすでに山道に入っていた、

灰色の空には黒い雲が薄くかかり、大粒の涙を流し始める、

「雨、、、」

レイが窓に落ちてくる雫を見ながらつぶやく、

「空は本当の蒼さを忘れて、悲しんでるのさ、、、」

レイはメロディーをくちずさむ。

「それって、、」

「シンちゃんの歌詞にあったね、」

「うん、、、、、」

加持はワイパーを動かしながらまだ降り始めたばかりの雨の中、車のスピードを上げる、

「そして、1999年3月過ぎ頃から悪魔の季節が始まった。細胞のDNAを根底から変化させる、人体機能破壊が始まったんだ、、、、、、、原因はある病原体だった、、、いままで誰も見たことのない病原体、ウィルスが世界中を襲ったんだ。」

「で、でも、、、あれは癌細胞の異常変化によるものだって、」

アスカは加持のシートに後ろからしがみつく。

「世界に向けて国連が発表した声明はそうだ。だが、事実は違う。当時までに存在したすべての厚生物質に反応しないウィルスが、世界中の人間を襲った。当時の科学者は何もできないまま、死んでいく人間を眺めてることしかできなかった。そして、結果的には地球上の人口が二十億人を切るようになってしまった。」

「そんなウィルスが、存在してたなんて、、、、、、」

レイは何かに悲しみを抱いてるような瞳でつぶやく、

1999年の8月頃、そのウィルスから様々な不思議なことが解ってきたんだ、」

「不思議な事って?」

「まずは、ウィルス自体が完成された生物のような組織を持っていたことだ、体外からの進入物は異物として処理され、破壊された部分は自己修復をおこなう。そして、修復不可能と判断すると、他のウィルスと融合し、また一つのウィルスとして存在する。まるで、人間が排泄や手術を行なう様にね。」

「人間の細胞なんですか、」

「確かに細胞的要素を多く持ったウィルスだが、単細胞系ではなく、多細胞のウィルスだった。つまり、そのウィルス単体で生物と同じ組織器官を持っていたんだ、」

「そんなウィルスが、、、、」

アスカは信じられないといった表情で後ろシートに背を預ける、

「そう、今までの常識の範疇では存在しないウィルスだった。だが、そのウィルスは実際に存在し、地球にとって悪性ウィルスとなった人間に襲いかかった。11月の時点で、すでに世界人口が二十億人を切ってる状態のなか誰もがこの世も最後を感じ、叫び、嘆き、そして絶望した。」

「でも、今この世界があるって事は、、、」

「そうだ、当時の医学では解明できないウィルスだったが、チベット高原の山頂にあった研究所があるレポートを極秘に発表した。このウィルスは病原体ではない、生物、それも高等生物としての存在だとね、」

「高等生物?」

「そう、生き物だったんだ。もともとウィルス自体を生物と考える見解もあるが、この場合の生物という言葉は人間と同等、いやそれ以上の知的生命体として存在するウィルスだと発表したんだ。」

「そんなこと、、、」

アスカの表情には不安の色が大きく現れる。

「そう、世界中の科学者、生物学者は誰も信じなかった。政治家、宗教家も同じだった。ウィルス自体が知性を持ち、感覚を持ち、他の生物を認知する。人間の体内に存在するあらゆる抗生細胞を研究し、器官細胞を破壊し、成長を続けるウィルスはどんな状況下でも生存方法を独自で発見した。それだけじゃない、触発感染、空気感染の両方の性質を持っていた。そして、最大の謎は人間のみに感染する特性を持つ、悪魔のウィルスだと言う事だった。」

雨は次第に大粒の雫に変化していく、

「その研究所が発表した内容はそれだけなの?」

レイが恐る恐る聞く、

「いや、彼らの発表は恐るべき物だった。ウィルスの増殖過程がまったく人間と同じで、ウィルス自体にも生殖行為が存在し、受精卵の存在、受精卵からの成長過程があり老化があることがわかり、そしてウィルス自体に人間のDNAと同等の存在がある、つまりウィルスは人間という種を進化させたもの、最終的な完成形としての生物である可能性と発表したんだ。」

