「優しくて、悲しい、灰色の世界」
思い出した、、
レイと始めてあった日、、、
霧雨が降り続く、、暗くて蒸し暑い夜だった、、
怪我をして血を流すレイはとても綺麗で純粋な瞳をしていた、、
僕のハートにヒビが入るぐらい、素敵な出会いだったけど、、
僕達は、世界の終わりが来ない代わりに、自分たちの終わりを望んだ、
二人、始めて出会ったのに、二人で終わりを望んだんだ、、
激しい流れに落ちて行く中、僕達は感じあえたんだ、、
心の底から、、、信じあえたんだ、、、
とっても悲しい世界だってね、、
でもあの夜、僕達は死ぬことはできなかった、、
再び目が覚めた時、レイがいてくれて良かった、、
そのお陰で、生きることの意味が少しだけわかった様な気がした、、
もしかしたら、、生きることに意味があるんじゃないかって、、
なぜ、神様に招待されなかったのか、わからないけど、
まだ苦しみから逃げる列車には、お金が足らなくて乗れなかったんだ、、
その代わり、自分達の信じる未来を見つけようと思ったんだ、、
レイと一緒に、、
暖かいミルクを飲みながら、、、
僕達は信じあったんだ、、
カオル君は苦しんでいた、
いや、苦しみじゃなく、絶望してたんだ、
生まれたと同時に母親を亡くし、
その原因を自分のせいだと父親に言われ、
虐待を受け、体に悪魔の印を入れられ、
永遠の苦しみを受ける呪を込められた、
そんなカオル君は心を閉ざし、全ての価値観、感情を捨てていた、
そんな時、僕達の家に来た、
とても他人とは思えなかったんだ、、
形はどうであれ、、、僕と同じハートを持ってると思ったんだ、
だから、、始めて歌ったんだ、
カオル君の為に、他人の為に、、、
風の綺麗な屋上で、三人で笑いながら信じたんだ、、、
生きていく道が、悪魔の道でも、神様の道でも、
僕達の信じる未来を作るんだって、、
涙を流すカオル君、必死に笑顔を探すカオル君と
嬉しそうに笑うレイ、寂しさと哀しみを笑顔で表すレイと、
幸せになるって決めたんだ、
誰もしらないやり方で、、、、、、
未来を創造するんだって、、、
そう決めたんだ、、
母さん、、
何となくわかったよ、
あまりにも言葉が多すぎて、僕は自分の詩を忘れていたよ、
涙がこぼれた詩、、
刹那さや、悲しさを呼ぶ詩、、、
優しさと愛を叫ぶ詩、、
全て単純な言葉だった、、
なにも難しい言葉じゃなかった、、
ただ、、気持ちを歌っただけの詩だった、
だから余計に純粋だったんだ、、
母さん、僕に教えてくれたよね、、
“愛は感じること、触ること、、、ただ、それだけよ、、”
難しい事なんか、何もない、、ただ、愛することを信じることだけだって、、
自分が信じる未来を、、、
誰も知らない、未来を信じるだけだって、、
それが、生きるってことだって、、
母さん、、教えてくれたんだよね、、、
“瞳を閉じて、思いでだけに囚われていてはいけない、、歩き出すんだって、そして自分の力で未来を見つけるのよ、”
そう教えてくれたよね、、、
シンジはゆっくりと降り返る、
見えない壁の向こう側でレイが心配そうな表情で見ている、
カオルも珍しく真面目な表情でいる、
(大丈夫、、、思い出したよ、、)
笑顔でシンジは二人に伝える、
自分の言葉を思い出したことを、、、、、
ハートにひびが入るほど素敵なサウンドと、切れ過ぎて誰も触れないサウンドと、
素敵な色と空間を創っていた独特のシンジ達のステージを、
自分たちの力で見つけられる未来を、、
シンジは思い出したことを、笑顔で伝える、
その笑顔を見たレイとカオルは、張り詰めていたギター弦がはじける様に緊張感から解放される、
「シンちゃん、、、」
「シンジ君、」
そう唇が動いたとシンジは思う、
いや、言葉なんか聞こえなくても、僕達は感じることができるんだ、、
レイとカオルは右手でピストルの形を作ってシンジを撃つ真似をする、
「BANG!!」
そう二人が笑顔で発射する、
シンジは少しだけ撃たれたふりをして、笑顔で笑う、
そう、、もういつものシンジだった、、
