死者の道

「差別する人間」

 

 

 

 

 

「シンちゃん!!」

レイの叫びが草原を走りぬける、

スピードも音声量も普通かもしれないが、シンジのハートに突き刺す、

困惑しながら、ただカオル達に促されながら歩くシンジは無意識に反応する、

そして、赤い世界、赤く染められた世界、人工的な赤を持った草原、

シンジは思う、地獄はこんな感じなのかと、、、

だが、必死に何度も叫ぶ少女の姿を見つけると、暗闇の中からシンジの意識は必死に這い上がる、

そして、一気に現実の世界に走り抜ける、瞳をいつもの透通ったブラウンに戻す、

「レイ!!」

シンジが走ったのは、もちろん視線の先で立っているレイと、そのレイにしがみつくアスカの姿を確認したからだが、その二人の元に行けば現実の世界、いつもの、今まで生活していた世界にもどれる、そんな気がしたから、シンジは必死に走る。二人の元に、、、、

「アスカ、ほら、シンちゃんだよ、」

「え、、」

死骸の山に自分を失っていたアスカもレイの言葉に視界を戻す、

そして、その視界に、真っ赤な草原を必死に走ってくるシンジを見つける、

「シンジ!!」

今まで抱き着いていたレイを突き飛ばし、シンジに向けてアスカも一気に走り出す。

「痛て!!」

突き飛ばされたレイは思わずしりもちをつく。

「痛ったいなぁ、、、もお、、、、、なによ、ちょっと優しくしてやるとこれだから、」

地面と衝突したお尻を押さえながら、表情に痛みを浮かべる、

「ちょっとアスカ!待ちなさいよ!!」

レイの事などまったく関係なく走っていくアスカの背中に言葉を投げる、

「ちょっとアスカ、、、、、」

 

 

そう叫んだ瞬間だった、

レイも赤い草原の世界に足を踏み入れ様とした瞬間だった、

アスカとシンジの距離はあと数10メートル程度の距離に迫った瞬間だった、

シンジも、アスカも、もうすぐ互いの腕に触れられる、そう思えた瞬間だった、

互いに現実に近ずける、そう思えた瞬間だった、

 

数発の銃声がする、

どこから聞こえたのか、誰も知らない、

だが、銃弾は明らかに草原を駆け抜けた、

数発の内、一つはアスカの背中に、

もう一つはレイの背中に届く、

そう命令された弾丸は、命令通りに軌道を走った、

だが、結果はアスカの背中と、レイをかばった男の脇腹に突き刺さった、

 

 

 

 

 

「アスカと加持君が打たれました、」

白衣の金髪の女性が静かに話す、

「そうか、、」

「そろそろ終わりか、、、」

「ええ、これでシンジがどの道を選ぶか、それで世界は決まります。」

「シンジ君は我々の望みをかなえてくれる、その確率が高いと思わんかね、」

「いえ、シンジの心は大量の水とあらゆる感情の混合物が渦を巻いているカオス状態です。そのカオスが落ち着き、純粋な水と混合物と別れない限り未来は決まりません。」

「カオスからの誕生か、、、まるで宇宙の誕生のようだな、」

「ある意味、地球の再生です。シンジの心、いや、シンジの体に宿るエヴァンゲリオンをコントロール出来るか、、、、、それが全てです。」

「シンジ君が選ぶ道は問題ではないと、」

「博士が望む世界はシンジは選択しません、」

「ほう、なぜだね、」

「昨夜、枕元に立ったんですよ、」

「何がだね、」

「ユイの魂がです、」

ゲンドウの言葉にシュラウドはただ小さく笑うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

シンジはゆっくりと歩く、

 

森林からは大きな爆炎が上がっている、無数の銃声が鳴り響く、

 

シンジは少しだけスピードを上げて歩く、

 

レイは自分を突然突き飛ばした物体を押しのける、

「痛ってて、、何なのよ、、、、、、」

 

シンジは倒れたアスカの元に走り出す、

 

レイは自分を突き飛ばした人物が、加持であることを確認する、

「加持さん?、、、加持、、、」

そして、うめき声を上げて苦痛に歪んだ表情の加持に気がつく、

 

