「うげぇぇ、、、」

「ほら、レイ、アスカ行っちゃうよ、」

「う、、うん、、、」

元々白い肌のレイだが、今日は更に真っ青な表情だ、

フラフラに成りながらも、必死に壁沿いに歩く、

「レイ、、、、、そんなに飲んだの?」

「へへ、、、ちょっとだけだけど、、」

「ダメじゃない、未成年者がお酒なんか飲んだら、」

「そ、、そうよね、、、はは、、はははは、、、、、うげぇぇぇ、、」

力無く笑い、胃液を吐き続けながら、レイは電柱から電柱へと渡り歩く、

「、、、、、今、、、何時?」

「まだ7時半よ、、、恐らくこれから待ち合わせ場所へって感じね、」

「、、、そう、、、、、」

レイとマナはアスカを尾行していた、

夕方、アスカがマンションから出てから、2人で隠密行動を取っていた、

もっとも、二日酔いで死にそうなレイを引きずり回すマナ、

そんな言葉が最も似合っていた、、、、、、

そんな2人に気がついているのか解らないが、厳しい表情のアスカは歩き続ける、

白い襟付きシャツと黒のタイトスカート、ちょっと高めの紅いパンプス、

光沢を持つ黒のストッキング姿で歩く、

若者も熟年者も、脂が染み込んだ金を握り締めて、

欲望と淫欲さを満足させる街を歩いている、

「ねぇ、霧島さん、、」

「何?」

物影に隠れながら、アスカを見つめるマナに、

やっと吐き気が止まったレイが質問する、

「もし、アスカ、、、、、本当に単純に売春してたら、、どうするの?」

「、、、、、、、、、、、、、、、、」

「アタシ達が勝手にそう願ってるだけで、、アスカは周囲の連中が云ってる様に、

高飛車で、美人を鼻にかけた、淫乱で、金銭至上主義者で、心が腐った奴だったら、、、

霧島さん、、、どうするの?」

「、、、、、、、、、、、、その時は、その時よ、、、」

「アタシ達の心配なんて、、まったく無意味で、単純に辛い現実だけが残ったら、

、、、、、、霧島さん、耐えられる?」

「、、、、、、、、、、、解らない、、」

マナは振返らず、アスカの背中を見ている、

ショーウインドーを除き込み、流行りの服をチェックしてるアスカを見たまま答える、

「現実は、、、想像や希望を破壊する為に存在してるのよ、

希望や夢が壊れて、泣き叫ぶ人達の涙で海は構成され、

絶望や悲哀を叫ぶ人達の声にならない叫びで風は生まれる、

悲劇を受け入れられず、自ら流した血液が大地を創ったのよ、

そんな地球の現実に、残酷さだけが支配する現実に、マナは耐えられる?」

「、、、、、、、、、、、そうねぇ〜、その時にならないと、解らないわね、」

一瞬振り向き、ぎこちない笑みを浮かべて答え、すぐさま視線をアスカに戻し、

尾行を続けるマナの背中をレイ複雑な気持ちで見ていた、

(ちょっと言い過ぎたかなぁ、

でも、確かにマナみたいな女の子には、血も暴力も狂気も変質も、

関係ない別世界での出来事にしといた方がいいけどね、、

ま、多少辛い思いをした方が本人の為だしね、現実がそうなら、、仕方ないか、)

 

 

レイとマナはアスカが入った喫茶店の前で缶ジュースを飲んでいる、

「レイ、、、」

「何?」

コカコーラで口を濯ぎ、一気に吐き出すレイに、マナが問い掛ける、

「レイは、、、本当に売春してると思う?」

「、、、、、、、、、、、、、うん、」

堅く閉ざした唇を拭きながら、レイは答える、

「アスカは心が腐ってしまったと?」

マナは心配そうに聞く、

恐らく、レイの答えに何かを期待してるのだろう、、

「誰とでも金が目的で寝るからといって、心が腐ってるとは云えないわ、」

「でも、、、人間として許されないでしょ、」

その言葉にレイは吹き出して笑う、

「あははは、、霧島さん、、アスカの事、誰が許さないの?」

「え、、誰って云われても、、」

「神様がアスカを嫌ってたら、霧島さんもアスカを嫌うの?