アスカとレイは言葉を無くし、ただ加持の言葉を受け入れていた。

「誰もがその発表を信じなかった。だが、世界中が死体で埋められようとしている中、その研究所のあるチベット高原の小さな村だけが、ほとんどウィルスによる被害を受けてなかった。」

「どうして、、」

「発見したのさ、ある人物が、ウィルスと人間が共存する方法を。」

「共存、、、、、?」

「そう、共存だ。誰もこのウィルスを絶滅もしくは人間体内から除外することしか研究しないなか、ごく僅かな科学者だけがこのウィルスと人間が共存する道を探っていた。その人物はウィルスは完全な生物であり、意志をもつ生き物だと考えた、そして、人間はウィルスと共存できると人間側から知らせる事でウィルスは破壊とはまったく正反対の作用をする事を発見したんだ。」

「そんな事が可能なの?」

「実はウィルス自体が言語なるもの、音声伝達ではないのだが、意志伝達方法があることが解明され、人間側から体内のウィルスにコンタクトできる事が証明されたんだ。いや、、、、証明されたんじゃないな、」

「え、、」

アスカもレイも加持の言葉に驚きの声を上げる、

「解明されたんじゃなかったんだよ。その人物は知っていたのさ、ウィルスの存在も人間が絶滅の危機に瀕する事も、そして、ウィルスと人間が共存する以外の道が無い事も、」

「そんな科学者がいたんですか、、、」

レイが呆然と聞く、

「誰なんですか?」

アスカが真剣な表情で尋ねる、

「碇 ゲンドウ、、、、シンジ君の実の父親さ、」

 

 

 

 

 

 

                                                 

「ウィルスと共存した人間は、体内にエヴァウィルスの作用を持っている。」

「だが、その作用により人間が進化をする事は本来の姿ではない、」

「いや、エヴァウィルスこそ、神が与えてくれた人間が存続するための、唯一の光なのだ、」

「それこそ、人間という種の存在を否定することだ、」

「なぜだね、人間の姿は無くなるが思惟は残る。伝達能力も残り、まさに楽園を現実化できるのだぞ、」

「そこが楽園かどうか、未知への憶測で判断できかねますが、」

「碇、このままでは人類は間違い無く絶滅する事は君もわかってるはずだ、」

「えぇ、、わかってますよ、シュラウド・シーラー博士。」

 

綺麗な湖の辺、

蒼い花が沢山咲いている、

季節に関係無く数年に一度だけ咲く大きな蒼い花

湖の水面に写ると、一層幻惑的に見える、

森林が光を遮る空間にも大粒の雨が落ちる、

雨が反射する光はとても暗い光だ、

水面に素適な音と生む、

どうして雨が生む音はこんなに素適なんだろう、

雑草にも生命を与える、土にも生命を与える、

空間が劇的に演出される、神様が与えてくれた

夢を自由に創造できる瞬間、

その至福の空間に、全てを捧げてきた男が二人水面を眺める、

全てを忘れる事、終われる事、心を無にできる瞬間に直面していた、

 

「シンジ君は特異変化な存在だったのだろうか?」

「えぇ恐らく、、、、神が用意した魂ではなく、神自身の魂を与えてしまった、」

「人間は生命をコントロールできるほどの科学と知識を持ったのに、今なぜ神の力が必要なのだ、、」

「必要にしてるのは博士達の望む世界です。本来の魂の道は人間、いや生命自体が自らの力で得る道です。

他の生物から一方的に与えられて進化することは、生物本来の姿ではない。」

「だが、そうしなければ人間という種族は絶滅する。それを救う事ができるのは神と同じ能力を持つ、シンジ君だけだ。シンジ君が神として人間を進化させれば、、、」

「それは人間の、いや、生命の進化ではない。それにシンジは人間の創造した神ではない、宇宙が、地球が、無限が生んだ神です、人間の認識だけが認めた小さな神ではない。」

「人間の英知こそ神だよ、生命の神秘も全て解き明かし、クローン生物を創造し、全ての生物の頂点に君臨したのだ。そして、エヴァウィルスの存在を解明し、そのウィルスの力をもって生物の進化としては劇的な変貌を迎えることができる道をも見つけた。」

