「天国行きのエスカレーター、その手すりは、鰐の革だった、」
新しい国ができた人口わずか十五人、
それも全員センスのない、単車乗りばかりが揃ってる、
ある日ストリッパーの腕に抱かれて眠ってた、
ボスが眼を覚ました、青ざめた顔に冷や汗を浮かべながら、
Hwouuuu!!
カオルは真っ赤なオープンカーを運転している、金色に染めた髪が生まれたばかりに風に絡まる、
その横ではレイが足をフロントガラスの上に乗せ、カーステレオから流れる歌に合わせて首を振る、
古い世代のやつらは金でなんでも買いあさった、
だけど俺達は自然の掟の中で生きる獣の世代さ!
焚き火を取り囲む、俺達十五人、
世界で一番新しい国、
そのメロディーに合わせて首を振るレイは、コバルトブルーの空と同じ色に染めた髪を両手でかきあげながら、赤い瞳を隠していたサングラスを額に上げる、
「ねぇ、シンちゃん!」
「なに、レイ!」
「この歌、やっぱり最高だね!とても昔の歌とは思えないよ!」
「そうだね、いつか僕らもこんな歌を歌えたらいいね!」
カーステレオから流れる曲はシンジもお気に入りだった、
だが、シンジは今は横で眠ったままのアスカの事で頭がいっぱいだった、
「ねぇ、、、カオル君、」
「なんだいシンジ君、」
「ノーマとケイは、、、どうしたんだろう?」
「あぁ、、シンジ君は気にする事はないよ、」
「でも、、、、、、」
シンジはこの車に乗り込む前の事を思い出す、、、
「やっと見つけたんだ、アスカちゃんを蘇らす方法を、」
「そ、そんな方法があるの!」
「あぁ、、かなり危険だけど、シンジ君ならできるかもしれない、」
「僕なら、、、」
「そう、君なら死者の道を開くことができるはずだよ、」
「死者の道??」
「きっとシンジ君なら見つけられるよ、アスカちゃんの魂の座を、」
カオルは眠り続けるアスカを両腕に抱いたまま、困惑してるシンジに笑顔で答える、
「本当はすぐにシンちゃんの所に行きたかったんだけど、アスカの魂を見つけるのが先だったからね、」
レイも再び後ろからシンジに抱きつく、
「レイ、、、」
「まぁ、アタシもある程度カオルから話しを聞いたから、シンちゃんがあの瞬間に世界の終わりを望んだ気持ちもわからなくないけど、、、、」
レイは赤い瞳で、優しく話す、
シンジの心には、忘れかけていた気持ちが何処から蘇ってきていた、
「でもね、、もう一度真実を見て欲しいの、もう一度、」
「もう一度?」
「そう、、その結果、シンちゃんが全ての終わりを望むなら、、それでもいいと思うけど、、、、」
レイの透通った赤い瞳は何かを思い出させる、
あの瞬間以来、ずっと忘れていた事を、、
「もう一度思い出して欲しいの、、アタシとシンちゃんが始めて出会ったあの雨の夜を、カオルと一緒に始めて歌った歌を、、、、そして、アスカが望んだことを、」
シンジは必死に思い出そうとする、
だが、思い出す事は、アスカの死、
アスカの笑顔を思い出すと、アスカの死んだ顔を思い出す、
アスカの声を思い出すと、アスカの無言の死顔を思い出す、
アスカの夢を思い出すと、アスカの突然の非常な死を思い出す、
何故、、アスカが死ななければならないのか、
何故、、無意味に殺されなければいけなかったのか、、
僕の愛する人が、、、
僕と一緒に夢を見る人を、、
「レイ、、、思い出せない、、、どうしても、、、、僕が思い出せるのは、、残酷な現実だけだよ、、」
「シンちゃん、、、」
それでもレイの瞳は優しさを失わない、
とても深い、無限の力を持つ優しい瞳でシンジを見つめる、
「そうだよ、シンジ君、君が今やる事は、進化した人類を創造する事だよ、」