教師が、警察が、世間が、法律が、道徳が、倫理が、世論が、、、

全てがアスカを嫌い、否定し、拒絶したら、霧島さんもアスカを嫌うの?」

「、、、、、、、でも、、売春は悪い事よ、、、」

「悪い事?悪い事を否定するって事は、人間の歴史を否定することよ。

売春は最も古くから存在する、伝統的な職業よ。現代の倫理観だけでアスカを

勝手に否定はできないわ。ひょっとしたら、未来の倫理観は売春を当然の事と

認識し、SMとかが普通のセックス基準になって、異性愛者が迫害を受けるの

かもしれない、、、、、別に売春なんてそんなに悪い事じゃないわよ、霧島さん、」

「、、、、、そうかなぁ、、、、」

マナはウーロン茶を両手で握りながら、悲しそうな表情を浮かべる、

その悲しそうな表情を見るレイも、心に多少の痛みを感じていた、

(まったく、、、お嬢さんだよね、マナって。

強烈な現実に潰されて、ゴミに埋もれて血だらけで泣く、

そんな経験した事ないんだろうなぁ、、

まぁ、良い機会だから現実に突き当たって、多少大人に成ってもらおう、、)

レイがそんな事を思っている内に、あるサラリーマン風の中年男がアスカの席

の前に座った、

「お客さんの登場ね、」

「、、、、、、、、、、、、、、、、」

マナは口を閉じたまま、その光景を身動き一つせずに凝視している。

レイもコーラを飲みながらアスカと中年男性を見ていた、

(あ〜あ、、アスカの奴、営業スマイルもしないで、、、、

本当にお人形さんみたいな表情よね、、、

まぁ、それでも独特の冷たい美が漂うって事は、相当美人って事よね、、、)

アスカは笑顔をまったく浮かべない。

つまらなそうに、中年男性の話しを聴いている、

偉そうに、アスカを蔑み、自分の金銭力を誇示している男を、

冷たい生気の無い瞳で無言のまま見ている、

恐らく視界には入っているが、認識はしていないのだろう、、

(でも、、本当に客取ってるんだ、、、まっ、別にアタシには関係ないか、、、)

“関係ない、”

そう思いながら、レイは昨日の夜のことを思い出していた、

“シャーベッツ”という名前の店で行われた、レイの歓迎会、

その場での出来事、話した会話を、、、

思い出していた、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金曜日の夜、レイはシンジに伝えられた店入り口前にいた、

(変な店、、、、)

看板が示す暗い地下への階段を降りて行くと、直ぐに店の入り口だった、

ピンクの床とピンクのカーペット、ピンクのカーテン、

地下でコンクリートしかないにも拘らず、窓が数個あるピンクの壁、

入り口にある大きな円卓のテーブル上には男性性器型の蝋燭の灯火が

無数に並べられ、入り口の不気味な世界を揺れ動かしている、、、、

そして、BGMにはパブリック・イメージ・リミテッドが陰鬱に流れていた、

(キャリアリングか、、、、)

レイは流れている音楽を口ずさみながら、ピンクのカーペットを踏む、

May〜 I〜 Help〜 You,〜」

ビニールホースを体に巻きつけた裸に黒ビキニパンツ姿の若い男が出迎える、

胸毛やすね毛にはなぜがオイルが塗られ、黒く輝いている、

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、ここ、日本よ、」

NO!!NHOOOO!関係ないのよ〜、Baby,、、、

だって今日は貴方の歓迎会ですもの、ほ〜ほほほほ、、、」

呆気に取られるレイの前で、口ひげを整えながら笑う若い男は、

体に巻いたゴムホースを撫で回す。

「じゃぁ、、アタシ帰るから、、」

嫌な汗を感じてるレイは後を振り向き、階段を上がろうとする、

「あ〜ら、ダメよ、今日は貴方が主役なんだから〜」

男は体に巻いてたゴムホースをレイの体に巻きつけ、

強引に自分の体に密着させ、レイを奥へと引きずり込む、

「や、や、や、や、止めろ!気持ち悪い!」

「あ〜ら、大丈夫、結構私、乳首毛には自信あるのよ〜、ほ〜ほほほほ!」

「は,離せ!き、き、き、気色悪い!!!」

叫び、必死に逃れ様とするレイを無視しながら、体を密着させながら

男とレイは奥の部屋へと消えていった、、

 

「離せよ!この変態!」

空いたドアの先の部屋は真っ暗で、誰も居なかった、

「あら、変態はこの世界に存在する人間全てよ、

もちろん、、あ、な、た、も、だよ!この豚野郎!お前が変態野郎なんだとよ!

