巨大なネズミが、笑顔を振りまいてる、

血だらけのハンマーを持ちながら、、

少年、少女の夢を壊す為に、

虹色をした橋のふもとで、魔女と会話した事、

憶えてるかい、、

あの世界では、お前は食料で、

スローターハウスで皮を剥される、

合法的に血を抜かれ、自分の肉を見せられる子供達、

自分の肉を愚かな生物に与え続ける、

真っ赤な唇を、大きく開けてアタシに齧り付く、

香水の匂いが僕の哀しみを消し去る、

何時か魔女が虹を消す、

その時、世界は裏と表が逆になる、

この世界の裏側は、、素敵な狂人だけが住む、

綺麗な黒い雲、世界を濡らしてくれる素敵な黒雲、

稲妻をおくれ、、暴風を与えてくれ、、

今まで僕が流した血を同じ量の、真っ赤な豪雨を降らしてくれ、

巨大な黒いネズミ、、

僕をハンマーで殴り殺す、

何時もの、造った変わらない笑顔で、

ぬいぐるみの笑顔で、

 

 

 

 

 

レイはそんなCDを聞いていた、、

何もない部屋、

ベットとCDウォークマン(拾ったもの)、

小さな冷蔵庫とギターが一本あるだけ、

勉強道具も着替えも、ダンボールに詰めてクローゼットに放り込んである、

タンクトップと黒の安物のショーツ姿で、CDを聞きながら考え事をしていた、、

(困ったなぁ、、あんな展開になるなんて、、、、、

マナがアスカの事心配なのわかるけど、何となく危険な感じがする、、、

まいったなぁ、、、、)

数日前、CDショップ前の階段での会話を思い出す、

 

 

「アタシね、、信じられないの、、、」

「アスカが売春してるって事?」

「うん、、、、」

「結構お金に困ってるんじゃないの?」

「ううん、、確かにアスカ、お父さんとお母さん離婚して、今は一人暮らしだけど、

決してお金には困って無いわ、、」

「え、両親離婚して、、、一人暮らしなの?」

「そう、、、でも、教育費と仕送りの金額は結構なものだから、、、」

(アタシと一緒じゃない、、、、、、、、、、、、“結構な金額”って事以外は、)

レイは心の中でつぶやく、

「でも、、よくあるじゃない、両親のお金なんていらない!

自分の生活費ぐらい自分で稼いでやる!っていう青春ドラマみたいな、、、」

「それなら、アスカ、普通のアルバイトするわよ、、、、

アスカってね、本当に負けず嫌いなのよ、、、決して最後まで諦めない、、

決して軽軽しく自分の価値を捨てたりしない、、、

そんな女の子なのよ、、、、」

「ふ〜ん、、、、」

(なんだ、、結局信用してるって事か、、、)

レイはマナの中では既にある種の結論が出ている事に気がつき、

敢えて何も言わず、その結論を聞くことにした、

そして、暫しの沈黙の後、、マナが思い詰めた感じで言葉を発した、

「アタシねぇ、、、アスカを探ってみようと思うの、、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、探るって?」

