死者の道

「oh,ya!oh,ya!Oh,Yhea!」

 

 

 

もう二度と会えないだろう、

後悔の念が渦巻く中、シンジはゲンドウの背中から視線を外す事ができなかった、

忘れていた記憶、父が自分にした酷い仕打ちの記憶、

自分で全て心の奥にしまい込んだ、父親の記憶、

普段思い出すと、気持ちが悪くなる、、哀しみと苦しみで胸が壊れそうになる、

だが、今、ゲンドウの背中を見ながら、自分の足元に溜まる赤い液体を見ながら記憶にふれると、

なぜか、全てが暖かい、、、

恐らく、それは、あのゲンドウの表情を見たからだろう、

母、自分を愛している、、、間違いなく愛してきた、父の瞳を、

いつもはサングラスの奥で隠されている威圧的な瞳、

その瞳から溢れでる、綺麗な愛、、、父としての愛、

それだけではない、おそらく男としての意志、理念、思想、そういったものが一瞬でシンジには伝わった、

これが、碇 ゲンドウ、、、、

これが、僕の父さん、、

これが、最後の瞬間、、

 

「何をしてる!早く扉を開くのだ!」

かすれた声で、血の溜まった口で叫ぶ、

シンジは気がついた、いつのまにか自分が涙を流してる事に、

悲しいのか、苦しいのか解らないが、、

純粋な雫が頬を走る、、何度も、何度も、瞳から走る、、、、

そして小さな声で、呟く、

「父さん、、、、、、、、」

“父さん”、その言葉の後に言った言葉は誰にもわからない、

だが、ゲンドウは小さくうなずき、微笑んだ、、、

その微笑みはシンジにも伝わった、、

 

 

 

「カオル!人間が自分の意志で選べるほど未来は甘くはない!」

「甘くないから挑戦するんだよ!」

「人間の意志ほど弱く儚いものは無いはずだろ!」

「だが、それほど強い物も存在しない!」

「全てが決まった未来を作るわけではない!

神の実存という人間にとって最高の支えを創造するだけだ!」

「それが、支えになるのは神の特殊な力に縋る臆病者だけだ!本当に生きる力を持ち、未来へと進む力を持つ人間の神は常に心の中に存在する。その神を具体化しても人間は幸せにはなれない!」

「そういった人間が地球を破滅に導いているのがまだ解らないのか!」

「違う、破滅に導いてるわけじゃない!苦しみの道を乗り切ろうとしてるんだ!全ての魂が汚れてしまったわけじゃない!」

ケイとカオルは激しくぶつかりあう、

互いに体をぶつけ合い、互いに意志をぶつけ合いながら、無様に、みっともなく組み合い、転がる、

レイとノーマは普段は決して見れない、今まで見たことのない二人の姿に驚き、呆然としている、

殴りあう二人、それでも自分の意志を信じ、自分の魂の進む道を信じ、互いに傷つけあう、

まるで、人間同士が思想、宗教、経済の違いで争いをするかのごとく、

二人は、魂の進む道を模索しながら、、傷つけあう、

「シンちゃん、、、、」

レイはそんな二人の向こう側で、再び死者の門に向かったシンジを見ていた、

 

 

 

 

神さまが人格者だなんて、

誰が言ったの、

きっと昨日公園で転んだ老人が、

空に向かって叫んだだけさ、

その叫びを聞いたワイドショウのレポーターが、

退屈な世界に噂を流したのさ、

 

言葉で救われる、愛に溢れた言葉で救われる、

哀しみを無くせば、次に来るのは素敵な未来、

約束したんだ、月の見えない夜に、

素晴らしい預言者が世界を救うって、

そう信じなさいって、

 

神様が純粋だなんて、

誰が出会ったの、

きっとテレビの前にすわった太った娼婦が、

窓の下の浮浪者に叫んだだけさ、

小さな犬小屋に住む恋人達が嫌いだから、

きっと邪魔したかっただけさ、

 

僕が作った聖書を読んでくれ、

きっと悲しい気持ちでいっぱいになるよ、

でも涙を我慢したらだめだよ、

流した涙の分、純粋な言葉を失うんだ、

きっと素敵な大人になれるさ、

きっと素晴らしい未来になれるさ、

きっと世界で一番幸せな人になれるさ、

僕が作った物語の中で、、、

 

 

 

 

