レイは右側に座るアスカを眺めていた、

これほど美少女という言葉が当てはまる少女も珍しい、

大きなマスクで顔の殆どを覆っているにも拘らず、

瞳と全体から醸し出すオーラで全てを語っている、

(この女、、、あの電車の時と全然雰囲気が違う、、)

レイにとってアスカの印象の違いは非常に意外だった、

もし、あの時、朝帰りの電車の中で死に取りつかれた姿を見てなければ、

乱れた制服で絶望的な瞳をもって、尚且つノーパン状態のアスカを見ていなかったら、

本当に単純に風邪をひいた病弱そうな壮麗の美女といった感じである、

(ホント、、どっちがこの女の本性なのか知らないけど、、

ま、余りこの女には関らない方がよさそうね、、、何だか嫌な予感がする、)

野生の勘を大切にしているレイは出来るだけアスカと関りを持たないように 、

そう刺青が叫んでいることに気がついた、、

そして、もう一つ、レイは発見した、、、

(この女、、本当は風邪なんかひいてない、、、

マスクはあの腫れた唇を隠す為なんだ、、、仮病か、、、、)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綾波さん、一緒にお昼食べましょ、」

(やたら元気の良い女だなぁ、、、馬鹿じゃないの?)

レイの霧島 マナへの第一印象はそんなものだった、

「お弁当じゃないんでしょ、一緒にパン買いに行きましょ、」

(何だ、、勝手に昼飯決めるなよ、おせっかいな女だな、、)

レイのクラスの委員長である洞木 ヒカリにたいする印象もそんな感じだった、

「え、あ、、アタシ、、、」

レイは一応丁寧に断ろうと思ったのだが、

「さ、行きましょ。」

2人の半ば強引な拉致により仕方なくパンを買いに行く事になった、

(まいったなぁ、、お金ないんだよな、、)

レイは親から見捨てられ一人暮らし状態だ、

それゆえ、お金だけが両親と自分を唯一結ぶ物だった、

しかし、今月は既に生活費として振り込まれたお金は、酒代として消えていた、、、

「ねぇ、綾波さんって何処から来たの?」

「ねぇ、綾波さんって兄弟は?」

「ねぇ、綾波さんってどんな男の子がタイプ?」

「ねぇ、綾波さんってスポーツと勉強どっちが好き?」

「ねぇ、綾波さんって、、、、、、、、、」

(いい加減黙れよ、、、、、アタシは自分のプライバシーを売って生活してる

芸能人っていう無能な連中じゃないんだから、、、)

レイの両脇を固める2人の女性は質問攻めを続ける、

その質問にレイは適当に、作り笑顔で答える、

「ねぇ、綾波さん、、、、さぁ、、、」

(またかよ!いい加減にしろよ!)

だがヒカリが多少言葉を詰まらせながら聞こうといてる内容は、

今までのレイに関する質問とは多少違う感じだった、、

「何?」

一応笑顔で答える、

「あの、、、答えたくなければ、答えなくてもいいんだけれど、、」

「なに、別にアタシ隠し事できないから、大丈夫だよ、」

(嘘ばっかり、、、、)

「実は、隣に座ってるアスカの事なんだけど、、」

「え、、、、」

レイはキョトンとする、

「アスカと綾波さんって、、、、ひょっとして、知り合いなの?」

マナが遠まわしに聞いてくる、

(なんだ、、、どういう事?わかんないなぁ?

でも、、絶対あの女に関らない方がいい、、また退学になったら今度こそヤバイもんね、)

取敢えず、レイは何も答えない事にした、

「あ、、あの、答えずらかったら、、、別にいいんだけど、、、」

マナが気まずそうに話す、だが、、

「ううん、、今朝始めてだよ、」

「「ホント!」」

2人の表情が一気に笑顔に変わる、

「う、うん、、今日も一度も会話してないし、、」

「そうよね、関係ないわよね、」

「うん、、、、、、あの、、どうかしたの?」

逆に質問を切り返すレイに二人は小声で話す、

「なんか、、綾波さんとアスカって凄く雰囲気似てたし、、、」

「そうそう、、それに綾波さん、アスカの事じっと見てたし、、」

「アスカも綾波さんのこと、じっと横目で見てたし、知り合いなのかなぁ、と思って、」

何処か安心した表情、、そんな表情を浮かべて話す二人をみて、レイは悟った、、

(あいつ、、、嫌われてるんだ、、あんなに美人だから人気者なのかと思ってた、

案外性格悪い高飛車女で、男に人気があっても同性には嫌われていたりして、、、)

