レイは呆然と自分の瞳を眺める、

その先に見える赤い瞳、、、

それでも、世界を紅く染める事はできない、、

どんなに自分の手を真っ赤に染めても、、

他人の口から流れる血で服を汚しても、

自分の視界は通常の色彩を映し出す、

でも、、、レイを見る視線は、、

レイを普通の少女とは見てくれない、、

特別、美人じゃない、、

特別、金持ちでもない、、

特別、綺麗な気持ちを持ってるわけでもない、

特別、強い少女ではない、、、

 

(さぁ、、今日も笑顔で、、頑張ろう、、、)

上半身裸で、腕に入れた刺青にキスをしたレイは、

制服という囚人服に着替え始めた、

そして、頑張るのだ、、

作り笑顔を崩さない事を、、、

 

 

 

 

 

「おはよう綾波さん、」

「あ、洞木さん、おはよう、」

レイが教室に入るとヒカリが声を掛けてきた、

転校してから、1週間が過ぎていたが、レイは無難に新たな学校生活を出発させた、

クラスの委員長である洞木 ヒカリに何故か気に入られた所為もあるが、、、

「レイ、おはよう!見た!昨日の滝沢君!」

「ご、、ごめん、、昨日は、、、」

「あぁ!あれほど滝沢君のドラマ面白いから見てって言ったのに!」

「で、、でも、アタシ、、、あんまり、、テレビ見ないから、、、」

「何言ってるのよ!滝沢君を見ない女の子は、女であって、女の子ではないのよ!

ジャニーズこそ、素敵な夢見る少女の理想の世界なのよ!それを、、、それをレイは!」

「あは、、あはっははは、、、、、」

(如何してこんなに朝からテンション高いんだ、、この高血圧女が、、)

レイが顔を引きつらせながら、乾いた笑顔で応えた相手、、

霧島 マナ、、

この少女に何故かとても気に入られた事が、レイの無難な生活の理由だった、、

(マナって、、、、どうしてこんなに笑えるんだろう、、、)

レイは不思議に昨日のドラマの事、アイドルの事を愉しそうに話すマナを見つめた、、

クラスの女子の間ではリーダー的な存在の少女、

委員長のヒカリとは親友でもあり合気道の有段者、持ち前の明るい性格で皆を引っ張る、

そのくせ感動屋さんで、喜怒哀楽を上手に表現できる、

所謂、、、誰からも好かれる少女、

そんな少女、、、霧島 マナは何故かレイを気に入っていた、

「それでね、レイ、やっぱり化粧バンドってアイドル失格だと思うの、、、、、」

(よく喋るよなぁ、、、、でも、、、この子、私とまったく逆な性格よね、、、)

レイはそう思いながらも、作り笑顔でマナの言葉に応えていた、

「でしょ、やっぱり化粧バンドって単なる歌謡曲で、ロックじゃないのよ、

化粧落せば汚いオヤジデブのくせに、写真で誤魔化してばっかり、最低よね、、」

「でも、、霧島さん、、、、」

「なに?」

「大衆は虚偽を求める、だからお金が動く、雑誌もメディアも音楽では生活できない、

やっぱり手っ取り早くお金になる虚像、歌謡曲ロックは資本主義者達にとっては、

必要不可欠なものなんじゃない?」

「でも、レイ、虚像を真実に見せるなんて消費者を騙してる訳でしょ、」

「霧島さん、、、それが、資本主義なんだと思うの、、、、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、」

「アイドルも、化粧バンドも、単純に消費者は求める、

その消費者がもっとお金を使う様に、資本家が投資し虚像を誇大化していく、

その結果、一部の人間に大衆は騙され消費し続ける、

音楽の才能は無くても、メディアを利用して天才プロデューサーになれる様にね、、

そしてメディアは自分たちが作った偽のヒーローで更なる金儲けを考える、

偽のCDセールスで大衆を騙し続ける、、

そして、最後には虚像、物まねが真実を越えてしまう、

お金儲けの結果ね、、

でも、或時、私達はふと、振返る、、、

贋物の幸せにね、、、、

気がついた時には、資本主義地獄から抜けられない、、

そして、自殺する、、、、、

嫌な世界ね、、、」

レイは何時の間にか独り言の様に言葉を生んでいた、

一人、自分の気持ちを、今まで感じてきたことを、、、

出来るだけオブラートで包みながら、呟いた、、

 