レイはいつもライブでやる曲を心の中で歌っていた、

いつもラストの方でやる曲、、、

私が歌詞を考えて、シンちゃんがリフを作って、4チャンネルの時代遅れのMTRでとった始めての曲、

ミサトやレコード会社の人達はあまり良い感じじゃなかったけど、

シンちゃんとカオルはとっても気に入ってくれた、

同情からじゃなく、本当に気に入ってくれた、

レコードには入ってないけど、いつもライブでやる曲、、

まさか本当にシンちゃんが聖書を書く事になるとは思わなかったけど、

シンちゃんはきっと選ぶと思っていた、

世界中が“世界で一番幸せな人”になるより、

哀しみが溢れてる、素敵な現実を選ぶと、、、

そう思っていた、、

やっぱり、シンちゃんの瞳、とっても素敵だよね、、

その瞳が、、、

好き、、

 

 

 

 

シンジはもう一度“死者の門”に向き直る、

そしてゆっくり両手を動かす、

小さな手のひらを黒い、歴史以上の重みを持つ、全ての苦しみの扉にあてる、

シンジは体中の気をすべて手の平に集める、

血液が轟音を立てながら走る、

明らかにその音が聞こえるシンジは、瞳を閉じ、

意識も閉鎖する、、

そして、

心との会話に入る、

 

 

 

“選ばれし、言葉を持たないものよ、何故にこの扉を開ける?”

(僕は、、一度壊した世界を取り戻したい、自分の手で、、、)

 

“選ばれし者よ、この扉を開ければ再び世界は時を持つ、空間を持つ、それでもよいのか?”

(かまいません。世界が未来という希望と絶望をかんじれるのなら、、)

 

“選ばれし者よ、この涅槃に補完されている魂が再び苦しみに曝されてもか?”

(苦しみが、哀しみが魂を汚すのではないです。欲望が魂を汚すのです。)

 

“選ばれし者よ、魂が輪廻の業から逃れられず、魂を浄化できずともいいのか?”

(輪廻の道を歩いても、現世の道を歩いても、欲望を捨てなければ同じです。)

 

“選ばれし者よ、ではなぜ欲望を持たない世界を望まぬ?なぜ欲にまみれた世界を望む?”

(欲望、、、、それこそ人間の生きてる証拠だからです。本来僕達の魂は欲望でできてるからです。)

 

“選ばれし者よ、ではその汚れた欲望で絶滅への道を進むのが真の姿だというのか?”

(いえ、生きる意志、進化する意志、すべてが欲望からうまれすのです。欲望のない世界は未来がない、愛がない、優しさも、嬉しさも無い、ただ物質をして存在するだけの世界です。)

 

“それでは最後に問う、選ばれし者よ、魂本来の姿とは?”

(、、、、、、誰もがみんな、この地球という星の一欠けらとして生きる姿、それだけです。)

 

 

 

 

 

 

 

 

うわぁぁぁああああ!!!

叫びがこんなに響くんだ、

この空間は無限な感じがしてたけど、、

どこまで僕の叫びは届くのだろう、、、、

父さん、、まだ僕の後ろで立っているはずだ、

銃声はしてるけど、、、僕の体に銃弾が届いていないから、、

きっとまだ僕の後ろに、、、

カオル君はケイとまだ絡み合ってるのだろうか?

レイも、ノーマもまだ呆然と立っているだろう、、

待っていてくれ、、

僕達が信じた未来はもうすぐ訪れるよ、

未完成の未来が、、、

不完全な未来が、、、

もうすぐ、、、

 

 

シンジの体が白く輝く、

そして光の繭に変わって行く、

人間の形を留めてる部分はなくなり、完全な光の球体へと変化する、

その光の球体から、オレンジ色の小さな羽が生えてくる、

だがすぐに消える、そしてまた同じ色の羽がすぐに生える、

前の羽より大きく成長し、そして又消えて行く、

何度も、何度も繰り返す、オレンジ色の羽の再生と死を、

始めは一枚だった羽も、次第に増えていく、

そして、、シンジがいるはずの光の球体から複数の巨大な羽が伸びていく、

その羽のオレンジ色の光が、巨大な門に描かれた記号を消していく、

世界の苦痛と不安と絶望を表してる文字を、、、

シンジの羽が消していく、

そして、文字の消えた部分からは、赤い血が流れる、、、

大量の血だ、、

恐らく今まで地球上で流れた血液の量とまったく同じだけの量が流れるているのだろう、、

レイも、カオルも、ゲンドウも、みんな赤い液体に飲み込まれていく、

そして赤い、無限の海が生まれる、、、

全ての始まりの海なのか、

それとも終焉の海なのか、

どちらでもない、赤く輝く、海だった、、

 

あぁぁぁああああああ!!!!

