アスカがベットに座る、

40代ぐらいの中年太りのオヤジという言葉が似合う生物が近ずく、

絵画と呼ぶには相応しくない印象派を意識した絵がインチキ臭い額縁に入っている、

空間照明によりブルーに染まった壁がその部屋の安っぽさを示している、

いわゆる、ラブホテルの一室、

一泊8000円程度のセックス目的に造られた人工的な空間、

そんな部屋の大きなベット、

今まで数万人の男女(もしくは男男、女女)の欲望の営みを見て来たベット、

そのベットの上に座っているアスカを押し倒し、上に被さったスーツ姿のオヤジ臭さを充満させた脂肪のかたまりは欲望の皮を奇形的に弛緩させる、

「ねぇ、、シャワーぐらい浴びてよ、」

「私が浴びてる間に財布から金だけ抜いて逃げるんだろう、」

「そんな事しないわよ、、」

「そうか、、、、だが、私は用心深いもんでな、、、」

そう言いながら男はネクタイでアスカの両手を縛り、

更にベルトで縛った手首をベットに固定させる、

その間、アスカはまったく無抵抗でされるがままだった、

薄い膜で覆った様な蒼い瞳を半分ぐらい開けながら、男の行為を黙って見ていた、

男は無表情にベットに固定され、抵抗する意志もないアスカを暫く眺め、

嫌らしそうな笑みを浮かべながら制服のブラウスの前ボタンを外す、

それでも、アスカはまったく表情を変えない、

ボタンが全部外され、中の白いタンクトップが露わになる、

「このまま犯してやろうか、、」

膝上までのスカートから延びている日本人離れした脚を触りながら、

人間ここまで醜く表情を歪める事ができるのかと思える程、気色の悪い表情を浮かべる、

「別に、好きにすれば、、、でも、、」

「でも?」

「あんたの臭さで、窒息死するかもね、」

アスカは口元を少し歪めて皮肉っぽく笑う、

その瞬間、資本主義の豚はアスカの頬を平手打ちする、

乾いた鈍い音が部屋に響いた、

「とにかく、前金で5万渡してあるんだ、それ相応の事はさせてもらうぞ、」

「ふふ、、好きにすれば、、、」

少し切れた唇から流れた血を拭う事無くアスカは答えた、

前髪の奥から睨みつけるアスカの瞳は、死者と同じ瞳の色を持っている、

そしてその視線の先に存在していた男はシャワーを浴びに消えた、

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、

シンジは少女にキスされていた、

汚い落書きだらけの壁にもたれかかり、シンジはキスされていた、

無表情に激しく求める少女とは対照的にシンジは無表情だった、

唇にふれる他人の唇、それだけじゃなく官能的に舌も絡ませる、

だが、激しく流れるラップミュージック、下品極まりないライトが交錯する中、

シンジはまったく唇にも舌にも感じるものは無かった、

「はぁ、、はぁ、、ねぇ、、シンジ、、」

薄いシャツ一枚の少女は下着をつけていない体を擦りつける様に絡めてくる、

シンジのTシャツの中に手を入れ、腕を絡ませ、下半身を触り続ける、

「もう、辞めたほうがいいよ、、」

「どうしてよ、、一緒に飛ぼうよ、、、良い薬あるんだ、、」

「薬じゃ、世界は変わらないよ、逃げるだけだよ、、、」

「ううん、、とっても気持ち良いのよ、もうアソコから天国に一気に昇れるのよ、、」

「直ぐに、一気に地獄に落ちるだろ、、」

周囲の連中はシンジ達の様なカップルは珍しく無い為、

リズム感の悪い、黒人ダンスの真似事に夢中になっている、

リズムとずれたダンスがここまで気色悪いと思えるのは薬の所為?

それとも絡みつく少女の不快な舌の所為?