適当に答えるレイ、

「アスカ、、月曜日には怪我を負ってでも学校に来るじゃない、

それって、多分危険な事を土曜日の夜にしてるからだと思うの、」

「、、、、、、、、、、、、、そうね、、」

「確かにね、オヤジと一緒にホテルに入ったとか、デートしてたとか、

色々噂があるんだけれど、自分の目で確認したいの、、」

「、、、、、、、、、、、、、、、そう、、」

「それでね、、今度の土曜日、、尾行してみようと思うの、、」

「、、、、、、、、、、、、、うん、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

、、、、って!!び、びび、尾行!!!」

流石にレイも驚く、

「そう、、、それでね〜、レイ〜、」

多少表情を変えたマナが、猫なで声でレイに迫る、

「レイ〜、お願いがあるんだけどね〜、、、、」

「嫌よ、」

「まだ何も言って無いじゃない〜」

怪しい笑顔と笑っていない瞳でレイに迫るマナ、

「い、、嫌よ、、、どうせ、、一緒にとか言うんでしょ、」

嫌な汗を背中と額にかいてるレイ、

「そんな〜、つれない事言わないでよ〜、ねぇ、、レイ、」

「い、嫌よ、、、どうして、アタシなの、、、」

「だって〜、他の人達はアスカが売春してるって決めつけてるし、

ヒカリは隠密行動、苦手そうだし、、、、そういう事はレイ得意そうだし、」

「別に、あたしゃ忍者じゃないんだから、得意なわけないでしょ、」

「でも〜、」

不気味な笑みで更に迫り来るマナ、

「と、と、兎に角、アタシは嫌よ!」

「そう、、、、、、じゃぁ、、、」

にやりと笑ったマナが鞄から数枚の写真を取り出す、

「これが流出するの、、、止められないなぁ、、、、」

「なによ、、、それ、、」

差し出された写真をレイは受け取る、

そして、同時にその写真にレイは驚き、怒りの声を上げる、

「な、な、な、何よ!これ!」

「危ないやつが多いのよねぇ〜、

盗撮マニアの変態がね、レイのいやらしい合成写真を売りだそうとしててね〜、

それをアタシが未然に防いであげてるんだけどね〜、」

レイはとんでもない合成写真に対し、余りの怒りに言葉を失っている、

「こんな写真売られたら、レイも嫌よね〜、」

「それって、、、、どう聞いても脅迫じゃない、、、、」

「あら、アタシ交換条件なんて何も要求してないわよ〜、ふふふ、、、」

恐ろしい笑顔で、まったく笑っていない瞳でマナが耳元で囁く、

レイも一応作り笑顔でいるが、まったく瞳は笑っていない。

「、、、、、、、、、、、、、解ったわよ、」

「え、何が?」

「今度の土曜日、付き合うわよ、、」

「ホント!レイ、ありがとう!」

レイの言葉に、今度は本当に嬉しそうに笑顔を浮かべ、抱きつくマナだった。

 

 

 

(まったく、、、そんなにあの女のことが心配なのかい、、)

レイが一応引き受けた理由は、、

けっして盗撮合成写真が学校で売られる事が嫌な訳では無い、

けっしてマナへの同情や哀れみではない、、

レイを多少なりとも、その気にさせ、同意させた理由は、、

自分の手で絡んだ運命を切断したい、、、

そう願ったからだった、、

(明らかに、アタシはあの女と接触を持つ様に、、運命が回っている、、

アタシが望む、望まないに拘らずね、、、

なら、アタシの手で、その運命の糸を切断してやる、、自らの手でね、、、、、

あ、後、あの合成エロ写真作ってる奴、そろそろ殺さないとね、、、ふふふふふ、、、)

そいつを気持ち良さそうに殴りまくってる姿を想像し、レイは不気味に笑っていた、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、金曜日、、、

昼休みの教室、

「明日よろしくね、レイ、」

「う、、うん、、、、ねぇ、霧島さん、本当にやるの?」

「えぇ、もちろんよ、」

「、、、、、、、、、、そう、」

こんな会話が朝から何度も続いていた、

マナは明日が楽しみで仕方が無いといった感じだ。

「へへ、、アタシねぇ、明日の為にねぇ、、、、買ったんだ、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、何を?」

「じゃ〜ん、これよ、これ、」

マナは大きな紙袋の中からごそごそと何かを取り出す。

「、、、、、、、、、、、、、、、、何、それ?」

明らかに、何か解っているのだが、、

目を細めて、軽蔑した視線で、一応レイは質問する、

「変装セットよ、知らない?」

プラスチックで出来た伊達眼鏡、安っぽい付け髭、どう見ても繊維製のカツラ、

更に、トレンチコートに帽子、、、、、、

(ば、、ば、、、馬鹿じゃないの、、この女、、、)

思わず漏れそうになった言葉を飲み込み、レイは冷静に答える、

「、、、、、、、、、、、、、、、知らない、」

「そうでしょ〜、だって秘密変装セットって書いてあるぐらいだからね〜、

実はね、ここだけの話し探偵グッツショップの店員さんから密かに売ってもらったんだ、」

レイの言葉を聞いて嬉しそうにマナは話す、

「、、、、、、、、、、、、、、、いくらで?」

「そうね、、、特価で五千円って言われたんだけどね、更に4千円まで値切ったのよ、」

「、、、、、、、、、、、、、、、そう、、、」

本当に嬉しそうに笑うマナに、流石のレイも言葉を繋げられなかった、、

「一応、レイの分もあるんだけど、、、、」

「絶対に要らない!!」

レイは強靭な意志を込めて拒絶した、、、、

 

 

 

 

 

 