再びシンジの叫びが響く、

今度は海にも、門にも共鳴する、

そして、、、、シンジの羽が全ての文字を消し去る、

同時に流出していた血液も止まる、

動く、、、そうシンジが思った瞬間、、

死者の門が、、涅槃の地から魂を解放するべく動きはじめた、

ゆっくりと、、

ゆっくりと、、、

全ての闇を飲み込みながら、、

荘厳な音と共に、

扉は開いていった、、

そして、、、シンジの目の前に広がっているはずの涅槃の地より、

一気に魂が走り抜ける、

まるで解放された奴隷の様に、自由を求めて走り去る魂、

シンジの体をすり抜け、信じられないスピードで走り抜ける、

涅槃の地から流れる光より早く、

信じられない数の魂は流れ出て行く、、

何処に行くのか、、その後どうなったのか、、、シンジにはわからない、

だが、数え切れない魂が永遠と流れでる、、

そう、永遠を一瞬にして体験できるのではと思える瞬間だった、、

そして、完全に重厚な門が開き、荘厳な音が止まった時、、

シンジは涅槃の地を始めて見据えた、

いままで光に包まれて見えなかった涅槃の地をゆっくりと眺める、

そしてシンジが見た世界は、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い海と灰色の砂が埋める海岸だった、、、、

いつのまにか、黒い無限の空間はなくなり、

シンジは砂浜に立っていた、、、

 

薄明かりの中、恐いほどに満月の月明かりと、

今まで経験したことがないほどの数が輝く星空、

その世界でシンジは呆然と立っていた、

何時の間にか世界が存在している、

見えるはずの涅槃の地は存在していない、、

死者の門もなければ、

何も無い、

あるのは血の海が砂浜に波打つ音だけだった、

あまりの光景にシンジは暫く無言で、ただその波を見ていた、

消えては生まれる、波の泡を、

ただ、眺めていた、、、

 

 

「もういいの、シンジ、」

その言葉にシンジは振り向く、

いや振り向くというよりも、体が瞬時に反応した、

忘れた事は一度も無い、

その声質、姿、温もり、

シンジは言葉の先に存在する人物を知っていた、、

「うん、、、、もう済んだよ、、母さん、」

そう自然と流れでた言葉が、シンジは自分でも不思議に思えた、

胸にある言葉はあまりにも多すぎて、口からは出てこない、

震える体と脳は、認識した相手の存在で制御不能になっている、

それでも、シンジは答えた、

「全てが、、また始まるんだ、」

「そう、、よかったわ、シンジ、」

微笑む母の笑顔はシンジが何よりも求めていたものだった、

永遠に二度と出会えるはずのない、母の優しい笑顔だった、

「、、、、うっ、、、、うっ、、、」

「シンジ、よかった。あなたが、全てを望んでくれて、」

流れる涙は、シンジの純粋さを証明している、

「か、、、かぁっ、、、さん、、、、、」

「どうしても先に涅槃の地に誰か行かなくてはいけなかったのよ、」

近ずく人物がすでに涙で揺れる、

「かぁ、さん、、、、、、、、、」

「そこであなたが一度滅ぼす人類の魂を浄化する必要があったのよ、」

もし、もう一度会える事ができたなら、そう思い何度も考えていた言葉は何一つ生まれてこない、

「母さん、、、、母さん、、、、、、うぅ、、うぁぁ、うぁ、、」

「あなたが一番辛い時に父さんも、母さんも側にいてあげられなくて、ごめんね、シンジ、」

ただ、、あの時と何一つ変わらない、母の笑顔にシンジの心は流れ続ける、

「母さん、、、」

「でも、あなたは私達がいなくても、どんなに辛くても、私達の意志を選んでくれた、、、、

シンジ、あなたは、、本当に素敵な息子よ、、シンジ、」

「母さん!!」

どんな言葉でもよかった、、

シンジにとってはそれが全ての終わりを示す言葉でもよかった、

その言葉が、母から流れ、自分に向けて流れる言葉ならば、

シンジにとってはどんな言葉でもよかった、

走り出すシンジ、

その体を受け止める母、ユイは、シンジを優しくつつむ、

シンジは抱きしめら、シンジ自信も母を抱きしめる、

腕と、胸で何度もシンジは抱きしめられる、

髪の毛をぐちゃぐちゃにしながら、

言葉にならない言葉で胸をいっぱいにしながら、

信じられないぐらいに涙を流し、

自分で感じることが可能な器官、全てを使って、

自分を抱きしめてくれる人物の温もりを感じていた、

 