レイも知ってる、カオルも知っている、、
アスカが愛した素敵な詩を歌う、綺麗なギターを弾く少年に戻っていた、、
「知りたくないんです、、、」
シンジはシュラウドに視線を移す、
「何をかね、、、、」
シュラウドはさっきまでの態度とは違い、両手を握り締め、椅子に深く腰掛けている、
「天国の住所なんて、、知ってはいけないんですよ、」
「だが、天国の住所こそ、人類が望んだ未来だ、」
「否定はしません、、、、でも、天国の住所は、自分の力で見つけるものです。誰か他人が、神様と名乗る他人が教えるものではないはずです。」
「教えなければ永遠にカオスの中で苦しむか、数年後には完全に絶滅する、」
「それも否定しません、、、でも、絶滅しても、信じられない程の苦しみと哀しみを受けても、それが人間だって実感することの方が大切な気がします。」
「馬鹿な!楽園で生活することを人類は望んでいるのに、君はその人類の望みを裏切るのか!」
椅子に深く座したまま、シュラウドが大声で叫ぶ、
「、、、、、そうかもしれません、、」
透通る、小さな声でシンジは答える。
シュラウドとは対象に、笑顔を浮かべながら、
「でも、、、母さんがよく歌っていたあの詩も、、、僕が信じる詩も、全ていつの日にか全人類が純粋な気持ちを持てる事を願っているんです。決して、楽園を作り、その中で哀しみもなく、苦しみもない世界を望んでるわけではありません。」
「純粋な気持ちを持った結果が、絶滅でもかね、」
「ええ、、仮に絶滅したとしても、魂は残ります。そして転生し、また新たな生物が生まれます。ある魂は涅槃に留まるかもしれません、でも、一部の魂は自らの力で、転生し、新たな生物として進化するはずです。そして生まれた世界、社会こそが楽園なはずであって、、、エヴァ一族で管理された楽園なんて、そんなの偽物ですよ。」
笑顔で答えるシンジだが、言葉に込められた力は意志の強さを増していく、
「己の力で生きる、そして死んでいく、、苦しみも哀しみも知って、絶望のまま死ぬのかもしれないけど、素敵な空と風と海の色ぐらいは知ってから死ぬんだ。決して無意味な生と死ではないはずだ。それなのに、勝手に楽園を作り、かってに天国の住所を作り、そこで魂を管理するなんて、、、誰も望まないよ。」
シュラウドは身動き一つせずに、シンジの言葉を聞く、
「愚かな、、、、永遠に保証された未来を人類は探し、望んだ。それは歴史上でも確認できる。時の権力者達は常に永遠の力、魂を求めた、、、神に近ずく為に、己の欲望の為に、、、、、、だが、我々エヴァ一族は全人類の為に、永遠を求め、やっと創造できるところまで来たというのに、、、、」
「権力者達の欲望が悪いなんて、、、、そんなこと言えないですよ。」
シンジは少し皮肉っぽく笑う、
「何故かね、」
「エヴァ一族が望む楽園も、欲望の塊だから。結局は、管理する者の欲望で固まってしまう。その管理者が、僕であろうと、、、、、、それとも、あなたであろうとね、シュラウド博士。」
「、、、、、私の欲望の為に、楽園を作ると、、、、」
「そうじゃないんですか?」
シンジはシュラウドを睨みつける、
さっきまでの笑顔ではない、
野生の瞳を、茶色い綺麗な光を持つ、
ステージで雄叫びを上げながら、ギターをかき鳴らす時の瞳で、
シンジはシュラウドを突き刺す、
「仮に、、僕が楽園を作って、、この死者の扉を開き、魂をその楽園で再生させたとしても、、、、貴方が管理するんじゃないんですか?」
「、、、、、、、、、、、、、、、、」
「もし、僕が楽園と死者の道を創ったら、僕は神と同じ立場になっていしまう。実際に新しい人類を導くのは貴方になるんじゃないですか?過去の宗教家達の様に、、、、神の子供、神の代理人、神の意志を告ぐ者、神の力を持つ者として、、、、、シュラウド博士が人類を管理するのではないですか?」
「、、、、、、、、、、、、、、、、」
シンジの言葉にシュラウドは何も答えない。
いや、答える意志がないのだろう。ただ椅子に深く座し、手を組んだまま不敵な笑顔を浮かべる。