ふひゃひゃひゃひゃ!!!」

(な、、なんだ、、こいつ、、)

レイは急に態度が豹変した男を見つめる、

男はホースを持ったまま更に奥に向かう部屋のドアの前に立った、

「ここから先は、お前が豚であるある事を証明しから行け!」

そして、ホースの先を特大のワイングラスに突っ込み、反対側を口に咥え、

一気にワインを吸込み、口へと流し込み始めた、

その際に腹部が強烈に隆起する姿を見たレイは、異常な不快感を感じていた、

「さぁ、俺を燃やして、灰にしてから行け!

マックスウェーバーを燃やした炎で、クリスタルナハトを叫んで行け!」

口から紅ワインを垂れ流ししながら、男が叫んだ、

「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、帰る、」

余りの馬鹿馬鹿しさに、レイは目が点になった状態で、小さく呟いた、

「ちょっと待て!このメス豚!俺の魂を陵辱してくれ!俺を侮辱してくれよ!

いやぁ〜ん、、待ってよ、、待てって云ってるだろ!この資本主義の豚め!!!」

大声で叫ぶ男を尻目に、レイは無表情のまま再び入り口を抜け、

階段を上がって行った、、

 

 

(なんだ、、あの男?何なんだ、この店は?、、、、アタシ何しに来たんだろう?)

そう思いながらレイは地下から階段を上がっていた、

だが、、ふと別の考えが過った、

(あれ、、この階段、、こんなに長かったっけ?)

何段昇ったのだろう、

本来なら直ぐに地上に出るはずの階段数にも拘らず、レイは階段の真中にいた、

そして、ふと、先を見上げると遥か彼方に光輝く地上への出口が見えた、

レイは不思議に思いながらも、階段を一歩ずつ昇る、

だが、その度に出口は離れて行った、、

(どうなってるんだ?、、、、、何がなんだか、、、解らないよ、、

これは夢?現実?それとも、アタシの勝手な妄想?

それとも、、、ドラックの後遺症で幻覚を見てるの?)

レイは何時まにか階段を駆け上がっていた、

だが、どんなに必死に登っても、レイは階段を下がっていた、、、

(嫌ぁぁ、、なに、この世界、、、嫌ぁ、、誰か助けて、、)

泣きそうな感覚が背中を駆巡る、

延髄の辺りに奇妙な感覚が浮かんでいくる、

涙を流させ様と涙腺が湿気を帯びてくる、

それでも、、、レイは必死に階段を駆け登った、、

「はぁ、、はぁ、、はぁ、、はぁ、、、」

呼吸が乱れ、肺が苦しくなる、

流れる汗は、汗ではない。全身から涙を流している様な感覚だ、、

もう、何がなんだか、レイには理解できないでいる、

そして、振り向いた瞬間、、、、、

レイは階段の下からゆっくりと確実に伸びてくる、無数の腕を見た、

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

体中を掴まれたレイは、そのまま闇へと引きずり込まれて行った、、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お客様、、お客様、、」

「はっ!」

レイは地下の店の入り口で目が覚めた、

「お客様、大丈夫ですか?」

女性従業員が椅子に座っていたレイの体を揺さぶっていた、

「、、、、、、、、、、、、、、、多分ね、」

やっとの思いで答えると、レイは周囲を見渡した。

普通の小さな洋風居酒屋の入り口、

その椅子でレイは眠っていたのだった、、

「先に来られてた方々が、中で待ってますよ、」

「、、、、、、、、、、、、、そう、、ありがとう、」

立ち上がり、奥の部屋へと案内されるレイは不思議な感覚に包まれていた、

(涙は存在している、、間違いなくアタシ、、、泣いてたんだ、、、)

現実世界でも、涙が流れた跡と、あの泣いた後の独特の感覚ははっきりと残っている、

そして、、

「、、、、、、、、、、、、なんだ、、この跡?」

歩きながら自分の手首を見ると、明らかに誰かに強く握られた跡が残っていた、、、

 

 

「綾波 レイちゃん、歓迎会開始!!」

「ひゅ〜!!」

ドンドン!!ハフパフ!