「、、、、、、、、、、レイ、」

マナは始めて見せるレイの寂しそうな表情に言葉を無くす、

「、、、、、、、、綾波さん、大丈夫、、」

黙って聞いていたヒカリも心配そうな表情になる、

「あ、あ、いや、、別にそんな、、やだなぁ皆、そんな表情しないでよ、」

レイは周囲の雰囲気を一気に暗くした事に気がつき、わざとらしく笑う、

「ちょっと暗かったかなぁ、あは、あは、、あははは、、、」

乾いた笑い声で、後頭部をかきながらレイは自分の机に戻っていった、

(ふう〜、危ないなぁ、、危うく毒々しい一面を見せるところだった、

やっぱり、世間一般の女の子の前では棘の無い会話をしなくちゃね、、、)

机に戻り、一時間目の準備をしながらレイはそんなことを思っていた、

(やっぱり、、ガサツな生活をしてきたからかなぁ、、、

でも、資本主義の豚どもが余りにも世間で幅を利かせてる事は事実よね、

神様や人体臓器まで商売金儲けの道具として使うんだから、、、

こんな世界、、早く崩れ落ちないかなぁ、、、、、、)

 

 

キン〜コン〜カン〜コン〜

そんな事を思いながらレイはホームルーム開始の鐘を聞いていた、

そして、担任の葛城教師が普段の胡散臭い空元気と笑顔で入ってくる、

「起立、」

ヒカリの掛け声と同時に全員が立ち上がる、

「礼、着席」

全員が着席し、教師の第一声を待つ、

その瞬間、

 

ガラ!

全員が、突然開いた後ろの扉を見た、

そして、まったくの無表情のまま、その視線全てに敵意を抱く様な瞳で睨み返す、

赤茶色に染めた少女の存在を確認した、、、

「アスカ、遅刻よ、」

「すみません、」

まったく悪いと思っていない少女は小さく応えると、そのままレイの隣の席に座る、

静かな教室に、アスカが座る音だけが響く、

誰もがその音が耳に入っているにもかかわらず、関係ないといった表情をしてる、

だが、レイはアスカの異様な感じに思わず視線を奪われる、

始めてこの席で出会った時、月曜日アスカはマスクをつけていた、

次の日、唇の脹れが引いたのだろう、マスクはしていなかった、

だが、金曜日アスカは学校を休んだ、

そして、週明けの月曜日、今日、アスカは眼帯を付けで登校してきた、、

それだけじゃなく、頭部の周囲を包帯で巻いた状態で、、、

明らかにアスカは怪我をしていた、、

(うわぁ、、この女、、また怪我してる、、前回はマスクで隠せたけど、、、

今回は結構酷い怪我みたいね、、、、そんなに酷いなら学校に来なければいいのに、、)

レイは包帯と眼帯で覆われたアスカの横顔をじっと見ていた、

「、、、、それから、アスカ、」

出席を取り、連絡事項を言い終えた葛城教員がアスカを呼ぶ、

「、、、、はい、」

「昼休み、職員室に来なさい。話があるの、」

「、、、、、、、、、、はい、」

無気力に応えるアスカ、

その小さな応えですら静かな教室には響き渡る、、

誰もが自分に関係ないって顔で、その応えを無視する、

そして、一時間目へと流れて行った、、

 

 

 

 

 

 

Nothing Like The Sun  episode 3

 

 

 