「ねぇ、もう一度一緒に天国に行こうよ、、」

「御免だね、、僕には天国より大切な場所を見つけたんだ、、」

「アタシより、好きな女ができったって事?」

「いや、、それは違う、、」

シンジは少女を無理やり自分から離す、

そして、少女とすれ違う瞬間、耳元で囁いた、

「好きな女の子はいる、、でも、君の事を好きだと思ったことは一度もない、」

「なっ!」

「だから、君より好きな女ができたって質問は、、愚問だよ、それじゃぁ」

「ちょっと、、アタシを薬漬けにしときながら、自分一人だけ逃げるの!」

「勝手に浸かっていったんだろ、、僕の所為にしないでよ、」

「待ちなよ!」

少女はシンジの肩を掴む、

その掴んだ手を振り払いながら、シンジは呟いた、

「君じゃ、僕を満足させられないんだよ、、、残念だけど、さよなら、」

そのまま振りかえる事もなく、シンジはクラブを後にした、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな夜が過ぎて行き、、

白々しい朝日が昇る頃、

公園で一人の少女が目を覚ました、

ボロボロのジーンズに、黒のブーツ、

灰色のシャツには“fuck the future”と書かれている、

「痛ってぇ、、、」

頭を抑えたまま二日酔いの体を無理やり起す、

「何時の間に、、、あれ?」

少女は自分のジーンズの中に手を入れる、

「、、、、、、、無い、、どうして???」

地肌にジーンズを履いている事に気がついた少女は一気に現実に引き戻される、

「憶えてないなぁ、、、」

財布もある(電車賃しか入っていないが、、)、時計もある、家の鍵もある、

だが???は無い、

「って事は、、一度アタシ脱いでるって事???」

如何しても思い出せない空白の夜を必死に探る、

だが、少女の記憶に浮かぶのはそれ以前の悲しい出来事だけだった、

一人で生きる事を余儀なくされ、無機質なマンションに入居した昨日、

自分の扱いを巡って肉親と呼ぶ人達の責任の擦り合う光景、

大嫌いな自分の紅い瞳にアイスピックを突き立てた日々、

蒼く長い髪をハサミで適当に切った夜、

思い出すのは、そんな光景だけだった、、

「ま、いいか、別に処女に拘ってた訳じゃないし、」

少女は動き始めた始発電車に向かって歩きはじめた、

そして、高層ビルの谷間から覗く朝日を睨みつけて呟いた、

「誰も、あんたを歓迎してないのに、勝手に昇って来るのね、、、、、、、やな奴だよ、」

そう呟いた少女の名は、綾波 レイと云った、、

 

 

 

 

 

Nothing like the sun episode 1

 

 

 

少女が駅に到着すると、朝帰りの子供達で結構溢れかえっていた、

(そうか、、今日は日曜日だったんだ、)

周囲の子供達は眠たそうに欠伸を繰り返したり、彼氏に寄り添いながら熟睡したり、

抑え切れない嘔吐感をプラットホームから投げ出してる者もいる、

レイは混雑する時間帯の前にできれば帰りたいと思い、そんな連中と一緒に列車に乗る、

日曜の朝、繁華街から住宅街に向かう列車は結構混雑している、

もちろんラッシュアワーとは比較にならないが、

それでも、椅子に座る事ができないレイは床の上に座り込み、ドアにもたれ掛った、

(まったく、、月曜日から新しい学校か、、、、嫌だなぁ、、)

日曜日という時間帯が終われば、また新たな世界に突入することになる、

転入することは、特攻する事と然程変わりはない、

(まぁ、どうせ暫くは虐めてくる連中と殺し合う日常が続くんだろうな、、)

レイにとって喧嘩は当然のことだった、

性格的な問題も然る事ながら、やはり蒼い髪に紅い瞳といった容姿はどの学校へ行っても受け入れてもらうのは難しく、無視されるか、虐めにあうか、どちらかだった、、

その証拠に列車の乗客も既にレイの異質な容姿をうと疎ましそうに見ていた、

(あぁぁ、、、面倒くさいなぁ、、もう、、生きてる事も面倒くさいや、、、)

そう思いながら伸ばした細い足を折り曲げ、体育座りをしたレイは立ち上がろうとする、

 

その瞬間、背もたれにしていたドアが開いた、

 

「あれ、、れ、、れ、、うわぁ!!」

ドアが開くと同時にレイは勢い良く、プラットホームに仰向けに寝転んだ、

周囲の連中はそんなレイを見て笑っている、

「痛ってぇ、、、、、あれ?」

後頭部に多少衝撃を受けたが、痛みを堪えて起き上がろうとしたレイの視界には、

無意味な太陽が見えるわけでもなく、ホームの屋根が見るわけでもなかった、

レイの視界に映った物、それは、、、、

「、、、、、、、、、、ノーパンだ、」

そう呟いたレイを冷たく見下ろす一人の少女、

白いブラウスに、チェックのスカート、黒いスニーカーに紺のソックス、

本来在るはずのリボン状のネクタイは消えている、

「邪魔よ、、」

大の字になって乗車口を塞ぐレイに冷たく言葉を降り注ぐ、

「あ、、悪りぃね、、、、、ごめん、」

慌ててレイは上半身を起こし道を譲る、

そのレイを見下ろしながら無表情のまま電車に乗り込む少女、

(なんか、、、嫌ぁ〜な感じ、)