「だが、本当の神は人知の枠、科学の証明する枠では判断できない、無、空の世界にこそ存在するのです、」

 

ゲンドウとシュラウドは互いに向き合い、互いに空を見るような目つきで淡々と話す、

 

「シンジ君の魂に触れることで、人類の体内にあるエヴァウィルスはある特定の作用を発生させる。だが、その作用もシンジ君の心しだいだ。もし人類の滅亡を望めば、その場で人間は終わりだ。」

「その為にカオルやアスカ、レイを与えたのでしょ、」

「愛とは何か、生きるとはなにか、苦しみとは、人間の生きる理由を考えて欲しかったのだが、」

「もう十分シンジは苦しみました。いいかげん解放してもらいたいもんですが、、、」

「解放?君の望みでは、シンジ君は世界中の苦痛と悲しみを背負うことになるぞ、」

「博士の望む神になれば、シンジは世界の基準になってしまいます。新たな世界の創始者として、その方がシンジにとっては苦痛なはずです。」

「それも、すべてシンジ君自身が決めることだがな、」

「そうですね、」

「それでは、ゆっくりと世界の終わりを待とうか、、、、、」

「えぇ、、、、、戦自が来るまでですか、」

「ふふ、、よくわかったな、」

「シンジが博士側の発想をしない場合、シンジの魂を消滅させるには強力な武力が必要ですからね、」

「まぁ、その時は人類が作った最も愚かな道具で神様を消滅させてもらうよ、君達共々ね、」

「そうですか、、、楽しみですな、、、」

 

 

 

 

 

 

                                                 

「碇一族、、、、?エヴァウイルス、、、、?」

「そう、その二つの頂点に君臨した女性が、碇 ユイ、君の母親さ、」

「母さんが、、、」

「そう、君は地球や宇宙が選んだ生命体として本来は生まれたのさ。」

「何をいってるんだい、、、、、碇一族ってなんの事なの?」

「私が説明するわ、」

複数のうごめく死骸を踏みつけ、無表情のノーマがケイの横に座る。

「シンジ君、あなたのお母さん、碇 ユイはある一族の純血を破った人なの、人間が存在した時から続いた純血の歴史を終わらせた人なの。」

「純血を破った、、、、」

シンジには何の事だかまるで理解できないで困惑を続けている。

「いきなりそんな事言ってもわからないよ、」

カオルがシンジの脇に立ち、優しい微笑を見せる。

「シンジ君、地球が生命を宿してから、人間生まれるまで時計では測れないほどの時間が経っている事は知ってるよね、」

「う、うん、、、」

「つまり人間の時間と生物の歴史の時間は一緒ではない。それを証明するウィルス性多細胞生物の存在がある事を、二十世紀の後半、ある遺跡から発見された石版から知ったんだ。つまり、永遠と地球と共に歩んだ可能性のある高等生物の存在をね。始め、誰も信じはしなかったが、嫌でもそのウィルスの存在を人間は認識されられるんだけどね、、、、、」

ノーマは少しむっとした表情でカオルの言葉をつなげる。

「そのウィルスはエヴァウィルスと言われ、世界中の人間を殺したの。でもね、本来はある一族にしか宿らないはずだったの、エヴァウィルスは。人間が地球上に生物として存在するはるか昔からエヴァウィルスは存在してた、でも、一度もその一族以外のはどの生物に感染した事はなかった。なのに、1999年に急に一族以外の人間に感染し始めた、人間の持つDNAを破壊する悪魔のウィルスとしてね、、、」

シンジにはあの世紀末に、二十億以上の人間がエヴァウィルスによって殺されたことは信じられなかった。

「ここまでは理解できるかい、シンジ君、」

「う、うん、、なんとなく、、、、、でも、それが僕になんの関係があるの、それに一族ってなに、僕の叔父さんや叔母さん、従兄弟もみんな普通の人間だし、僕だって普通の、、、、」