シンジは全力で走る、赤く染まった草原にうつ伏せになったまま動かないアスカのもとに、

 

「加持さん?、、、、どうしたの?、、、」

「、、、、、、、」

返事のない加持にレイの表情は不安な色へと変化する、

「加持さん、しっかりしてよ、加持さん!」

 

シンジは必死で走る、そして、滑り込む様にアスカの元に倒れこむ、

「アスカ、、、、、」

 

「加持さん、、しっかり、」

そう叫ぶレイの手に、今まで感じた事のない感覚があった、そう、生まれて初めて他人の血を、大量の血を手のひらに、腕に感じていた。

「加持さん!!!」

「、、、、、、大、、丈夫、、だ、、、、」

「しっかりして、加持さん、」

「レイは、、、、大丈夫か、、、」

「う、うん、アタシは何処も怪我してないよ、」

「そう、、か、、、よかった、、、、」

 

「アスカ、、、アスカ、、、、、アスカ、、、アスカ、、、、、、」

シンジはただ何度も繰り返した、アスカという言葉を何度も、何度も、繰り返す、

まるでその言葉しか知らない様に、繰り返す、

しかし、アスカ自身からいつもの反応はなかった、

「アスカ、、、、アスカ、」

シンジには分っていた、というより、無意識のうちに自分の腕に感じてる奇妙な赤い感触のするものが、なんであるか、アスカを抱きしめた瞬間にわかっていた、

だが、意識は認めない、認められない、、、、、、認めたくなかった、、、

認めてしまえば、恐ろしいほどの自己破壊が待っているからだ、

「アスカ、、、」

 

「加持さん、しっかり、」

加持の腹部からは大量に血液が流れ出る、

赤い、赤い、今まで見たなかで最も赤い色を、レイは見つめる、

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

必死に加持の服の上から、撃たれた傷口に手をあてる、

そんな行為では出血は止まらないのだが、必死に、両手で加持の腹部に手をあてる、

「いやぁ、、加持さん、、、、、だめ、、だめだよ、、、」

言葉はあまり意味を持たない、レイの感情は自己破壊寸前に追いこまれていた、

「だめ、流れたらだめなんだよ、、、、、止まって、、、、お願い、、」

自然と涙が溢れる、

哀しい?そんな簡単な感情ではない、言葉なんかじゃ表現できない感情、

自己破壊寸前の人物が正常な感覚で言葉で表現できるわけがない、

だが、地面が回る、目の前の現実を否定したい、これは夢だ、そう思いたい、

でも、苦しさと、心臓から脊髄まで突き抜ける痛みは現実だ、

痛い、痛い、、、、苦しい、、でも、、これが夢なら、この苦痛が永遠に続いてもいい、、

そう思っているかどうか、今のレイではわからない、

「だめだよ、、、そんなに血が流れたら、、、、、、加持さん、、、、死んじゃう、」

 

 

 

「アスカ、、、、」

シンジはすでに自分の声が届かない事にまだ気がつかない、

だが、抱き上げたアスカの背中から流れる赤い液体は感じている、

「聞こえないのかい、、アスカ、どうしたんだよ、、、ねぇ、、、、」

シンジには現実なんてどうでもよかった、

普段のいつもの笑顔でアスカに微笑んで欲しかっただけだった、

「そんな暗い瞳じゃだめだよ、、、、アスカ、、、ねぇ、いつもみたく笑ってよ、」

アスカの瞳は本当に暗かった、独特の蒼色はすでにネイビーブルーになっている、

もちろん瞳だけではない、肌も白くなり、まるで死人のような色に染まって行く、

死人、、、そう、アスカが死人のようになっている、

そう、初めてシンジは認識した、

そして、とてつもない衝動を体に感じる、

「アスカ!!!!」

力の限り叫んだつもりだったが、言葉はかすれ、喉から正常に出てこない、

衝動はシンジの血液の流れを止める、

からだ中の細胞が機能を失う、

アスカの体と同じぐらいシンジの細胞も死んでいくような気がする、

「アスカ、起きてよ、、、、、いつも見たく僕に微笑んでよ、」

シンジは脳裏に浮かぶアスカを必死に感じる、

笑顔、、、、、、いつも僕に微笑んでくれた、

涙、、、、悲しみなんて似合わないよ、

真剣な瞳、、、、僕に真実を訴えてる時、

甘えた顔、、、、まるで仕事をしてる時とは別人だった、

怒ってる顔、、、、本当は怒ってなんかいないくせに、怒ったふりをしてる、

自分を見失ってる顔、、、、、僕を必要だと言ってくれた、

辛い現実に負けそうな顔、、、、、、、僕が守ってあげるから、微笑んでよ、、

 