「違うんですか?」
「、、、、、そうかもしれないなぁ。だが、それこそ人類が求めていた事だ。」
「何がですか?」
「シンジ君。人間は常に不安の中で生きている。不安定な人生、突発的な哀しみ苦しみを恐れ、安定した未来を求めている。そんな彼らが常に求めるものこそが、、、、、、、、神の存在だよ。」
「神の存在、、、、」
「そうだ。明確な神の存在とその神の意志を伝える者、伝道師の存在だよ。もしも、その二つが明確な存在として、科学的にも証明でき、全人類に承認されれば、人間は安定した未来を築く事ができるのだよ。
それが、楽園と呼ぶのか、地獄と呼ぶのか、そんなことは関係ない。人間より絶対的な力を持ち、地球に君臨し、全てを管理する存在、、、、、神なのか悪魔なのそんな称号は関係ない。あるのは、決まった未来、安定した未来だけ、、そんな世界を人類は望んで、、、」
「違う!!!」
シンジが大声で叫ぶ、
その叫びに見えない壁が振動する、
「違う、人類は望んでいない。確かに神でも悪魔でも関係ないよ、、、でも、僕達は自分の力でを見つけなければいけないんだ。その為に生きて、未来を作るんだ。夢を持ち、希望を持ち、信じあえる仲間を作り、素敵な詩を作って、、、、、その先に見つけるんだ、、素敵な未来を、自分の力で。決して他人の与えた勝手な神様や悪魔を崇拝しても、夢が叶うわけじゃない。」
シュラウドはシンジの言葉の強さを受け流す、、
まるで始めから聞き流しているかの様に、、
「悲しくて、二度と立ち直れないほど傷ついて、辛くて自殺するほど絶望の底にいても、僕達人間は生き続けなければいけないんだ。いや、生き続けることができるんだ。そして生き続ける希望こそ、不確定な未来なんだ。その未来を決めてしまったら、人間は人間じゃなくなる。そんな楽園は死んでいても生きていても同じだよ!」
シンジは勢い良く話す、
シュラウドの余裕の笑顔に食らいつく勢いで話す、
「では、、、シンジ君は、楽園を望まないと言うのかね、」
「えぇ、僕は望みません。」
「アスカ君が再び苦しみ、死んでもかね、」
“アスカ”という言葉に一瞬ためらうが、シンジは答える、
「えぇ、アスカは苦しみや哀しみに負ける人間じゃありません。」
「たいした自身だな、」
「僕はアスカを信じます。きっとアスカもそんな楽園、望みませんよ。」
「そうか、、、、」
シュラウドはゆっくり、大きく息を吐く、
そして天井のない、暗い空間を見上げ、目を閉じる、
何も聞こえない、何も動かない、時が流れることを忘れたかのごとく、
全てが止まっている、、、
ただ、シュラウドの組んだ手の人差し指だけが、リズムを取るかのごとく動いていた、
「そうか、、、シンジ君は望まぬか、」
「えぇ、僕はこの死者の扉を開けるつもりです。僕が一度滅ぼした人類、地球上の全ての生命を復元させる為に、そして、その魂が行きつく先は、、、、、今までの人間の歴史の続きである事を願うつもりです。」
「それも、よかろう、、、、」
シュラウドは再び大きく息を吐く、
そして椅子ごと回転し、扉の方向を向く、
「扉を開きたまえ、、君が望む世界を望みながら、開くのだ、」
シンジはゆっくりと足を進める、
一歩、一歩、足音を確認するかの様にシンジは歩く、
暗い空間にその足音だけが響く、
いつのまにか、神と人間の間の見えない壁は無くなっていた、
シンジはシュラウドの脇を通る、
一瞬、二人の視線が合う、
真剣なシンジの瞳とは反対に、シュラウドは不敵な笑みを浮かべ、なぜか皮肉っぽく笑っていた、
シンジは少し気になったが、無視して過ぎ去る、
次にシンジはゲンドウの脇を通る、
二人は睨み合いながら、何も言葉を交すこともなくすれ違う、
そしてシンジは死者の扉の前に立つ、
改めて見上げると恐ろしいほどの威圧感がある、
不気味な文字、全ての歴史を刻んだ木造の門、
人類の全ての苦しみ、哀しみ、絶望、失望、怒り、恐怖、不安、、、、
そういったものを全て表したこの死者の扉の奥に、