「全然、今日が初対面だよ、それに、、、アタシあんなに美人じゃないし、、、」

レイは一応謙虚に答えたつもりだったが、、、、

両目を細めた2人が、恐ろしげな表情で一気に詰め寄る、

「、、、、、、、、、綾波さん、、それ嫌味?」

「え、、い、、いやぁ、、」

「アタシ達に対するあてつけ?」

「あ、、あれ、、、アタシ、何か悪い事、、、」

レイは冷たい汗が背中を流れるのを感じる、

「隣のクラスの男達まで綾波さんを見に来てるのに、、」

マナの冷酷な怒りの瞳が一気に迫る、

「代表してアタシが男子連中の質問をまとめて聞かなきゃならない状況なにの、、」

一応笑顔だがヒカリの額には青筋が浮かんでいる、

「「それなのに、美人じゃないだって!いい加減にしろ!!!」」

胸座を掴まれそうな勢いで怒鳴られるレイは、、、

(アタシの台詞だよ、、、、、トホホホホ、、、、、)

泣くに泣けない状況だった、、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局レイはアンパン一つだけ(50円)を屋上でヒカリとマナと食べていた、

「そんなんじゃお腹空くでしょ?」

「大丈夫、普段昼ご飯食べて無いから、」

「そうなんだ、、ねぇ、お昼食べないと綾波さんみたく痩せられる?」

「え、、、、、?」

ヒカリの言葉にレイは無言で答えた、

「もう、午前中大変だったのよ、」

マナは男子生徒並の大きい弁当を一気に流し込む、

「大変って?」

「誰が最初に綾波さんに話しかけるかって、クラスの男子の連中は大騒ぎで喧嘩してるし、

紅い瞳の超美人がやって来たって他のクラスから見学にくるわで大騒ぎだったのよ、」

「え、、、、、そ、そうなの?」

「そうよ、でも綾波さん、、、、、アスカの横から全然離れないから、、、」

そう云うマナの言葉尻は消えそうだった、

「アスカって云うの、あの人?」

「う、、うん、、総流・アスカ・ラングレーって、ドイツ人とのハーフなの、、」

「そう、どうりで美人だと思った。マスクしてても十分美人だもんね、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

マナは何も答えない、

レイは関りになってはダメだと思いながらも、多少会話を続ける、

「アスカさんって、、、、、何かあるの?」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

「あ、、別に、特に聞きたいわけじゃ、、、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、」

マナは弁当の箸を加えたまま、じっと黙っている、

「綾波さん、私から言うわ、」

「洞木さん、、、」

「実はね、アスカって、、、、、あくまで噂の段階なんだけど、、、

売春してるって噂があるの、、、、、」

ヒカリの顔はどこか寂しそうだった、、、

(やっぱり、、、、)

レイは腹の中ではニヤっと笑ったが、一応驚いた表情を作る、

「ば、、ば、、、売春!!!」

「うん、、、噂の段階だから真実は見えないんだけど、、、」

「目撃談もあるから、間違いないよ、」

箸を加えて黙っていたマナが一気にヤケクソ気味に弁当を掻き込む、

「あいつ、美人だけど、結構性格きつくてさ、、、それでも男子には人気があったんだ、、

でも、、ここ最近そんな噂が一気に広まって、、、まったく、」

「でも霧島さん、真実なんですか?」

「知らない、あいつ最近学校にも来ないし、アタシが質問しても答えないし、、、」

「そうなんだ、、、、」

レイはおごってもらった牛乳を飲みながら様々な事を思案していた、、

「でもね、綾波さん、、、」

レイの思案をヒカリが中断させる、

「私達はアスカの事、見捨ててるわけじゃないの、、、

どこかで、、、信じてるの、、明るく自身たっぷりに振るまうアスカに、、

何時の日にか戻ることを、、、、信じてるんだけど、、」

「信じるだけ無駄よ。あんな奴、」

マナは履き捨てる様に呟いて、弁当を包むと一人去っていった、

「あ、、霧島さん、」

レイは一応後ろ姿に声を掛けるが、本気で呼び止めるつもりは無い、

「綾波さん、実はね、、、」

「何?」

云いずらそうにヒカリが話し始める、

「霧島さんと、アスカって、、、、幼馴染なの、、」

「、、、、、、、はぁ、」

「霧島さん絶対にアスカは売春なんてしてないって、必死に噂を否定してるの、、、、

でも当の本人が学校に来ないし、、その噂に何も言わないし、、、」

「そうなんだ、、」

「でもアスカ、、綾波さんのことじっと見てたし、綾波さんもアスカを見てて、

もしアスカと知り合いならば、アスカの一件何か知ってるんじゃないかと思って、、、」

「ふ〜ん、、、、」

(なんだ、、結局アスカの事を聞きたくて話かけてきたんだ、、)