再び閉じたドアにもたれ掛り床に座っているレイはその少女を見つめていた、

乗車した少女は列車の連結部へ行くと、人目を避ける様に俯いて立った、

流石に朝帰りの人間を乗せた列車の中に、高校の制服姿でいる少女は自視線を浴びる、

しかも、その少女が栗色の長い髪と蒼い瞳を持った美少女であり、

更に、、頬を腫らしてるとなれば、、、、

 

(あのノーパン女、唇も腫れてる、、、殴られたって感じね、、)

レイは自分もノーパン女であることを忘れ、顔を腫らした少女を見つめた、

 

そして、2人を乗せた列車は、住宅街へと向かって行った、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜日、レイは無機質な部屋で一人寝て過ごした、

一日中、何も食わない事などレイにとっては珍しくない事だった、

それでもベットの脇には牛乳パックが置かれており、時々パックのまま飲んでいた、

(今度行く学校、冬月先生が校長してるんだ、あんまり問題を起さない方がいいかなぁ、、、でも自分から問題を起した事は無いはず、、他人がナイフを私に向けなければ、、

私もナイフを向けずに済むはず、、、、要するに、一人で孤独に過ごせば大丈夫って事か、)

流石に20時間以上ベットの上にいるレイは背中に重い痛みを感じていた、

(今度面倒を起したら、、、流石に何処にも行くところが無くなるだろうなぁ、、

でも、無理して友達創って、嘘の笑顔を浮かべても、、、何時かは剥がれる鍍金だしな、

かといって今度退学になったら、、、、、、)

レイは3回退学になっていた、

どれも暴力事件の結果だ、、

何度も家庭裁判所に出頭させられたが、幸い少年院送りは免れて来た、

最も保護監査処分状態なのだが、保護者にその気がないのでまったく今までと変わらない、

定期的に両親という名ばかりの大人と一緒に更正施設へ出頭するだけで、

レイにとってはくだらない日々だった、

両親はすでに別居しており、両親とも自分を引き取ることを拒否してる、

問題児としてのレイは酷く疎ましく思われていた、

何度両親に自分の存在の無意味さを教えられた事か、、、

特に母親は、よくヒステリーになりレイを殺そうとした、

その度に死んでもいいと思うのだが、、、、、何故かレイは死ねなかった、

レイは常に思っていた、、、

どうせ死ぬなら自分の意志で死にたい、

こんな腐った大人達に殺されるのは、、どうしても納得できなかった、、

 

だが、そんな退屈で退廃的な日常のある日、

レイは更正施設で相談員をしてる冬月という人物と出会った、

「学校も両親も嫌いかい?」

優しく、厳しく、物腰柔らかく聴いてくる冬月にレイはそれほど嫌悪感を感じなかった、

「別に、、、、」

「君が望めが、両親から独立した生活も、新しい学校生活も与えられるのだが、」

「、、、、、欲しくない、」

「だが、私が思うに、今、君にとって最も必要なものは、家族的な人間関係だ、」

「要らないよ、、、どうせ存在しないんだもん、そんな物、」

「確かに存在しなかもな、、だが、君が望めば手に入る物だ、君の努力次第だよ、」

「、、、、、努力ねぇ、、」

レイは一つ机を挟んで優しそうに話す冬月の言葉を繰り返した、、

 

 

(それでもって、自分が校長を務める学校に入れるんだから、、

アタシみたいな問題児抱えたこと、後で後悔しても知らないわよ、、、)

そう思いながらも暫くの間は大人しくしていようと思うレイだった、

(あ、、そういえば、、アタシのあそこ、、全然痛くない、、って事はセーフ?)