魂の楽園、涅槃の地が存在する、
その地に留まっている魂をもう一度転生させる、
その道が死者の道である、
そして、その道の行く先は、、、、、
「真中に手の平をあてれば、自然に開くはずだ、、、」
ケイが横に立つ、
「ケイ、、、、、ごめん、僕は進化した人間は、、」
「いや、いいんだ。別に気にしてはいない。君が進化を望まないのなら、仕方ないことだよ。」
「ケイ、、、」
「確かに、天国の住所は必要ないかもね、」
反対側にノーマも立つ、
「ノーマ、、」
「でも、あの汚い大人達の世界がまた戻るのかと思うと、少し憂鬱になるけどね、」
「ごめん、、、でも、その先にある未来を決定する事は僕には出来ない。不安定な、不安だらけな未来を進む方が、人間には幸せだと思うんだ。」
「シンジ君が本当にそう思うなら、それでいいと思うわ、」
「ありがとう、、、」
シンジは少し笑ってみせる、
「ここに両手をつければいいの?」
扉の中心にある黒い手の形をした跡にシンジは手の平を合わせる、
「そう、そして、この扉がシンジ君と君の体に眠るエヴァンゲリオンを認識すれば、自然と扉が開く、」
「あなたの願いと一緒にね、」
ケイとノーマの説明を受け、シンジは手形の跡に手を合わせ、ゆっくりと目を閉じる、
両足を少し開き、全神経をての平に集中させ、シンジの“気”を扉に送る、
段々と体が熱くなる、
熱はどんどん上がり、シンジの体から蒸気が上がる、
扉が少しずつ振動していく、
シンジの“気”に扉が明らかに反応している、まるで生物のごとく、
嬉しさを感じてるように、振動している、
シンジは扉と対話する、
心の奥で、言葉ではない何かで対話する、
シンジの望む未来を望む、、
ありったけの思いを込めて、魂を伝える、
そして、扉もシンジの魂を感じる、、
その扉がシンジを受け入れる、、、
その瞬間、
「ズキュゥーン!!」
大きな銃声がした、
シンジの集中は一瞬にしてなくなる、
また誰かが撃たれた、
そう思い、シンジは同時に降り返る、
銃声の元となる拳銃はシュラウドの右手に握られていた、
明らかに銃口はシンジの背中を狙ったものだった、
しかし、シンジの背中からは血は一滴も流れていなかった、
驚き、いや状況認識だけで精一杯のシンジは、感情など感じてる時間はなかった、
だが、シンジの足元にうずくまる、ゲンドウの姿を認識する事はできた、
「と、、、父さん、、」
膝をつき、背を向けたままのゲンドウからは何も返事がない、
その姿を冷たい表情で見ていたシュラウドは、再び狙いをシンジに合わせもう一度引金を引く、
「ズキューン!」
その瞬間、ゲンドウがもう一度シンジの前に立ち、銃弾を受ける、
今度はシンジの前に立ったまま、動かない、
「シンちゃん!!!」
「シンジ君!!」
レイとカオルが一気に走り出す、
そしてシュラウドに殴りかかる、
だが、その行為をケイとノーマが邪魔をする、
「どけ、ケイ!ノーマ!」
「どけないよ、カオル!」
「ふざけないでよ!邪魔よ!」
「博士の邪魔はさせないわ、レイ!」
レイとカオル、ノーマとレイが絡み合う、
その後ろではシュラウドとゲンドウの睨み合いが続く、
「父さん!!」
シンジは叫び、ゲンドウの前に回ろうとする、
しかしゲンドウはその行為を背をむけたまま右手で制する、
「父さん!」
「動くな!、、、シンジ、動くんじゃない、、」
「父さん、、、、、」
シンジは動かないゲンドウの背中をただ呆然と見つめている、、
「ゲンドウ、、、」
「シンジが、、、、貴方の未来を望まなければ、、、、、、今度は殺害ですか、、、」
「シンジ君が望む未来は、間違っている。それでは人間は幸せになれないのだよ、ゲンドウ、」
「ふっ、、、、お笑いですな、」
「何が可笑しいのかね、この人類の存亡をかけてる時に、」
「博士、あなたこそ、、、、絶滅を導く根源だからですよ、、、、」
「ほう、、何故かね、、、」
「間違い、、正しい、、、そんなことは存在しないからですよ、、」
ゲンドウは口元から赤い液体をもらす、