一瞬、寂しそうな表情を浮かべるレイ、

さすがにヒカリもその気持ちを察したのか、慌ててフォローする、

「で、でもね、話し掛けたり一緒にお昼食べたりした目的はまったく別よ、

決してアスカの話しをする為だけじゃないの、、」

その言葉にレイは再び作り笑顔で応える、

「うん、、解ってる。でも洞木さんも、霧島さんも友達思いだね、」

「えっ、、そ、そうかなぁ、、、」

「信じてるんでしょ、2人とも、絶対にアスカさんが売春してないって、」

「うん、、、、、、、信じてる、」

レイの創り笑いと心にも無い台詞に、ヒカリは素直な笑顔で答えた、

 

 

 

(まいったなぁ、、、、、)

五時間目の授業中、レイは思い悩んでいた、

その対象のアスカはヒカリが教室に戻ると同時に体調不良を訴え、早退した、

(まいったなぁ、、、アタシ、あの女に関ったら絶対ダメだって解ってるのに、、

その親友だった子達に引き込まれてる、、、おまけに変な話まで聞いちゃったし、、

何だか、登校初日で嫌な事に巻き込まれたなぁ、、、、)

レイは思い悩んでいた、

だが、周囲の男達はレイは大人しく、もの静かだが信じられない綺麗な笑顔を持っている、

性格も良く、気立ても良く、男を立てる(勝手な妄想)美少女だ、、、そう判断されていた。

(でも、、、売春は本当なんだろうか?

まぁ、、アタシみたく犯罪者として黒い星を背負ってるわけじゃないから、、

アスカの方がまだ幸せだよ、、、、、はっ!ダメだ関っては、、、、、)

レイはアスカからもマナからも、一応距離を置こうと心に決めた、

 

 

 

 

 

 

Nothing like the sun episode 2

 

 

 

 

レイが転校してから数日後、、

町外れにある、退廃的な繁華街、寂れた空気が充満する場所、

昔はそれなりに人の往来もあったのだろうが、今では時代遅れの店が並ぶだけ、

そんな場所にある時代遅れのカラオケ屋の一室、、

安っぽい壁紙が所々剥がれていている、

床は誰かが吐いたゲロと、こぼしたジュースの跡で汚れている、

だが、そんな事はソファーに座る二人には関係無い事だった、、

「君が欲しがってたリスト、、、」

「、、、、、、、、、」

シンジは無言でそのリストを見ている、

「このリスト、、何処から手に入れたの?」

「さぁ、君は知らない方が良いよ、シンジ君、」

ホワイトブロンドに髪を染めた少年が笑顔で笑う、

「どうして?」

「知らない方がいいからさ、それ以外答えはないよ、」

「、、、、、、、、教えないぞって事ね、」

リストを片手にジト目で睨むシンジを嬉しそうに少年は見つめる、

「ふふ、、でもシンジ君しだいだね、、」

「え、、、」

首筋に迫る少年、その少年の不思議な紅い瞳にシンジは焦る、

「ちょ、、ちょっと待ってよ、、カオル君、、」

「この資料、結構高い値段だよ、、」

「そ、、そうなんだ、、」

カオルと呼ばれた少年の細い腕がシンジに絡みつく、

「い、、いや、、カオル君には、女性が似合うと、、思うよ、、、」

「そうかい、、でも僕にとって真実は君の体だけだからね、、」

そのまま一気にシンジを押し倒す少年は、それなりに抵抗するシンジを抑え込む、

「ぼ、、僕の体????」

「そう、、君が僕の腕のなかで恥らう表情を見せてくれれば、、、」

「は、っはっはっ恥らう????」

「それだけで、100万ドル以上の価値があるよ、、」

「で、、でも、、、、」

冷や汗と脂汗、嫌な悪寒と全身を覆う鳥肌がシンジを拘束している、

(に、、に、、逃げなきゃ、、、)

だが、焦れば焦る程、シンジの体に絡みついた少年の腕に落ちて行く、

「君の唇で、、、払ってくれるよね、、、、、」

「カ、、カ、、、カオル君、、、、、」

蛇に睨まれた蛙のシンジは、瞳孔を開ききったまま地獄に落ちてく感覚に沈んでいた、

ドサッ!!