とっても僕を必要としてくれた、アスカ、

僕も必要としてたんだ、、アスカを、

僕の過去にも触れてくれる、綺麗な瞳で、純粋な心を取り戻す為に、、

アスカも自分の過去を見せてくれる、恥ずかしそうに、でも、僕を信じてくれる、

アスカ、、、、、

アスカ、もっと僕はアスカのこといっぱい知りたい、

アスカのこと、まだ感じていたいんだ、

僕が人間らしく生きていく為には、アスカが必要なんだ、、

僕の黒いギターがナイフの様なサウンドをあげるには、

僕の黒いブーツと黒いパンツが色々な世界に行く為には、

僕の黒い革ジャンが綺麗な歌を歌う為には、

僕の黒いバイクが真実にたどりつく為には、

アスカ、、、、君が必要なんだ、、、

アスカ、、、

 

必死に脳裏に浮かぶアスカの姿と現実に肌の暖かさを無くしたアスカ、

そのギャップを埋める術は何処にもない、、、

「アスカ、、もう一度だけでいいから、、、、起きて僕の言葉を聞いてよ、、、、」

シンジはアスカの腕を必死に握り締める、

しかし、その腕からはシンジに伝わるほどの反応は返ってこなかった、、、、

 

 

 

「レ、、、、レイ、、、、、、」

「加持さん!!」

虫の息といえるほどの声で加持が答える、

「レ、、、レイ、、、、、シンジ君の元に、、、、、、行くんだ、、」

「何いってるの、加持さん、、、、加持さん置いて行けるわけないじゃん、」

涙で真っ赤になってる瞳で、泣いてる表情が笑顔に見えるレイは声を震わせながら答える、

溢れる熱い涙は、加持の頬に無限に落ちていく、

「レイ、、、、、聞くんだ、、、、、」

そんなレイの表情を見る事もできない加持だが、最後の力で言葉を生む、

「レイ、、、、、シンジ君が自分の未来を、、、、世界の未来を作るには、、、、、君が必要なんだ、、」

「分らないよ、加持さん、、、もう、そんな話し、、、アタシにはわからない、、、」

瞳は赤く、涙で染まる、言葉は生まれたばかりの子供の様な涙声で必死に話す、

「分らなくてもいい、、、、君のシンジ君への愛を、、、、伝えるんだ、、、、」

「シンちゃんへの、、、愛?、」

「、、、、そうだ、、、、世界は悲しみと苦痛で溢れてる、、、、、その溢れた悲しみから誰かが世界を救わなくてはいけない、、、、」

「救うの?、、、、、シンちゃんが?」

涙で見えない瞳で必死に答える、

「、、、あぁ、、、神様と似てる力で、、、、、全ての生物、、、、動物も植物も、、、、全ての道を創造するんだ、、」

「なんの事だか、、、わからないよ、、、加持さん、、、お願い、助けて、苦しいよ、、、」

レイは経験した事のない、震えと恐怖の中、苦痛を訴える、

「今は、、わからなくていい、、、、、だからシンジ君の元に、、、、」

「夢だって言ってよ、、、、加持さん、、、これは悪い夢だって、、、」

「、、、レイ、、、、、、行くんだ、」

「苦しいよ、、、、こんなに胸が痛いの、初めてだよ、、、、加地さん、、助けて、、」

加持は最後の力を振り絞って、レイの頬に手を伸ばす、

「、、、、レイ、、、、これは現実だ、、この現実から逃げる道はない、」

「加地さん、、、」

涙で視界を失ったレイは加持の言葉を見つめる、

「、、、、だから、行くんだ、、シンジ君の元に、、、そこだけが、、、未来へ進む道だ、」

レイのやっと戻った視界に映るのは、死ぬ事で初めて知る事ができる世界へ旅立てる事に喜びを浮かべてる加持の笑顔だけだった、

「行くんだ、、、、レイ、、、、未来が幸せだなんて言わない、、、だが、未来が少し好きになるかもしれないぞ、、、その先を自分で知るんだ、、、、自分の力で、、、、、」

 