シンジは、何度も夢にみた、母に抱きしめられていた、

 

大きな声で泣き続けるシンジ、、

涙なんてもう体から無くなってしまったと思っていた、

でも、、、信じられないぐらい、、、心から涙があふれ出る、

そしてすべての涙が、母の体に吸い込まれていく、

まるで生まれた場所に戻っていくかのごとく、

シンジの魂は泣き続けた、、

 

 

「ごめんなさいね、シンジ。」

「どうして、、、謝るの、」

泣きながらもシンジは答える、

「あなたが生まれたら、とても辛い運命を歩む事は始めから解っていた。それでも、父さんと母さんはあなたを生んだの。神としてではなく、、、人間として。」

「どういうこと?」

シンジはユイに抱かれたまま、胸に埋めていた顔を上げる、

そこには母だけが持つ真実の愛を持った表情が、優しくシンジを見つめていた、

「母さんはね、エヴァ一族の末裔として純血を持った最後の人間、、、使徒とよばれる生物だったの。」

「使徒、、、、」

「そう、神の使いとして、、、、、他にもエヴァ一族は多く存在するけど、それは全て地球が自然と選んだ魂を持った人間なの。父さんも、カオル君も、レイちゃんも、アスカちゃんも、、、みんなそうなの。」

母の言葉にシンジは泣くのを止め、次の言葉を黙って待つ、

「母さんの使命は、使徒として、神を作ることだったの。自然に待っていれば妊娠し、そして処女のまま神を生む事ができた、、、、、でもね、母さんは愛し合った結果として人間を生みたかったの。」

「父さんと、、、?」

「そう、本当はお父さん、あなたのこと、とても愛してるのよ。」

「でも、、ずっと僕を見捨てていた、、」

「そんなことはないは、あなたが湖で自殺した時も、レイちゃんとバイクで濁流に沈んでいった時も、お父さんが助けたのよ。」

「父さんが、、、、」

「お父さんはね、シンジを守るためにいつでも側にいたのよ。シンジに見えないところでね、」

「どうして、、、どうして一緒にいてくれなかったの?」

「シンジ、、不幸にもあなたは純血を守らなければいけない私と、その私の純血を守るべきはずの父さんとの間に生まれた。その結果、人間と神の力、両方を持ってしまったの。そんなあなたを狙う人物は世界中にたくさんいたわ、、、、父さんはね、その人達の手からあなたを守っていたのよ、、」

シンジは言葉を無くしていた、

記憶にある父の姿は、冷たく、威圧的に、自分を見下すだけの姿だった、、

だが、、あの瞬間に感じた、死の瞬間に伝えられた父の意志、、、

あの瞬間に見た父親としての瞳、

シンジはユイの言葉を信じた、、

「シンジ、あなたは常に日常から離れた様々な人達に狙われたいたの、、その人達からあなたを守るために父さんは、、、、、」

「母さん!もう、、父さんには会えないの!僕は、、、、」

「大丈夫よ、シンジ。父さんは解っているわ、、、あなたの事を。あなたが素晴らしい息子だって事をね、」

母はやさしくシンジの額を撫でる。そして、涙で濡れている頬を暖かい手でふく、

「あなたがいずれ成長し、神の力を発揮する日が来る事は、はじめから解っていた。本来、処女降臨で生まれてくるはずの神は、人類を全ての苦痛から解き放ち、魂に永遠の楽園を与えるはずだった。」

「シュラウド博士がいってたみたく?」

「ちょっとあの人の望む世界とは違うけど、、、全ての魂を永遠に涅槃の地で安らかに眠らせるはずだった。でも人間としての血を持つあなたは、そんな世界を望まなかった。私達の望み通りにね、、」

シンジとユイはゆっくと砂浜に座る、

そして赤い海を見つめる、

「母さんはね、神様を生むのが嫌だったわけではないの。ただ、地球上の生物はすべてが地球の一欠けらなの、、、その地球の素敵な一部を、神の力で勝手に終わりにするのがどうしても納得できなかった。