「そうよ、そして、アスカやレイ、皆で幸せな世界で生きる世界を創造することよ、」
ケイとノーマがシンジに語り掛ける、
「そうだろ、シンジ君、仮にこのままアスカちゃんを蘇生させても、世界があのままではまた同じ事が繰り返される可能性が大きい、」
「アスカやレイが再び哀しみ、苦しみ、そして、一部の権力者たちにゴミの様に殺されるかもしれないのよ、、、、それだけじゃない、地球自体が死んでしまうかもしれないのよ、あの腐敗しきった世界をただ蘇らせても、いずれはシンジ君がした様に、人類、地球は絶滅するわ、だから、、シンジ君の力が必要なの、お願い、、、人類、地球を救って、、、、シンジ君、、、」
ノーマがシンジに近寄ろうとする、
その瞬間、レイがシンジとノーマの間に割って入る、
「そのいいかげんな未来を、シンちゃんに背負わせるのは止めてくれない、」
赤い瞳からはさっきまでの優しさは消えていた、
「そんないいかげんな未来を作ってどうするの?」
「進化した世界の何処がいいかげんなの?」
「なにを進化させるわけ、人間の心?法律?それとも絶対的な支配者?それとも神様?」
「全てよ、」
ノーマはレイと睨み合う、
「人間の他人への心、集団での生活常識、自然や他の生物への理解、全て法律化してでも、戒律にしてでも変える必要があるのよ、そうしなければ、人類は絶滅するわ、」
「ふん、すでにシンちゃんが無くしちゃったじゃない、人類とやらを、」
「そうよ、だからもう一度作るのよ、本当の意味での楽園を、」
「だからさぁ、そんなもの創ってどうするの?皆で仲良く、哀しみもなく、苦しみもない世界で生活すれば人類は絶滅しないわけ?どこにそんな保証があるわけ?それに今度進化の基準を作ったら、またそこから違う問題が発生するわ、そうしたらまた世界を壊すの?」
「それも必要ならね、」
「冗談じゃないわよ!私はごめんだわ、そんな曖昧な世界、しかも、だめになりそうになったら勝手に誰かに進化させられて、知らない自分になって、何時の間にか聖人になってるなんて、冗談じゃないわよ!」
「それはあなたの意見でしょ、あの世界を考えてごらんなさい。飢餓で日々何万人が死んでいく、民族紛争で子供が銃を持って赤ん坊を殺すのよ、軍人は革命を起こして税金で殺人兵器を買い漁る、政治家は自分が英雄になった気分で自分を神格化する、、、、そんな世界が普通だと思うの?そんな世界から逃げ出したと思ってる人間の方が大勢いるはずよ!」
「でも、進化しても変わらないわよ、、、、世界の哀しみは、」
レイの瞳が冷たくノーマを突き刺す、
「ど、、どうしてよ、」
「誰かに進化させられても、誰かに救われても、自分の意志で生きなければ、どんな思想もどんな宗教も、どんな法律も無意味よ、、、だれかに用意された楽園なんて、そんなの地獄だわ、」
「そんなことないわ!楽園の中で、互いを補い、互いを助け合う世界で生きることが地獄なわけないは、」
「じゃぁ聞くけど、誰が楽園を管理するの?」
レイはシンジと湖の水面を歩く、
シンジもレイに引っ張られて歩きだす、
「管理?」
「そう、楽園の中で生きる人間はいずれ楽園の意味を知ろうとする。そして、楽園の創造主を知ろうとするはずよ、いったい誰がこの楽園を管理してるのだろうと、」
「、、、、、、、、、」
「その時、あなたはどうするつもり。その人物を神への反抗として処刑するの?神の意志に従わない愚か者として消し去るの?」
「、、、、、、、、、」
「アタシはね、そんな神様に支配された楽園で生きるくらいなら、このまま絶滅してる方を選ぶわ、」
「、、、、、レイだけよ、そんな選択するのは、、」