シンジは廊下を歩いていた、

そして、一人、静かに軽音楽部の部室に入っていった、

「やぁ、今日は学校に来てたんだ、」

「うん、あんまり休んでられないしね、」

シンジはサイレントドラムに座っている少年に応える、

「カオル君こそ、、この学校の生徒じゃないのに、見つかったら怒られるよ、」

「大丈夫、一応偽造生徒手帳を手に入れてるから、適当に誤魔化すよ、」

「偽造生徒手帳?」

笑いながら、シンジは安いフェンダージャパンのストラトキャスターを手にする、

部の備品として置かれているギターだけあって、かなり汚く傷がついている、

その汚れ、傷は使い込まれた、、というより乱雑に扱われただけのギター、

そんなギターがシンジはとても好きだった、、

「アスカちゃんとは会ったのかい、、」

「いや、、」

ペグを回し、チューニングをする、

「マナちゃんとは?」

「また怒られそうだから、、」

シールドのプラグをアンプに繋ぐ、

「あの転校生とは?」

「神様が望むなら、自然と遭えるはずだよ、」

笑いながらシンジはギターを弾き始める、

「そういえば、今日、、、、あの場所に行こうと思ってる、」

カオルは割と真剣な表情で呟く、

「そう、、、、」

「女王様との約束は11時ぐらいだけど、、、シンジ君は紅いシャツを着てきてね、」

「、、、、、、、、、、どうして?」

シンジはジト目でカオルを見つめる、

「、、、、、、、、、まさか、、カオル君、、」

細めた目で見つめるシンジ、

ニコニコ笑っているカオル、

互いに考えてる事は同じらしい、

「一応、シンジ君の名前で申し込んでおいたから、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

「11時に新宿のSuicideって店でね、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、僕が、行くの?」

「君の名前で申し込んであるからね、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

「それじゃぁ、」

カオルはさも当然と云わんばかりの表情で部室を出て行った、

一人残されたシンジは、ギターを弾きながら頭を抱える、

「、、、、、、、、、まいったなぁ、、いきなりだもんなぁ、、」

小さく呟く、

それでもシンジはこれから起きるであろう世界の事を思い描き、

複雑な表情を浮かべていた、

その時、

 

コンコン、

 

部室のドアを誰かがノックした、

「開いてるよ!」

シンジが叫ぶ、

そして、その声と同時に一人の少女が入ってくる、

「あの、、、、ここって軽音楽部なんですか、」

蒼い髪、赤い瞳、、、それでいて、何処か退廃的な肌の色を持った少女が顔を覗かせる、

「う、、うん、、そうだけど、、」

シンジは一瞬その容姿に驚き、言葉を詰まらせた、

「入部したいんですけど、、」

「入部って云われても、、、、、、、、、ここ殆ど活動してないし、、」

「でも、、部員はいるって、、、」

「うん、、僕が一応そうだけど、、、、、、、あっ!」

シンジは顔だけを覗かせる少女を見て、カオルの言葉を思い出した、

そう、カオルと同じ紅い瞳を持った少女、、

シンジが持つ女性物の黒いショーツの持ち主でもある少女、、

その少女が制服を着てドアから顔を覗かせていた、、

「き、、君は、、、」

「転校して来た1年C組の綾波 レイといいます。」

「あ、、あぁ、、そう、、、僕は、い、碇、、シンジ、、同じ1年だけど、、、、」

「ホント、なんだ緊張して損した。恐い表情してたから先輩かと思った、」

「そ、、そう、恐い表情してた?」

「うん、、何か複雑な表情だったから、、、、それより、入部したいんだけど、」

「あぁ、、じゃぁ顧問の先生に言った方がいいよ、」

「顧問の先生って?」

「赤木先生、科学の先生でいるでしょ、」

「あぁ、、あの金髪の中年女ね、」

レイの一言にシンジは固まる、

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、絶対に本人の前では言わない方がいいよ、」

「どうして?」

 

 

「同じ言葉を言った女子生徒が、1週間ぐらい実験と称して監禁拷問されたって噂があるんだ、、、、、今でもその娘、悪夢に魘されてるらしいよ、、」

 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、それって教師のやる事?」

「あの人の拷問は壮絶だからね、、、、多分職員室にいるはずだから、行ってみれば?」

「う、、うん、、それじゃぁ、、」

レイは首を扉から引っ込め、去ろうとする、

「あ、待ってよ!」

そのレイをシンジが呼び止める、

「な、なに、、、、」

シンジはギターを置き、レイに向かってゆっくり歩く、

そして、レイの側に立ち、じっと瞳を見つめる、

「な、、何か、、用?」

シンジは顔を近ずけながら囁く様に話す、

「忘れた?」

「はぁ?何を?」

レイは多少後ずさりしながら、訳が解らないといった感じで答える、

「あの時の約束、、、」

「約束?誰と?何を?」

顔を多少引きつらせながら、迫るシンジから一歩下がる、

「もう一度遭えたら、、僕とキスしてくれるって約束した事?」

だが、シンジはレイを追う様に一歩進む、

「な、な、な、な、、、、、何を言ってるの???」

顔を真っ赤にしながら、レイは焦る、

「あの時、あの公園で、、、、一緒に、、、、、、僕にくれたじゃないか、、、」

シンジは、ゆっくりと唇を重ね様とする、、

 

だが、

「し、し、し、し、知らない、、わよ!この馬鹿野郎!!!」

レイの平手がシンジの右頬を打つ、

「まったく、初対面のくせに失礼な男ね!最低!」

怒りを露わにしながら、レイはその場を去っていった、

「、、、、初対面じゃないんだけどな、、、」

叩かれた右頬を押さえながらシンジは小さく呟いた、

 

 

 

 

 

 

(まったく、本当に失礼なやつね、

ちょっと繊細で女の子受けよさそうな顔してるからって、初対面のアタシに、

“キスをする約束”だぁ、ふざけんじゃないわよまったく!