 

アスカはすでに死んだ、

そう思えないシンジはただアスカが再び微笑む瞬間を待つ、

背中から流れるアスカの血は、どんな赤よりもレッドだ、

どんな赤にも染まらない、だから一人ぼっちの世界を生きてきた、

シンジと出会うまで、

だから必死にシンジを求めた、

アスカは言葉より、未来を信じた、大切な、失った何かを求める為に、シンジを必死に求めた、

瞳を閉じて俯いてるだけの、仮面をつけて自分を捨ててただけの世界を捨てる為、シンジを求めた、

笑顔だけでなく、哀しみも、苦しみも、憎しみも、嫉妬も、、、、、、、愛情も全てシンジに求めた、

だから、シンジと一緒にいたかった、

でも、その望みも断たれた、

小さな弾丸が、体の一部に流れ込んだだけで、

終わってしまった、

アスカの幸せは、

消えた、

 

「アスカ、、、、話したよね、、一緒に砂漠で星を見ようよって、、、」

シンジは涙を流さない、

「綺麗な、心を突き刺す無数の星を、、一緒に見ようよって、、」

涙が哀しみを示すとは限らない、

「アスカも、返事してくれたじゃないか、、、」

苦しい現実が不幸だとは限らない、

「行こうよ、、、、砂漠の世界に、、、風が遊んでくれるよ、」

嬉しいだけが幸せな未来だとは限らない、

「もう一度だけでいいから、、、、、」

絶望だけが本当の未来かもしれない、

「、、、、、、、、、、、、、、アスカの嘘つき、」

シンジには未来はどうでもいい事だった、、

 

 

「シンジ君、、、」

カオルがすぐ後ろに立っている、

カオルにもこの現実は辛いものだった、

だが叫ぶことより、沈黙を選んだカオルは、レイ、アスカ、加持、シンジが壊れて行く瞬間をまるで物語りの様な感覚で捕らえていた、

「シンジ君、、、」

小さく言葉を漏らしたカオルが、シンジの側に座る、

「シンジ君、、、アスカは、」

「、、、、、、、、、、、、」

ただアスカの表情を覗き込むシンジは、何も答えない、

「シンジ君、、、、ここにいたら危険だ、」

「、、、、、、、、、、」

「シンジ君、」

「カオル君、、」

そう答えたシンジの言葉は、カオルがいままで一度も聞いた事のない感情のない言葉だった、

「カオル君、、、、未来なんて必要無いよ、、、、」

「シンジ君、、」

「未来なんて人間には必要無いんだ、、、」

 

 

そうシンジが答えた瞬間、大きな爆音が森林から、地面を揺らす様な大きさであがる、

同時に何人もの兵士が銃を撃ちながら赤い草原に現れる、

そう、殺し合う人間の姿をシンジに見せるために、レイやカオル達に殺人を見せるために、

何人も殺される、銃という人間が生み出した真の悪魔を持った人間が、殺され、殺す、

何のためらいも無く、無表情に殺す、

それが人間にとって当然の様に殺す、

未来も、過去も、人間同士で殺す、

戦場へ行きたい人間はいない、、、

でも戦場へ向かう、国の為?正義の為?宗教の信仰の為?一部の金持ちの為?