派手で下品極まりないクラクション音やクラッカーの音が鳴り響く、

レイが案内された部屋には、数名の軽音楽部の部員とミサトやリツコがいた、

それなりに笑顔を作って、ビールと料理を囲んだ、よくある宴会だった、、

「綾波さん、じゃぁ主賓はここに来て、」

ミサトがレイをお誕生日席に案内する、

そして、、、、

レイの大ッ嫌いな宴会が始まった、、

意味もなく酔った勢いで騒ぐ者、

下品な下ネタで盛り上がる愚者ども、

さほど面白くも無いギャグを永遠と続ける痴れ者、

そんな連中を盛り上げる下等な女人ども、、

別にレイの歓迎会じゃなくても、盛り上がれればそれでいい、

そんな人間達が二十名ほど、歓迎会に参加していた、

そして、暫くするとレイへの質問が始まった、

「綾波さんって、髪、染めてるの?綺麗なブルーだよね、」

「地毛よ、」

一言で切り捨てる、

「カラーコンタクトなの?綺麗な紅い瞳だね、羨ましいなぁ、」

「アタシは嫌いよ、」

質問した男を睨みつける、

「彼氏いるの?綾波さんほど美人だったら当然いるかぁ、」

「必要ない、」

ビールを一気に飲み干す、

「どんな音楽好きなの?やっぱりビジュアル系、それともロック系、アイドル系かな?」

「アンタが好きじゃない音楽よ、」

皮肉っぽく笑いながら答える、

「どんなテレビゲームが好き?僕は、、、、、の、、、、とか、、、、とか好きなんだけど、、、」

「アタシ、テレビゲームやるほど暇人じゃないの、」

焼き鳥を咥えながら退屈そうに答える、

終止、レイは笑う事なく、本来のレイのまま答えていた、

「ちょっと、綾波さん。せっかくの貴方の歓迎会なんだから、、」

見るに見かねたミサトがレイに話し掛けてきた、

「もう少し愛想良くしろ、ですか?」

「創り笑顔をしろとは言わないけど、仲間は大切にしないとね、」

「仲間、、、、なんですか、連中とアタシは?」

「そうよ、同じ軽音楽部の仲間なんだから、、友情は一生ものよ、

出遭いも大切だし、仲間同士で笑える日々も大切なのよ、

きっと綾波さんも、、、、、、、、、、、」

一方的に話しをするミサトの言葉を、右から左へと流しながら、

レイはまったく別の事を考えていた、

(まったく、、、宴会なんて、、、最悪だよ、、、、、、

でも、さっきの夢は何?あれは夢なの?、、、、じゃぁ、この手首の跡は何?)

レイはビンビールを片手に持ちながら、手首の跡を改めて眺める、

(それに、アタシあの入り口に座った記憶はない、

あるのは、店の看板を確認して、地下へ降りて、、、、、

じゃぁ、さっきまでが現実で、今が夢って事?

このくだらない宴会も、横で勝手に話しているミサトも、全て、、嘘???)