だが、シンジの唇に鈍ましい感触が訪れる前に、

カオルと呼ばれた少年はシンジの体からずり落ちた、

「、、、、、、、、何してんのよ、」

「マナ!!」

シンジの視界にはカオルの後頭部に踵落しを決めたマナの冷たいが映った、

「シンジ、、あんた、、、まさか、、」

「い、、いや、、」

シンジは焦りながらも体を起こし、その場を誤魔化す、

 

 

 

このカラオケルームは昔シンジ、アスカ、マナでよく来た場所だった、

その頃はまだシンジもアスカもよく笑い、よく喧嘩して、よく泣いた、

マナにとっては今でもよく来る思いでの場所だった、

だが、今は寂れた商店街と共に、その思いでも寂れていた、、、

 

マナは久しぶりに訪れたカラオケルームで、2人の少年の禁断の愛の現場を見てしまった、

「ま、いいわ、、、、それより、学校さぼって何してるのよ、」

「え、、毎日遊んでるだけだよ、」

頭をかきながらシンジはジュースを飲む、

「嘘ね、、、」

マナはシンジを睨みつける、

「あんた、最近結構危険な世界に踏み込んでるでしょ、、」

「え、、なんのことかな?」

「シンジ、、、いい加減にしなさいよ、、、」

「、、、、、、、、、、、、、、」

「アスカがあんな風になったのも、シンジに責任あるんだからね、」

「、、、、、、、、、、、、、」

シンジは何も答えない、

マナの見つめる瞳を見返す事もせず、ただ、、無言で中を見つめている、

「ねぇ、、、シンジ、、私にも教えてよ、、、

アスカも変な噂ばっかりだし、、、シンジは学校にも来ないで夜の世界で遊んでるし、

いったいどうしたの、、、中学の頃の貴方達からは考えられない事ばかりで、、

ねぇ、シンジ、本当のこと、教えてよ、シンジ、、」

マナは必死にシンジの視界に入って訴える、

だが自嘲的な笑みを浮かべ、マナの存在を無視するシンジの瞳は無常な答えしか生まない、

「マナ、、、、本当の事なんて何もないよ、、

僕も、、アスカも、、、クスリとセックスとロックンロールに溺れただけだよ、、

ただ、、堕落しただけの不良品なんだよ、、、」

「シンジ、、、」

「だから、、もう、僕達に付きまとわない方が良いよ、、、、、

そんな哀しそうな瞳をしないで、、」

泣き出しそうなマナの瞳をシンジは敢えて無視する、、

その瞳を見たら、、、、、、シンジはそう思いながら無視をする、

「そう、、、あの頃の思いでは捨てろって事ね、、、」

「、、、、、、君は未来を見るべきだよ、僕達の過去は捨てた方がいいよ、」

「そう、、、」

一人悲しそうな瞳を浮かべてマナは部屋を出て行った、、

「いいのかい、シンジ君、」

床に伏せてたカオルがシンジに云う、

「このままじゃぁ、、本当に捨てられちゃうよ、」

「、、、、、、、、、いいんだよ、その方がマナの為だよ、」

「そうだね、、、」

カオルも起きあがり、シンジの反対側のソファーに座る、

「ところで、知ってるかい?」

「何を?」

「僕と同じ紅い瞳の少女が、君の学校に転校して来たって事?」

「え、、紅い瞳の少女って?」

「そう、シンジ君が持ってるショーツの持ち主だよ、」

 

シンジは脳裏にあの日の悪夢の様な夜を思い出していた、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだい、体調は、」

「、、、、最悪、、」

ガサツなマンションの一室、

派手な下着と、水商売系の服が並ぶ部屋、

その中に複数の制服も並んでいる、

「そうか、でも顔に傷が残らなくてよかった、、」

「ふっ、、、あんたでもそんな事考えるんだ、」

アスカはそんな部屋の端で横になっていた、

そのアスカの側にはオールバックのクールな印象の男が高級そうなスーツ姿で座っている、

いかにも水商売系の男がアスカの側でタバコを吸いながら笑っている、

「大切な商品だからね、君はうちのデートクラブのナンバー1だしね、」

「そのナンバー1に黙って高額マージンを客から取るの止めてよね、」

「はは、、でも君は何とか切りぬけてるだろ、」

「冗談じゃないわよ、此間ベットに縛られた時は本当に最悪だったわ、、」

「でも、君はこの場所に戻って来てる、再びこの世界に戻ってきている、」

「、、、、、、、、、、あんたの為じゃないわ、」

「そうかい、、、まぁ、目的が何かしらないが、この世界に入り込んだ以上、

自分の身は自分で守れよ、、決して他人を信用してはダメだ、、、」

「解ってる、、、」

アスカが上半身を起こし、髪の毛をかきあげながら蒼白気味の顔を片手で覆う、

「それから、、、」

「何よ?」

「変な行動は取らない方がいいよ、、

特に、このクラブの上層部の人達とあまり接触を持たない方がいいよ、、」

「、、、、、、そう、」

 

アスカは差し出されたタバコを口にくわえ、詰まらなそうに答えた、、、

 

第三話へ続く



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