「碇一族は血のつながりではないんだよ。ウィルスが選んだ、選ばれた人間だけがなれる、一族に加わることができる不思議な一族なんだよ、シンジ君。」

「そ、、、そんな事、、、、」

「だから二十世紀後半になるまでその存在は誰にも認識されずにいたんだ、、、いや、石版の発見が無ければ永遠にわからなかったかもしれない。悪魔のウィルス、いやこの場合には生物といったほうが良いだろう、この人間を殺しまくった生物を太古の昔から体内に宿らせた一族がいる、しかも、血のつながりではなく、生物自身が選択した人間のみの一族が存在していた。まったく、この世界、宇宙の真実とは本当に驚くことだらけだよね、」

カオルはいつもの笑顔でシンジに笑いかけるのだが、シンジはそれどころではない。なんとかカオルの話しを理解してはいるが、内容を心に真実として溶けこます事はできないでいた。ましてや、そのSF的な話しに自分が関わっているとはまったく受け入れられなかった。

「母さんが、その一族だったと、、、」

「君のお母さんは、、、」

「私が説明するわ、」

ノーマは死骸の山から飛び降り、シンジの前まで進む。

「私が説明するって言ったのに、カオルは勝手に話しを進めるんだから、」

「一方的な見解をシンジ君に押し付けられると困るんでね、」

「大丈夫、アスカやレイの時とは違うわ、シンジ君、どうしてエヴァウィルスは特定の人間を選択すると思う?更に、国も言葉も違う人間がなぜヒマラヤのある小さな村に集まると思う?」

「どうしってって、、、解るわけないじゃないか、、、」

「それはね、エヴァウィルスが地球の、いや宇宙の意志を持った生物であって、その生物が選んだ生物は地球、宇宙の力を持つ資格があることを意味するの、」

「力、、、、、?」

「そう、生物の進化、ううん、それだけじゃない。宇宙の形を変えることもできるの。エヴァウィルスを持つ人間は神に近い力を持つの。エヴァウィルスだけでもだめ、当然人間だけでもだめ、エヴァウィルスが選択した人間の心と、ウィルス自体の力がはじめて絡み合って神さまの様な力を持つの。人間が歴史を記録するようになってから、様々な人間の能力を超えた現象が記録されてる。海を半分に割った人とか、十字架にかけられた人とかね、」

「まさか、、」

「その人達が全て一族だったとは言いきれないわ、証拠はどこにもないから。でも、碇一族はその力を使い、時には歴史の表にでたり、時には闇の世界で暗躍していたの、存在を知られずにね。エヴァに選ばれた人間はある体験をする事で、自分がエヴァに選ばれた事を知るの、そして、無意識のうちに導かれるようにヒマラヤの小さな村へと向かうの。本当は体内のエヴァが信号を出してるんだけど、、、」

シンジの胸にある言葉が再び響く、

「まさか、僕があの時、、湖で聞いた言葉は、、、」

「そう、あなたは選ばれた人間なの、エヴァに、地球に、宇宙に、神の力を持って世界を創造する事を認められた人間なの、しかも一族史上、もっとも強力な力を持つ魂としてね。」

シンジは自分の心に問いかける人物に気がつく、、

深い、自分の体内から問いかける言葉に気がつく、、、

誰かはわからない、いや、明らかにわかる、、

その言葉、その声紋、すべてがシンジと一致する、

自分がシンジに言葉ではない何かを感じる、

シンジはいったい何を伝え様としているのか、必死に感じる、

全身で、世界中の風を感じる、いや今回は世界ではなく、宇宙全体の風を感じる、

そして、全神経を使い、宇宙の端の外まで感じる、

そして、聞く、

この宇宙の創造者の声を、

ノーマの言葉と共に、

同じ言葉を、

 

 

 

「あなたは、エヴァンゲリオン、、、、神の意志を持つ宇宙にたった一つしかない魂をもった人間なの、」

 

第十七話へ続く



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