「どうかしら、アタシは全ては自分達の力で変えて行く必要があると思うわ、たとえどんなに悲しくて、辛くて、残酷な現実をたたきつけられても、、、、、這い上がってみせるわ、そして、生きてやる、」
シンジとレイが水面から足を踏み出す、
そして、レイはノーマに冷たく言う、
「自分の力で生きられない人間なんて、誰かに管理された楽園で生活するなんて、そんなの生物の幸せじゃないわよ、」
そういってレイはシンジと共に、地面に自分の足で立つ、
シンジにとっては数年ぶり、数ヶ月ぶり、数日ぶりの地面だった、
(あぁ、、地面が存在するなんて、、、重力を感じるなんて、、、やっぱり僕はまだ生きてるんだ、、)
心の中でシンジはつぶやく、
「行こう、シンちゃん、」
「行くって、、どこに?」
「もちろん、その死者の道がある場所によ、」
「どこにあるの、、その場所は?」
「さぁ?」
「さぁって、、、レイ、」
レイは笑いながらシンジに腕を絡ませる、そして、いつのまにか用意されていた真っ赤なオープンカーにシンジを連れて行き、後部ドアを開けシンジを後部座席に突き飛ばす。
運転席にはすでにカオルが座っていた。
「うわぁっ!!なにするんだよレイ!」
シンジは前のめりになりながら、後部座席に倒れ込む、
「大丈夫、きっと見つかるわよ、」
ドアを開けずにジャンプして助手席に飛び乗るレイは、大きな笑顔で答える、
「見つかるって、、、」
「さぁ、カオル、
Let’s GO!!!」「ちょっと、、、レイ、、待ってよ、、、レイ、、」
シンジの声は、いきなり息吹を上げたエンジン音でかき消される、
「さぁ、出発だ!果てしない大地、果てしない道路、味気ないスープ、限りない旅へ出発さ!!」
カオルは後輪タイヤを一気に高速回転させ、砂埃をあげながら車を発進させた、
シンジには、何がなんだかわからなかったが、、隣で眠るアスカ、助手席で奇声を上げるレイ、運転席で果てしない地平線を見つめるカオル、、、この少年、少女の存在がとても気持ち良かった、、
ハートが狂って、勝手に100万ドルの笑顔を生み出す、
そんな気分だった、、、
「ねぇ、、、ノーマとケイはどうして進化した世界を望んでるのだろう?」
世界はすっかり夜になっていた、
シンジ達は車を止めて、焚き火を取り囲んでいた、
空は黒、、、そんな色だと思う、
だが、無数の星が黒という色を忘れさせるほど輝く、
とても生命の悲しさ、優しさ、純粋さを感じさせる、
そんな星の輝きにシンジは自分の心を少し責めていた、
「確かに、、、あの瞬間、アスカの死を自分で認めた瞬間、世界の終わりを望んだ、、、、でも、今は無の世界から何かを生み出さなければと思うんだ、、、」
「どうしてだい?」
「ずっと湖に浮かんでいて、、、僕には空気も、空も、風も、砂も、星も、、、、、時間も、空間もすべて無意味だと思っていた。でも、今、自分の足で大地に立って、風や、砂、星を眺めると、生物が生きてる世界の方が素晴らしい様な気がするんだ、、、、、、、、でも、、、」
「どうしたらいいのか、わからないと、」
「うん、、本当にあの世界を復活させることが良い事なのか、、、わからないんだ、」
「どうせなら、彼らが言ってた様に進化した人間の方がいいと、」
「そうとは言わないけど、、、不安なんだよ。また、同じ事を繰り返すのかと思うと、、」
焚き火の音がシンジとカオルの会話に味をつける、
「繰り返すとだめなのかい?」
「だめってわけじゃないけど、、、、でも、やっぱり悲しい出来事は少ない方が良いんじゃないかなぁ、、」
カオルの顔に焚き火の影が写る、
「楽しい事、嬉しい事だけが存在する世界が素敵だと言えるのかい?」