こっちが大人しくしてると思って調子に乗って、、、、ホント最低なやつ!

あれがあいつのナンパの手なんだわ、、、、、、、あれ???

でも、、、あの時、あの公園って言ってたわよね、、、、、

以前に遭った事ってあったかしら???)

そんな事を思いながらレイは職員室の側にある保健室の前を通った、

そして、入り口のドアから覗いたガラスドアから中の人物を覗くと、

そこには数人の人物が発見できた、

(あ、、赤木が居る、、葛城もいるなぁ、、もう一人、、、生徒も、、、

あ、、、あいつだ、、アスカって奴だ、)

 

 

 

 

 

「アスカ、、あんまり無理しないでよ、、」

リツコはアスカの怪我の治療を行っていた、

「、、、、うん、、大丈夫、」

「大丈夫じゃないでしょ、こんな怪我を負って、」

「痛って!もっと優しくやってよ!」

アスカの額の傷を消毒するリツコは、次に眼帯を外す、

「額の傷も深いけど、、、、瞼の上の傷のほうが酷いわね、、」

「痛い!ちょっと痛いって解って傷を押してるでしょ!」

「ちょっと動かないでよ、アスカ。」

「本当に消毒液なの?なんでこんなに痛いのよ!」

痛みを堪えながらも、アスカは叫ぶ、

だが、表情は何処となく柔らかい印象がある、

「アスカ、傷の原因は自分でしょ。大人しく薬を塗っとかないと、一生傷が残るわよ、」

側に座っているミサトがアスカを宥める、

「解ってるわよって、、、、、いっつ!痛いわね!」

そんな会話が少しだけ開けたドアから聞こえてきた、

(あいつ、、何だか明るいなぁ、、、、)

レイの視線の先に映る少女は、確かに額に傷を負い瞳を内出血させて青黒く腫らしてる、

隣の席にいた無愛想で、誰とも仲良くしない、、一人ぼっちの少女だった、、

「アスカ、、いくら目的に近道だからって、危険過ぎる行為は控えてね、」

「大丈夫だって、、それに2人の前に存在してるでしょ、ちゃんと生きて、」

「生きてるからって、結果オーライじゃ、この先には進めないわよ、」

「しょうがないでしょ、相手をしてるのは変態オヤジばっかりなんだから、」

「でも、危険なお客を取るときは、加持君か私にすぐ連絡して、

今回リツコの連絡が早かったから良かったけれど、、、、、、少しでも遅れていたら、、」

ミサトはアスカの傷を優しく撫でる、

その表情は普段教壇で見せる空元気な偽善的な笑顔ではなく、

心配しすぎで疲労しているが、本当に心配してる真実の表情だった、

「うん、、、今回は悪かったわ、、アタシの暴走だったかもしれないけど、、

でも、、あのクラブの入り口がやっと解ったんだから、、、」

「そうね、、アスカのおかげよ、ありがとう。」

「へへ、、、」

恥ずかしそうに笑うアスカをリツコとミサトが優しそうに見守る、

 

 

(うわぁ、、あいつ、笑うとあんなに可愛いんだ、、、、

普段も普通に笑えばいいのに、、、、、、それに、葛城も赤木も表情違うなぁ、、)

“ガタ”

レイが音を立てる、

 

「誰!そこにいるのは!」

リツコとミサトが椅子から立ち上がり叫ぶ、

「あ、、あの、、、、、、」

「綾波さん、、、」

逃げる事も出来ず、ばつが悪そうにドアを開けるレイ、

「あの、、赤木先生に用事が、、」

そう云って保健室に入ったレイは、アスカの方を見る、

だが、そこには、さっきまでの笑みを失い、普段通りの無表情で人形の様な瞳をした、

怪我を負った少女がいるだけだった、、

 

 

 

 

(気持ち悪い女、、、、、)

レイにはアスカという少女がまったく解らなかった、、、、、、

 

第四話へ続く



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