「何深刻な顔してんのよ、」

その言葉にレイの思考は途切れた、

「、、、、、、あんた、」

「何時もの創り笑顔はどうしたのよ、」

「うるさいわね、あんたこそ今日は珍しく何処も怪我してない様ね、」

「まぁね、そうそうこの綺麗な顔に傷を入れたくないからね、」

アスカは自嘲的に笑いながら、レイの側に座る、

「アスカ、遅いわよ、」

ミサトがビールのジョッキをアスカに渡す、

「御免、シンジの所に寄って来たんだ、」

「そう、、シンちゃんは?」

「うん、、今日は来れないって、、」

「そう、、、、、」

ミサトは多少寂しそうな表情をする、

「ちょっと、アスカ、シンジって奴来ないの?」

レイが会話に割り込む、

「そうよ。あら、ひょっとして期待してたのシンジが来るの?」

「きっ期待なんかしてないわよ、ただ、アタシやあんたには来いって云っときながら、

自分は来ないなんて、いい加減な奴だなぁって思っただけよ、」

「シンジは、、いい加減な奴じゃないわよ、、、、、」

アスカはハイネケンのビンを一気に飲み干す、

「シンジは、、、」

「何よ、」

レイは次の言葉をじっと待つ。そして、暫しの沈黙の後、アスカが答える、

「止めた、勝手な先入観を与えるのは、良くないわよね、

あんたが、シンジをいい加減な奴だと思うのなら、それでもいいわ、

それが、レイの感じたシンジなら、それがレイにとっての真実だもんね、」

「はぁ???アスカ、何云ってるの?」

「勝手にアタシがシンジの肖像を描く事はしないって事よ、」

「そう、、、、、」

レイは漠然とアスカが云いたい事は理解できたが、本当にアスカが伝えたかった

事は解らないままでいた。

「あぁ!アスカ!久しぶり!」

「アスカ、ちゃんと学校来てるの!」

「何時になったら俺とデートしてくれるんだい!」

「おい、その前に俺との約束が先だろ!」

周囲の連中がアスカに声を掛けて来る、

その言葉を笑顔で受けながら、アスカは適当に返事をする、

時には笑いながら、時には怒った振りをしながら、

アスカは普段クラスで見せる人形の表情とは違い、

何処か、生き生きしている印象があった、、

「、、、、、、あの時みたいね、」

「何が?」

「あんたの笑顔、保健室で見た時と同じ笑顔ね、

あんた、、、、、、、そんな風に笑うんだ、、、、、」

多少驚いた様にレイは呟く、

「レイ、、あの時やっはり盗み聴きしてたのね、、、」

「ううん、、盗み聴きはしてないよ、、盗み見はしてたけど、」

「同じ事よ、」

皮肉っぽく笑いながらアスカは料理に手をつける、

「、、、、、、、、、、、、、、なんで?」

「はぁ?何が?」

から揚げを加えながらアスカは答える、

「なんで、、、、教室ではあんな無表情なくせに、、この場では笑顔でいられるの?」

レイはアスカを見てはいない、

だが、じっとアスカが答えるのを、バドワイザービンを眺めながら待っていた、

「そうねぇ、、、、皆アタシを外見だけで判断しない、アタシの事だけじゃない、

ここに集まってる連中は、外見や噂、勝手な先入観だけで人を判断しない、

自分が実際に接触して、話して、触れて、そして初めて相手の価値を決めるの、

一方的な先入観だけでは決して判断しない、、、

そんな連中だからかな、アタシが笑顔で答える事ができるのも、」

「ただ、酒を飲んで、くだらない話しをしてるだけの、愚劣な連中が?」

「ううん、、レイ、それはレイの一方的な先入観じゃない?

レイは多少でも彼らと話しをした?」

「、、、、、、、、、、、ううん、」

「アンタのことだから勝手に会話を遮断して、拒絶してたんじゃない?」

「、、、、、、、、、、、、、、、、うん、」

「それでも、連中レイに嫌な顔一つせずにいたでしょ?」

「、、、、、、、、、、、、、、、うん、」

「この軽音楽部の連中は、そんな連中ばかりなのよ、

だから、誰でも入部できるわけじゃないの、」

「そう言えば、、軽音楽部の事、知らない連中の方が多いわよね、」

「そう、、、アタシ達の学校に存在する、不思議なサークルなのよ、

容姿や学歴、家庭的関係で他人を判断しない事が唯一のルール、

音楽好きもいれば、女好きもいる、ショタコン女もいれば、女王様もいる、

でも、誰もが勝手な噂話しだけで他人を判断しない、、、

不思議な連中が集えるサークルなのよ、、ここは、」

「勝手な価値観で、他人を決めつけないサークル?」

「そう、それが、アタシとリツコで創った、軽音楽部なのよ、レイ、」

その言葉に振り向くと、そこにはミサトとリツコが、

普段の欺瞞に満ちた笑みではない、何処か寂しそうで、優しそうな笑みを浮かべた

教師、いや、二人の女性がいた、、

「レイ、、、今すぐ、このサークルの意味を理解できなくても構わない、

でも、何時か、、何時の日にか、、、レイも私達の仲間になって欲しいの、ね、」

ミサト、リツコの笑みは、あの時保健室で見た笑みと同じで、

決して教師という仮面の笑みではなかった、、

「、、、、、、約束は、、、出来ません、」

レイは素直に気持ちを答えた、

「そう、、、、ふふ、、でも似てるわね、」

「誰に?」

「始めてこのサークルにアスカを連れてきた時、アスカも同じ言葉を云ったのよ、」

「アスカが?」

「そう、“約束は出来ません”ってね、、」

アスカは何時の間にかレイの側から、他の部員の輪の中へと入っていた、

嬉しそうに話すアスカを見て、レイは呟いた、、、

「、、、、、、、、、、アタシは、笑えない、あんな風には、一生笑えないよ、、、」

その呟きを聴き、リツコが笑いながら答えた、

「その台詞も、アスカ、云ってたわね、、、」

誰かがワイングラスを割った衝撃音が響いた、、、、、

 

第八話へ続く



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