どっちにしても、欲望と権力のために大量に人間が死ぬ、

人間が死ぬだけでなく、地球を破壊するほどの科学をもって殺人を繰り返す、

海を殺し、山を殺し、大地を殺し、大気を殺す、、、、

地球が無ければ全ての存在がなくなる、

なのに、、、人間は地球を破壊し続ける、

愚かな生物だ、、、、

 

「どうしてなんだろう、、、、」

「何がだい、、」

シンジとカオルは草原の入り口で殺し合う人達を眺める、

時々、流れてきた銃弾がシンジ達をかすめる、

「どうしていつも殺してるんだろう、、、殺して初めて生きてる価値を見い出す、そんな生物なんだ、、」

「人間は他人を否定することが好きなんだよ、自分が少しでも優位な立場に立ちたいんだ、」

「他人を征服することで、他の生物より優れることで、自分の意味を見出そうとしてるんだ、、、」

「そうさ、人間は他の生物より脳を発展させ、他の動物を下等動物とみなした。」

「そして、今度は同じ人間を下等動物にしたいんだ、、」

「そして、自分が選ばれた人間である事を感じたい、」

「、、、、、、、くだらない生物だね、人間って、」

「、、、、、、、そうかもしれないね、、、」

シンジとカオルはただ黙って眺めてる、

その光景がシンジにアスカの死を現実のものへとしていく、

シンジはもう一度アスカに視線を移す、そしてゆっくりと冷たい唇に自分の唇を重ねる、

シンジのキス、、、

退廃的なくちずけ、、、

長い時間、、シンジはそのまま動かない、

アスカの死を確認しながら、いくつもの言葉を唇で伝える、

シンジは言葉より、唇を選んだ、

そして、ゆっくり唇を離し、再び殺戮の世界を見つめる、

冷たい、冷たい瞳で、

「カオル君、」

「なんだい?」

「さっき、僕は神様と同じ力があるっていったよね、」

「あぁ、、君には全てを司る力があるとね、」

「じゃぁ、僕が人間を滅ぼす事もできるんだよね、」

「、、、、、、、あぁ、できるよ、君なら、」

「アスカを殺した人間、、、、、無意味に自分の意志を持たずに殺し合う人間を滅ぼす事もできるんだよね、」

「、、、、、、、できるとも、」

「本当に僕が地球の意志を持ってるとしたら、人間ほど必要無い生物はないよね、」

「、、、、、、、それはわからない、」

カオルはアスカの頬を手で撫で続けるシンジに冷たく答える、

「こんなに、、、、人間が無意味な存在に思えるのは、初めてだ、、」

「シンジ君、確かにアスカちゃんの死は現実だ、辛く哀しく、悲劇的な出来事だ、でも君のその感情が一時的なものではない、と言いきれるのかい、」

「、、、、、、、多分、」

「アスカちゃんの死で、全ての人間が間違ってると判断はできないよ、」

「でも、、、僕も思うんだ、、、確かに人間は地球を破壊しすぎたんだよ、、、それだけじゃない、自分の欲望の為だけに子供を売り、少女を犯し、同族で殺しあう。そんな生物の存続の意味なんか、どこにもないんだよ、」

「君が世界中の人間を滅ぼす事も、大量殺人と同じなんだよ、、、、史上最多の殺人をする事になるんだよ、」

「、、、、、、、、、、、、それは悪い事なのかい?」

「悪いとは言わない、でも君の感情だけで動いてない事を証明できるのかい、」

「、、、、、、、僕が神様なら、僕の感情で人間を滅ぼしてもいいじゃないか、」

「君は人間と同じ様に、他人を滅ぼすのかい?人間の能力を超えた力を持つ生物として、神様としての力で人間を殺すのかい?」

「いけない事なのかい!僕が人間を滅ぼす事が、どこがいけないって言うんだよ!!」

シンジの言葉が銃声と重なる、

「人間は地球を破壊してばかりじゃないか!!地球がなくなったら、空気がなくなったら、水がなくなったら全て終わりなのに、山を殺して、海を殺して、大地を殺して、他の生物を殺して、地球も殺そうとしてる人間を滅ぼしていったい何が悪いんだよ!」