「、、、、、、、、わからない、」
膝を抱え、体を丸くするシンジはじっと炎を見つめる、
「哀しみや、刹那さが存在しなければ、嬉しさも楽しさもないよ。運命や人生はなくなり、恋も愛情も存在しなくなる、そんな楽園で生活するなんて地獄みたいなものだよ、」
「そうだけど、、、、でもあのままの人間を全て蘇生させても、、、、、」
焚き火の中で赤く燃える木々を、同じくらい赤い瞳で見てたレイが、ゆっくりと口を開く、
「シンちゃん、、、、、夢とか希望ってある?」
「夢?」
「そう、、、夢、」
「夢かぁ、、、、そうだなぁ、、」
シンジは少し笑いながら、体を丸めながら考える、
「、、、、、、、あるよ、」
しばらくの沈黙の後、恥ずかしそうに答える、
「どんな夢?」
焚き火から炎を割るような音が聞こえる、
「ずっと、、、ずっと、ギターを弾きながら、歌って、、、幸せそうな女の子や、少し狂った少年や、純粋な心を保とうとする大人、、、そんな人達と、気持ちいいライブを続けていけたら、、そんな人達と一緒に歌っていけたら、、、、」
「シンちゃんが創る、シンちゃんが信じる世界を歌っていく事で、その人達が幸せになれればいい、、」
「うん、、、、勝手な夢だけど、、、そう思っているよ、僕は、」
炎を割る音は断続的に鳴り響く、暗い空と無限の星に向かって、、
「シンちゃん、、、もし人間が楽園に住んだら、夢も希望も無くなるのよ、、、」
「、、、、、、、、、どうしてだい、あの世界で夢や希望が存在してたというの、」
「あの苦しい世界は、確かに夢や希望を捨てさせる様に、人間が社会が自分たちで作った世界だった。でも、、、自分たちの力で、夢を見ることができた、、綺麗な、純粋な夢を、、、、だから夢を現実にしようと願い、努力し、結果的には脱落して、哀しんで、後悔する世界だったのかもしれない。でも、夢を現実にしようと努力するから、そこで始めて人間が生きてた証が生まれるのよ。最初から用意されてた夢や希望、何を努力すれば夢が叶うかわかってるなんて、そんな世界が素敵だといえるの?」
レイの瞳が熱いのか、それともシンジの目の前の炎が熱いのかわからないが、シンジのハートは熱くなってくる、血液が体を走る感覚がわかる、、
「アタシは、生まれた時から捨てられた子供だった、、、親もわからない、物心ついたときから、汚い大人達の世界で生き延びる事だけを考えていた、、、盗み、殴り、騙し、、、鉄格子の中で何度も自殺しようと思ったわ、、、、でも、生きてれば、、、生き続ければ、、、、きっといつか人間になれる、、そう強く信じたの、強く、強く、何度も、、、、何度も、、、何千回、何万回、、、、、自分を信じて生き延びてきた、、、、、」
レイの瞳から言葉が流れてる、、、
その言葉はシンジの欠落した感性に流れ込む、
「そして、、、やっと、信じてた世界に出会えた、、シンちゃん、、、、、シンちゃんに出会ってから、全てが変わったんだよ、、、、アタシの心の色、体の形、髪の毛の感触、、、全て変わったんだ、、あの一緒に死のうとした夜、始めて出会ったアタシと一緒に死のうとしたシンちゃんが、、、、アタシの夢だったんだよ、、、、」
「レイ、、、、、」
シンジはやっと気がついた、
レイの瞳から流れる綺麗な滴に、、、、
「シンちゃん、お願い、、、思い出して、アタシやカオルと出会って、過ごした日々を、、、辛いことや、悲しい事だけを記憶にしないで、、、、、カオルもきっとシンちゃんと出会ってから人間として生まれた意味を知ったんだよ、、、、、、、お願い、シンちゃん、、、、思い出して、あの時、歌ってた気持ち、シンちゃんが信じる世界を、、、思い出して、」