シンジにはその口元を見ることは出来ないが、何故かゲンドウの表情を感じる事ができる、
人間の、いや生命の強さ、、尊さ、生きる気力のこもった瞳で相手を睨む、
冷たい汗を流しながらも、相手を威嚇し、自分の意志を貫く瞳は、
どこか普段のゲンドウとは違う、人間的な印象をもっていた、、
「言葉などで説明し、全てを判断できるなど、人間思いあがりもいいところだ。善も悪もすべて根源は同じ場所から来ている、、、、、魂というところからだ。それなのに、、あなたは、いくつもの言葉で真実を装飾し、歪められた真実を正しいとしてる、、、、それが可笑しいと言ってるのです、、」
「言葉が無意味だというのかね、」
「全てがそうだとは言わない、、、、しかし、貴方は言葉の装飾に惑わされ、真言を忘れているのですよ、」
「真言、、、、」
「えぇ、、、人間も、自然も、地球も、星も、宇宙も全て簡単な真実だけで作られている、、、、装飾されていない、真言だけで創造されている。その真言を忘れ、、、小さな価値観で正義を振り回す貴方こそ、、、、、生命を根底から絶滅させるものだ。」
「正義を降り回す、、、」
「そうです、、、、、人間が考えた一方的な論理、神の存在、悪魔の存在、、、全てが“無”なのですよ。我々エヴァ一族は、、、確かに地球や、自然の意志を感じる事ができ、他の人間とは違う意味で存在している生物かもしれない。だが、、、、決して、人類を救う為の生物でもなく、、地球の意志を伝え実行する生物でもない、、、、、、、、、、我々は真言を求め、真の生命たる姿、魂の進む道を照らす光明たる存在なのです。」
ゲンドウの背中から大量の液体が流れ出る、、
言葉を生む度に、、
シンジの足元に溜まる赤い液体の量は増えている、
それでもゲンドウは倒れることもなく、シンジの前に立ち続ける、
「我々一族は、、、、、、死者の道を照らす、、、、、それだけの存在なのです、、決して、、、、神や悪魔といった、、人間が作り上げ、言葉で装飾した存在ではないのです!」
ゲンドウは色付きの眼鏡を外し、数メートル先に立つシュラウドに視線を送りつける、
「しかし、その実態のない神もなれる。そして導く事もできる。それがエヴァンゲリオンだ!」
「エヴァンゲリオンは、、、、その道を創るだけです、、、、その道を誰が通り、どんな道を進むかは、、、、魂自体が決めることです、、、、、我々が決める事ではないのです。」
ゲンドウは首だけをひねり、表情をシンジの方に向ける、
「シンジ、、、、、」
「、、、父さん、、」
「シンジ、、よく聞け。これからも、どんな世界でも悲劇が存在する。哀しみ、苦しみは消えない、、、魂はその悲劇を受け入れるだけの力を始めからは備えてはいない、、、、、グフッ、、」
「父さん!!」
ゲンドウの口から、大量の血液が流れ出す、、
それにも関わらず、ゲンドウはシンジから視線を外さず話す、
「だが、、、魂とは、人間とは弱い生物だ、、、だから逃げる、欲望や、簡単な死に逃げるのだ、、、、だが、人間は自分の意志で、、、、悲劇を乗りきる事ができる。哀しみや苦しみを忘れるわけでもなく、、、、心に刻んだまま未来へ歩めるのだ、、、、、シンジ、お前がレイやカオルと歌いはじめたようにな、、、」
「、、、父さん、、、、」
「シンジ、、、お前の信じた未来を進め、、、そして、、、お前の信じた幸せを感じろ、、、それが、、、、、、、、、世界を照らす、、光明となる、、、、、、」
「父さん!!!」
シンジは叫ぶ、
再びシュラウドの方に表情を移したゲンドウに、
最後の一瞬で見せた、、ゲンドウの父親としての表情に、
シンジを愛し、ユイを愛した、、、、父親としての表情に、
シンジは力を込めて、、、
ありったけの気持ちをこめて叫んだ、、
「急げ、シンジ、、、時間がなくなる!扉を開くのだ!」
恐らく、これが最後だろう、
そう父親として、シンジに愛を見せる瞬間は、
これが最初で最後だろう、、
もう二度と遭えない、、
シンジにはそれがわかっていた、、、、、、、