「圧倒的な力を持って、全てを滅ぼす行為は人間と同じだよ!」

「人間のくだらない権力争いと、汚れきった欲望の為に地球を壊すことは許されないことだよ!」

「その言葉、シンジ君の言葉だと言いきれるのかい!」

そうカオルが叫ぶと同時に再び大きな爆音が草原を翔けぬける、

熱い爆風と砂ほこりの風が二人を包む、

その風に翻弄され大きく揺れる髪が、二人の心を表すように流れる、

「その言葉、その人間を憎む心、本当にシンジ君の言葉なのかい?」

「どういうこと?」

「君の言葉じゃなくて、君の体の中に住む、エヴァンゲリオンの言葉じゃないのかい、」

カオルはシンジの瞳を強く見つめる、

シンジも同じぐらいカオルを見つめる、

初めてかもしれない、

これほど二人が自分達の瞳をぶつけるのは、

互いに信用し、信頼し、互いに補い、甘え、互いに必要とした二人、

シンジとカオルは初めて感情のまま、自分たちの瞳を衝突させる、

「その言葉は、君の体に住むエヴァンゲリオンの言葉じゃないのかい?」

「、、、、、多分、違う。僕の意志だよ、」

「シンジ君は人間という種族の絶滅を望むのかい?」

「、、、、もう、世界中から悲劇はなくなるよ、」

「悲劇こそ人生の基本だ!それは人類が生きるためには必要な悲劇なんだ!」

「でも、、、、それは人間の都合だけだ!人間の勝手で地球を破壊させるわけにはいかない!!」

「シンジ君が本当に望むなら、、、、、、、、、、そうれでもかまわないさ、」

カオルがシンジに背を向ける、

 

 

誰だろう、、、、

シンジは誰かの声を聞く、

その誰かがシンジに叫べと言う、、

シンジの心に誰かが叫ぶ、、

強く、何度も、、、シンジの心に、言葉ではない、何かを叫び続ける、

「あぁ、、、」

シンジは足元に横たわるアスカに視線を移す、

「がぁ、、、、、、、ぁ、、」

シンジの心の叫びが口から流れる、

「シンジ君、、、、本当に君の意志なんだね、、」

首だけ振り向いたカオルが悲しそうに見つめる、

「その叫びが世界を一度覆ってしまったら、、、」

「がぁ、、、ぁああ、、、、」

「もう二度と戻る事はできないいんだよ、、、、」

シンジは膝を付き、もう一度アスカの遺体を抱き上げる、

「ア、、、アスカ、、、、がぁぁ、、、ああぁぁああぁ、、」

「人類はここで歴史を終えてしまうんだよ、、、シンジ君、、、」

カオルはもう一度体をシンジの方に向け、話続ける、

「うわぁぁぁ、、、、がぁ、、、、あっぁぁぁぁああああ!!!!」

 

シンジの口から、いやシンジの全身から叫びがもれてくる、

シンジの体が光はじめる、いや何か翼の様なものが生まれようとしていた、

もはや人間としての肉体がエヴァンゲリオンを押さえ込むことは不可能だった、

シンジはアスカを抱きしめたまま、、自分の体が融解していくのを感じていた、

同時に哀しみの叫びをあげることで、涙がこぼれるような気がしていた、、、

(叫べば、、、泣けるんだ、、、、アスカ、、、僕は涙を流せるんだ、、、アスカ、、)

 

 

地球の意志を持つエヴァンゲリオン

アスカの死が、きっかけになったことは確かだ、

だが、、、遅かれ早かれ、いつかは目覚める時がきたのだろう、

その引鉄を引いたのが、アスカの死だった、、、それだけのことさ、

今更人間を正当化しても、エヴァが復活したシンジ君の心には何も通じはしないだろう、

今は、哀しみと憎しみだけで心を動かしている、、

残念だな、、、、シンジ君、

君なら人間の絶滅より、世界が汚れながら続く事を望んでくれると思ってた、

君は神様になってしまうんだね、、

君が次に作る世界は、

君が次に作る生物は、

君が次に作る未来は、

人間より優れているかもしれないね、、

でも、、、

僕達は、、

カオルは光ながらもうすぐ爆発するシンジを悲しそうに目つめていた、、、

 

 

 

 

 

 

「うわあぁぁぁ、、、、、、、、、、、、、、、!!!!!!」

言葉にはならない、まさに空気の振動だった、

視覚で聞き取れる周波数ではなく、超音波といえる物かもしれない、

だが、地球上の全てを破壊していく、

全てを原子融解させていく、

そして、静かに、、、、、静寂の中、地球を大きくシンジの光が覆った、

シンジの体から生まれた翼が、、、エヴァンゲリオンの何重もの翼が、

世界を無に戻した、、、、、

 

 

第十九話へ続く



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