(僕が信じる世界、、、、、、、)
シンジがレイの瞳から視線を外す、
そしてカオルの方を見ると、カオルの瞳も綺麗な赤に染まっていた、
「カオル君、、、」
「確かに、人は進化しなければいけないのかもしれない、、、、あの世界が正しいとは言えない、、、でも、その進化をするのは、人間が、生物が生き様とする意志の強さによってだよ。けっして、地球や、宇宙、そして神様の力で進化するんじゃない。人間が、夢や希望、愛や恋を感じるために生きる、信じ続ける力で進化するべきなんだよ。」
「、、、、、カオル君、、、」
「僕は君に何も強制、強要、示唆したりはしない。君が楽園を創るのなら、それでもいい。でもね、シンジ君、、、もし君がその楽園を創造したら、君が管理しなくちゃいけなくなる、君が神様になるんだよ。」
「僕が、、、、神様に、、、」
「そうだよ、仮に君が神様を止めても、誰かがまた変わりに神様になる、、、、楽園は、神様が存在するから存在するんだよ、、、、もし楽園を創造して、そこに逃げ込んだら、生物はそこで終わってしまうんだよ、」
「楽園は、、、、終わりなの、、?」
「どうだろう、、、それは君が決める事だよ、シンジ君、」
シンジはカオルの言葉に何も答えない、
いや、答えられないのだろう、
自分が神様になる、そんな世界が楽園ではないはずだ、
でも、アスカを殺した世界が、真実の世界だと思いたくない、
アスカを殺した人間が全てではない、
でもアスカが死んだことも事実だ、
何が真実なの、
人間にとって幸せって、、
僕が神様になって、真実を与えることが幸せなの、
違う、きっと違う、
でも、、、、
「シンジ君、、思い出すんだ、僕とレイと一緒に演奏してた時の心を、君の信じた世界を、」
「シンちゃん、感じて、、、あの切なくて、悲しいけど、、だからこそ純粋な気持ちで演奏できた世界を、」
そうだ、、
思い出してきた、、
あのステージで感じてた事、
アスカが見ていた、僕達のステージ、
僕が意識を無くし、歌詞も忘れて、叫んでただけのステージ、
ふらふらになってステージ脇に下がると、
アスカが素敵な笑顔で抱きしめてくれた、
レイが綺麗な体で抱きしめてくれた、
カオル君が、僕に微笑んでくれた、
ミサトさん、、、加持さん、、、、マヤさん、、
スタッフの人達、
そして、僕の世界を聞きに来てくれてい人達、
みんなの笑顔、、
あの瞬間が、
僕の真実だったんだ、、、
「どうやら、シンジは博士の思い通りには望まないようですね、」
「いや、、今はカオルとレイが側にいるからだよ、最後には望むはずだよ、楽園をね、」
「たいした自身ですね、」
「あぁ、なにせ我々側には最終手段が残ってるからな、」
シュラウドの後ろにはいつのまにかケイとノーマが立っていた。そして、ケイの手からシュラウドに赤く輝く球体が渡される、
「アスカの魂ですか、、、」
「そうだ、シンジ君がなにより望む真実だよ、」
ゲンドウはその輝きをじっと見つめる、
「、、、、、それでも、シンジは望みませんよ、」
「碇、どうして認めない、シンジ君が人類を滅ぼした時点で、お前の負けだ、」
「教授、私はとても諦めの悪い男でしてね、、、」
ゲンドウは不敵な笑みを浮かべながら、色付きメガネをかけ直す、
「もうすぐシンジ君達はここに来る。そして、アスカの魂の復活を望み、アスカの魂が二度と壊れない世界を望み、新しい人類と共に蘇るのだよ。そして我々エヴァウイルスと共存できる選ばれた人間だけが、全てを支配するのだよ。」
「昔の専制君主時代の様にですか?」