一応胸を撫で下ろしたレイだった、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日、

月曜日の朝、

レイは教壇の上に立っていた、、

「綾波 レイです、、、よろしくお願いします、」

精一杯の笑顔を無理やり作り、興味本位の瞳に向かって微笑んだ、

「あ、、あの、、葛城先生、」

「なに、綾波さん、」

「一応、、先に云っておきたい事があるんですけど、、、」

「あぁ、ごめん、それは私の方から言うわ、」

葛城と呼ばれた教師はレイの肩に手を置いて、いかにも教師らしい口調で話し始めた、

「みんな、ちょと聞いて欲しいんだけれど、

実は、皆も不思議に思ってるかもしれないけど、綾波さんの髪と瞳の色は生まれつきのものなの。皆も知ってるあの事件以来、あの思い出すのも鈍ましい事件以来、

遺伝子的に色素が変化した子供が大勢存在する様になったの、

多くの人はその事を隠そうとしてるけど、綾波さんは自分を隠す事なく本来の姿を皆の前に示している。隠す事無く、自分の辛い部分も、悲しい部分も、、、隠さず、笑顔で未来を必死に見つめているの、自分の持てるだけの力を持って、自分の未来を信じて、、、、

だから、皆、その未来を壊す様な事はしないで欲しいの、、

先生からの小さな、大切なお願い、、、、」

生徒達は黙って葛城教師の言葉を聞いていた、

一部の生徒は退屈そうに、一部の生徒はその言葉に嫌悪感を抱いて、

ほんの数人の生徒だけが心に言葉を刻みながら聞いていた、

だが、最もその言葉を馬鹿にし、腹の底で大笑いしていた人物は、、

綾波 レイ、当の本人だった、、、

(笑顔で未来を見つめてる?自分の未来を信じてる?小さな大切なお願い?

くくく、、、、あは、あははは、、、バッカじゃないの!この教師、臭いわねぇ〜、

今時教師の言葉なんかで心を動かされる子供なんているわけないじゃない、

まったく、何時までも青春ドラマを引きずっている世代はこれだから困るのよね、

ホント、バカバカしくて折角創った笑顔が崩れちゃうじゃないの、、)

込み上げる笑いを必死に抑えてるレイは、唇を釣り上げ、

大声で笑い出しそうになるのを必死に堪えていた、

「じゃぁ、綾波さん、あの後ろの席に座って、」

「はっ、、はっ、、、はい、、、」

レイは必死に笑いを堪えたぎくしゃくした表情を浮かべ、

クラスの一番後ろにある席に向かって歩きはじめた、

その時、

「コン、、ゴホン、、、、すいません、、遅れました、、」

マスクをした少女が一人後ろの扉から入って来た、

「あら、アスカ、」

「すみません、、コン、、、遅刻しちゃって、、ゴホン、、ゴホン、、」

俯いた顔でマスクを両手で押さえながら少女は必死に喋る、

「大丈夫、無理しないで辛かったら休んでもいいのよ、」

「はい、、、、今より辛くなる様だったら、早退します、、」

「わかったわ、無理しないでねアスカ、」

「はい、、」

辛そうな雰囲気を身に纏いながら、アスカは最後尾にある自分の席に座った、

レイはその間に用意されていた自分の席に座っていた、

(あれ、、この女、、どこかで見た事がある、、)

レイは顔の半分をマスクで隠した少女を横目でじっと見ていた、

栗色の長い髪、何度もブラッシングされたその髪には天使の輪が浮かんでいる、

整った綺麗な眉毛とバランスの良い蒼い瞳、その瞳には無限の美が生め込まれている、

無限の恐怖感も同時に含んだその瞳に見つめられた者は、きっと心に傷を入れられる、

その傷を嬉しそうに眺めながら笑うこの残酷性を持つ美少女を、

横の席に座るレイは、その瞳をじっと紅い目つきで眺めていた、

(何処でだっけかな、、、う〜ん、、、、、そうだ!)

思い出した瞬間、

レイの存在にやっと気がついたアスカが、ゆっくりレイの瞳を捉えた、

マスクの上に浮かぶアスカの蒼い瞳、何処か退廃的で暴力的で、

薄いガラス細工の様に複雑な美と儚さを持った瞳でレイを捉える、

だが、アスカもレイと同じ事を思い出した様で、多少驚いた事を瞳が表す、

「、、、、、、、あんた、、あの時の、、」

マスクの下でアスカが小さく呟く、

「朝の電車にいた、、、、、、、」

レイも小さく呟いた、

 

「「なんでアンタがここにいるの?」」

信じられない程の透明な無限感を含んだ瞳を持つ二人は、

互いを無言で睨みつけた、、、

 

綾波 レイ、転校初日の出来事だった、、、、、、

 

 

第二話へ続く



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