 

nothing like the sun

episode 6

 

 

 

 

 

 

「あ、アタシもそんな格好するの、、、」

「当然よ、昔から変装といえばマスクにサングラスって決まってるのよ、」

「でも、、、却って目立ってるんだけど、、、」

マナは帽子に、コート、マスクにサングラス姿、、、

どう見ても、誰が見ても怪しい変質者の様な格好をしていた、

「そうかなぁ、、これだったらアタシだって解らないじゃない、」

「でも、、、、、、、誰もが注目するよ、、」

「そうかなぁ、、、」

マナは自分の姿をもう一度見回す、

その時、

「マナ、なに変質者みたいな格好してるの?」

2人に話しかける人物の方を振返る、

「え、、、、、ってシンジ!」

「マナ、、、、、、、、ど、どうしたの、その格好?」

「え、い、い、いやぁ、、別に、、」

慌てて帽子とサングラス、マスクを取る、

「別に、、何でもないわよ、、ホント、、うん、、、、特に何も、、、」

「、、、、、、、、、、、、、ふ〜ん、そう、」

「何も悪い事は考えてないわよ、、何も、、うん、、」

「そう、僕はてっきり変質行為でもするのかと思ったよ、」

「いやぁ〜ねぇ〜、そんな訳ないじゃない、あは、、あはははは、、、」

乾いた笑いだった、、

「って事より、シンジ、今日はちゃんと学校に来たんだ、」

「うん、まあね。でも、今日からはちゃんと学校に通おうと思ってるよ、」

「ホント!ちゃんと学校に通うの!」

嬉しそうにマナが叫ぶ、

「うん、、まぁ出来る限りの中でだけど、」

「何言ってるのよ!高校生なんだから、ちゃんと学校に通いなさいよ、

それが出来ないなら学校辞めちゃった方がいいわよ、」

「そうだね、、、まぁ、考えとくよ、」

「考えとくよじゃなくって、、、、、」

「でも、、、、、、、」

そんな会話が続く、

だが、2人とも喜怒哀楽を隠さず、その場、そのタイミングで自由に表現してる、

特にマナは、シンジに対しては普段みた事のない笑顔で話す、

(なんだ、、確かこのシンジって奴、、部室で遭った奴だよなぁ、、、

って事はアスカと関係ある奴なんだよな、、、、でも、マナの表情から察すると、、、)

「アスカとマナとシンジ君、幼馴染なのよ、」

「え、」

振り向くとヒカリが立っていた、

「あの3人、子供の頃は同じマンションに住んでて、小学校卒業するまではいつも一緒だったのよ、、、、とっても仲良くて、、互いに信頼しあってた、、」

「ふ〜ん、、そう、、、」

(確かに、、嬉しそうだな、、でも、この笑顔は、、、)

「ねぇ、洞木さん、」

「何?」

「ひょっとして、、、霧島さん、、あの男の子の事、、、」

多少驚いたヒカリは周囲を見まわし、小声でレイに答える、

「そうよ、、マナはずっとシンジ君の事が好きなのよ、、今でもね、」

「やっぱりね、、」

 

 

「ところで、綾波さんだっけ、」

突然シンジがレイに話しかける、

「は、、はい、、」

レイも突然の事に驚き、焦って答える、

「こないだは、ごめんね、」

「ううん、、、、別に、」

「でも、あの時約束したって事は、嘘じゃないんだ、」

「そ、、そう、、」

「でも、、、綾波さん、忘れてたみたいだね、、」

「さ、、さぁ、、、、」

レイは冷や汗をかきながら、シンジの言葉に適当に返事をする、

(だぁ〜、この男、皆の前でそんな事言わなくていいんだよ!)