「あの愚かな法王や国王とは違う。真の意味で人類にとっての基準を教えるのだ。我々の欲望で支配するのではない。言うなれば、神が基準を創るのだよ、人間が感じる幸福の基準をな、」
「その基準を受け入れ、その基準の中にいれば安定した生活、約束された未来、哀しみもなく、苦痛もない世界が約束されると、」
「そうだ、人間は自分たちの生んだ科学が神だと思い込んだ。そして、人間の中で勝手に階級をつけ、支配する側と奴隷になる側と分けた。愚かな発想だよ、、、、だが、今度の世界は、人間の能力を超えた我々エヴァウィルスを持つ一族が支配する。しかも、暴力や武力によってではなく、崇高な理念、明確な思想によって支配するのだ。まさに、神と人間の関係が明確になるのだ、そんな楽園がもうすぐ生まれるのだよ。
神の存在が明確になり、神に救いを求める、そしてその神が明確な基準と方法を示す。それこそ人類が生き延びる唯一の方法なのだよ。」「人類が生き続けるのに、神の存在など関係ありませんよ。生きる意志と希望だけがあるだけですよ、」
「はは、、それでは今のままではないか。今のままでは明らかに人類は絶望するぞ、」
「それも人類の望んだ道です。われわれ一族が用意した安っぽい楽園など、人類には必要ないのですよ、」
“安っぽい楽園”という言葉にシュラウドの表情が多少変わる、
「それでは、、、、、シンジ君はあくまで今のままの人類を選ぶというのかね、」
「えぇ、、」
「アスカの魂が永遠に消えてもかね、」
「えぇ、、」
「君とユイ君が選んだ道を歩むというのかね、」
「そうです。その為ユイは自ら死者の道を歩み、涅槃の地を目指したのです。シンジがユイを裏切るとは思えません。」
暗い空間で二人の男が睨みあっていた、
いつまでも、無言で互いの信じる道を、信じる世界を望み続けていた、
果てしない荒野、そんな簡単な言葉では表せない世界。
湿度など無いに等しい空気、肌を無数に切り裂く風、地獄の炎であぶられてる大地は蜃気楼の芸術を見せつける、、、、そんな世界は生物の存在を許さない、そう言ってるようだ。
だが、シンジを乗せた車は走る、
死者の道を見つけるために、
砂煙を上げながら、狂った様なエンジンの爆音を響かせながら走る、、
「ねぇ、カオル君、、、、どこまで行けばいいの?」
「なにが、」
「その“死者の道”って道はどこにあるの?」
「存在してるんじゃない。君が作るんだよ、」
「え!?!?」
驚くシンジの顔を、すれ違う風が笑っている。
「君が望めば自然とその道がそうなるんだよ、」
「僕が、、、望むの?」
「そう、、心底、世界を作りたい、復活させたい、そう、望めば“死者の道”は開けるはずだよ、」
「そんな事、、、」
カオルの不可思議な発言にシンジはただ戸惑う、
「死者の道、、そなわち、死んだ人間が輪廻転生するために通る道なんだよ、」
「そんな道、、、」
「存在するんだよ。その道を進む魂を、シンジ君が誘導するんだよ、、、、転生するためにね、」
「そんな事、、できるの?」
「できるも何も、シンジ君は一回人類を絶滅させてるんだから、蘇生させる事もできるよ。さぁ、シンジ君、好きなときでいいから、願ってくれよ。少なくとも、この車のエンジンが壊れる前にね、」
「どう願えばいいの?」
「そうだなぁ、、とりあえずアスカちゃんの魂に会いたいと願えば大丈夫だと思うよ、」
「、、、、、、、、そんなんで、大丈夫なの?」
「あぁ、、でも覚悟を決めてからにしてくれるかい、」
「何を覚悟するの?」
「、、、、、、、生きる意志さ、」
地面を割るようなエンジン音が、乾いた空気と風にとてもマッチしている、
そんな乾いた世界もいいかもしれない、、