でも純血を宇宙の定めを守るべきだという一族のほとんどが、母さんの考えを否定したわ、、、、そんな時に、父さんと知り合ったの。」

「父さんは母さんの味方だったんだ、」

「そう、父さんもエヴァの魂を持ってたんだけど、すでに人間の血が流れてたの。だから、とても人間を愛して、他の生物も、植物も、水も、空気も、風も、、、地球の全てを愛していたわ、、、、、」

「はは、、、そんな父さん、僕は知らないなぁ、、」

シンジは想像し、思わず笑顔をこぼす、

「でもね、、本当にお父さんはね私にいろいろ教えてくれた、、、、風との話し方、水の感じ方、そして生命が、人間が何処へいくべきなのかもね、、、」

「だから、僕を生んだの?」

「そうよ、、シンジ。あなたならきっと神として、最後の使徒としての使命を果たすだけでなく、きっと未来を望むはずだとね、、そう信じたのよ。あなたなら、きっと涅槃の地にある死者の扉を開けてくれるとね。」

「でも、、さっき母さん、先にって、、、、」

「そう、シンジが一度絶滅させた魂を、再び蘇らせるには、誰かが涅槃の地で魂を浄化させなければならなかったの。浄化された魂じゃないと、輪廻の道を通れないでしょ。」

「その為に、、母さんは、、」

「そう、、、、、でも、結果的には全てをあなた一人に任せた感じになってしまったは、、シンジ一人に全ての運命を背負わせてしまった、、、、本当にごめんなさいね、」

「ううん、一人じゃないよ、」

シンジはいつもの綺麗な瞳でユイに答える、

「レイがいた、、、、とっても素敵な女の子なんだ、泣いてる様に笑うんだけどね、

カオル君がいた、、僕と同じ心に傷のある少年だけど、僕の傷を癒してくれるんだ、

それに、、、死んじゃったけど、、アスカって女の子もいたんだ、、、、、

一人じゃなかったよ、、僕は、、」

「そう、、、、よかったわね、シンジ、、、」

「うん、」

ユイはシンジの言葉を優しく見守る、

母親だけに存在する、絶対的な優しさがシンジの心を癒す、

「それに、母さんとこうやってまた会えたし、、、、また一緒に暮らせるんだよね、」

シンジの言葉にユイの表情が変わる、

「シンジ、、、、、それはできないわ、」

「どうしてだよ!母さんだって涅槃の地から出てきたんだろ、もう留まる必要はないんだろ!」

「シンジ、、、ここが涅槃の地なのよ、」

「え、、、、」

「全ての魂が輪廻するわけじゃないの。強く、自分の意志で涅槃の地に留まる魂もあるわ。」

「どうして、、、、母さんが留まる必要なんて、、、どこにもないじゃないか!」

「ううん、、シンジ、母さんはね、この地で再び迷える魂を浄化して、複雑な道を照らす役目なの、」

「そんなぁ、、じゃぁ僕もここにいる、ここで母さんと一緒に、」

「それは出来ないわ、あなたは再び現世に戻って、人間としての業を見つめなければならないの。あなたには、、、人間として、現世でやらなければいけない事があるのよ、シンジ。」

「母さん、、、、こんなところで一人で生きるの?、」

「お願い、シンジわかってちょうだい、、、それに母さんも一人じゃないわ、」

「え、、」

「父さんがもうすぐ来るはず。やっと、、誰にも邪魔されずに、二人で愛し合えるのよ、」

ユイは泣きそうなシンジを優しい笑顔でなだめる、

そして、もう一度シンジを抱き寄せ、

力の限り抱きしめる、

シンジはその感触が永久に残る様に、その暖かさを二度と忘れない様に、

必死に母のやさしさを心に刻む、

「シンジ、、、あなたには、あなたにしか出来ないことがあるのよ、、、、あなたにしか作れない幸せが、、、、

その幸せを作って欲しいの、、、」

「母さん、、、」

「大丈夫、、、いつの日にか、、いつの日にか、、また会えるわ、、、、、、人間と地球と魂がある限り、、、、

この涅槃の地は、無くならないから、、、、きっといつか会える時が来るわ、、、その時まで、、、」

「さよなら、、、、母さん、、」

シンジは小さくユイの胸の中でつぶやいた、

 

そして、シンジの体は消えていった、、、

 

第二十四話へ続く



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