レイ自身、シンジとの約束は憶えていない、

しかも恐らく、あの夜、シンジと何かあったのだろう、と思ってはいるが、

マナやヒカリの前では確認を取れない、

そんな焦りと、マナの鋭い視線が、レイに冷たい汗をかかせていた、

「と、ところで、、、あの、、何か?」

「あぁ、そうだ、今日の夜、空けてある?」

「、、、、、、、、何か、、あったかしら?」

「ほら、歓迎会をやるって、赤木先生から言われてたでしょ、」

「、、、、、、、、、、、、、、、そういえば、、」

「夜、8時、××の“シャーベット”ってお店で、地図はこれ、」

「は、、はぁ、、、」

「他の部員も先生達も待ってるから。それじゃぁ、」

「う、うん、、」

「あぁ、、そうだ、あと、アスカも来るから、よろしくね、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

笑顔で照れくさそうに去って行くシンジ、

固まった笑顔のまま無言で佇むレイ、

そして、、、

「レイ、、、、、、どういうこと?」

「はは、、、霧島さん、目が笑ってないよ、、」

「そう、、、そんな事より、レイ、」

「は、はい、」

「た〜っぷり、聞かせてもらうからね、、、シンジとの関係、」

「あ、あの男の子、シンジ君って言うんだ、、」

「誤魔化しても無駄よ、、、“あの時の約束”って何か聞かせてもらうわよ、、」

「い、いやぁ、、何の事かしら、、、、」

レイは冷や汗どころか、油汗も一緒に流れ始めた、、

その後、、

迫り来るマナとヒカリの拷問的詰問にレイはひたすら黙秘権を貫いた、、

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、

学校をサボったアスカは、

「、、、、、解ってるわよ、、、、、うん、、明日9時でしょ、

、、、、、、うん、大丈夫よ、、、言っとくけど、最近危ない客が多過ぎるから、、

うん、、また変質者だったら、アタシ辞めるからね、、、、、うん、それじゃ、」

携帯を切り、グラスの脇に置く、

「また、クラウベリーからの紹介か、、」

「うん、、、、」

アスカは以前レイと来た“シベリア”という、

退廃的な雰囲気が充満する薄暗いライブハウスに来ていた、

「ねぇ、、もう一杯、、」

「いくら好きでも、止めとけよ、今日はミサト達と夜に約束があるんだろ、」

「、、、、、、そうね、、」

立ち飲み式のカウンターに乗っているアスカのグラス、

キャンディーグリーンに透通ったグラスには大きな氷が一つ浮いている、

その氷が溶けるのをじっと見ていると、

自分の心の中の何かも溶けて行く、

そんな気がする、

常識、認識、価値観、、そんな物が全て融解していく、、

そして、、自分が酷く醜く感じる、、

どうして自分の体をあれほど醜い表情で欲するのか、

しかも、通常の性行為を行う人物は一人としていない、

何故、、、

「愛欲と性欲は同時に存在しないものだからだよ、」

カウンター内にいる男がアスカの心の問いに答える、

「普通に自分の奥さんを抱くだけじゃ、、満足できないって事?」

「結婚はまた別の問題だ。

遺伝子を未来に残す為に行うセックスには、愛欲も性欲も必要ない、

だが、遺伝子を残す目的以外でするセックスには二つの欲望が存在する、」

「それが、愛の本質だとでもいうの?」

グラスに残ったジンライムを飲みながら、アスカは皮肉っぽく笑う、

「いや、だが人間は遺伝子を残す行為は神聖なものとし、

それ以外のセックスは背徳な行為と基準付けた、

一方でその基準を道徳とした人間は神を生み出し、

その反対に欲望のみを指示した人間は悪魔を生み出した、」

「どっちも、同じなのにね、、」

「そうだ、、だが、今はその悪魔を根絶しなければならない、」

「悪魔、、、、そんな言葉は当てはまらないわよ、」

グラスを置いたアスカは、左手で額を押さえながら呟く様に話す、

俯き、カウンターの上に彫られた落書きを見ながら、

思いだしながら、、呟く、、

「アタシの唇が脹れるのが、好きでたまらない、、、

アタシの瞳が蒼黒く脹れあがったのが堪らない、、

アタシの眼帯姿に、マスク姿に異常な興奮を覚える、、

性器に触れるでもなく、自分の異常性欲の世界に浸っている、、

その現実と幻想の狭間で、ギリギリの線の上で自慰行為をしてる連中、

身体の自由を抑圧し、口の機能を停止させ、その上で嬲る様に殴り暴行を加える、、

そいつに何が気持ち良いのか聞いたら、何って云ったと思う?」

「さぁ?」

「猿轡から漏れるアタシの悲鳴だってさ、、、

はは、、そんな連中が悪魔が持つ神と対峙する究極の美を持ってると思う、、

連中は、、、あいつ等は、、、、」

「なんだい?」

カウンター内の男を不気味な瞳で見上げるアスカ、

吐き捨てる様に言い放った、、

 

 

「あいつ等は、、、、、、、、、、人間そのものよ、、」

 

 

第七話へ続く



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